沖縄と安倍政権 「そして溝は深くなった」

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年 5月 16 日(木)付
日米地位協定―沖縄から、主権回復を

 きのう本土復帰41年を迎えた沖縄が、厳しい問いを突きつけている。「日本は主権国家と言えるのか」と。
 政府が先月開いた「主権回復の日」の式典に、抗議の声が広くあがった。沖縄、奄美、小笠原にとって、日本から切り離された屈辱の日だからだ。
 在日米軍に特権を与えている日米地位協定の存在こそが、主権を脅かしている。抗議の声はそう指摘する。
 この不平等な協定は、米軍を国内に長期駐留させるためにできた。1952年にサンフランシスコ講和、日米安保の両条約とともに日米行政協定として発効。60年の安保条約改定にあわせ、現在の地位協定となった。
 米軍人・軍属による犯罪や事故のたびに、日本の犯罪捜査や裁判権を制限する条項が問題となってきた。
 ビザやパスポートなしで入国できる、自治体への自動車税は5分の1でいい、などの根拠となる取り決めもある。
 近年、関心が高まっているのが基地内の環境汚染だ。たとえば、嘉手納基地で80年代にポリ塩化ビフェニール(PCB)。恩納通信所跡地からは96年に高濃度のPCBやカドミウム、水銀。03年にはキャンプ桑江の返還地から高濃度の鉛、六価クロムがそれぞれ検出された。
 協定によって、汚染した土地をもとに戻す義務も補償する義務も、米軍にない。後始末は返還後、日本側が負う。このため跡地利用計画が大幅に遅れるところも出始めた。
 最近では、ベトナム戦争で使った枯れ葉剤を基地内に保管、一部を除草剤としてまいたと証言する退役軍人もいる。米軍は否定するが、基地内が汚染されている不安は広がる。
 沖縄には国内の米軍基地の74%が集中する。だが、協定で被る不利益は沖縄だけではない。
 たとえば、首都圏を含む1都8県の上空には、米軍が権利を持つ横田基地の巨大な管制空域が存在する。民間機はいまも、遠まわりを強いられている。
 オスプレイのような米軍機が全国で低空飛行訓練できるのも、協定があるからだ。
 沖縄県はこれまで、汚染された環境の回復など、11項目の協定見直しを日米両政府に求めてきた。だが、運用の一部見直しだけで、協定そのものが改定されたことは一度もない。
 主権国家だと胸を張るのならば、問題が多いこの協定を、成熟した国家同士の関係に直すことから始めるべきだ。それが、沖縄の問いかけに対する誠意ある回答ではないか。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130515/plc13051503360004-n1.htmより、
産経新聞【主張】沖縄復帰の日 主権と安全守る覚悟こそ
2013.5.15 03:35

 沖縄の本土復帰41年を迎えた。沖縄が歩んだ苦難の歴史を思いつつ、その周辺領域における日本の主権と安全を守ることの大切さを改めて見つめ直したい。
 沖縄が返還された昭和47年当時、日本にとって最大の脅威は旧ソ連だった。今は、中国が軍事力を背景に尖閣諸島の奪取を狙い、威嚇と挑発を常態化させている。
 今年に入り、中国公船が尖閣周辺の日本領海に侵入した日数はすでに昨年1年間の23日を超えた。今月12日から13日にかけ、中国潜水艦が沖縄近海の接続水域を潜航したまま通過した。
 中国共産党機関紙、人民日報は8日、沖縄の帰属は「歴史上の懸案であり、未解決の問題だ」とする論文を載せた。人民日報傘下の環球時報も11日付社説で、沖縄の独立勢力を「育成すべきだ」と中国政府に提案した。県内の一部に同調する動きがあるが、尖閣ばかりか、沖縄全体の領有化を狙う中国の正体を見極めるべきだ。
 沖縄を中心とする南西諸島の防衛強化はますます急務となっている。最大の懸案は米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設問題だ。民主党前政権の迷走もあって、県外移設を求める声も根強いが、やはり日米合意に基づく名護市辺野古への移設が現実的である。
 安倍晋三政権は沖縄の基地負担削減や地元振興を踏まえつつ、辺野古移設に向けた粘り強い説得を続けてほしい。尖閣諸島有事を想定した日米共同作戦計画の策定も急がれる。
 初の政府主催の「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」が開催された4月28日、宜野湾市で「屈辱の日」大会が開かれた。日本本土が独立と主権を回復した後も、沖縄は20年間、米軍の施政権下に置かれ、切り捨てられたとする抗議集会だった。
 しかし、沖縄に潜在主権は残され、主権を回復した日本政府が米国と交渉を行ったからこそ、沖縄が返還されたのではないか。
 昨年11月、天皇、皇后両陛下は沖縄を訪問し、昭和20年の沖縄戦の犠牲者らの遺骨を納める国立沖縄戦没者墓苑(糸満市)で供花された。即位後4度目の沖縄ご訪問で、皇太子時代を含めると、計9回に及ぶ。
 多くの県民が戦死した沖縄に、陛下が特別な思いを寄せられていることも、忘れてはならない。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013051502000137.htmlより、
東京新聞【社説】復帰の日に考える 井上ひさしさんと沖縄
2013年5月15日

 劇作家の故井上ひさしさんが亡くなる間際まで書こうと執念を燃やした芝居があります。「木の上の軍隊」。沖縄戦の激戦地、伊江島がその舞台です。
 二〇一〇年四月、七十五歳で亡くなった井上さんは日本を代表する劇作家の一人です。直木賞を受賞した「手鎖心中」や「吉里吉里人」を書いた小説家、NHKの人形劇「ひょっこりひょうたん島」の脚本家でもあります。
 鋭い社会風刺と、何といっても人間味あふれるユーモアが、亡くなって三年がたつ今も、多くの人々の心をとらえて離れません。

◆戦禍の重さに苦悩
 木の上の軍隊は、〇九年秋に肺がんと診断された井上さんが、病床で最後の力を振り絞って書こうとした芝居でした。
 入院後、一度は井上さん自身の脚本で上演が発表され、延期された「未完の遺作」でもあります。
 太平洋戦争末期の一九四五年四月、米軍は伊江島にすさまじい砲撃を加えた後に上陸。日本軍はほぼ全滅し、多くの住民も犠牲になります。生き延びた本土出身の上官と沖縄出身の新兵が、ガジュマルという木の上に身を隠して約二年間暮らす、という物語です。
 実はこの筋書き、井上さんの創作ではなく、実際にあった話に基づいています。ある雑誌に掲載された新兵の証言を目にしたことが、着想のきっかけでした。これを基に、井上さんは九〇年と二〇一〇年の二回、上演を試みます。
 「沖縄戦はあまりにも重く、井上芝居の真骨頂であるユーモアが入り込む余地がない。地元でもユーモアのある話としてみんなが知っているこの題材を見つけて『これなら書ける』と思って飛び付いたのではないでしょうか」
 井上さんの劇団「こまつ座」を受け継いだ三女の麻矢さんは、こう振り返ります。

◆「言葉奪う」と怒り
 井上さんはずいぶん前から、沖縄戦に限らず、沖縄のことを書きたいと思っていたようです。
 沖縄には、かつて琉球国という日本とは別の国家だった歴史があります。日本国とされたのは、江戸時代の島津侵攻や明治時代の琉球処分によってです。
 日本への同化は、本土による支配のみならず、沖縄の人から沖縄の言葉を奪うことも意味します。学校では沖縄方言を使った生徒に罰則として「方言札」を持たせたり、首に掛けさせたりして標準語の使用が強制されました。戦時中は方言を使えばスパイ扱いです。
 表現者として言葉を大事にした井上さんです。「沖縄の言葉を奪うことは、沖縄の文化を奪うことだ」という怒りが沖縄を描こうとした原動力になったのでしょう。
 井上さんは沖縄に関する資料を集め、二〇〇〇年には沖縄を訪ねてもいます。よりよいものを書くために「遅筆堂」の異名をとる井上さんです。「木の上の軍隊」は結局、未完に終わりました。
 がんが見つかり、次に書くのは沖縄のことだ、と心に決めながらも、病の進む速さが、筆を追い越してしまったのです。
 残されたのは大量の資料と一枚のメモでした。麻矢さんはこう話します。「書かなかったことが父の最大のメッセージだと思う。そのこと自体が、沖縄の傷や、問題の深さを物語っているからです」
 それでも麻矢さんは動きだします。井上ファンから上演を望む声が相次いで寄せられたからです。
 井上さんの思いをどう表現するのか。井上芝居の多くを手掛け、沖縄で演劇指導の経験もある栗山民也さんに演出を、若手劇作家、蓬莱竜太さんに脚本を委ねます。完成まで二年を要しました。
 緊張感が徐々に薄れ、米兵の残飯で太り、目の前に広がる米軍基地をただ眺めるだけの上官と、上官の変節に疑問を抱きながらも、信じるしかないと、もがく新兵。
 上官は本土の、新兵は沖縄の人間の象徴です。経済的な繁栄を享受し、沖縄が負う米軍基地の重圧に無関心な本土と、いつかは土地を取り戻してくれると信じ続けざるを得ない沖縄との「ぐちゃぐちゃな」関係が描き出されます。

◆県民の痛みを思い
 きょうは一九七二年に沖縄の施政権が米国から返還されて四十一周年の記念日ですが、沖縄にはなお在日米軍基地の74%が集中しています。芝居の舞台となった伊江島では、米海兵隊の飛行場が今も島の面積の三割以上を占め、オスプレイの訓練も行われています。
 基本的人権の尊重をうたう日本国憲法よりも、米軍人らの特権的地位を優先する日米地位協定が幅を利かせるのが沖縄の現実です。
 同じ日本に生きる者として、沖縄県民の痛みに何をすべきか。それを深く考えることが、沖縄をめぐる井上さんの問題意識に応えることになる、と思うのです。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130515k0000m070134000c.htmlより、
社説:沖縄と安倍政権 そして溝は深くなった
毎日新聞 2013年05月15日 02時30分

 沖縄の「本土復帰」から、15日、41周年を迎えた。安倍政権は、サンフランシスコ講和条約発効61年の4月28日、「主権回復の日」を記念して政府主催の式典を開いたが、15日は何の政府行事もない。
 安倍晋三首相は4・28式典への沖縄の反発に配慮し、本土復帰の政府式典を検討する意向を示していた。しかし、具体化は見送られた。沖縄と政府の溝の深さが理由である。
 講和条約によって、沖縄などは本土から切り離されて米国施政下に置かれた。4・28式典と同時刻、沖縄では「政府式典に抗議する『屈辱の日』沖縄大会」が開かれ、仲井真弘多知事は、県民感情に配慮して政府式典を欠席せざるを得なかった。
 沖縄にとって4・28は、「沖縄切り捨て」(大会決議)の日という意味にとどまらない。米国施政下で米軍基地が定着し、今の在日米軍基地の沖縄偏在の出発点になった日でもある。そして、41年前の「5・15」以降、沖縄にも日米安保条約が適用され、基地負担が固定化された。
 沖縄で、4・28も5・15も複雑な思いで受け止められる理由はそこにある。過重な基地負担を解決する以外に、沖縄問題の解決はない。
 ところが、政府は3月末、米軍普天間飛行場の県外移設を求める仲井真知事に対し、名護市辺野古への県内移設に必要な公有水面埋め立て許可を申請した。4月には、日米両政府は普天間の返還について、辺野古への移設を前提に「2022年度またはそれ以降」で合意し、しかも、移設までの周辺住民の危険性除去策は示さなかった。また、同月末の日米防衛相会談では、沖縄が反対する新型垂直離着陸輸送機MV22オスプレイを今夏、普天間に新たに12機配備することで合意した。
 安倍政権発足から4カ月半。基地問題について政府と沖縄の距離は一層、広がっているように見える。
 政府が普天間の県内移設、沖縄における基地機能強化の理由にするのが、米軍の抑止力維持である。
 しかし、過去の政府答弁書は、米海兵隊が日本に存在する意義を強調するものの、その基地が本土でなく沖縄でなければ抑止力が維持できない根拠を示していない。辺野古への移設賛成論者にも、抑止力維持の観点からは、海兵隊が沖縄にいなければならない理由はない、との議論がある。抑止力維持を海兵隊の沖縄駐留の根拠にするのは困難になっている。
 首相は4・28式典で、沖縄の本土復帰に触れ、「沖縄が経てきた辛苦に深く思いを寄せる努力をなすべきだ」と語った。そうであれば、基地負担の軽減と、基地問題の象徴である普天間移設の現行計画見直しに、真剣に向き合うべきだ。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130515/k10014580121000.htmlより、
沖縄 きょう本土復帰から41年
5月15日 4時28分

沖縄が本土に復帰して15日で41年となります。
アメリカ軍基地の負担軽減の見通しが立たないなか、沖縄が抱え続ける基地問題をどのように国民的な議論に広げていけるかが引き続き大きな課題となっています。
沖縄は昭和47年の5月15日に本土に復帰し、15日で復帰から41年となりました。
沖縄には今も在日アメリカ軍の専用施設の74%が集中していて、日米両政府が先月まとめた嘉手納基地より南にあるアメリカ軍施設の返還計画でも多くが県内への機能移転が返還の条件となるなど、県民が基地負担の軽減を実感できる状況ではありません。
また、最大の焦点の普天間基地については、政府が名護市辺野古沿岸部の埋め立てを申請し移設を進める方針を示していますが、沖縄県側は県内への移設に反対の立場で、双方の溝は埋まっていません。
こうしたなか、政府が先月、日本が昭和27年にサンフランシスコ平和条約の発効で主権を回復したことを記念する式典を開いたことに対し、主権回復後も20年にわたってアメリカの統治下に置かれ続けた沖縄では反発が強まり、抗議大会も開かれました。
この式典をきっかけに、沖縄県内では改めて基地を抱え続ける沖縄にとっての「復帰の意味」を問い直す動きも活発になっていて、基地問題をどのように国民的な議論に広げていけるかが引き続き大きな課題となっています。

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