原発輸出 「重大事故や核拡散のリスク高める」

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013051102000144.htmlより、
東京新聞【社説】原発政策 国内外で使い分けるな
2013年5月11日

 安倍晋三首相がトルコに原発を売り込んだ。福島第一原発事故の詳細な検証が終わっていないのに「原子力安全への貢献は日本の責務」と言い切った。原発政策の国内外での使い分けは慎むべきだ。
 首相はサウジアラビアやトルコなど中東諸国を歴訪した。サウジでは原発技術を平和利用に限る原子力協定締結の検討で合意し、アラブ首長国連邦とは協定に署名した。トルコでは三菱重工業と仏アレバとの企業連合による原発建設に優先交渉権が与えられ、受注が固まった。
 原発四基、合計出力四百五十万キロワット。二〇二三年に1号機の運転開始を目指す総事業費約二兆円の巨大プロジェクトだ。安倍政権は大胆な金融政策や民間投資を促す成長戦略など、「三本の矢」を掲げた。成長戦略は海外需要の取り込みにも重きを置いている。
 原発も含むインフラ輸出を柱に据えているが、首相が語る原発輸出政策は国の内と外とを使い分けていると受けとめざるを得ない。
 首相は同じ地震国のトルコで「日本の最高水準の技術、過酷な事故を経験した中での安全性に期待を寄せられた」と語ったが、原発機器損傷や水素爆発の原因が地震か津波なのかは不明のままだ。
 福島の事故原因の本格調査は東日本大震災から二年以上もたった今月に始まったばかり。それどころか、貯水池から大量の放射能汚染水が漏れ出し、今なお巨大な原発システムを制御できないぶざまな姿をさらけ出している。
 首相の歴訪には三菱重工業や、輸出を資金面で後押しする国際協力銀行のトップも同行した。じり貧にある原発の国内新増設を、輸出で肩代わりしようとする経済優先の姿勢を映し出している。
 「代替エネルギーを確実にし、原発依存度を減らしていく」。首相は国民の原発批判に押されてか、昨年の自民党総裁選ではこう語ったが、今や口にしなくなり、「事故の教訓を世界と共有する」などと目を海外に向け始めた。
 脱原発路線を走るドイツや日本が原子力と距離を置けば生産能力の維持が困難になる。代わって続々と新規建設を進める中国やロシアなどに技術的主導権を奪われ、核不拡散に影響を及ぼしかねないという米国の安全保障政策への配慮かもしれない。
 福島では十六万もの人たちが故郷を追われた。原発は人間の生存さえ脅かす危険な装置でもある。原発政策を使い分けして自国の繁栄を追い求めるときではない。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年 5月 9 日(木)付
原発の輸出―まず核不拡散を考えよ

 安倍首相がトルコとアラブ首長国連邦を訪れ、原発の輸出に道を開く協定が署名された。サウジアラビアとも将来の協定を含めた話しあいを始める。
 中東ではいま、原発の計画があいついでいる。その受注争いに遅れまじと、トップセールスに首相が乗りだした。
 だが、原子力技術には、経済政策とは切り離して考えるべき重い問題がある。
 広がる原子力の利用と世界の安全を、どう両立させるか。核の拡散防止は21世紀の難問である。商機に走る政府に、そのことへの深慮が見えない。
 国際原子力機関によると、これから南アジアや中南米などもふくめ、とくに新興地域で原発の需要が急速に高まる。
 40年後の世界では、原発による発電量が、いまの3・5倍を超すという予想もある。
 逆にいえば、それだけ核が広くあちこちに散らばり、危険と背中あわせの世界になる。中東はまさにその最前線だろう。
 産油国といえども国内で使う電力が増え、輸出にまわせる分が減っている。
 やがては来る石油の枯渇も見すえ、再生可能エネルギーについても意識が高まっている。
 そこで、日本のお家芸ともいえる省エネや都市環境技術などで力を貸すのはいいことだ。
 だが原発は別ものだ。
 原子力は発電用に始めたものでも、いつでも核兵器づくりに転用することができ、拡散の危険は渡す国と受けとる国だけの問題にとどまらない。
 だから、どんな政治体制の国でも、情報をきちんと公開し、核物質の管理も厳しく監視できるようにせねばならない。
 それは絶対君主制を敷くサウジなども例外ではありえない。
 ましてや、アラブ諸国の多くにはイスラム過激派がいる。民衆革命を引きがねにした改革のさなかでもある。
 災害だけでなく、政変の波が押しよせても、核物質や技術が流出しないよう、しっかり防護策をとらねばならない。
 確かに、フランスや韓国などはサウジと原子力協定を結び、PRを始めている。だが米国は核物質を管理するしばりの強い協定を編み出したいと考え、慎重にかまえている。
 唯一の被爆国であり、そしていまも福島の原発事故と取り組む日本には、核の不拡散体制の強化についても時間をかけて貢献の道をさぐる責務がある。
 それは、地球の安全にかかわる深刻な課題であり、成長戦略の利害のなかで論じる問題ではない。

http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201305068475.htmlより、
愛媛新聞 社説 2013年05月06日(月)
トルコに原発輸出へ 福島の教訓を忘れてはならぬ

  安倍晋三首相がトルコのエルドアン首相と会談し、両国が原子力協定を締結することで合意した。日本の原発輸出を可能とする協定だ。
 東京電力福島第1原発事故の原因究明も総括も待たず、さらに教訓さえ無視した拙速な方針と言わざるを得ない。国のエネルギー政策がなお確立しないまま、原発輸出に踏み切る判断は受け入れがたい。強く見直しを求めたい。
 トルコは多数の活断層の上に立地する世界有数の地震国だ。請われたとはいえ、同じ地震国として事故の辛酸をなめた「経験」までを、なぜ輸出しようとするのか。過酷事故ともなれば、さらに多大な責任を抱えることになる。
 安倍首相は原発輸出を経済成長戦略の一環として位置づけるという。しかし経済成長のため、人の命をこれ以上軽んじることは許されない。
 福島の事故後、トルコとの原子力協定は、官民の連携事業としては初だ。これを足がかりに他の国とも次々に協定を結ぶ可能性もある。現にベトナムやフィンランドなど各国で、原子炉の受注や交渉が次々に行われている。
 今後も輸出の連鎖が続くようなら、さらに多くの命を危険にさらすことになる。国際社会の未来にさえかかわってこよう。日本はその前に、責任を持って対応しなけばならないことがあるはずだ。
 まずは事故の原因や現在の状況を、世界に公開しなければならない。事故後の甘い対応や情報隠しなど、迷走した対応もだ。事故は、技術の敗北である。その技術の売り込みは、先進国として自覚のなさの裏返しといえる。
 加えて日本の経済協力は不信感も根強い。現地の実態に合わない政府開発援助(ODA)に対し、森林伐採などで生活を奪われた先住民が来日し抗議するなど、経済侵略とさえ呼ばれた経緯もある。
 経済協力は一義的に、信頼関係が最重要だ。それを、過去の経験から政府は学んだはずではなかったのか。
 案の定、地元トルコの反原発団体からは「暮らしが放射能への不安で破壊されることは認められない」との声が上がっている。現地の声を無視した揚げ句、信頼を失う愚を繰り返してはならない。
 先進国をはじめ世界各国では今後、自然への負荷の少ない電源を模索する動きが進むはずだ。日本も、再生可能エネルギーの分野で世界をリードできる可能性がある。
 ならば技術の限界を露呈した原発でなく、新たな技術を生かした国際協力こそを探りたい。それが、帰郷さえかなわない福島の人々や国民への償いにもなるはずだ。
 事故の教訓は日本だけでなく、世界で共有しなければならない。その上で、信頼される国になりたい、と願う。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130506/plc13050603080003-n1.htmより、
産経新聞【主張】首相外遊と原発 信頼に応え世界で受注を
2013.5.6 03:08 (1/2ページ)

 安倍晋三首相の中東歴訪は、高い成長が見込まれる新興市場を官民一体で開拓する大きな足がかりを築いた。とくに原発輸出では具体的な成果を挙げた。
 サウジアラビアでは、原発輸出の前提となる原子力協定の将来の締結で合意、アラブ首長国連邦(UAE)とは協定に署名した。
 トルコでは、協定締結に加え、三菱重工業・仏アレバ連合への原発建設の排他的交渉権が与えられ、事実上の受注が決まった。
 日本は、同じ地震国のトルコはじめ各国で技術が評価されていることを自覚し、福島第1原発事故の経験を生かして、海外での信頼に応える必要がある。そのためにも国内の原発再稼働を躊躇(ちゅうちょ)してはならない。
 安倍首相はトルコでの記者会見で、「過酷な教訓を世界と共有し、原子力安全の向上に貢献していくことは日本の責務だ」と述べ、今後も原発の輸出を積極的に進めていく考えを示した。
 現在、世界で約430基の原発は2030年までに最大800基に増える。新興国の電力需要増で新設計画が相次ぐからだ。
 サウジ、UAEは世界でも有数の産油国だが、資源温存のため原発の導入を急いでいる。原発を極度に危険視し、火力に頼って大量の化石燃料を輸入し続ける現在の日本の姿は異常というべきだ。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130506/plc13050603080003-n2.htmより、
2013.5.6 03:08 (2/2ページ)
 原発輸出は、国内での新設が難しくなっている中、技術、人材を維持する上でも重要だ。
 政府が6月に策定する成長戦略では、海外市場の成長を日本に取り込むことを目指している。原発などインフラビジネスは日本の産業界の強みを発揮できる。首相がトップセールスを行った今回の中東歴訪をモデルに、官民一体で受注拡大に当たってほしい。
 安倍首相はサウジとUAEで、外交・防衛当局の安保対話を始めることで合意した。シーレーン(海上交通路)防衛などについて連携を深める狙いがある。
 従来の中東外交は、資源の安定調達が中心だったが、今回はビジネス、安全保障、人的交流など幅広い分野の協力が確認された。
 中東地域は、シリア内戦など不安要因を多数抱えている。日本にとって選択肢は限られるが、死活的な利益に関わる地域であることを認識し、難民支援など可能な限りの貢献を進めるべきだ。

http://www.chugoku-np.co.jp/Syasetu/Sh201305060072.htmlより、
中国新聞 社説 ’13/5/6
トルコへ原発輸出 経済優先には懸念残る

 日本がトルコへ原発を輸出することが固まった。福島第1原発事故後は停滞していた原発の輸出が、安倍晋三首相の下で活発化する気配である。
 総事業費2兆2千億円の巨大プロジェクトという。原発関連の設備や技術の輸出が広がれば、日本経済の活性化につながるという見方は強い。
 ただ安心・安全面での懸念はいまだ拭えない。福島の事故原因は全容が解明されたとはいえず、しかも大量の汚染水対策が難航するなど事故の収束にも程遠い状況だ。こうした局面で原発輸出に向けた政府の前のめり姿勢自体が理解しがたい。
 計画では、黒海沿岸に原発4基を新設するという。トルコ入りした安倍首相が3日、エルドアン首相と会談し、日本が優先的な交渉権を得ることなどで合意した。
 トルコは日本と同じ地震国である。だからこそ福島の教訓を生かすという日本企業に期待したとトルコ側は説明する。経済成長を急ぐため、電力の安定供給を図る必要に迫られた背景もあるようだ。
 確かに世界では2030年までに最大370基の原発の新増設が見込まれている。1基当たり数千億円のビジネスだ。
 海外に活路を見いだす国内メーカーを安倍政権が後押しすることが、国際的な競争力強化につながる面はあろう。原発の輸出促進は、政府が6月にまとめる成長戦略でも柱の一つとなる見通しである。
 7月の参院選を前に、トルコへの輸出を「成果」としてアピールしたいのかもしれない。
 とはいえ原発をめぐる日本政府の姿勢は、国内外で整合性がとれているとは言い難い。
 今回、安倍首相は「安全な高い水準の原子力技術を提供したい」と強調した。民主党政権時代の「原発ゼロ」政策を外向けには修正した格好だ。
 一方で国内向けには、長期的な原発政策をあいまいにしたままである。原発の新たな規制基準案にしてもこの4月に固まったばかりで、今後の再稼働や新増設について具体的な方針を示してはいない。
 そうした国内状況なのに、海外では安全だとアピールし積極的に輸出する。それで果たしてトルコだけでなく、万一の際に影響を受ける近隣国の国民が納得するだろうか。
 あるいは輸出拡大をてこに、いずれ政府は国内でも原発推進へと方向転換を明確にするのではないか。そうした疑念も抱かざるを得ない。
 忘れてならないのは、福島の事故原因はまだ解明途上ということである。
 政府や国会など四つの事故調査委員会は昨年7月までにそれぞれ報告書をまとめている。ところが津波以前の揺れで原発の重要機器がどこまで損傷したのかや、メルトダウン(炉心溶融)しなかった4号機の建屋を爆発させた水素の発生源については、見解が分かれている。
 こうした点を中心に今月1日、原子力規制委員会が事故原因をあらためて分析する検討会の初会合を開いたばかりだ。
 抜本的な安全対策の確立には真の原因究明が大前提であろう。輸出の前に政府がやるべきことは明らかだ。それこそが、国内外から求められる日本の責務にほかならない。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO54688030V00C13A5PE8000/より、
日経新聞 社説 新興国への原発輸出が問う日本の役割
2013/5/5付

 トルコを訪問した安倍晋三首相はエルドアン首相と会談し、トルコ政府が原子力発電所の建設・運営事業で日本に優先的な交渉権を与えることで合意した。
 両国は原発技術の利用を平和目的に限る「原子力協定」にも調印した。これにより、三菱重工業とフランスのアレバなどの企業連合の受注が事実上決まった。
 日本とフランスはともに原発の建設や利用で先行してきた。両国が組むことで、新興国により多くの経験を伝えることができる。最新技術を持ち寄り、安全な運転と核の拡散防止を実現してほしい。
 日本政府と企業が連携する原発輸出は、福島第1原子力発電所の事故後初めてとなる。日本は事故を忘れず、まず自らの安全対策を徹底的に見直すことが必要であるのは言うまでもない。
 しかし、海外では新興国を中心に原発導入が広がる現実がある。世界で420基を超える原発は、2030年に最大800基に増える見通しだ。受注をめぐる国際競争も激しさを増している。
 原発保有国が増えれば、重大事故や核拡散のリスクは高まる。より安全なプラントや、核技術や核燃料を軍事転用させない管理体制が一段と重要になる。
 原発商談の前面に立つ日本政府の役割はビジネスの後押しだけではない。導入国の平和利用を政府レベルで念を押し、核拡散を防ぐことを忘れてはならない。
 日仏の原発メーカーは最新鋭の技術で信頼を積み重ねてきた。原発を導入したい新興国にはこうした技術の信頼性や実績を重視する国がある。トルコもその一つだ。
 トルコは日本と同じように地震が多い。地震や津波対策で福島事故の経験をいかすことができるはずだ。三菱重工とアレバは今回、共同開発した最新の原子炉を使う。強度を高め、長時間の停電にも耐える安全性能が特徴だ。
 安倍首相はアラブ首長国連邦(UAE)とも原子力協定に調印し、サウジアラビアと交渉入りの検討で合意した。中東諸国が成長を続けるには原発だけでなく、鉄道や水道などのインフラ整備や産業育成、教育の充実なども急務だ。
 日本は中東に輸入原油の8割超を依存している。安倍首相はサウジで「中東と資源を超えた経済全般の関係を築き、共生と共栄を目指す」と演説した。その実現には相手国の求めに幅広く応える双方向の関係づくりが欠かせない。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年 5月 4 日(土)付
プルトニウム―在庫減へ国際連携を

 東京電力がフランスで保管していたプルトニウムを、ドイツが英国に持つ同量のプルトニウムと交換した。
 原発事故で行き場がなくなっていたプルトニウムをドイツに使ってもらうことで、国際的な減量に貢献する。
 さらなる圧縮も期待できる新しい試みである。こうした国際連携の活用に、政府が中心となって取り組むべきだ。
 世界には原発から生じた約260トンのプルトニウムが現存する。使用済み燃料を再処理した結果だ。うち約45トンを日本の電力会社が保有する。核爆弾数千発分に相当する。
 核不拡散上、利用目的のないプルトニウムはもたないことが国際社会での約束だ。
 再利用の手段だった高速増殖炉計画は破綻(はたん)し、普通の原子炉で使う道も原発事故で不透明になった。使うあてのないプルトニウムをどう処理するのか。各国の懸念に、日本は早急に答える必要がある。
 今回の交換は帳簿上の処理となり、東電の在庫総量は変わらない。だが、英国の燃料工場の閉鎖で困っていたドイツが、フランスでの東電所有分を燃料として利用でき、欧州全体でプルトニウムの削減につながる。輸送リスクも軽減できる。
 昨年夏には、英仏独の3者で同様の交換を実施してもいる。
 こうした取り組みを、日本自身のプルトニウム削減にも結びつけたい。
 例えば、今回の契約に関わった英国の原子力廃止措置機関(NDA)は11年末、他国のプルトニウムを引き取って英国で管理してもいいとする案を打ち出した。
 実際に所有権を移すとなれば課題はあるものの、日本のプルトニウムを少しでも早く減らすための有力な選択肢となる。
 ことは安全保障に深くかかわる。事業者任せでは限界もあろう。各国とも使用済み燃料の処理については、政府主導で解決策を模索している。日本も政府が前面に出るべきだ。関係者で情報を共有し、具体的な手法の検討を進めてもらいたい。
 欧米を中心にプルトニウムの管理・削減が強化される背景には、北朝鮮やイランが核保有の動きを活発化させ、周辺国を含めた核ドミノが起きることへの懸念がある。
 米韓の間で2年の延長が決まった原子力協定でも、「自国での再処理や濃縮」を求める韓国を米国が拒否した。
 日本に注がれる目も、厳しさを増していることを忘れてはならない。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130502k0000m070135000c.htmlより、
社説:首相の中東歴訪 平和と繁栄への貢献を
毎日新聞 2013年05月02日 02時30分

 安倍晋三首相が4月30日から始めたサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコの3カ国歴訪は、中東・北アフリカ地域の平和と安定に貢献する姿勢を示し、エネルギー問題を中心に協力関係をさらに強めるのが主な狙いだ。実りある歴訪を期待したい。
 中東では2年前からの「アラブの春」により、チュニジアやエジプト、リビアなどで独裁政権が崩壊、さらにシリア情勢やイラン核問題、中東和平も含めて、なお激動期にある。化学兵器使用が確認されれば米国がシリアに本格介入する可能性があるし、イスラエルはイランの核施設を攻撃する姿勢を変えていない。
 こうした時期に日本の首相が中東主要国を訪れるのは意義深い。安倍首相は6年前にもサウジを含む中東5カ国を歴訪しており、中東重視の姿勢は評価に値しよう。今回の訪問にも経済界の代表団が随行し、「安定と繁栄に向けた包括的パートナーシップ」の一環として、経済関係の拡大・深化もめざしている。
 最初の訪問国サウジで安倍首相はサルマン皇太子と会談し、両国の「安全保障対話」を始めることで合意した。中東から日本への安定的な石油供給を図るために一歩踏み出し、ホルムズ海峡の安全航行やソマリア沖での海賊・テロ対策における協力も約束したわけだ。UAEにも同様の安保対話を提案する方針だ。
 ただ、前回の訪問で安倍首相はサウジの国王、UAEの大統領(いずれも元首)と会談した。今回はこの2人の元首が主たる会談相手に予定されなかったことは少々気になる。
 一方、親日的なトルコはシリア反体制派の拠点でもあり、首脳会談ではシリア情勢が一つの焦点になりそうだ。折も折、東京都の猪瀬直樹知事は米紙に対し「イスラム諸国が共有するのはアラー(神)だけで、お互いにケンカしている」などと語り、五輪開催候補地を擁するトルコを暗に批判した。後に撤回のうえ謝罪したが、日本のイスラム理解の貧しさを露呈する発言だった。
 注意を要するのは、安倍政権が中東への原発輸出に積極的なことだ。安倍首相はトルコ、UAEと原子力協定を結ぶ方針で、サウジとも同協定締結を視野に入れた事務レベル協議の開始で一致した。原発輸出が決まれば、東京電力福島第1原発の事故後では初のケースになるという。
 だが、エネルギー協力の一環と言われても、日本には原発輸出に慎重な意見も多い。トルコは地震が多く、湾岸諸国は政情に不安があるという事情もあるが、何より3・11を経験した日本国民が積極的な原発輸出を望むかどうかだ。安倍政権は慎重に、民意に耳を傾けるべきだろう。

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