ハーグ条約加盟 「子どもの幸せ最優先で」

http://mainichi.jp/opinion/news/20130512ddm003010137000c.htmlより、
クローズアップ2013:ハーグ条約、期待と懸念 年度内にも加盟
毎日新聞 2013年05月12日 東京朝刊

 国際結婚が破綻した夫婦間の子の扱いを定めた「ハーグ条約」の加盟承認案と国内手続き法案がそれぞれ衆院を通過し、今国会で成立する見通しになった。早ければ年度内にも条約加盟が実現することになり、当事者の間には期待と懸念が交錯している。専門家からは、子の返還手続きにあたって人権に十分配慮するよう求める声が上がるなど課題も浮かぶ。【伊藤一郎、反橋希美】

 ◇連れ去られた子、返還請求可能に DVの元夫、面会求められたら…
 「自分のようなケースが起こらないよう一刻も早く条約に加盟してほしい」。熊本県の女性(42)は2006年、米国人の元夫(43)に当時11歳の長女と10歳の長男を連れ去られた。離婚の際に子供の共同養育を取り決めたが、元夫は「夏休みなので1カ月ほど2人を連れていく」と米国に渡ったきりだ。電話で理由を聞いても「お金がない」とあいまいな答えしか返ってこず、はぐらかされ続けた。ようやく渡米できた昨年8月、長男とは一度面会できたが、長女には会えないままだ。
 こうしたケースで、ハーグ条約は元の居住国に子を返還することを原則としている。「日本が条約に未加盟だと元夫は知っており、私が返還を求められないと分かって子供たちを連れて行った」。女性はそう憤る。返還手続きは条約加盟前の事案にさかのぼって適用されることはないが、それでも「同じ苦しみを味わう人を増やしたくない」と話す。
 一方、外国人の夫に無断で子を日本に連れ帰った女性が「誘拐の容疑者」として海外から指名手配されるケースは少なくない。だが、夫の家庭内暴力(DV)や児童虐待に耐えかねて逃げ帰った日本人女性もおり、「子の原則返還」を定めるハーグ条約への加盟を懸念する声もある。
 甲信越地方に住む40代女性は、米兵の男性と結婚して渡米したが、子供の前で罵声を浴びせられるなどの精神的暴力に耐えかね、04年に離婚した。平日は女性が、週末は元夫が子供と過ごすと取り決めたが、共同親権を持つ夫が病気の子供の手術に同意しないなど理不尽な行動を繰り返したため、6年前に当時7歳の子供を連れて帰国した。
 女性は「米国ではどんな親でも基本的に共同親権が認められる。子供を利用した嫌がらせのような行為に対抗するには、多額の裁判費用や知識が必要で、外国人女性には不利だ」と訴える。
 条約加盟前の事案であるため、子の返還を命じられる恐れはないものの、元夫が今後、条約に基づいて子との面会支援を日本の外務省に申し立てることは可能になる。女性は「ようやく精神的に落ち着いたのに、面会を求められたらどうしたらいいのか」と不安を募らせる。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130512ddm003010137000c2.htmlより、
 ◇子育て困難なら返還拒否 異例の独自規定に賛否 「加盟国で孤立も」「子の福祉重視を」
 ハーグ条約は、子の返還を拒否できるケースを「子の心身に害を及ぼす重大な危険がある場合」と定める。9日に衆院を通過した国内手続き法案は、DVの恐れがある場合や外国での子育てが困難な場合なども、日本の裁判所が返還を拒否できるとした。加盟国がこうした規定を明示するのは異例で、専門家の間にも賛否両論がある。
 中央大法科大学院の棚瀬孝雄教授(法社会学)は「加盟は大変好ましいが、日本が独自に『子を返還しない』運用をしたら、条約の趣旨が骨抜きになる恐れがある。加盟国の中で孤立し、国際的信用が失墜しかねない」と懸念する。
 米国などの加盟国は日本以上にDVの保護制度が整っているとして、棚瀬教授は「被害女性も不法に子を連れ帰るのではなく、まず現地の制度を利用した上で、離婚後に両方の親がどのように子の養育をしていくか取り決めてから別れるべきだ」と話す。
 一方、日本弁護士連合会「両性の平等に関する委員会」副委員長の長谷川京子弁護士(兵庫県弁護士会)は「返還されるのは生きた子であり、その福祉が害されてはならない。家裁は、条約が定める返還例外事由や国内手続き法の規定を踏まえ、元いた国に子を返すかどうか、慎重に判断すべきだ」と指摘する。
 その上で、条約加盟にあたっては(1)担当裁判官が児童虐待やDVも含め、子供の人権に関わる専門的な研修を受ける(2)児童虐待やDVを理由に子を連れ帰った親が裁判でそうした事実を証明できるよう、在外公館が支援態勢を整える−−ことの必要性を強調した。
 また、条約は返還手続きとは別に、加盟各国の「中央当局」(日本では外務省)に当事者間の友好的な解決を促すよう求めているが、日本では当事者間を仲介する「受け皿」の整備が進んでいない。
 このため日本仲裁人協会(東京都)は条約発効後に国際的な家事調停を実施できるよう、調停人の研修などを始める予定だ。同協会常務理事の小原望弁護士(大阪弁護士会)は「返還は必ずしも子の最善の利益にはならない。十分な面会が保障されるのであれば、返還まで求めない親もいるはず。連れ去られた外国人の親が利用しやすい調停機関は不可欠だ」と話している。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130321/plc13032103090003-n1.htmより、
産経新聞【主張】ハーグ条約 子の幸せ最優先で支援を
2013.3.21 03:09 (1/2ページ)

 国際結婚が破綻した夫婦間で子供の奪い合いが起きた際の解決法を定めた「ハーグ条約」加盟承認案と関連法案が国会に提出され、5月中にも承認、成立の見通しだ。
 政府は虐待する親の元に子供が戻される事態が起きないよう、法制度と日本人親子を支援する体制の整備に万全を期すべきだ。加盟慎重論が根強いことを忘れるべきではない。
 条約では、一方の親が子供(16歳未満)を無断で国外に連れ去った場合、加盟国が子供を捜し元の居住国に戻す義務を負う。どちらの親が養育するかなどは元の国で決める。
 日本で慎重論があったのは、外国人の夫の家庭内暴力(DV)から逃れ、子供とともに帰国した女性が少なくないからだ。
 条約は、子供が危害を受ける危険を返還拒否の理由として認めている。法案では、子供だけでなく、母親への暴力も理由に加えられたが、子供の気持ちを傷つけ、やはり危険との判断からだ。法案に盛られた拒否理由で十分に母子の安全が保たれるか、慎重に審議を尽くしてほしい。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130321/plc13032103090003-n2.htmより、
2013.3.21 03:09 (2/2ページ)
 日本に子供が連れてこられた場合、外務省がその所在を調査し、日本の裁判所が返還か拒否かを判断する。問題は外国でDVの被害に遭っていたとしても、その立証が難しいことだ。
 政府は在外公館を通じて、DV被害の相談に乗り、内容を記録するなどして、日本の裁判所に送ることにしている。元の居住地へ返還となった場合でも、親権などを争うケースについては、現地の弁護士や支援団体の紹介などの手助けも必要だろう。
 送り返された子供が再び虐待されることを防ぐため、可能な限りの手段を尽くして子供の幸せを最優先にした支援を求めたい。
 日本人の国際結婚は一時、年間4万件を超えた。離婚、別居などに伴う子供をめぐるトラブルも増え、国際ルールが必要との指摘もあった。条約には、89カ国が参加しているが、主要国(G8)で未加盟は日本だけで、安倍晋三首相が先の訪米で加盟を約束した。
 一方、条約に参加すれば、日本から他の加盟国に連れ去られた子供の返還手続きを取ることも可能になる。未加盟を理由とした子供を連れた日本への渡航制限も改善されることになり、プラスとしてとらえたい。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO52045050T20C13A2EA1000/より、
日経新聞 社説 ハーグ条約加盟へ備え急げ
2013/2/23付

 国際結婚が破綻したとき、子どもをめぐる争いをどう解決すればいいか。その原則を定めた「ハーグ条約」への加盟が、今国会で承認される見通しになった。年内にも加盟が実現する。
 条約には現在89カ国が加盟している。ここ数年、米国はじめ先進各国は日本に加盟を強く迫っており、安倍晋三首相訪米前の方針決定には、オバマ米大統領への土産という要素もある。しかし、いまや国際結婚は当たり前だ。外圧に関係なく、紛争は国際ルールで解決を図るのが当然だろう。
 ただ、紛争は千差万別だ。加盟後に向け、子の利益を優先しつつ多様なケースを適切に処理するための体制をつくる必要がある。
 親の片方が16歳未満の子を定住していた国から一方的に国外に連れ去った場合には、定住国に子を戻したうえで紛争を解決する。これがハーグ条約の趣旨だ。理不尽な子の連れ去りを防ぐには、この原則を守るのが前提である。
 しかし、子の連れ去りにはいろいろな理由がある。日本が加盟に消極的だったのは、子を連れて帰国した女性に夫の暴力を訴える例が少なくなかったからだ。また、相手国に戻って親権を争う裁判が起きると、法制度の違いや言葉の壁、費用が日本人にとって重い負担になるという懸念も根強い。
 条約は「子に重大な危険がある場合」は例外として子を返還しなくてもいいと定めている。日本人が外国から子を連れ帰った場合だと、返還の是非を最終的に判断するのは日本の裁判所になる。政府は、返還を拒否できる例を国内法でより具体的に示す方針だが、各国の実情も調べ、子の利益を考えたきめ細かい仕組みが必要だ。
 条約の運用は、外務省に置く「中央当局」を中心に法務省など多くの省庁が協力する形になる。
 加盟後にどの程度の申立件数があるかは分からない。外国での不慣れな裁判に臨む邦人への支援の強化、子が日本から一方的に連れ去られた事案への対応なども含め、準備を急がねばならない。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013022002000172.htmlより、
東京新聞【社説】ハーグ条約加盟 子どもの幸せ最優先で
2013年2月20日

 国際結婚が破綻した夫婦の子どもの扱いを定めた「ハーグ条約」への加盟に向け、承認案が今国会で成立する見通しとなった。条約加盟が日本の離婚後の親子法をも変える契機であるべきだ。
 「ハーグ条約」は、国際結婚した夫婦が離婚し、片方の親の同意なしに子ども(十六歳未満)を国外に連れ帰った場合、原則として子どもを元の居住国に戻し、親権問題はその後に解決するよう定めている。加盟国には政府機関の「中央当局」が設けられ、子どもの居所の発見や、元の居住国への返還、子どもと暮らせない親と子の面会交流の支援などが義務づけられる。日本では外務省が担う。家庭内暴力(DV)など子どもに危害が及ぶとされる場合は、子どもが暮らす国の司法判断で返還を拒むこともできる。
 締結国は米国や中南米を中心に八十九カ国。主要八カ国で未加盟は日本だけだ。加盟にはDVケースへの対応などで慎重論も強かったが、国際結婚が年間四万件まで増えた今は避けられないだろう。
 論議の背景には、子どもを連れて帰国した日本人の親と、返還を求める外国人の親との間で頻発している問題がある。米国や英国、カナダ、フランス四カ国から指摘された連れ帰りは約二百件。米国から連れ帰ったケースでは日本人の母親が誘拐罪で指名手配され、米国に再入国した際に逮捕されたケースもある。日本が条約に入っていないため、日本から外国に連れ出された子どもに会えなくなった日本人の親もいる。条約加盟によって日本から連れ去られた子どもの返還にも政府の協力が得られるようになるのは大きい。
 国境を越えた連れ去りで、一番苦しんでいるのは子どもたちだ。無力な子どもは連れていかれた親に従うしかないが、片方の親から引き離されることで心に傷を負い、成長の中で困難を抱えがちになる。だからこそ条約は、子どもの最善の利益を最優先する。一方の親との関係を断ち切られた状態が続くこと自体が有害だと考える。
 子どもの幸せを最優先する理念は国内にも生かされていい。日本は離婚後に父母どちらかが親権者となってしまうため、離婚前から子どもを連れて別居し、そのまま親権を取ろうとするケースが絶えない。一方の親には親権の侵害で、つらい立場に陥らせるが、日本の家庭裁判所は「生き別れ」を黙認してきた。条約加盟を機に、日本の親子法を論議し、変えていってほしい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130220k0000m070130000c.htmlより、
社説:ハーグ条約加盟 政府の支援が肝心だ
毎日新聞 2013年02月20日 02時32分

 国際結婚が破綻し、一方の親が無断で子供を連れて出国した場合、いったん子供を元の国に戻す原則を定めた「ハーグ条約」への加盟が今国会で承認される見込みになった。
 自民、公明両党が19日の党内手続きで条約承認案と関連法案の今国会提出を事実上了承した。訪米する安倍晋三首相はオバマ大統領との首脳会談で加盟を表明する意向だ。
 昨年12月末時点で89カ国がこの条約を締結している。主要8カ国(G8)で未締結は日本だけで、欧米から強く加盟を求められていた。
 国際的なルールにのっとって問題解決を図る道筋は避けられない。ただし、日本の場合、外国人の夫によるドメスティックバイオレンス(DV)被害などを訴えて母親が子供を連れ帰るケースが多数あるとされる。「自国民の保護」、何より「子供の利益」にも配慮するのは当然だ。
 関連法案などによる新たな仕組みはこうだ。例えば、日本人が子供を無断で連れ帰った場合、外国の配偶者から申し立てがあれば、外務省は子供の所在を調査し、日本の裁判所で返還の是非を判断する。審理は東京・大阪両家裁で行われ、不服があれば高裁、最高裁まで争える。
 条約は、「子供の心身に害を及ぼす重大な危険がある場合」は返還拒否できると規定。さらに国内法で「申立人が子供や相手方に対し暴力をふるうおそれがある場合」などと、より具体的に返還拒否できるケースを明記した。
 主要締結国の司法判断は、「返還命令」7割に対し、「返還拒否」3割とのデータがある。元の国に戻すのが原則とはいえ、比較的広範に返還拒否も認めている。諸外国の事例を分析・集積することが必要だ。
 当事者(自国民)に対する政府のきめ細かいフォローも求められる。条約加盟を機に政府が介在し、解決に協力する責務が生まれるからだ。
 在外公館が相談対応し、弁護士や支援機関・通訳などを紹介する▽暴力などの相談内容を記録し、外務省経由で記録を裁判所に提供する▽外国の病院の診断書やカルテ、警察の相談記録などを取り寄せる−−などの対応を積極的にとっていく方針を外務省は明らかにした。また、経済的に余裕のない人に対しては、無料の法律相談や裁判費用の支払い猶予なども検討する。
 返還命令によって日本からいったん外国に子供が戻されても、改めて親権を争うケースもあり得る。政府の積極的な対応で適切な「自国民の保護」が図られることは重要だ。
 外国人配偶者によって子供が国内から連れ出された場合、条約締結国であれば外交ルートで返還要求もできる。政府の役割は重い。

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