給食・保育事故 「徹底検証を、教訓生かせ」

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013041902000138.htmlより、
東京新聞【社説】保育事故 徹底検証を、教訓生かせ
2013年4月19日

 保育施設で事故の犠牲になる幼い命が少なくない。保育の環境や内容に問題はなかったのか、第三者を交えて徹底検証が必要だ。それぞれの現場が事故を防ぎ、教訓を生かせる仕組みを強めるべきだ。
 厚生労働省が公表した昨年の事故報告をみると、死亡事故は前年の十四件から十八件に増加。認可保育所で六件、無認可施設が十二件。無認可は前年と同数で、一時預かりで初めて預けた日の事故が三件、夜間保育中が三件など。認可は無認可より少ないが、法の基準に従い、安全と思われていた施設でも、前年に比べて一気に四件も増えている。
 そのうち二件は、おやつの白玉団子を保育士が目を離したすきに丸ごと飲み込んで窒息した、一、二歳児のケース。三年前に愛知県碧南市の保育所で起きた、カステラなどをのどに詰まらせた事故と似ている。碧南市は詳細な報告書を公表しているのに、教訓として生かされていないのは残念だ。
 そもそも厚労省の保育事故への対応は甘すぎる。保育施設で事故が起きても報告を義務づけてこなかった。三月にやっと、死亡など重大事故が起きた場合に、再発防止の検証を市区町村に求める通知を出したが、それも対象は認可のみ。事故の発生率が高い無認可が対象でないのは不十分だ。
 「制度外」の無認可施設は行政の監督の目も届きにくい。立ち入り検査は事前通告で行われ、改善指導も放置し、重大事故になった例もある。死亡事故の大半は待機児童の多いゼロ~一歳児だ。うつぶせ寝による窒息が疑われる場合が多いが、密室で起きた事故は真相の究明が難しい。司法解剖しても「死因不明」。警察が「事件性なし」と判断すれば親は泣き寝入りで、原因の追及は終わってしまう。よく分からない事故こそ、遺族らの意向も取り入れた第三者委員会による解明が必要だ。
 政府の規制改革会議は、待機児童の多い自治体に対し、認可保育所の施設や保育士の基準緩和を検討中だ。だが、二〇〇〇年代からすでに、保育施設の面積基準いっぱいに乳幼児が詰め込まれ、保育士の非正規化が進む。子どもの小さな変化を見逃さないよう努めても、職場に余裕が失われているとの声も出ている。
 骨折や指切断などの負傷事故も活発に動く四、五歳児で増えている。規制緩和を進めるより前に、保育環境と事故との因果関係を調べるのが先だ。親たちが望むのは安心と安全が守られた保育だ。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013032502000129.htmlより、
東京新聞【社説】食物アレルギー 事故 繰り返さぬために
2013年3月25日

 学校の給食は楽しいひとときのはずだ。だが、アレルギー症状を起こす食材を間違って食べてしまう事故がなくならない。死亡事故も起きた。子どもたちの命を守るには周囲の理解と知恵が大切だ。
 三十三万人。乳や卵など特定の食材へのアレルギーを抱える全国の児童・生徒数だ。文部科学省が二〇〇七年に公表した。
 クラスに一人はいる率になる。子どもたちにとってもそんな友達は身近な存在だ。
 昨年十二月、東京都調布市の市立小学校で、五年の女子児童が食べてはいけない粉チーズ入りのチヂミをおかわりで食べてショック症状を起こし亡くなった。
 今年一月には兵庫県西宮市の小学校でも、卵のアレルギーがある児童百三十二人が卵白を使ったチーズケーキを食べ、うち十人が体調を崩した。
 日本スポーツ振興センターの調査では、給食が関係するアレルギーの健康障害は〇八年度までの四年間で八百四件あった。
 調布市教委の検証委員会が今月十二日、今回の事故の検証結果を公表した。
 女子児童には症状を起こす食材を抜いた除去食を調理員が手渡していたが、その際、何が除去食か明確に説明しなかったようだ。それが分かっていればおかわりしなかっただろう。おかわりの際、担任は食べていいかどうかを一覧表で確認しなかった。女子児童が不調を訴えた際、ショック症状を和らげるエピペン注射をすぐにしなかったことなどを指摘した。
 人はミスをする。個人だけに責任を求めても解決しない。学校は、一人がミスをしても二重三重に誤食を防ぐ仕組みを考えてほしい。文科省は参考になる取り組み例を積極的に紹介すべきだ。
 誤食後の危機管理も求められる。調布市の事故ではエピペンの使用が遅れた。誤食から四十五分以内に医師の治療を始める必要があるといわれる。現場には危機意識をどう持つか点検してほしい。
 実は事故の防止には、命にかかわることもある疾患への周囲の理解が重要になる。牛乳パックのストローからの飛沫(ひまつ)が皮膚に付いて発症する子もいる。給食の原料を知ることも疾患と向き合う友達の命を守ることにつながる。
 給食は〇八年の学校給食法改正で、食育として教育の一環に位置付けられた。アレルギーのある児童も一緒に給食を食べるなかで子どもたちは学ぶ。大人にはその大切な時間を守る責任がある。

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