視点・壁高い住民投票 人羅格氏

http://mainichi.jp/opinion/news/20130513k0000m070098000c.htmlより、
社説:視点・壁高い住民投票=論説委員・人羅格
毎日新聞 2013年05月13日 02時30分

 ◇国民投票より身近では
 実態はまるで余計者扱いではないか。自治体の政策課題で住民の意見を聞く住民投票にこのところ逆風が吹いている。

 テーマ別の住民投票は通常、条例を定めて行われ、法的な拘束力はない。最近、注目されているのは東京都小平市だ。都道整備計画見直しの是非をめぐる投票を市民グループが請求、市議会で条例が可決され、26日に投票が行われる。

 ところが、もともと投票実施に反対する市は「投票率50%未満なら投票は不成立」との要件を後出し的に追加した。投票率5割未満なら開票はされず、投票は封印される。

 小平市が「他自治体を参考にした」と説明するように「最低投票率条項」がこのところ目立つ。山口県山陽小野田市で市議定数削減の是非を問う投票が先月実施されたが投票率50%に達せず、開票は見送られた。鳥取県が3月に制定したテーマを特定しない常設型の住民投票条例も県議側の意向で「50%以上」が投票の成立要件となった。

 低投票率では住民総意を反映しないとの理屈だが都市部や全県で投票率50%のハードルは結構高く、投票棄権を呼びかける戦術も可能となる。投票率も含め結果をどう受け止め判断するかは首長や議会の責任だろう。

 国の政策に関わるようなテーマがなじむかや、地方議会の権限との兼ね合いなど、住民投票には確かに難しい点がある。東日本大震災後、原発をめぐる投票の動きは封じられている。

 だが、住民の自治への参加手法として活用の方策は探るべきだ。菅内閣時代、片山善博総務相(当時)は「ハコ物」建設の是非を問う住民投票に拘束力を持たせることを検討した。首長と議会のなれ合いに緊張感を与える狙いもあったのだろう。

 だが、このプランは結局、地方側が難色を示し実現しなかった。最近の一連の傾向は首長、議会が住民投票に自治の主導権を奪われないかと警戒しすぎているきらいがある。

 政党にも言いたい。自民党は改憲手続きを定める憲法96条について、国民投票の実施に必要な衆参両院の賛成を通常の法律制定と同程度の過半数に引き下げるよう主張する。ちなみに国民投票法には投票率の要件などない。直接民主制的手法をむしろ嫌っていた自民党が国民投票のハードルを下げようというのだから、様変わりしたものだ。

 ならばより身近なテーマで住民に意見を聞き、行政に反映させる住民投票の活用にも異存はあるまい。ぜひ「自治を住民の手に取り戻そう」と積極利用の方法を議論してもらいたい。

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