マイナンバー 「導入は問題が多すぎる」

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013052002000122.htmlより、
東京新聞【社説】マイナンバー法 踏みとどまる良識を
2013年5月20日

 国民らに個人番号を付けるマイナンバー法案が衆院を通過し、参院で審議に入った。個人情報流出の危険や国民監視の強化につながる懸念がある。踏みとどまって、良識ある議論を尽くしてほしい。
 インターネット時代には、個人情報の取り扱いは、より慎重を期すべきものだ。いったん外部に流出したら、取り返しがつかないためだ。マイナンバー法が扱う個人情報は、氏名や住所など個人を特定する基本情報から、納税実績や年金・介護情報など幅広い。
 共通番号制とも呼ばれ、全国民や法人などに番号を付けて、税分野や社会保障分野の情報を結び付ける。行政庁ごとに管理された個人情報をネットワーク基盤を通じてひもづけし、データマッチングさせるので、国に一元管理されるのと同じ状態になる。
 法案が成立すれば、二〇一五年から国民一人一人に番号が通知され、一六年から運用が始まる。だが、拙速に制度導入を決めることに賛成できない。中央官庁もハッカー攻撃を受ける時代だ。マイナンバーで国民の情報を集積することは、かえって危険である。さまざまな個人情報が番号とともに流出し、深刻なプライバシー侵害を引き起こす恐れがあるためだ。
 運用の監督をする第三者委員会が設置されるものの、情報流出を完璧に防げるとは限らない。
 社会保障番号を使う米国では、なりすまし犯罪が絶えず、その被害は年間に兆円単位にものぼっている。韓国でもなりすましと同時にネット上で個人情報が売買の対象にもなっているという。
 国家が共通番号制で個人情報を管理することは、国民監視を強めることにもなる。システム構築すれば、特定人物の検索ができるからだ。税分野に限った番号制度を持つドイツで、多目的利用を禁止するのは、人を集団管理する危険性を戦時中の歴史体験として持っているからだといわれる。
 初期投資に約二千七百億円かかり、毎年のランニングコストは約四百億円にもなる。巨大な「IT箱モノ」なのに、この制度で大幅な税収増は見込めはしない。費用対効果が不明なままで、公共事業を進めていいのか。
 いずれ医療分野の“増築”や、民間利用も検討され始めれば、プライバシーはさらに深刻な脅威にさらされよう。利便性の裏には危険性が潜む。国民への説明も不十分なままで、法案を成立させては、将来に禍根を残す。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130520k0000m070102000c.htmlより、
社説:共通番号法案 知る権利にも目配りを
毎日新聞 2013年05月20日 02時32分

 国内居住者全員に番号を割り当てる共通番号(マイナンバー)法案が衆院本会議で可決され、参院で審議中だ。今国会成立の公算が大きい。
 行政が管理する税や社会保障などの情報が一元化され、国民が行政サービスを受ける際の手続きが簡単になり利便性が向上するとされる。行政効率化への期待も高い。
 その一方で、個人情報が一元的に管理されることで、情報の流出やなりすまし犯罪が増加することへの懸念は依然強い。衆院の審議でも、個人情報保護への措置が不十分ではないかといった点に質問が集中した。
 一方、審議の中でほとんど取り上げられていない重要な論点もある。
 共通番号にかかわる情報の提供、それに伴う取材や報道が制約されるケースがあり得るのかどうかだ。
 例えば、公人の公金不正蓄財や脱税などを内部告発しようとした人が、その公人の所得証明書の写しを記者に提供したとしたらどうか。
 証明書には共通番号も記載される。番号部分を黒塗りにして提供しても、提供者と記者双方が罰則の対象になったり、首相直属で個人情報の取り扱いのチェックをする第三者機関の指導や助言の対象になったりする可能性が残るのではないかと懸念されている。
 もしそうなれば、社会に必要な情報の流通が阻害され、場合によっては報道への介入も生みかねない。
 個人情報保護法では、報道目的であれば報道機関は本人同意がなくても第三者から個人情報を取得できる。また、報道機関などに個人情報を提供する側に対しても、監督大臣は助言や勧告などの権限を行使しないと規定する。さらに、権限行使に当たっては「表現の自由を妨げてはならない」と明記されている。
 だが、同法の特別法と位置づけられる共通番号法案には、報道への配慮を特別に打ち出した条文は見当たらない。報道や取材の自由は憲法上の要請であり、法案に書き込むまでもないとの意見が検討過程であったことも影響したようだ。
 日本新聞協会は一昨年8月、民主党政権下で共通番号制度実現の動きがあった際、「公益目的の取材活動への協力も罰則の対象になるというのであれば、報道機関として対処が必要になってくる」との意見を表明した。
 政府は、民間分野を含め番号の利用範囲を将来的に拡大する方針だ。そうなれば、共通番号が付くことになる情報が取材や報道の対象と重なる部分はより広くなる。
 法案の修正や、少なくとも国会での決議を通じて、「知る権利」に応えるための取材や報道の自由を縛るものではないことを明確にするよう求めたい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130416ddm003010030000c.htmlより、
クローズアップ2013:個人番号法案、月内衆院通過へ 年金・保険、申請簡単に 情報流出の危険も
毎日新聞 2013年04月16日 東京朝刊

 日本国内に居住する全ての人に番号を割り当て、個人情報をこの共通番号で管理する「個人番号法案」(マイナンバー法案)は月内に衆院を通過する見通しだ。別々の行政機関が管理している税や社会保障などの情報が一元化され、行政サービスを受ける際の手続きの簡略化などが期待できるとされるが、一方で個人情報の流出やなりすまし犯罪の増加を懸念する声もある。今国会で法案が成立すれば「共通番号制度」は2016年1月に導入される予定。制度のメリット、デメリットを探った。【臺宏士、青島顕】

 「行政機関の間で必要な情報の連携が可能になるので、さまざまな行政手続きが簡略化され、国民の利便性が向上する」。法案を審議した3月27日の衆院内閣委員会で、甘利明経済再生担当相は共通番号制度導入のメリットをこう主張した。
 制度が16年1月に導入されれば、国民全員に割り振られた番号や氏名、住所が記載された顔写真付きのIC(集積回路)カードが17年1月に交付される予定。政府の説明では、失業時の雇用保険の給付や年金・介護保険の給付などの申請をするにはこのカード1枚があれば十分で、現在のように役場や税務署を回って住民票や納税証明書など添付書類の交付を受けなくて済む。また、カードを使えば自宅などからインターネット経由で、自分の納税や社会保障に関する情報が確認できるという。
 さらに、政府は低所得者対策として、医療・介護保険、育児、障害者サービスで自己負担した金額を合算して一定額を超えた場合は超過分を返還する制度の導入を検討しているが、合算に活用されるのが共通番号だ。
 ただ、こうした利便性は犯罪やプライバシー侵害の危険も伴う。
 今月3日の衆院内閣委員会で、大熊利昭氏(みんな)は、パソコンを持って高齢者宅に上がり込んだ犯人が「手続きをやってあげる」と言ってICカードを借りて個人情報を盗み、悪用するケースが起こりうるのではないかと質問した。内閣官房の向井治紀審議官は「そのような不正、詐欺事件というのは起こりうるのかなという気はいたします」と認めた。
 現行の住民基本台帳ネットワークを巡っても、住民票コードがネットに大量流出したり、他人になりすまして住基カードを取得し銀行口座を開設したりする不正行為が起きている。これに対し法案は、第三者機関による監視や罰則強化などで情報漏えいに備えるとしている。初期投資に2000億〜3000億円、運営費に年数百億円がかかるのも制度のネックの一つだ。
 また政府は制度導入のメリットとして、「所得の正確な把握」も掲げてきた。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130416ddm003010030000c2.htmlより、
 政府の説明では制度が導入されれば、勤務先から給与の支払額が税務当局へ共通番号と共に伝えられる。納税者が別々の税務署管内でそれぞれ収入を得ていた場合などに、番号を利用した照合により申告内容がチェックしやすくなる。また税と社会保障の両分野の情報が共通番号で集約されれば、税の不正還付が防がれ、課税と所得に応じた社会保障の給付も公平にできる。
 だが、例えば自営業者の場合、脱税防止効果がどれだけあるかは不明だ。店で何がいつ売れたかを確認するには、モノを買った客に支払い調書を逐一提出させ、これを業者の申告と照合しなければならないが、現実的ではない。支払いが課税の際に収入から差し引かれる事業経費なのか、個人的な家事の費用なのかの判断にも、共通番号は役立たない。
 法案が審議入りした3月22日の衆院本会議で、若井康彦氏(民主)から制度導入による税収アップの見通しを問われた麻生太郎・副総理兼金融担当相はこう答えた。「所得把握の適正化による税収への影響については、事前に見込むことは困難で、影響額の試算は行っていない」

 ◇米、分野別に制度移行 英、導入2年で廃止に
 「国民総背番号制」の先進国と言われる米国では、1936年に導入された社会保障番号(SSN)が共通番号となり、徐々に社会保障以外の分野にも広がった。
 61年には納税者番号としての利用が始まり、銀行口座の開設やクレジットカードの申し込みなど民間での本人確認にも使われるようになった。
 しかしインターネット社会を迎えると、番号を盗んで他人になりすまし、政府の給付金を不正に受け取ったり、銀行口座を不正利用したりする犯罪が多発。米政府の資料では、2006〜08年のなりすまし犯罪の被害者は1000万人を超え、年間の損害額は500億ドルに上るまでになった。
 このため内国歳入庁はなりすましなどの被害を受けた納税者を対象に、11年1月から共通番号と異なる分野別番号の「身元保護個人納税者番号」の発行を開始。SSNが記載されたカードを発行していた国防総省も、なりすましや情報漏れを防ぐため、同年4月から独自の「本人確認番号」に切り替えた。高齢者医療の分野でも新たに個別番号の導入が検討されているという。
 また、パスポートや運転免許の取得、銀行口座の開設、レンタル店の利用からネット上の個人識別まで、生活のあらゆる場で「住民登録番号」が利用されている韓国では、個人情報の流出が問題化。流出した番号が詐欺事件に悪用されたこともある。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130416ddm003010030000c3.htmlより、
 一方、英国では08年の当時の労働党政権が「国民IDカード制」を導入したが、10年に誕生した保守・自由民主党政権は「国家は必要以上に国民の個人情報を収集しない。国民の人権を踏みにじる制度」として廃止法案を成立させた。
 米国の制度に詳しい石村耕治・白鴎大教授(情報法)は「日本でもなりすまし犯罪が多発する可能性が高い」と指摘。「共通番号による管理は時代遅れの発想。他国の経験を軽視すべきではない」と警告している。

 ◇共通番号制度・ポイント
 ▼メリット
・ICカードがあれば、納税証明書など添付書類がなくても一つの窓口で各種申請が可能に
・ICカードを使って納税や保険料納付状況をネットで確認できる
・所得がより把握しやすくなり、脱税防止の効果も

 ▼デメリット
・政府が国民のプライバシー情報を管理しやすくなり、監視が強まる恐れ
・なりすましで年金詐取などの事件が起こる恐れも
・初期投資や運営費に多額の費用

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年 3月 26 日(火)付
マイナンバー―活用拡大への目配りも

 国民一人ひとりに番号をふり、社会保障分野などに活用する共通番号(マイナンバー)の導入をめぐって、国会での審議が始まった。
 法案は1年余り前、民主党政権下で一度出されたが、与野党の対立から廃案になった。その仕切り直しである。
 共通番号は年金や雇用、医療・福祉関連の給付や納税事務、災害時の支援金の支給などに限って活用する。民間業者の利用は認めない。独立性の高い第三者委員会を置き、個人情報の取り扱いを監視する。
 少子高齢化に対応するため、消費税の増税が決まった。負担と給付をしっかり管理し、社会保障や税の制度をより公平に、効率的にしていくことはますます重要になっている。共通番号はその大きな柱となる。
 しかし、国民の間で認知度は低い。住民基本台帳(住基)ネットに対して、強い反対が起きたことも記憶に新しい。
 共通番号を円滑に導入し、定着させるうえで、まず重要なのは個人情報保護の徹底だ。
 政府は年金や税など既存のシステム改修を含め、システム構築に2千億円以上を投じる。むだな投資を防ぐのは当然だが、安全性が十分なのか、専門的な見地からも点検が必要だ。
 同時に、共通番号によって得られる利点や行政の効率化、さらに活用分野の拡大についても認識と議論を深めたい。
 社会保障の給付申請や税務署への申告の際、あちこちの役所を回って必要な書類をそろえる手間が省け、受給や納税に関する自分の情報をパソコンで確認できる。重複支給や過少申告もチェックしやすくなる――現時点では、こんなメリットが強調されている。
 活用の拡大が考えられるのは、たとえば納税分野だ。共通番号を使って納税者ごとに所得や資産の全体像をつかみやすくすれば、負担力に応じた課税に役立つのではないか。
 健康状態や診療・投薬情報をさまざまな医療・介護機関が番号を介して共有することも、検討課題のひとつだ。
 ただ、よりよい医療サービスを効率的に提供できる可能性が高まる半面、情報が漏出する恐れも増す。厚生労働省の有識者会合が昨年、検討を重ねたが、論点整理にとどまった。
 法案では、法施行から3年をめどに活用範囲の拡大を検討するとされた。安倍首相も預金口座への拡大を念頭に金融犯罪対策を強める可能性に言及した。
 国民の理解を広げるため、精力的に議論してほしい。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130308/lcl13030803130000-n1.htmより、
産経新聞【主張】マイナンバー 使いやすい制度に工夫を
2013.3.8 03:13

 全国民に番号を割り振り、社会保障や納税などの行政情報を一元管理する、共通番号制度(マイナンバー)関連法案が再び国会に提出された。
 行政事務の効率化や手続きの簡素化などにつながる制度である。昨年の国会では、与野党の調整がつかず廃案になった。今度こそ法案を成立させなければならない。
 欧米ではすでに同様の制度が普及している。個人情報の漏洩(ろうえい)や不正利用などの防止を徹底しつつ、社会的な基盤として積極的に活用すべきだ。国民の理解を得たうえで、利用対象を民間などに広げることも検討してもらいたい。
 マイナンバーは、顔写真が付いたICカード(個人番号カード)を交付し、健康保険料の納付や年金の受給手続き、納税などを一括して管理する仕組みだ。
 複数の行政機関が個別に管理していた情報をまとめるから、二重受給などの不正防止や国や地方の行政の効率化につながる。自営業者らに対する課税の公平性を確保することにも役立つという。
 国民の利便性も高まる。
 例えば、現在は年金などの受給申請には、納税証明書や源泉徴収票を提出する必要がある。利用が始まる平成28年からは、このカードを窓口に提出すれば手続きが可能になる。自宅のパソコンで自分の情報を確認でき、納税や年金記録も把握しやすくなる。
 個人情報の漏洩や不正利用の監視機関として独立性が高い委員会を設け、不正利用した公務員への罰則規定も盛り込んだ。行政機関の情報利用や管理などに問題があれば、是正を求められる実効的機能の付与なども検討すべきだ。
 それでも実際に制度が施行されれば問題も生じてこよう。制度を軌道に乗せるには、こうした問題点を不断に見直し、国民の信頼獲得に努めることが欠かせない。
 マイナンバーの情報管理システムの構築には2千億円余が必要という。投資を上回る行政経費の削減につなげなければならない。
 政府は、マイナンバーを当面は行政機関の利用に限定し、3年後に利用範囲を見直すという。民間企業の利用は制度の普及には欠かせない。情報保護を徹底しながら利用の範囲を拡大してほしい。
 来年4月には消費税増税が実施される。国民に負担増を求める以上、課税の適正化につなげる制度にも発展させていくべきだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130305k0000m070122000c.htmlより、
社説:マイナンバー制 将来像も含め議論を
毎日新聞 2013年03月05日 01時46分

 国内居住者全員に番号を割り当てる社会保障・税の共通番号(マイナンバー)制度を創設する法案が国会に提出された。納税や年金の受け取りなどの際に活用するもので、行政サービスのコストが下がり、国民の利便性が向上し、記載の誤りなど行政処理のミスがなくなるのであれば、歓迎できる。
 一方で個人情報が一元的に管理されることへの懸念や、将来、民間分野を含め、どこまで番号の利用が拡大されるのか分からないことに対する不安もある。国民の関心や理解が深まるような国会審議を望みたい。
 政府の計画によれば、15年10月に、全国民と中長期滞在の外国人に対し、それぞれの識別番号が通知され、16年1月から行政機関での利用が始まる。顔写真付き「個人番号カード」の付与も予定され、システムの整備などに2000億〜3000億円が投入される見通しだ。
 当初は、納税や年金・健康保険の保険料納付・受け取りをはじめ、生活保護や児童手当などさまざまな政府からの給付の手続きで番号を活用することになる。複数の役所に分かれた情報を照合するのにかかっていた手間が省かれ、利用者も申請に必要な書類を集めに何カ所も窓口を訪ね歩く必要がなくなるという。
 だが、3000億円という投資に見合うメリットがあるのか分からない。利用範囲が狭いままでは恩恵も限定的だろうが、他方、野放図に利用を広げると、個人情報の管理や不正利用への不安も膨らむ。医療分野への適用や民間企業による活用については将来の議論に委ねるというが、制度の創設前に、将来像や民間利用の原理原則をできるだけ明確にしておいた方がよい。なし崩しで利用範囲が拡大するようでは問題だ。
 公正な税負担や各種手当の不正受給を防ぐ上で欠かせない所得の正確な把握を、どのように実現するかも、議論が必要だろう。
 個人が社会保障の負担・受益など自らの情報に簡単にアクセスできるようになる制度でもある。政府の誰がいつ自分の情報を閲覧・利用したかを知ることも可能になる。インターネットを使い国民が自分の個人情報を管理・監視する仕組みだ。
 国民の主体的参加が広がることは、不正利用への抑止力となる。だがそれには、制度が十分周知されていることや、行政による情報利用を本人が閲覧するシステムにできるだけ例外がないこと、などが必要だ。
 自民、公明、民主の3党協議を踏まえた法案であるだけに成立する公算が大きい。だが、国民の支持がなければ制度は育たない。国会審議を通じ、国民の「何のために?」「大丈夫?」の声に答えてほしい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013030202000144.htmlより、
東京新聞【社説】マイナンバー 導入は問題が多すぎる
2013年3月2日

 国民らに個人番号を付けるマイナンバー法案が、閣議決定された。納税実績や年金情報などを一元管理する共通番号制だ。個人情報の流出や、なりすまし犯罪などが懸念され、問題点が多すぎる。
 赤ちゃんからお年寄りまで、全国民にマイナンバーは付く。中長期在留の外国人や法人にも番号が付けられる。この番号をキーにして、納税額や年金・介護の保険料納付状況などの個人データを引き出し、照合するのが、共通番号制の仕組みだ。
 一番の目的は、行政事務の効率化だ。確定申告や年金受給などの手続きが簡単になる利便性もうたわれる。税務面では、扶養控除の申告などで不適切な案件があぶり出せる利点がある。
 社会保障面では介護や保育などにかかる費用を世帯ごとに把握でき、その負担に上限を設ける新制度が構築できるとされる。低所得者に還付金を出す給付付き税額控除にも使えると、説明される。
 だが、行政実務の現場で苦労するのは、同一の世帯かどうかの判断だ。個人に番号を振っても、この問題はなくならない。「世帯ごとに把握できる」というのは誇大広告に等しい。
 システム構築にも莫大(ばくだい)な費用がかかる。六千億円とされた初期費用は二千億円程度に圧縮できると見込んでいる。ランニングコストも毎年百億円単位でのしかかる。これを国民が新たに負担し続けるわけだ。費用対効果の面で疑問符が付く。とくに個人や法人のお金の出入りを照合するシステムではないので、大幅な税収増にはつながらない。
 マイナンバーは住民基本台帳の住民票を基に個人情報を管理する。さまざまな理由で住民票の住所に住んでいない人、住民票さえない人々は、公的サービスから締め出されることになりかねない。弱者排除の面もあるわけだ。
 サイバー犯罪などが絶えないネット時代には、個人情報の集約と集積は、かえってプライバシー保護の点から危険でもある。社会保障番号を使う米国では、なりすまし犯罪が絶えないことから、州法で利用を制限したり、国防総省では国防上の観点から職員や家族に独自の番号を採用している。ドイツでは税分野に限定することで、なりすまし犯罪に利用されることを防いでいる。世界の潮流は明らかに日本とは異なる。
 二〇一六年から運用開始というが、本当に共通番号制が必要か。根本からの議論が足りない。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO52329880S3A300C1EA1000/より、
日経新聞 社説 マイナンバー法を今度こそ成立させよ
2013/3/2付

 安倍政権が社会保障・税の共通番号法案(マイナンバー法案)を国会に出した。年金や医療制度が複雑になるなかで、高齢層を中心とする受給者の利便を高めるためにも導入は待ったなしだ。
 法案は野田前政権が2012年の通常国会に出し、同年11月の衆院解散にともない廃案になったものが土台になっている。番号制への医療情報の適用を除くなど不十分な点があるが、まず成立させるべきである。精力的で中身の濃い審議を与野党に望みたい。
 番号制は国民一人ひとりに固有の番号をふり、年金や健康保険の保険料納付や受け取り、納税に生かすものだ。付番にあわせて政府は顔写真つきのICカードを市区町村を通じて各人に配る方針だ。
 スマートフォンなど持ち運びできる情報端末が普及し、カードでなくとも本人確認できる可能性がある。国会審議では費用と便益をてんびんにかけ、カード配布について結論を出してほしい。
 同時に政府は、各人が自宅のパソコンで各種の情報を確認できるようにする。国民の側にとっては、社会保障の負担・受益についてお金の流れが見えやすくなる利点がある。国・地方自治体の行政事務の効率化も期待できる。
 法案には足らざる点もある。番号制の適用範囲に医療情報をふくめていないことだ。適用に反対する日本医師会を厚生労働省が説得し切れていない。医師会が主張するように、医療情報は個人情報のなかでも機微に触れる要素がとくに強い。かりに診療録や服薬歴が第三者に漏れた場合は、取り返しがつかなくなる。
 政府は情報漏洩や悪用を防ぐねらいで、公正取引委員会と同じ権能を持つ委員会を内閣府外局として新設する方針だ。目的外の利用や情報漏洩にかかわった公務員には厳罰でのぞむ。堅固な体制をつくるのだから、医療情報への適用や民間企業の利用について早急に検討をはじめるべきである。
 また個人情報保護のゆきすぎが番号制の利用のさまたげになる事態も予想される。この問題を改善する責任は消費者庁にある。
 先の長崎市のグループホーム火災は、リコール対象の加湿器が火元だった。製造元が購入者情報の管理に番号制を生かす仕組みがあれば、万一リコールの必要が生じても回収率を高められる。民間利用にはこうした利点があることを考えて番号制を育ててほしい。

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