暗黒物質? “未知との遭遇”は続く

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年 5月 5 日(日)付
暗黒物質―宇宙は謎に満ちている

 天動説から地動説へ、コペルニクスは中世の常識を覆した。それと並ぶ宇宙観の転換に、私たちは立ちあっているようだ。
 宇宙に存在が予想されてきた正体不明の「暗黒物質」(ダークマター)の跡らしきものがこのごろ、見つかった。
 私たちの地球や太陽系は「天の川銀河」に属している。観測でこの銀河は高速で回転しているとわかった。太陽系などが遠心力で飛び出さないのは、銀河全体の質量にもとづく重力で引きとめられているからだ。
 困った。
 輝く星々の重さを足しあわせても、光らない惑星やブラックホールまでかき集めても、合計が軽すぎるのだ。
 宇宙には、私たちの銀河のような渦巻き型やそうでない銀河も無数にある。それらを観測しても事情は同じだった。
 遠心力とつりあう重力を説明するには、重さのある未知の物質が宇宙に広く満ちていることにすると都合がいい。こうして仮置きされたのが暗黒物質だ。
 今回、国際宇宙ステーションで調べたところ、高速の「陽電子」が宇宙のあらゆる方向からまんべんなく、たくさん飛んできていた。
 空間にまれに存在する陽電子は電子とぶつかると一緒に消えてしまう。だが、暗黒物質同士の衝突で次々に陽電子ができていれば、宇宙には高速の陽電子が飛び交っているはず。そんな予想ときれいに合った。
 宇宙にはさらに、正体不明の暗黒(ダーク)エネルギーがあることも確実とみられている。宇宙は加速しながら膨張しており、その原因が必要だからだ。
 アインシュタインの相対性理論によって、物質とエネルギーは互いの量を換算して足し算できるものとされる。
 最新の観測では、宇宙のなかで、原子や分子といった既知の物質は、全体のわずか4%を占めるにすぎない。23%が暗黒物質で、残り73%は暗黒エネルギーと見積もられている。
 私たちが今まで見たつもりになっていた宇宙は、4%の宇宙でしかなかったらしいのだ。
 「大切なものは目に見えないんだよ」という、サンテグジュペリ「星の王子さま」の有名な言葉を思い出す。
 暗黒物質や暗黒エネルギーはどこにあるのか。それが見つかっても、私たちの生活にたちまちの影響はないかもしれない。けれど、人類の思想に大きな影響を与えずにはいないだろう。
 謎に満ち、私たちは何ほども知らない。最先端の科学が突きつける宇宙の真実である。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013040502000137.htmlより、
東京新聞【社説】暗黒物質? “未知との遭遇”は続く
2013年4月5日

 見えないものを見つけたかもしれない、と国際研究チームが発表した。その名は暗黒物質、ダークマター。宇宙のなぞを解きつつ、私たちはなぜここにいるのか、という深遠な問いの答えに近づく。
 宇宙は奥深い。
 二十世紀に入る少し前、宇宙物理という分野が構想され、やがて量子論とアインシュタインの相対性理論を使って、宇宙は爆発的に誕生したというビッグバン理論が生まれた。
 しかし、そのビッグバンよりもほんの少し前に宇宙は大膨張(インフレーション)を起こしていてその源とは実は「無」ではなかったかと今の学者たちは考えている。
 そういう探求の過程で、見えないけれども、もしなければ物理法則が成り立たなくなってしまうとして、考え出されたのが暗黒物質である。
 八十年ほど前、スイスの天文学者フリッツ・ツビッキーが、ある銀河団の重さを推計した。銀河同士の引力をもとに測った力学的質量は、明るい星ほどエネルギーが大きく重いという理論から得た光度質量よりはるかに大きかった。
 そこで、その穴埋めとして、銀河団には見えざる質量が隠れていると提唱したのだった。のちに米国の学者が銀河の回転運動から裏付けた。
 なかなか見つからないが、なければ理論上困るというのは、最近ではヒッグス粒子があった。質量を与える十七番目の素粒子。
 巨大施設を使った実験が、理論を裏付けてゆくのである。宇宙ステーションを使って観測する暗黒物質の場合も似ている。
 二十世紀前半から半ばまでを理論の時代とすると、その後から今までは高エネルギーと電算機を駆使した実験の時代といえる。現代物理は飛躍的に進歩した。
 ではそれが何の役に立つのか。
 物理学で、よく引き合いに出されるのは電子の発見である。十九世紀末、英国J・J・トムソンの発見がテレビや電算機になるとだれが想像したであろう。
 だが、おそらくもっと大切なことは、宇宙はどうやって生まれたのか、そして、私はなぜここにいるのだろう、という根源的な問いの答えに少しでも近づくことに違いない。
 それはただの好奇心といってもいいし、人類永遠の課題といってもいい。ダークマターの痕跡らしきものが見つかって、そこから再び、私たち人類は次なる宿題へと向かうほかはないのである。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130404/k10013678571000.htmlより、
解説・宇宙の謎解く暗黒物質に迫る
4月4日 19時43分

宇宙の成分の4分の1を占めると言われながら、直接観測することができなかった謎の物質「暗黒物質」について、国際的な研究グループが、暗黒物質の痕跡を捉えた可能性があると発表しました。今回、痕跡が捉えられた可能性のある暗黒物質は、宇宙のあらゆる場所に存在すると考えられていますが、直接見ることも感じることもできない未知の物質です。
暗黒物質は、私たちが生活している場所にも飛び回っていると考えられますが、光を出さず、私たちの体でも部屋の壁でも何でもすり抜けてしまいます。
この存在は、今からおよそ80年前、スイスの科学者、フリッツ・ツビッキーが考え出しました。
ツビッキーは、たくさんの銀河が集まった銀河団を観測していました。
すると、銀河団の中を動いている一つ一つの銀河が、見えない物質による強力な重力によって引っ張られ、飛んでいくことなく、銀河団としてまとまっていることを見つけたのです。
この見えない物質が、「暗黒物質」と名づけられました。
詳しい研究の結果、暗黒物質は、私たちの目に見える通常の物質のおよそ5倍あり、宇宙全体のおよそ4分の1を占めることも分かってきました。
暗黒物質は、星や銀河、さらに銀河の集まった銀河団など、宇宙の大規模な構造がどのようにしてできたかを解く鍵と考えられているため、世界中の研究者がさまざまなアイデアで見つけ出す実験を行っています。
その1つが、今回発表を行った研究グループの実験です。
暗黒物質は直接見ることができないため、研究グループでは、暗黒物質どうしがぶつかったときにできると考えられている「陽電子」という粒子を観測しています。
観測装置を、国際宇宙ステーションに取り付けて観測を行った結果、考えられていたよりも多くの陽電子を観測することができたということで、これが暗黒物質どうしがぶつかったときにできたものではないかと考えているのです。
今回の研究に参加している日本人研究者で、台湾中央大学の灰野禎一助教は、「ふだん存在しない陽電子という粒子が予想よりも多く飛んできたわけで、われわれは暗黒物質によって出来た可能性が高いと考えている。今回の成果はスタート地点にすぎず、今後は陽電子がどのように飛んでくるのか突き詰めていかなければならない」と話しています。
一方で灰野助教は、この実験だけで暗黒物質が存在すると言い切るのは将来的にも難しいとしたうえで、「日本でも、われわれと違った手法でダークマターを見つけようとしている実験がたくさんある。そうした別の手法を組み合わせることによって、最終的に確定的なことが言えるのではないか」と話しています。
日本でも、暗黒物質を観測しようという実験が進められています。
東京大学などで作る研究チームでは、岐阜県飛騨市にある神岡鉱山の跡地に巨大な実験装置、「XMASS」を造り、暗黒物質を見つけようとしています。
XMASSは、マイナス100度に冷やした液体のキセノンという物質をタンクに入れ、微弱な光を検出できる装置です。
暗黒物質はきわめてまれですが、キセノンなど通常の物質とぶつかり、ごく弱い光を出すと考えられています。
研究グループではこの弱い光を検出することで、暗黒物質の存在を確かめようとしています。
東京大学宇宙線研究所の鈴木洋一郎教授は、「いろいろな方法を使って暗黒物質を突き止めていくことが非常に大事だ。そういったデータが寄り集まって、だんだん正体が分かると思う。最終的には私たちが最初に暗黒物質を見つけたい。研究は一番乗りを目指してやるものだと思うので、若い研究者と頑張っている」と話しています。

日本開発の装置も観測開始へ
暗黒物質の解明を巡っては、日本が開発した装置も、来年度から国際宇宙ステーションで観測を始める予定です。
これは、JAXA=宇宙航空研究開発機構や早稲田大学、神奈川大学などのチームが開発を進めている「CALET」と呼ばれる装置です。
電子や陽電子などを観測でき、「暗黒物質の痕跡をとらえた可能性がある」と発表されたAMSという装置に比べ、10倍以上のエネルギーを持つ電子や陽電子を検出できるということです。
この観測装置は、来年度、日本の宇宙輸送船「こうのとり5号機」で国際宇宙ステーションに運ぶ計画で、日本の実験棟「きぼう」の船外の部分に設置されるということです。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130404/k10013664241000.htmlより、
「暗黒物質」の痕跡を発見か
4月4日 6時44分

宇宙の成分の4分の1を占めると言われながら直接、観測することができなかった謎の物質「暗黒物質」について、国際的な研究グループは3日、「暗黒物質」の痕跡を捉えた可能性があると発表し、今後「暗黒物質」の正体に迫る大きな手がかりになるのではないかと期待されています。
これは、アメリカやドイツなどの科学者で作る国際的な研究グループが3日、スイスのジュネーブ郊外にあるCERN=ヨーロッパ合同原子核研究機関で発表したものです。
宇宙空間では「暗黒物質」と呼ばれる物質が宇宙全体の成分のおよそ4分の1を占めると言われてきましたが、「暗黒物質」は光や電磁波を出さないため、直接、観測することができず“謎の物質”とされてきました。
研究グループでは、この「暗黒物質」について、高度400キロを飛行する国際宇宙ステーションに設置された「AMS」と呼ばれる特殊な観測装置でおととし3月から観測を続けてきました。
その結果、これまでに「陽電子」と呼ばれる粒子をおよそ40万個捉えたということで、そのエネルギーの高さなどから「暗黒物質」どうしが衝突して生み出された粒子である可能性があるとしています。
研究グループでは、観測された陽電子がほかの天体から飛んできた可能性も排除できないとしていますが、今後、数か月かけて観測を続ければ、結論を出すことができるとしています。
「暗黒物質」を巡っては、宇宙の大きな謎として世界中の科学者が観測や研究を続けており、今回の研究成果が今後「暗黒物質」の正体に迫るための大きな手がかりになるのではないかと期待されています。

AMSとは
今回「暗黒物質」の痕跡とみられる粒子を観測したのは「AMS」と呼ばれる観測装置で、高度400キロを飛行する国際宇宙ステーションに設置されています。
「AMS」は宇宙に「暗黒物質」が存在することを証明しようと、アメリカやヨーロッパ、それに中国など世界16か国の研究機関が共同で開発しました。
この装置は、宇宙を飛び交っている目に見えない粒子を高い精度で観測でき、「暗黒物質」が衝突したときに発生する一定のエネルギーを持った「陽電子」と呼ばれる粒子を捉えられるのが特徴です。
「陽電子」は物質を構成する重要な粒子の一つ「電子」とまったく逆の性質を持っていることから「反物質」とも呼ばれています。
研究チームは、おととし3月に観測を始めてから、この「陽電子」を40万個観測したということで、そのエネルギーの高さなどから「暗黒物質」どうしが衝突して生み出されたものである可能性があるとしています。
今回の観測は、「暗黒物質」そのものを観測したわけではなく、他の粒子が衝突するなどして発生した「陽電子」である可能性も排除できないということですが、研究チームではさらに観測を続けて近く結論を出したいとしています。

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