アーカイブ

月別アーカイブ: 5月 2013

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013053102000139.htmlより、
東京新聞【社説】夫婦別姓訴訟 選択制の議論を進めよ
2013年5月31日

 「夫婦別姓を認めない民法規定は憲法違反」と訴えた裁判は、原告敗訴に終わった。だが、結婚後の改姓で不利益をこうむる人もいる。若い人ほど希望が多い選択的別姓制を議論してはどうか。
 民法の規定では、結婚に際し、「夫または妻の姓を称する」と中立的な表現になっている。だが、実際には96%が、夫の姓を選んでいる。この実態は結婚前の姓を名乗りたいと望む女性の側からは、差別的と映る。男性の姓を強制されているのと同然だからだ。
 男女平等や個人の尊厳などに反すると訴えた裁判で、東京地裁は「結婚前の姓を名乗る権利まで憲法で保障されていない」などとして、原告の主張を退けた。一方で「姓名は人格権の一部」と認め、「結婚後の改姓で人間関係やキャリアに断絶が生じ、不利益が生じる恐れがある」とも述べた。
 ここで浮かび上がるのは、「選択的夫婦別姓」という制度である。夫婦が希望すれば、それぞれの姓を名乗ることができる仕組みだ。女性も自分の価値観で姓を選ぶことができる。
 一九八〇年代から、この考え方が広がりをみせ、九六年には法制審議会で、同制度を含む民法改正案要綱がまとめられた。だが、法案としては一度も国会に提出されたことがない。
 「家族の一体感が失われる」「子どもがきょうだいそれぞれ別の姓になる可能性がある」など、反対論が根強いからだ。
 実際に今年二月に内閣府が公表した世論調査でも、「同じ姓を名乗るべきだ」という反対の声が36・4%、「婚姻前の姓を名乗るようにしてもかまわない」という賛成の声が35・5%と拮抗(きっこう)する。世論は真っ二つに割れているのだ。
 ただし、二十代に限ると、反対派が21・9%で、賛成派が47・1%と、選択制を肯定的にとらえている。その傾向は三十代、四十代もほぼ変わらない。
 明治時代の民法は「家」への帰属を重視していた。しかし、家族や姓の在り方については、時代や社会によって変化しうる。女性の社会進出も増えている時代だ。家族が多様化し、姓もまた個人的な権利という考えが浸透すれば、法も変化が求められよう。
 選択的夫婦別姓は、民主党政権下でも議論に上がったが、立ち消えになった。結婚前の姓を「通称」として使えるように法改正を望む声もある。どんな立法政策がいいか、論議を一歩進めたい。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年 5月 30 日(木)付
夫婦のあり方―別姓も選べるように

 妻も夫も、もとの姓のままでもいいし、どちらかの姓にあわせてもいい――。そんな結婚のしかたは、いつになったらできるのか。
 夫婦は夫か妻の姓を称する、と民法は定めている。この規定が個人の尊厳を保障する憲法にかなうのかが裁判で問われた。
 東京地裁の判決は、結婚と改姓の間で悩んでいる人たちに、解決策を示さなかった。
 生まれながらの姓を、結婚で変える影響は小さくない。
 仕事で築いた実績や人間関係は、姓を変えることで途切れかねない。
 新しい姓を名乗ることで、本来の自分でなくなったような気持ちになる人もいる。
 厚生労働省の統計では96%の夫婦は夫の姓にしており、女性に改姓の負担が集中している。
 旧姓を使っていいと認める職場は広がっているが、すべてではない。身分証明になる運転免許証などの姓と通称が違うことで生じる不便や混乱は、しょっちゅうのことだ。
 裁判をおこした5人もこうした悩みを抱えており、見回せば近くにいそうな人たちである。
 婚姻届を出さずに、夫婦として暮らす「事実婚」を選ぶ人たちもいる。だが、税制上の控除や相続権など、法律上の結婚で認められる利益をあきらめなければならない。二人の間の子どもは婚外子となる。
 女性の社会進出が進み、家族のかたちは多様になり、予想できた問題である。とうに立法で解決しておくべきだった。
 法務省は96年に、夫婦は希望すればそれぞれ結婚前の姓を名のれる選択的別姓の制度をふくむ民法改正案要綱をまとめた。この案では、子どもたちの姓は一方の姓に統一される。
 ところが、与党・自民党の一部の国会議員から「家族の崩壊を招く」「家族の一体感が損なわれる」などの反対が出て、法案提出に至らなかった。民主党政権でも実現せず、法案は17年間、日の目を見ていない。
 姓が違う夫婦がいても、それぞれの考えを尊重した結果だ。そこに家族崩壊の兆しをみるのは、ゆきすぎではないか。
 民法が夫婦同姓としたのは、結婚制度に不可欠であるとか、結婚の本質にもとづくものだなどの説明がされているわけではない。それは今回の判決も認めている。
 国連の女性差別撤廃委員会も、結婚によって姓の変更を強制するのは問題があると指摘してきた。欧米の多くの国は、同姓かそれぞれ旧姓を名乗るかを選べる仕組みにしている。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130531ddm003030103000c.htmlより、
クローズアップ2013:シリア内戦 周辺国介入し戦闘拡大 9万人犠牲、先見えず
毎日新聞 2013年05月31日 東京朝刊

 中東のシリアで、アサド政権と反体制派の内戦が泥沼化している。紛争開始から2年を過ぎ、死者9万4000人、難民160万人に達した。27日、欧州連合(EU)は劣勢の反体制派への武器供与を決めたが、戦闘の激化を招く危険もある。反体制派を支持する米国と、アサド政権を支えるロシアは両サイド参加の国際和平会議を提案したが、開催できるか未知数。周辺国の思惑もからみ、解決の糸口すら見えていない。
 シリアでは、反体制派が北部のトルコ国境や南部のヨルダン国境周辺などを拠点に、都市の郊外や農村部で支配地を拡大。主要戦力は、離反政府軍兵士らが作る「自由シリア軍」や、国際テロ組織アルカイダ系のイスラム過激派だ。部族勢力や民兵組織などが乱立し統制が弱い。これに対し、兵器の種類や量、兵員数で勝るアサド政権側は、首都ダマスカスなど主要都市の中心部を固める戦術を展開。昨夏以降、戦闘は激化し、一進一退の攻防が続く。
 シリア内戦は、宗派紛争の様相も深める。反体制派は人口の約7割のイスラム教スンニ派が多い。一方、アサド政権の支持基盤は人口の1割強のアラウィ派だ。戦闘の長期化で両派の溝が広がった。アラウィ派が多い西部バニアスでは今月、100人以上のスンニ派住民が虐殺されている。
 中東の要の位置にあるシリアの内戦には、周辺国も介入している。イスラム教シーア派国家のイランは、シーア派と近いアラウィ派系のアサド政権を支援。レバノンのシーア派組織ヒズボラも、激戦が続く中部クサイルなどに数千人規模の援軍を送っている。
 一方、スンニ派が多くイランを警戒するサウジアラビアやカタールはトルコやヨルダン経由で反体制派に武器や物資を供給しているとされる。
 ヒズボラと何度も交戦し、最新兵器の流出を恐れるイスラエルも今月、首都ダマスカス近郊を2度空爆した。
 戦況が悪化する中、政治的な解決は糸口さえ見えない。米国とロシアは今月7日、両派が参加し和平実現を探る国際会議を提案した。だが、反体制派の主要組織「シリア国民連合」は、アサド大統領らの排除が和平の前提条件として会議への出席すら未定。政権側は「無条件の対話」を強調し和平に消極的なのは反体制派だと印象付けようとしている。【カイロ秋山信一】

 ◇EU、「武器供与」で政権に圧力
http://mainichi.jp/opinion/news/20130531ddm003030103000c2.htmlより、
 欧州連合(EU)のシリア反体制派への武器供与決定に関し、推進派の英外交筋は「EUに軍事支援という選択肢もある、という政治的メッセージをアサド政権に伝えたかった」と理由を解説する。シリア内戦に対しEU内には無力感が強い。「人道支援だけで悲惨な状況は変えられない」(フランス外交筋)と考える英仏は供与を要求。米露提案の国際和平会議前に反体制派の立場を強める狙いもあった。
 ただ、武器供与を決めた27日のEU外相会議でも意見は割れた。オーストリアや北欧諸国は平和構築に力を注いできたEUの共通外交政策の転換は「受け入れられない」と抵抗。しかし、「一致しなければ、EUの影響力が低下する」(ウェスターウェレ独外相)との危機感から、猶予付きの限定的供与で妥協が図られた。
 供与には厳しい制限がある。2008年の「武器輸出管理原則」を適用し▽紛争を長期化・悪化させる▽テロにつながる−−場合、輸出は禁止。さらに「武器を渡すこと自体も難しい」(南ドイツ新聞)。
 英仏は武器供与の具体的計画は示していないが、ヘイグ英外相が即座に渡す可能性を「排除しない」と語るなど、アサド政権の揺さぶりを図る。一方で、激化の一途をたどるシリアでの戦闘が、武器供与で悪化する可能性もあり、EU諸国は慎重な判断を迫られる。【ブリュッセル斎藤義彦】

 ◇米、反体制派支援 露、政権転覆警戒 和平会議開催は一致
 反体制派を支援するオバマ米政権は、EUによるシリア反体制派への武器供与の決定を、「国際社会が反体制派を支援する意思の表明」(国務省)と評価した。国内経済再建を優先し、シリア情勢への軍事的関与に消極的だったオバマ政権に対しては、国内で消極姿勢への批判も出ていた。英仏などの同盟国が供与を決め、一息つく余地ができた形だ。
 オバマ政権の関与回避策は当面続く見通し。カーニー米大統領報道官は29日、飛行禁止空域設定は「大統領の選択肢だが、現在有力と言うのは不正確だ」と述べた。懸念されるアサド政権の化学兵器使用も、オバマ大統領は「レッドライン(超えてはならない一線)」と言明したが、具体的措置に踏み切る気配はない。
 米政権の消極姿勢への批判が強まっており、マケイン上院議員(共和党)は27日、シリアで反体制派幹部らと会談した。
 一方、ロシアは、EUの武器供与決定がアサド体制転覆につながることを警戒する。アサド政権は地中海岸の港を提供してくれる重要な武器売却先だ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130531ddm003030103000c3.htmlより、
 リャプコフ外務次官は28日、シリアへの供給を約束した対空ミサイル「S300」は、内戦への介入抑止効果があると指摘。リビアのカダフィ政権が北大西洋条約機構(NATO)の軍事介入で崩壊した事態の再現を許さない考えを示した。立場は対立するが、米露はシリア国際和平会議を提案、6月中にスイス・ジュネーブで開催する案が浮上。同月5日に国連を交え協議するが、先行きは不透明だ。【ワシントン白戸圭一、モスクワ田中洋之】

 ◇シリア情勢の推移
11年 3月 首都ダマスカスで反政府デモ。当局は弾圧するが全土に拡大
    8月 国連安保理が弾圧を非難する議長声明
12年 2月 国連総会が弾圧非難決議
    4月 反体制派団体が「弾圧開始以来の死者1万人」。アナン前国連事務総長提案の停戦発効。安保理が停戦監視団派遣を承認
    8月 監視団解散。国連調停が破綻
   12月 130以上の国・機関参加の「シリアの友人」会合が反体制派統一組織「シリア国民連合」を「唯一の正統な代表」と承認

13年
 1月 6日 アサド氏、反体制派との対話拒否
 3月 6日 国連がシリア難民100万人突破と発表
   21日 国連がシリアでの化学兵器使用疑惑の調査を発表
 5月 7日 米露が政権側と反体制派双方を招く国際会議の開催で合意
   14日 「11年3月以来の死者9万4000人」と反体制派
   15日 国連総会が「シリア国民連合」の設立を歓迎する決議
   27日 EUが反体制派への限定的武器供給で合意

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO54930960S3A510C1PE8000/より、
日経新聞 社説 シリア内戦の平和解決を探れ
2013/5/12付

 米国とロシアが内戦の続くシリア情勢の打開を目指して、当事者と関係国による国際会議を開く方針で一致した。
 対話による解決で米ロが歩調をあわせることは重要だ。国際社会はこの機会を逃してはならない。混乱が周辺地域に広がる前に停戦を実現する必要がある。
 アサド政権と反政府勢力の衝突では7万人が死亡し、今も血が流れ続けている。有効な手を打てずに放置してきた国際社会の責任は重い。なかでも国連安全保障理事会は米国とロシアの立場の違いからまったく機能してこなかった。
 重火器で依然勝る政府軍に対し、反政府勢力はまとまりを欠く。シリア国外からイスラム過激派が入り込み、アルカイダ系の国際テロ組織との連携を公言する組織も現れた。レバノンのイスラム教シーア派民兵組織のヒズボラもアサド政権側について内戦に加わっているという。
 ヒズボラはレバノン南部を事実上支配し、イスラエルと対立する。イスラエルによるとみられるシリア領内への空爆も相次いで起きた。シリアからヒズボラへ武器が渡ることを阻止するためだったとされる。
 シリア情勢は国土が分裂し、周辺国を巻き込んで混乱が広がる様子を見せている。加えて心配なのは内戦で化学兵器が使われた可能性が出てきたことだ。
 誰がどのように使ったのかは慎重な検証が必要だ。米政府は政権側が弾圧に使ったことを確認できれば、反政府勢力への武器供与などに踏み切る考えだという。
 非人道的な化学兵器の使用は許されない。だがアサド政権の受け皿が見えない状況で武器を供与し、政権を武力で倒せば、混乱を長引かせることになりかねない。
 国際会議の実現は容易ではない。米ロは全勢力が参加する「移行政府」樹立を探るとしているが、アサド大統領の処遇をめぐり政権と反政府勢力の溝は深い。しかし、もはや時間の猶予はない。平和解決を全力で探る時である。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130531/plc13053103100003-n1.htmより、
産経新聞【主張】日印首脳会談 経済と安保で連携強めよ
2013.5.31 03:09 (1/2ページ)

 安倍晋三首相が来日したインドのシン首相と会談し、経済、安全保障両面で両国関係を強化していくことで一致した。
 インドとの連携は、米国などとともに、自由や民主主義、法の支配といった普遍的価値観を共有する国々との連帯を強め、結束を図っていく意味がある。
 共同声明では「国際法の諸原則に基づく航行の自由への関与」に言及し、東シナ海や南シナ海で権益拡大の野心をあらわにする中国を牽制(けんせい)している。これを両国でどう具体化していくかだ。防衛面などの協力を進めてほしい。
 両首脳は、日本の原発輸出の前提となる原子力協定の「早期妥結」で一致したが、核拡散防止条約(NPT)に加盟していないインドとの協定締結には一部に慎重論もある。交渉にあたってはインド側に、軍事転用を許さない措置を講じるよう求めていく必要があるだろう。
 首脳会談では、インド政府が進めるムンバイ-アーメダバード間の高速鉄道計画について、共同調査を行うことでも合意した。「トップセールス」の成果の一つとして歓迎したい。
 人口12億のインドは、経済の急成長で電力や鉄道などインフラ需要が大きい。中国と並ぶ2大新興経済国であるインドの巨大市場は、日本にとっても魅力的だ。成長戦略を進めていく上でも、なくてはならぬパートナーだ。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130531/plc13053103100003-n2.htmより、
2013.5.31 03:09 (2/2ページ)
 安全保障分野では、海上自衛隊の救難飛行艇US-2の輸出に向けた合同作業部会の設置や、海自とインド海軍の共同訓練の活発化で合意した。
 日本とインドの安保協力では、両国の外務、防衛当局による次官級の「2プラス2」や米国を含む3カ国の外務当局による局長級対話などがある。
 中国は、パキスタンやスリランカ、ミャンマーなどで港湾開発に協力することで、インド洋での拠点づくりを着々と進めている。
 力を背景にした中国の海洋進出は、日印両国にとって共通の懸念であり、いかに押しとどめていくかが問われている。
 シン首相の訪日に先立って中国は、李克強首相が就任後初の外遊先としてインドを訪問し、中印の「相互信頼」を強調した。こうした関係が本物かどうか、日本は中国の動きを見極めながら、戦略的外交を展開すべきだ。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO55665900R30C13A5EA1000/より、
日経新聞 社説 日印の戦略的関係をどう築いていくか
2013/5/31付

 安倍晋三首相は来日したインドのシン首相と会談し、経済や安全保障など幅広い分野で両国が連携を深めることで合意した。
 インドの人口は2020年代に中国を上回り、世界一になる見込みだ。直近の経済成長率は鈍化しているものの、日本企業にとって巨大な消費市場を抱えるインドの魅力は大きい。
 ただ日印の貿易額は日中のおよそ20分の1の水準にとどまる。インフラ不足や煩雑な行政手続き、汚職や腐敗といった問題がビジネスの障害となっているからだ。
 会談では日本が円借款を供与し、ムンバイの地下鉄建設などインフラ開発を加速することになった。インフラ不足解消への取り組みはもちろん重要だが、ビジネス環境の改善も促していきたい。
 日印の協力は、台頭する中国をにらんだ外交や安全保障戦略にとっても大切だ。中国軍の海洋進出にはインドも懸念を抱いている。
 共同声明では海上自衛隊とインド海軍による共同訓練の定期化などを確認した。日印が足並みをそろえて中国に責任ある行動を働きかけていくことは、アジア太平洋の安定にもつながるはずだ。
 今回の会談では、日印の原子力協定交渉の加速でも一致した。インドは2020年までに原発を18基建てる計画で、日本の原発メーカーがもつ最新技術や運転ノウハウに寄せる期待は大きい。
 だが交渉にあたっては、インドが核拡散防止条約(NPT)に入らず核実験を重ね、核兵器を持っていることを忘れてはならない。
 日本が提供する技術や機器、情報が核兵器の研究・製造に応用されないよう、厳しく監視する仕組みが要る。いまはインドの一部の原子力施設に限られている国際原子力機関(IAEA)の査察対象を広げ、再処理工場なども含めるよう同国に求める必要もある。
 日本は唯一の被爆国として核兵器を持たず、他国の核武装にも協力しないことを基本方針にしてきた。安倍首相が会談で、インドが署名していない包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効の重要性を訴えたのは当然だ。インドにNPTへの加盟や核軍縮を粘り強く働きかけることも重要だ。
 日本にとって、世界で存在感を高めるインドとの戦略的かつ重層的な関係づくりは欠かせない。幅広い協力分野のなかで原発をどう位置づけるか。安倍政権はそれを明確にする必要もあるだろう。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013053002000125.htmlより、
東京新聞【社説】日印原子力協定 経済優先がすぎないか
2013年5月30日

 安倍晋三首相は来日中のインドのシン首相と原子力協定をめぐり交渉の再開で合意した。原発技術の輸出は福島第一原発事故の教訓より経済を優先している。しかも核不拡散の原則に反している。
 「暑い時期は気温が四〇度を超えるがエアコンが使えない。寒い時期は二~三度まで下がるが暖房が使えない。多くのインド人はとにかく電力がほしい。それが原子力かどうかなんて気にしない」
 ニューデリーに住むインド人男性は、電力不足への市民の不満をこう話す。停電は日常茶飯事だ。
 インド政府は電力供給の“切り札”に原発の増設を進める。現在、稼働中の原発は二十基あり、今後十年間で二十五基を新設する。発電量に占める原子力の割合を今の約2%から二〇三〇年までに十三倍に増やす目標だ。
 そのため日本の原発技術はのどから手が出るほどほしいだろう。既に欧米からは技術協力を得ているが、原発政策を担う政府機関・インド原子力公社の幹部は以前、「日本との協力が最優先だ」と語った。日本にとっても大きな市場になることは間違いない。
 だが、インドは必ずしも福島の教訓まで求めていないように見える。膨大な除染や賠償費用について、この幹部は「それは津波のコストであって原発技術が起こしたわけではない」と語った。
 原発事故は多くの人の命や生活を脅かす。その教訓が共有されていないのではないか。
 安倍首相は「事故の経験と教訓を世界と共有することによって、世界の原子力安全の向上に貢献していく」と言うが、原発政策はあまりに経済優先ではないか。国内では新増設に慎重なのに海外へは積極的に輸出するのでは、国際社会の信頼を得られない。
 核の拡散も懸念される。インドは核保有国だが、核拡散防止条約(NPT)に加盟せず、包括的核実験禁止条約(CTBT)にも署名しておらず国際社会の監視が届きにくい。
 米国がインドの経済成長に目を付け既に原子力協定を結んだ。日本も参加する原子力供給国グループもインドを例外にして核技術輸出を解禁した。これではNPT体制が揺らぎかねない。
 日本が語るべきはNPT加盟を促し核兵器削減と開発中止を訴えることである。協定交渉では核実験すれば原発の技術協力を停止するとの条件を求めるべきだ。それが唯一の被爆国の責務である。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130530k0000m070126000c.htmlより、
社説:日印関係 海洋安全保障も経済も
毎日新聞 2013年05月30日 02時33分

 インドのシン首相が来日し、安倍晋三首相との間で、経済、政治・安全保障協力の強化や、日本からの原発輸出の前提となる日印原子力協定の締結交渉促進などで合意した。
 核拡散防止条約(NPT)に加盟せずに核兵器を保有しているインドと原子力協定を結ぶことには懸念が残る。ただ全体的に見れば、インドは経済と政治・安全保障の両面で国際社会での重要性を増しており、日印関係の現状は、その潜在的可能性に比べると、まだまだ不十分と言わざるを得ない。インドとの関係強化を加速させるべきだ。
 インドの人口は2025年に約14億6000万人となり、中国を抜いて世界第1位になる見通しだ。経済は減速傾向が著しいが、それでも成長率5%を維持している。10年先を考えれば、魅力的な巨大市場であることに変わりはない。
 ところが日印貿易の額は、日中の20分の1にも満たない。日本企業のインド向け直接投資も伸びていない。シン首相は訪日で、エネルギーや交通インフラへの投資を促した。
 インドへの投資が進まないのは、電力不足、通関などの手続きの煩雑さ、州ごとに制度が異なることなど、環境がなかなか整わないからだ。日本政府は、主要な州政府との協力強化なども含め、投資環境の整備を積極的に支援してほしい。
 インドの存在感は安全保障分野でも顕著だ。インドは中東・アフリカからのシーレーン(海上交通路)が通過するインド洋に面し、もともと地政学的に重要な位置にある。
 そのインド洋で、中国海軍は、ソマリア沖から西インド洋に拡大する海賊被害への対策として、護衛艦などを派遣する国際社会の行動に参加している。また中国は、パキスタン、スリランカ、バングラデシュなどインド洋沿岸諸国の港湾開発に投資して戦略拠点としている。これらがインドを包囲しているように見えることから「真珠の首飾り」と呼ばれ、インドは神経をとがらせている。
 中国のインド洋進出をけん制する意味からも、日印両国が海洋の安全保障で連携することは重要だ。
 海上自衛隊とインド海軍は昨年6月、横須賀沖で初めての海上合同訓練を行った。日印の外務・防衛当局の次官級対話や、日米印3カ国の局長級の政治対話なども活発化している。こうした動きを今後、いっそう強化していってほしい。
 日印両国は昨年、国交樹立60周年を迎えた。天皇、皇后両陛下も年内にインドを訪問される方向だ。経済、政治・安全保障はもちろんだが、人や文化・学術交流の促進などを通じ、日印の絆をさらに重層的なものにしていく努力も必要だ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130528k0000m070060000c.htmlより、
社説:原子力協力 前のめりでは危ない
毎日新聞 2013年05月28日 02時31分

 どうも違和感がある。2年前の東京電力福島第1原発の事故以来、日本は「脱原発」を真剣に模索し、原発の再稼働にも慎重な姿勢を取ってきた。だが、安倍晋三首相の、少なくとも国外での言動を見る限り、事故の重大さを忘れ、原発ビジネスに奔走しているように見える。しかもトップセールスの相手は、中東からインド、東欧へと広がる気配だ。
 安倍首相が4〜5月の外遊で、トルコやアラブ首長国連邦、サウジアラビアへの原発輸出や関連技術供与に意欲を見せた時、私たちは首相の前のめりな姿勢に懸念を表明した。トルコは地震国で、中東の政情はなお不安定という事情もある。が、それ以前に、原発にまつわる日本国民のつらい体験を、首相が謙虚に受け止めているのか疑問だったからだ。
 また、29日のインドのシン首相との日印首脳会談では原子力協定交渉が一つの焦点になりそうだが、この協定にも問題がある。核拡散防止条約(NPT)は米英仏露中の5カ国だけに核兵器保有を認め、NPTの枠外で核兵器を持ったインドへの原子力協力は本来、禁じられていた。
 しかし、米国のブッシュ前政権は任期切れ直前(08年)、インドと原子力協定を結び、日本を含めて45カ国が加盟していた原子力供給国グループ(NSG)に強く働きかけて、インドとの原子力協力を例外的に認めさせたのである。
 その背景には、成長するインドが2020年をめどに20基近い原子炉建設を計画していることが挙げられる。仏英露もインドと原子力協定を結び、原発ビジネスを展開すべく、進んだ技術を持つ日本の参入を待っている。確かに巨額のビジネスは魅力だし、中国の膨張が目立つ近年、日本にとってインドとの連携は重要度を増している。
 だが、大国のご都合主義でNPTの空洞化が進む事態は歓迎できない。NPTは原子力の平和利用を認めているが、原発が必ずしも安全でないことは、スリーマイル島やチェルノブイリに続いて福島での事故が如実に示した。日本は事故の教訓を世界に発信し続ける義務がある。世界で原発が増え続けることを自明とせず、たとえば再生可能エネルギーの技術開発のために日本が国際社会で主導的な役割を果たす道もあるはずだ。
 核不拡散への努力も怠ってはなるまい。オバマ米大統領は「核兵器のない世界」をうたってノーベル平和賞を受賞したが、核兵器を保有するインドやパキスタン、保有が確実な北朝鮮やイスラエルの非核化は一向に進まず、世界はいわば漂流している。今こそ日本の出番だろう。世界の漂流を止めるために、唯一の被爆国の良識と決意が問われている。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年 5月 25 日(土)付
日印原子力協定―核不拡散の原点どこに

 政府がインドとの間で、原子力協定締結に向けた協議を再開させる。原発技術の輸出をにらんでのことだ。
 インドは核不拡散条約(NPT)に加わらないまま、核兵器保有に至った国である。
 一方、日本はNPT体制の下で、核兵器の廃絶を目標にかかげる被爆国だ。
 インドと原子力協定を結ぶことは、NPT体制をさらに形骸化させることにつながる。
 協定より先に、まずNPTへの加盟や、包括的核実験禁止条約(CTBT)の署名を求めるべきだ。
 日印の公式協議は10年6月以来3回開かれたが、福島第一原発事故で中断していた。
 来週、シン首相が来日し、安倍首相と首脳会談を予定している。その共同声明に協議再開を盛り込む方針だ。
 インドでは軍事用を含め原発20基が稼働しているが、ほとんどが国産の小型炉で海外からの大型原発導入を熱望している。
 日本の原発技術は、米国製やフランス製の大型原発にも使われており、日印が原子力協定を結ばなければ米仏からの原発輸出も難しい。このため、米仏両国は日本政府に協定締結を非公式に促してきている。
 しかし、NPTに照らすと、これは大問題だ。
 核兵器保有を米ロ英仏中の5カ国に限り、核保有国は核軍縮に努める。他の国は核保有を図らない代わりに、平和目的の原子力技術の提供を受ける。
 そうしたNPTの精神を顧みなかったインドに技術を提供することは「NPTを守らなくても、原子力技術は手に入る」というメッセージになる。
 インド、パキスタン、北朝鮮といったNPT未加盟・脱退宣言国が次々に核実験をし、加盟国であるイランの核開発も止められない。NPT体制の弱体化は目を覆うばかりだ。
 それでも、日本がNPTを壊す側に回ってはいけない。
 08年、インドへの原発輸出を狙う米国の働きかけで、日本など原子力供給国グループ(当時45カ国)はインドへの技術提供を認める特例を決めた。
 その際、日本の外務省は「インドに非核保有国としてのNPT早期加入、CTBTの早期署名・批准を求める立場に変わりはない」と説明した。
 日印間で協議が始まったのを受けて、10年の長崎平和宣言は「被爆国自らNPT体制を空洞化させるものであり、到底、容認できない」と抗議した。
 被爆国としての筋を通すべきだ。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130531/fnc13053103160000-n1.htmより、
産経新聞【主張】財政健全化 目標実現こそ成長支える
2013.5.31 03:08 (1/2ページ)

 政府が6月に閣議決定する経済財政運営の指針「骨太の方針」の策定が進む中、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が財政健全化に向けた報告書をまとめた。
 アベノミクス効果で景気が上向く一方、長期金利の動きは神経質で、株式市場も荒い展開をみせている。その分、かつてないほど政府の財政運営にも市場の注目が集まっている。
 財政規律を維持し、市場や海外の信頼を保つことこそが経済再生の鍵だ。財政健全化の重要性を説く報告書の重みは増している。
 景気回復とともに設備投資などの資金需要が増え、緩やかに金利が上がるのは正常な姿だ。
 だが「アベノミクス三本の矢」の1本目で日銀が「異次元の金融緩和」による国債の大量購入を打ち出して以来、日銀による財政赤字の肩代わり懸念が市場からは消えない。2本目が大規模な財政出動だっただけになおさらだ。財政への信認が崩れれば国債価格急落(金利急騰)を招きかねない。
 報告書は、そうした事態を避けるために財政健全化が不可欠とした。ともすれば景気浮揚策と相反するとみられがちな財政健全化だが、報告書は、逆に成長を支えると指摘している。
 選挙で財政健全化を掲げることには与野党を問わず拒絶反応がある。景気の腰折れを防ぐために棚上げすべきだとの声さえある。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130531/fnc13053103160000-n2.htmより、
2013.5.31 03:08 (2/2ページ)
 確かに、政府が歳出抑制や増税に取り組めば、短期的には需要を減らす。しかし、財政健全化が着実に進めば、社会保障などへの国民の将来不安を和らげ、消費を促す。金利上昇を抑えることで、企業の投資を活発化させ、住宅ローン需要の増大にもつながる。
 安倍晋三政権は、財政健全化目標として平成27年度の基礎的財政収支の赤字幅を22年度の水準から対国内総生産(GDP)比で半減させ、32年度には黒字化を実現するとしている。骨太の方針でもこの点は強調するという。
 ただ、その道のりは厳しい。消費税率の段階的引き上げで27年度の赤字半減を達成しても、32年度の黒字化には、なお約15兆円の収支改善が必要だからだ。
 骨太の方針では、一歩踏み込んで、財政健全化への道筋を具体的に示すべきだ。それが「3本目の矢」の成長戦略とともに、アベノミクスを息の長い経済成長につなげる条件である。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO55394280U3A520C1EA1000/より、
日経新聞 社説 市場急変に振り回されず日本の信頼保て
2013/5/24付

 長期金利が一時1%まで上昇し、日経平均株価が1000円を超す下げとなるなど、金融市場の値動きが大きくなってきた。市場の乱高下の背景にあるのは、世界的な金融緩和で市場にあふれた投機マネーの存在だ。
 市場の短期的な動きに振り回されず、企業の成長力強化や政府の財政再建策によって日本への信頼を保つ必要がある。
 日本国債が売られたのは、前日の米国市場の流れを受けてのことだ。米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が議会で量的緩和を縮小する可能性にふれたため、米長期金利が2%台にはね上がった。こうした市場の動きを見て、日本でも慌てて債券を売る投資家が増えた。
 これまでも日本の長期金利は景気回復への期待を映して、上昇してきた。しかし金利の過度の上昇は金融緩和の効果をそぐことになりかねず、株価の下落にもつながる。今後も日銀は国債購入のペースを調節したり、機動的に資金を供給したりすることで、市場の不安を和らげてほしい。
 政府も、消費税の増税と歳出削減を組み合わせた財政健全化の道筋を示し、日本の経済運営に対する信用を維持しなければならない。日銀の国債購入が財政赤字の尻ぬぐいという印象を市場に与えれば、長期金利がさらに上昇する恐れがあるからだ。
 一方、株価が大幅に下げたのは、中国の景気減速を示す景気指標の発表をきっかけに、短期売買を繰り返すヘッジファンドなどが株式の売却を急いだからだ。
 こうした株式市場の動揺を静めるために大きな役割を果たすことができるのは、政府や日銀ではなく企業である。
 今の日本企業はリーマン・ショック後に合理化を進め、円安にも大きく助けられた結果、業績が著しく回復している。上場企業の約半分が、手元資金で負債を完済できる実質無借金の状態にあるなど、財務体質も良い。企業がこうした強みを投資家に訴えていけば、今後も株価が大きく下がり続けるとは考えにくい。
 さらに豊富な手元資金を配当に回すのか、M&A(合併・買収)などの成長投資に回すのかといった方針も示すべきだ。
 株価が不安定な今だからこそ、企業が経営戦略をきちんと説明し、長期保有の株主を増やしていく重要性が増している。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130524k0000m070173000c.htmlより、
社説:市場大波乱 冷静に考え直す時だ
毎日新聞 2013年05月24日 02時32分

 かけ声主導、期待頼みの足早な上げ相場には、やはり無理があったということだろう。23日の東京株式市場は大揺れとなり、日経平均株価は前日比1100円超の大幅安で取引を終えた。債券市場も乱高下し、国債の利回り(長期金利)が、1年2カ月ぶりに1%まで急騰した。
 マネーの急膨張はかえって経済を不安定にすると見るべきだ。立ち止まり、冷静に日本経済の問題と処方箋を点検する機会としたい。
 日銀が「異次元の金融緩和」でお金の量を倍増させれば、インフレ期待から株価が上がり、企業の設備投資が復活し、賃金も増え、デフレが終わる−−。安倍政権や黒田東彦総裁下の日銀が唱えてきたシナリオである。株価を押し上げれば、経済の成長力もついてくるという発想のようだが、実態と離れた、マネー主導の株高は、ちょっとしたきっかけで崩れてしまう。
 マネー主導というのは株価上昇のピッチや市場の値動きの幅が表している。日経平均は23日、朝方に一時、5年5カ月ぶりの1万5900円台を付けていた。半年間に約70%の値上がりである。それが一転、高値から1400円も下落したのだ。
 中国経済の悪化を示す指標が出たことが理由の一つに挙げられているようだが、他のアジア市場の下落率が1〜2%台だったのに対し、日本は7%超と突出している。午後になり急激に下落した値動きからも、市場がいかに投機的なお金に支えられていたかがうかがえよう。
 確かにこの間の株価上昇には評価できる面もあった。リスクを取ることに臆病になっていた投資家の姿勢が変わったことや、企業経営者が自信を取り戻しつつあることなどだ。
 しかし、株価上昇や景気回復を、日銀が供給するお金の量を増やすことで実現しようという考えは、安易過ぎる。長年先送りしてきた構造改革など難問への取り組みや経営の改革などで達成すべきものだからだ。
 一方、日銀の大規模な量的緩和を受けて乱高下している長期金利には、むしろ経済の不安定要因になりそうな兆しがある。日銀の国債購入量が急増し市場で自由に売買しにくくなったことが、わずかな売りで金利が急騰する背景になっている。
 今回の市場の波乱を一過性の調整と見なし、現行の路線を突き進むのか。それとも金融緩和頼みを修正し、痛みの伴う改革に本腰を入れるのか。対応次第で今後の日本経済に大きな影響を与えそうだ。
 市場の警告が早く出てくれたお陰で、あの時変われてよかった−−。将来そう振り返ることができるよう、安倍政権や黒田日銀の柔軟さに期待したい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130524ddm003020152000c.htmlより、
クローズアップ2013:東証急落 投資家の不安噴出
毎日新聞 2013年05月24日 東京朝刊

 23日の東京金融市場は大荒れとなり、日経平均株価が13年ぶりの下落幅で急落。安倍政権の経済政策「アベノミクス」の期待先行のもろさが浮き彫りになった。市場では依然として「相場の一時的な調整で株の上昇トレンドは変わらない」(農林中金総研の南武志主席研究員)との見方が強いが、今夏に政府が策定する経済成長戦略や中期財政計画の中身次第では、外国人投資家らの失望売りで不安の連鎖につながる可能性もある。【窪田淳、工藤昭久】

 ◇売りが売り呼ぶ展開
 「何かがおかしい」。23日午前11時過ぎ。東京都中央区の中堅証券会社の営業部に緊張が走った。パソコンに表示される日経平均株価が急速に下げ足を速めていた。
 「とにかく、顧客にいったん売却を勧めよう」。営業部員は電話をかけ続ける。この緊張感は、2008年9月のリーマン・ショック時以来だ。
 企業からの株式注文を扱う大手証券では、午後に入り、買い注文のキャンセルが相次いだ。買い注文が薄いなか、ヘッジファンドなどの投機筋が断続的に売りを浴びせた。
 午後2時28分には、大証の日経平均先物の価格が制限値幅の下限に達したため、取引が一時ストップ。「先物の売買ができないなら、現物を売るしかない」と現物株の売りがさらに膨らんだ。個人投資家も、膨らむ損失にろうばいし、売却に動いたとみられ、「売りが売りを呼ぶ展開」になった。
 急落の予兆はあった。5月以降、大きな材料もないのに、日経平均株価は上昇を続けた。上昇と下落を繰り返しながら株価が徐々に上がる場合は下落も小さいが、急ピッチな上昇は下落も急激というのが、市場関係者の経験則。投資家は売却のタイミングを探っていた。日経平均株価の先行きの振れ幅の予想を指数化した「日経平均VI」は、東日本大震災以来の高水準に達した。「VI」の別名は「恐怖指数」。投資家の不安が振れ幅の大きさになって現れるという。
 23日の急落のきっかけは長期金利の急上昇だった。指標となる新発10年物国債利回りは朝方、約1年2カ月ぶりの高水準となる1%ちょうどまで上昇(国債価格は下落)。日銀が金利全体の押し下げを狙って4月に導入した金融緩和策とは逆の動きが続き、「日銀への信頼が多少なりとも揺らぎ、投資家心理を冷やした」(大和住銀投信投資顧問の門司総一郎経済調査部長)。

 ◇終了前1時間、700円超
http://mainichi.jp/opinion/news/20130524ddm003020152000c2.htmlより、
 景気回復に伴う「良い金利上昇」なら、株価の押し上げ要因になる。しかし、実体経済が追いつかない中での金利上昇は、日本経済にマイナスに働く。昼前に中国の景況感悪化を示す指標が発表されると、1万5800円台で推移していた日経平均は下げに転じた。午後に入って円高が加速すると、株売りに拍車がかかり、午後2時から取引終了までの1時間で一気に700円超も急落した。
 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は「目先の日経平均株価は1万6000円が天井で、調整が続く可能性があるが、下落基調に入ったわけではない」と見る。もう一段の下落があったとしても、企業業績の改善が明らかになれば、次第に値を上げると見ているためだ。期待先行のアベノミクス相場に冷や水を浴びせた今回の急落。今後の実体経済の改善度合いを市場関係者は注目している。

 ◇期待先行のもろさ露呈
 23日の東京金融市場の動揺は、アベノミクスの危うさを示した。副作用も改めて確認され、政府・日銀は難しい政策運営を迫られそうだ。
 アベノミクスはデフレから脱却し、経済成長を図るため、大胆な金融緩和、機動的な財政政策、成長戦略を「三本の矢」とする安倍政権の経済政策。黒田東彦総裁率いる日銀の大規模な金融緩和と、公共事業を活用した政府の大型補正予算はすでに実行され、その効果で日本の景気回復期待は高まり、株高、円安が加速。個人消費や企業の生産活動に一定の回復が見えてきた。
 しかし、そのアベノミクスが生み出した「株高、円安」に冷や水を浴びせたのは、アベノミクスそのものが抱える負の側面だった。まず顕在化したのが金融緩和の副作用。日銀が大量に長期国債を購入するため、市場に流通する国債が減少。日銀以外の市場参加者が買いにくくなり、長期金利は不安定な動きを続ける。日銀の黒田総裁は22日の記者会見で「柔軟な国債買い入れを通じて長期金利の安定に努める」と説明したが、23日も不安定な動きは続いた。
 一方、機動的な財政政策と表裏の関係にある財政再建策の中身も問われ始めている。政府は今夏に中期財政計画をまとめる方針だが、野村証券の尾畑秀一シニアエコノミストは「長期金利が1%を付けたことで、信頼性の高い財政政策を示さないと、財政悪化を懸念した外国人の国債売りが加速する恐れがある」とも指摘する。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130524ddm003020152000c3.htmlより、
 最後に残る成長戦略は成長産業を育成し、民間投資を引き出すもの。政府は医療や農業分野を成長産業に盛り込む方針を示しており、最終案を6月中にまとめる方針だが、「法人税減税や成長産業への投資減税などを盛り込まないと日本経済の抜本的な立て直しにはつながらない」(大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミスト)との見方もある。市場の懸念を払拭(ふっしょく)するには時間がかかりそうだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130523k0000m070120000c.htmlより、
社説:日銀緩和と新興国 世界の安定あってこそ
毎日新聞 2013年05月23日 02時35分

 日銀の大規模な金融緩和が新興国経済に影響を及ぼし始めている。円安が進み株式市場が活況に沸く日本とは裏腹に、新興国では通貨高から輸出にブレーキがかかり、対抗措置として利下げに踏み切る中央銀行も出てきた。
 こうした緩和の連鎖が続けば、カネ余りに拍車がかかり、あちこちでインフレやバブルが生まれるなど、世界経済が不安定化する恐れがある。日銀は22日の金融政策決定会合で、物価上昇率が安定して2%近辺となるまで、今の緩和を続ける方針を確認したが、長期化はマネーのひずみを増幅させるリスクを伴う。
 結果的に自国経済に跳ね返る経済・金融危機を招いては元も子もない。日本など量的緩和を進める先進国は細心の注意を払う必要がある。
 日銀が黒田東彦総裁の下で大規模な量的緩和を決めた今年4月以降、インド、オーストラリア、韓国、ベトナムなどが相次ぎ、利下げした。国内経済を浮揚させる狙いだが、円などに対する自国通貨の値上がりで、産業界の不満が募り、政治家が中央銀行に緩和圧力をかける傾向も強まっているようだ。
 例えば今月利下げに踏み切った韓国では、ウォンが対円で半年に約25%上昇し、中銀に「より積極的な役割を」と利下げを求める声が与党幹部などから上がっていた。今月末に金融政策委員会を控えたタイでは、中銀に対する緩和圧力が勢いづく。すでに利下げ済みの国でも、追加措置への期待が消えそうにない。
 新興国の通貨が値上がりしているのは、日米など主要国による大規模な量的緩和を受けて、あふれ出したマネーがより高い利回りを求め新興国に流入しているためだ。
 しかし、そうした国の影響力は限られ、金融緩和で対抗しようとしても資金の流れを単独で反転させるのは難しい。必要以上に緩和すれば国内でインフレを招いたり不動産市場を過熱させたりする危険がある。投機マネーは逃げ足が速く、新興国の通貨を一転、急落させることもある。
 日本を責めるのは筋違いだとの見方もあるだろう。「円安の副作用があったとしても日本がデフレから脱却すれば世界経済にもプラスだ」というのが政府・日銀の主張だ。歴史的にみて、まだ円安とは言えない、との指摘もあるし、大規模な量的緩和を先に始めたのは米英で、日本単独の仕業でないのも事実である。
 とはいえ、世界経済の安定した成長があってこそ日本の繁栄も持続するというものだ。その世界経済の安定に尽くすのは主要通貨を持つことに伴う責務である。手遅れにならないよう、米国はもちろん、日本もしっかり認識しておくべきだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130531k0000m070133000c.htmlより、
記者の目:守れ日本の農業=中井正裕(東京経済部)
毎日新聞 2013年05月31日 00時32分

 安倍晋三首相はアベノミクスの成長戦略として「農業・農村所得倍増目標」を打ち出した。農業所得を引き上げることは、農家の後継者不足や増え続ける耕作放棄地などの問題解決に有効なはずだ。また、日本の参加が決まった環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉では、国内農業を保護してきた関税引き下げも議論されるが、「聖域」がどこまで守られるかは不透明だ。日本の農業を守るためにはまず、思い切った農地利用改革を行うべきだと思う。意思と能力のある農業経営者が、まとまった農地を安定的に利用できる環境づくりこそ、日本の農業が攻めに転じる土壌となるはずだ。
 現在の農業は、所得倍増どころか、衰退に歯止めをかけることで精いっぱいなのが現実だ。農業生産額は過去20年間で4分の3に減り、農業所得の合計はその間に半分になった。耕作面積は過去50年間で4分の3の約460万ヘクタールまで減少し、その1割に近い約40万ヘクタールが耕作放棄地で、滋賀県の面積にほぼ匹敵する。農業従事者の平均年齢は66歳。基幹的農業従事者は現在178万人いるが、50歳未満は10%に過ぎない。農水省の試算では2030年には110万人に減り、うち50歳未満は13万人になるという。
 しかし、発想を転換してみよう。農業の担い手が減っても生産高を維持できれば、1人当たりの所得は増える。コメの販売農家の場合、平均作付面積は約1ヘクタールで、2ヘクタール未満なら赤字だ。稲作で最も効率的な規模は10〜15ヘクタールとされ、この規模で農業所得は500万〜700万円になる。30万人の農業者が1人当たり10ヘクタールを耕作すれば、コメや麦、大豆などを栽培する土地利用型農地約370万ヘクタールの8割を維持できるという試算もある。こうした農地利用の実現に向け、今後10年程度で農地の再配分を進めるべきだろう。ドイツやフランスも過去40年間で農業就業者は4分の1に減少したが、農地の継承が円滑に進み、1戸当たりの農地面積は約4倍になった。
 日本では、整然と見える田園風景でも農地の所有者、耕作者が、モザイク状に複雑に入り組んでいる。一つのまとまった農地なら効率的に耕作ができるが、何カ所にもバラバラに散らばっていては、手間ばかりが増える。農地の集約を進めるため、自治体や農業委員会、土地改良区、売買・貸借を仲介する農地保有合理化法人や農地利用集積円滑化団体などが、これまでにも対策を進めてきたが、農家が規模を拡大するほど農地が分散する傾向は変わっていない。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130531k0000m070133000c2.htmlより、
 集積が進まない理由は、兼業農家の増加、関係機関の資金不足や人員不足、農村地域の人間関係のしがらみ、所有者が分からない農地の存在など、さまざまだ。
 日本の農業の将来像を考える上で重要なのは、耕作地の6割、販売農家の7割を占める稲作だ。日本は1970年からのコメの生産調整(減反)で高い米価を維持する一方、機械化や農薬、化学肥料の普及による効率化でコメ農家の兼業化が進み、農家の規模拡大は進まなかった。農地集積が進まない象徴的な存在が稲作なのだ。富山県小矢部市の約90ヘクタールの水田でコメや麦を生産する宇川純矢さん(42)は「まとまった農地を利用できれば移動距離が少なく効率的」と農地集積の効果を語る。
 政府は今回、農地の売買・貸借を仲介する都道府県単位の「農地中間管理機構」を設置する方針を打ち出した。農地保有合理化の機能を強化し、耕作放棄地に限らず農地の「定期利用権」を機構に集め、農地利用権の準公有化を図る仕組みだ。機構が集めた利用権をまとまった形で農業経営者に再配分すれば、これまで以上に高いコスト削減効果が期待できそうだ。
 今春、皆川芳嗣(よしつぐ)農水事務次官が講演で「構造改革の大きな節目が来ている。ある程度の大きさ、効率性をもった農地の集約を相当なスピードで、異次元の政策で進めたい」と強い意気込みを語った。自治体、地域、農業委員会など関係機関と一体となって農地集積に取り組む体制を作り、今回こそハードルを乗り越えてほしい。すでに制度化されている耕作放棄地の利用権の強制設定手続きも積極的に活用すべきだ。
 集約を追求するあまり、定年退職後に実家の農家を継ぐ「定年帰農」や、新規就農者の受け入れがおろそかになってはいけないが、問われるのは結果を出すための実行力。急速な世代交代が進むいまこそ農地集約を進めるべきだ。

http://www.igcpeace.org/より、
2013年5月30日
いかなる学問を創り出し、広めるのか
中西 治 (19時34分)

私は子供の頃から歴史が好きであった。第二次大戦後、平和の思想、戦争反対の思想として共産主義に関心を持ち、大学でソヴェト研究を始めた。大学院で国際関係論を専攻し、とくに、ソヴェトと米国の関係を研究した。その後、大学で国際関係論を教え、大学院で国際社会論の研究指導をおこなった。

国際関係論は日本では第二次大戦後の新しい学問であった。それは一国の平和ではなく、世界の平和をめざした。それまでの国際政治学が国家間の関係を中心に論じたのに対して、国際関係論は国際関係を地理的関係、人種・民族関係、宗教的関係、経済関係、政治関係、文化関係、人間関係など多面的・総合的に研究した。それは新しい総合科学であった。地域研究において大きな成果を挙げた。

国際関係論が発展するとともに、研究が細分化され、緻密化されたが、大きな観点が失われ始めた。代わって登場したのが、ユニバーサル・ヒストリーのような「大きな歴史(ビッグ・ヒストリー)」である。それは137億年前のビッグバンによる宇宙の誕生から今日まで、さらに、地球の消滅、太陽の消滅、宇宙の消滅までを視野に入れた壮大な学問である。

私は1986年12月30日、満54歳の誕生日に国際地球宇宙平和研究所を設立した。地球の戦争が宇宙に拡大するのを阻止し、地球と宇宙の平和を確立することを目標とした。この研究所は2001年12月15日に特定非営利活動法人となり、2002年5月2日に特定非営利活動法人地球宇宙平和研究所として正式に発足した。2010年4月18日、この研究所の中にユニバーサル・ユニバーシティ・インターネットが設置され、これが2012年4月29日にユニバーサル・ユニバーシティーに改組され、同年6月10日に正式に開校した。

こうして地球一体化(グローバリゼーション)が急速に進み、宇宙一体化(コスモナイゼーション)が始まった21世紀にふさわしい新しい学問を創り出し、広めるための研究・教育組織ができた。特定非営利活動法人地球宇宙平和研究所の当面の課題は、研究と教育の質を高め、独創的な新しい業績を発表し、優れた人材を世に送り出すことである。

この間、私は2010年6月20日に脳梗塞を発症し、同年10月22日に妻を亡くした。2011年3月31日に妻に贈る書『ロシア革命・中国革命・9.11ーー宇宙地球史の中の20-21世紀ーー』を上梓した。これはユニバーサル・ヒストリーについての私の最初の書である。さらに2012年10月16日に株式会社中西節子記念会を設立し、2013年4月1日に同会内に宇宙大学と出版部を設けた。この会の目的は宇宙・地球・生命・人間の歴史を老若男女すべての人に普及し、人間が互いに助け合う組織を作ることである。

私は発病以来、名古屋と岐阜、中国の武漢と上海、九州、沖縄、四国などを旅した。私はこれらの土地とそこに住む人々に接し、自然の偉大さと人間の情を深く感じ、改めて、人間とは何か、新しく創り出さなければらない学問はいかなるものであるべきかを考えている。2013年6月9日から19日まで久しぶりにロシアのモスクワとサンクトペテルブルグを訪れ、ソヴェト体制崩壊後20年ほどの間にロシア社会がどのように変わったのかを見、同僚と語り合いたいと思っている。

私が創り出し、広めたいと考えている学問は「宇宙学」である。それは宇宙誕生以来の歴史を顧み、その将来を展望し、その中で人間がいかに生きるべきであるかを考える学問である。それは宇宙と地球の平和を維持することをめざす学問である。それは数学、物理学、天文学、地質学、生物学、遺伝学などの自然科学、哲学、歴史学、言語学、文学、芸術学などの人文科学、経済学、政治学、社会学などの社会科学などの総合科学である。それはいちじるしく発展した科学技術に対応する新しい高度な総合科学である。それは知恵と知識のギャップを埋めようとする学問である。

私の念頭につねにあるのは、私たちの研究所が設立100周年を迎える2101年12月15日に地球社会はどのようになっているのか、その中で私たちの研究所はどのような役割を果たしているのか、である。

http://www.nnn.co.jp/rondan/tisin/index.htmlより、
温故知新 -賀茂川耕助-
電力システム改革
日本海新聞 2013/5/30の紙面より

 去る4月、安倍内閣は「電力システム改革」を進める方針を閣議決定した。改革は3段階からなり、2015年までに地域を超えて電力のやりとりをする機関を設立し、第2段階で家庭や企業に対する電力の小売りの完全自由化を行い、3段階として電力会社が発電も送配電も行っているのを20年には分離し、併せて電気料金規制を撤廃して全面自由化するというものだ。

電力の自由化
 日本では沖縄を入れて10の電力会社が地域ごとで独占的に電力を供給している。そのため、11年の東日本大震災と福島原子力発電所の事故で原発が稼働停止した際に地域間で電力の融通ができないという問題が起きた。それを解決し、また世界の中でも高い日本の電気料金を下げて経済を回復させる、そのためには電力の自由化で市場原理を利用してより安く電力を供給するための「改革」らしい。

 日本の電力が他国と比べてどれくらい高いのか分からないが、平成の20余年間で経済も人口も横ばいの日本の電力使用量は30%も増加した。1人当たり電力使用量はアメリカよりは少ないがヨーロッパやアジアの人々と比べると格段に多い。電気料金をもっと安くすれば、さらにどれほどの電気を人々は使うようになるのだろう。

国民の危機意識薄れ
 昨年5月、日本のすべての原発が停止した。しかし財界は再稼働を進めないと日本経済が崩壊するといい、マスメディアは深刻な電力不足になると危機感をあおり、再び再稼働を容認するようになってしまった。しかし今でもメルトダウンした福島の原子炉は収束もせず、ただ水をかけることしかできない状況にあり、東電自身も1時間当たり1千万ベクレルという単位のセシウムが大気中に出ていると言っている。それにもかかわらず国民の危機意識は薄れ、一切も責任を取らない政府は、福島の事故を忘れさせようとしているかのごとく電力システムを改革するという。

 産業界では多くの企業がさまざまな節電対策を取っており、太陽光発電などの発電設備を持つ企業もある。発電所を持つJR東日本は事故のあと余剰電力を東京電力に供給していたと聞く。原発がなければ電力不足というのは真実ではないし、真夏の数時間のピークのために原発が必要だというのなら、それは操業時間の調整や家庭ではテレビを見ないといった対策で乗り越えなければいけないことなのだ。

 日本では近年、金融システム改革や財政構造改革など多くの改革がなされた。それらの受益者は国民ではなく、大企業、大銀行、富裕層といった一部の人々であった。政府の命令で原発を推進し、いま政府の命令で原発を停止させられた電力会社は、原発停止によって資産である原発の設備や核燃料はすべて損失となる。電力システム改革によって市場が自由化されれば、資本の豊富な大企業が電力産業に参入し、電力業界の勢力図は大きく変わるだろう。環太平洋連携協定(TPP)によって外資の参入は間違いない。電力料金は一時的には下がるかもしれないが、欧米を前例にとれば規制緩和のあとは再び値上がりする。それが電力システム改革だと思っておいたほうがいい。
(評論家)