記者の目:BSE全頭検査 小島正美氏

http://mainichi.jp/opinion/news/20130503k0000m070114000c.htmlより、
記者の目:BSE全頭検査=小島正美(生活報道部)
毎日新聞 2013年05月03日 00時14分

 BSE(牛海綿状脳症)検査の対象となる国産牛について、内閣府食品安全委員会の専門調査会が現行の月齢「30カ月超」から「48カ月超」に緩和しても、「人への健康影響は無視できる」とする答申案を4月3日、了承した。これを受け厚生労働省は全頭検査を7月以降、全国一斉に廃止し検査は48カ月超の牛に限るよう都道府県と政令市に要請した。こうした中、自主的に全頭検査をする北海道の諮問機関は24日、「全頭検査の必要性は認められない」と廃止の判断を下したが「全国の自治体が一斉にやめる」との条件を付けた。どの自治体も他自治体の動向をうかがっている状況だが、横並び意識ではなく、無駄なことに貴重な税金を費やすことが本当によいかを真剣に自問すべきだ。
 全頭検査を実施しているのは世界の中で日本だけだ。なぜ、日本だけが続けるのか。それは国が検査の中身と限界を正しく説明してこなかったからだ。いまこそ国は「現状の検査法では全頭を検査しても、感染牛の全てを発見することはできない」と言うべきだ。そう説明すれば、検査はそもそも安全性を確保する手段ではないと分かり、「全頭検査なら大丈夫」と思い込んでいる国民の誤解は一気に氷解する。

 ◇100%ではない感染牛の発見
 日本でBSEが初めて発生したのは01年9月10日。私はこの問題の当初から取材しているが、当時、厚労省は「検査対象は30カ月以上」と答えていた。既にBSEが大発生していた西欧諸国の大半が30カ月以上を検査対象にしていたからだ。
 ところが、牛肉への不信感はなかなか消えず、結局、翌10月から、政治主導で全頭検査が決まった。
 全頭検査という言葉は、確かに安心感を生み出す効果があった。「全てを検査すれば、感染牛を全て見つけることができ、感染牛が出荷されることはない」というメッセージを発信したからだ。
 しかし、この時からボタンの掛け違いが始まった。西欧諸国はそもそも全頭を検査しても、感染牛が全て発見されるわけではないことを消費者に根気よく説明し、全頭検査を実施しなかった。それなのに、日本はそういう説明を一切しなかった。
 なぜ全頭を検査しても、全ての感染牛を発見できないのか。現在の検査法は解体時に牛の脳みそ(延髄)を取って、そこに病原体のプリオンがいるかどうかを調べているからだ。大抵、プリオンは牛が幼いときに餌から体内に侵入する。そのプリオンが腸、脊髄(せきずい)、目などに存在しているときは、まだ脳には蓄積されていないため、「感染なし」と判定されることが起こる。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130503k0000m070114000c2.htmlより、
 つまり、スーパーで販売されている牛肉パックに「検査合格済み」というシールが貼られていても、それは感染牛ではなかったという証明にはならないのだ。
 BSEの管理基準などを決める国際獣疫事務局(OIE)に長く勤務した小澤義博・名誉顧問は「全頭検査をしても、感染牛の一部は検査をすり抜けて出荷され、流通していたと考えられる」と話す。
 もちろん、全頭を検査すれば、脳にプリオンが蓄積している可能性のある高齢牛を中心にプリオンが検出されるケースはあり、検査が全く無意味なわけではない。しかし、若い牛の検査は無駄だ。
 こうした事情から、西欧諸国は安全性を確保する方法として、検査よりもプリオンのいる危険部位の除去と飼料規制を最優先した。日本も検査と同時に西欧と同様の規制を始めているので、その点で西欧との差はないが、説明の仕方が正反対だった。

 ◇「不要」な継続は費用、人材の無駄
 01年から10年以上たち検査の意義が高まったかといえば全く逆だ。牛に各種濃度のプリオンを食べさせる世界中の感染実験などで、いつ、どの部位からプリオンが検出されるかがよく分かってきた。その結果、少なくとも48カ月以下では脳など中枢神経組織でプリオンを検出できないことが分かった。こうした科学的データの積み重ねから「全頭検査不要」が導かれたのだ。
 全頭検査には国と自治体合わせ年間約5億〜10億円の費用が使われる。食肉処理場の獣医師をいつまでも単純な検査作業に従事させるのは人材の適正な活用とはいえない。
 ある自治体が他の自治体を対象に実施した極秘アンケートでは、どの自治体もやめる意向を持つが、消費者にどう説明すべきか迷いもあるようだ。検査はそもそも安全性を確保するうえで必須の方法ではなかったことを説明すれば、理解は得られるはずだ。

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