日台漁業協定 「操業ルール策定を急げ」

http://mainichi.jp/opinion/news/20130514k0000m070102000c.htmlより、
社説:日台漁業協定開始 操業ルール策定を急げ
毎日新聞 2013年05月14日 02時31分

 沖縄県・尖閣諸島周辺海域での台湾漁船の操業を認めた「日台漁業協定」の運用が始まった。漁獲量や漁船数などの操業ルールを決められないまま、協定が「見切り発車」でスタートしたのは残念だ。
 協定は先月、日本側が漁業権を大幅に譲ってまとまった。尖閣諸島の領有権を巡り台湾が中国と連携するのを阻止するため、安倍政権が首相官邸主導で決断した。協定そのものは、大局的判断に立ったものとして評価できる。
 しかし、協定を動かす肝心の操業ルールは、今月7日の日台漁業委員会で話し合われたが、双方の隔たりが大きく合意できなかった。
 日本側は「トラブルが発生してからでは感情的になり、解決が困難になる。操業ルール策定を優先し、それまでは双方とも操業を自粛すべきだ」と主張した。台湾側は拒否した。それどころか、約1カ月前の協定署名直後から、適用海域で操業を始めたことを明らかにした。
 日本側は、協定は関係法令が整備される今月10日に運用が始まり、それまで双方とも操業を控えると認識していた。それが守られていなかったことを、この場で初めて知った。
 怒った沖縄の漁業者は委員会を途中退席。操業ルール未定のまま、協定は10日から運用開始された。
 協定の適用海域では4〜7月、マグロ漁が最盛期を迎えている。しかし、協定が運用開始された今も、沖縄の漁業者は漁船を出せずにいる。
 マグロはえ縄漁は、全長100キロ前後の縄を流すため、縄を流す時間や方向、船の位置などのルールを決めないと、縄が絡まって切られるなどのトラブルがすぐ起きる。それに台湾の漁船は、トン数で沖縄の漁船の約10倍の大きさがあり、漁船数でも圧倒している。
 協定の結果、日台双方が相手側漁船を取り締まらずに操業できる「法令適用除外水域」では、海上保安庁や水産庁の船が権限を行使できなくなった。ルールがないまま漁船を出せば、トラブルに巻き込まれる可能性が逆に高まってしまったのだ。台湾漁船が周辺の漁場を独占しかねない深刻な事態といえる。
 沖縄県の仲井真弘多(ひろかず)知事は、協定を「頭越し」の決定と厳しく批判し、「漁場が占拠される恐れがあり、漁業者にとっては死活問題だ」として見直しを求めている。
 協定開始前日の9日、南シナ海では、フィリピンと台湾の双方が経済的管轄権を主張する海域で、台湾漁船の乗員1人がフィリピン沿岸警備隊の船から銃撃を受けて死亡し、緊張が高まっている。
 日台の関係者は、操業ルールづくりに一刻も早く取り組むべきだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130412k0000m070104000c.htmlより、
社説:日台漁業協定 実効性高める努力を
毎日新聞 2013年04月12日 02時30分

 沖縄県・尖閣諸島の周辺海域の漁業権をめぐる日本と台湾の漁業交渉が17年ぶりに決着した。日本の排他的経済水域(EEZ)の一部で台湾漁船の操業を認める。尖閣の領有権問題で中国と台湾の連携を阻止したい日本が、漁業権で大幅に譲った。
 沖縄県の漁業者からは批判が出ているが、無秩序状態だった尖閣周辺の日台の漁業摩擦にルールができたことは、前進と評価したい。
 10日に調印された漁業協定は、尖閣周辺海域を含む北緯27度以南で、日本と台湾がそれぞれ経済的主権が及ぶと主張する境界線に囲まれた海域などを、「法令適用除外水域」と定め、双方が相手側漁船を取り締まることなく操業できるようにする。
 この水域のうち漁船が集中する南東の一部は「特別協力水域」とし、台湾漁船の違法操業を日本が取り締まれるようにし、新設する「日台漁業委員会」で、乱獲を防ぐため漁船数や漁獲量などを話し合う。尖閣の領有権問題は双方とも譲らず、今回の協定では触れていない。尖閣周辺の日本領海に入ることは認めない。
 尖閣諸島は日本の領土だが、中国、台湾も領有権を主張している。日本は1996年に国連海洋法条約を批准し、周辺国・地域との漁業協定が必要になった。中国、韓国との漁業協定はすでに調印され、発効している。台湾との交渉は96年に始まったが、双方が尖閣の領有権と周辺漁業権を主張して進展しないまま、2009年に中断した。
 昨年11月に交渉が再開されたのは、尖閣国有化に中国や台湾が反発し、同年9月25日に台湾の漁船団が尖閣周辺の日本領海に侵入したのがきっかけだ。尖閣問題で中国が台湾に対日共闘を呼びかけたことに、当時の野田政権は危機感を強め、台湾が求める漁業交渉再開を指示した。これを引き継いだ安倍政権は、尖閣問題で中台間にくさびを打ち込む狙いを込めて、漁業権で譲歩を渋る水産庁を官邸主導で押し切った。
 台湾の馬英九政権も、漁業権拡大という実利をとって歩み寄った。中国の海洋進出を警戒する米国の存在も影響したようだ。
 協定の枠組みはできたが、実効性をあげられるかは関係者の努力にかかっている。特に台湾漁船は、取り締まりが行われない水域でも、ルールを守って操業するよう徹底してもらいたい。沖縄県の漁業者が不利益を被らないよう対策も必要だ。
 協定は、尖閣周辺海域で不測の事態につながりそうな要因を一つ取り除いた。しかし中国との間では、尖閣の日本領海に中国公船が頻繁に侵入し、緊張が続く。日中間でも偶発事態を避けるための話し合いを再開する時が来ているのではないか。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年 4月 11 日(木)付
日台漁業協定―尖閣避けた大人の知恵

 日本と台湾がきのう、沖縄県・尖閣諸島周辺での漁業協定に署名した。
 台湾が求める周辺海域での漁船の操業を認める一方、尖閣を含む日本領海への立ち入りは認めない――。
 対立する尖閣問題を回避しつつ、双方の顔を立てた「大人の知恵」といえよう。
 協定は、八重山諸島や尖閣周辺の海域に台湾の漁船も入れることとし、乱獲対策などを話し合う漁業委員会をつくる。
 日本側は、尖閣から12カイリの領海に台湾漁船が入ることは認めないものの、協定ではこの点を必ずしも明確にせず、「領海」という言葉遣いを避けている。うまい工夫だ。
 これにより、日台のトラブルが解消され、尖閣周辺での不測の事態を避けることにつながることを期待する。
 日本は、ロシア、中国、韓国とはすでに漁業協定を結んでいる。一方、台湾との間では96年から16回も交渉したが、合意に至らなかった。
 72年に日本が台湾と断交して中国と国交を結んだ歴史的な経緯に加え、台湾に漁業権を認めるメリットを日本側が見いだせなかったという事情がある。
 それが、昨年9月に日本政府が尖閣を国有化したことで変わった。
 中国同様、かねて尖閣の領有権を主張していた台湾も国有化に猛反発したが、逆に、これをきっかけに中断していた漁業協定交渉が動き出した。
 尖閣問題で中台双方と対立することを避けたいという日本側の思惑だけではない。
 台湾にとっても、中国の動きは気がかりだった。
 中国は、「漁民の権益を守るのは両岸(中台)双方の責任」として、台湾側に連携を呼びかけている。
 もとより台湾には、中国と手を組む考えはない。だが、もし尖閣周辺の台湾漁船を中国の公船が守り、日本の巡視船と対抗したら苦しい対応を強いられる。実際、1月に台湾の活動家の船が尖閣周辺海域に出た際は、中国の海洋監視船も接近してきた。
 こうした事情も、双方の背中を押したようだ。
 もともと、日台は良好な関係にある。台湾の最大の輸入元は日本であり、全体の2割近くを占める。東日本大震災の際は、台湾からの義援金が約200億円に達した。
 今回の協定を機に、さらに交流が活発になることを望む。
 中国との関係改善も、こうした大人の知恵で乗り切りたい。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130411/plc13041103060004-n1.htmより、
産経新聞【主張】日台漁業取り決め 現実的な判断を歓迎する
2013.4.11 03:06

 沖縄県・尖閣諸島の周辺海域での漁業をめぐる日本と台湾の間の18年越しの懸案が解決した。日台で漁業資源保護の協力水域の設定などを柱とする取り決めが締結されたことを歓迎したい。
 尖閣について、台湾は中国と同様に領有権を主張しているが、交渉では日台双方とも主権にはふれず、トラブルが絶えない漁業問題の解決を優先して合意にこぎつけた。双方の現実的な判断と評価できる。
 尖閣問題での対日共闘のシグナルを送ってくる中国に対し、台湾の馬英九総統は「連携しない」との立場を表明している。日台の友好関係を背景にした取り決めが、尖閣を力ずくで奪取する構えを見せる中国への牽制(けんせい)となる効果も期待したい。
 取り決めの締結は、尖閣を固有の領土とする日本の立場の変更を意味しない。取り決めは台湾漁船の日本領海侵入も認めていない。菅義偉官房長官は会見で漁業交渉にふれ、「妥結した、しないにかかわらず、わが国の立場は変わらない」と述べた。さらに明確なメッセージの発信が必要だ。
 尖閣諸島や八重山諸島周辺の海域はクロマグロなどの好漁場で、日本、台湾、中国の漁船が操業するが、それぞれが主張する排他的経済水域(EEZ)が重なり合う問題を抱えている。とくに尖閣周辺を「伝統的漁場」とする台湾漁民は、日台間に漁業協定がないことから海上保安庁の巡視船に摘発される事例が多発している。
 今回の取り決めは、日本のEEZの一部で台湾漁船の操業を認めた点で、台湾側により譲歩した線引きとなっているとする指摘もある。沖縄県漁民の権益が守られるよう台湾側にルール順守を強く求めたい。
 台湾側は、日本政府による尖閣国有化に反発して昨年9月、漁船約40隻と海岸巡防署の巡視船12隻とともに一時領海侵犯する騒ぎを起こした。中国がこれを「正当な行為」と支援する構えを見せたことから、問題の複雑化が懸念されていた。
 日台の取り決め締結に中国国務院台湾事務弁公室報道官は「両岸(中台)漁民の漁業権益の維持は、両岸双方に責任がある」と、中国抜きの交渉妥結に反発を示した。軍事力を背景に自己に都合のいいルールを押しつける傲慢さも見え隠れしている。

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