発信箱:英国「最大」の戦い 小倉孝保氏
http://mainichi.jp/opinion/news/20130508k0000m070110000c.htmlより、
発信箱:英国「最大」の戦い=小倉孝保(欧州総局)
毎日新聞 2013年05月08日 01時03分
17世紀以降の英国の戦闘(戦争)で、最も大きな影響を及ぼしたのはどの戦いか。英陸軍博物館が先日、ネット・アンケートとシンポジウムで答えを探った。
アンケートではフランスのナポレオン軍に勝った「ワーテルローの戦い」(1815年、ベルギー)が1位、シーク教徒との「アリワルの戦い」(1846年、インド)が2位、ナチス・ドイツとの「ノルマンディーの戦い」(1944年、フランス)が3位。第二次大戦中にビルマ(現ミャンマー)・インドで旧日本軍を破った「インパール・コヒマの戦い」(44年)は、5位だった。
その後のシンポジウムで、上位5戦闘について参加者が決選の投票をした結果、インパール・コヒマが1位で以下、ノルマンディー、ワーテルローと続いた。同博物館学芸員のトーマスさん(40)によると、インパール・コヒマに従軍した連合軍兵士の過半がインド人。「勝利でインド人が自信をつけ、その後の独立につながりました。英国の帝国主義を終わらせた戦いでした」と説明する。
英国の近現代史は戦いの歴史である。第二次大戦後だけに限っても、英国軍が戦闘で人を殺さなかった年は1968年だけ。現在もアフガニスタン、マリに兵士を送っている。その英国の人々が、最も影響の大きかった戦いをインパール・コヒマとしていることは、日本人には予想外だろう。
この戦闘では双方が多大な戦死者、餓死者を出した。歴史をやや上から見渡せば、こうした犠牲の一つ一つがインド独立や帝国主義終幕につながっている。英国民が旧日本軍との戦いを、こんなふうに考えていると知ることは、将来の両国関係にとっても大切だと思う。