裁判員制度 「守秘義務を見直せ」

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013052102000126.htmlより、
東京新聞【社説】裁判員制度 市民参加深めるために
2013年5月21日

 裁判員制度が施行されて、四年になる。厳しい守秘義務や、有罪か無罪の評決の前に被害者が意見を述べる仕組みなどは手直しが必要ではないか。市民参加の意義を深める制度へ発展してほしい。
 裁判員に選ばれる前は「やりたくなかった」という声が52・5%だが、裁判終了後には「よい経験と感じた」という声が95・4%も占めている。最高裁がまとめた検証報告書からは、裁判に参加した市民が、この制度を肯定的にとらえていることが読み取れる。
 初公判から判決までは、平均六日程度で、かつては半年も要していたことと比べると、大幅に短縮された。その一方で、初公判前に裁判官と検察官、弁護士で争点を絞り込む公判前整理手続きが長期化している。争いのある事件では、九カ月もかかっている。
 これは問題だ。検察側が全証拠のリストを開示することで、弁護側は被告に有利な証拠を集めやすくなる。同時に争点も明確になるだろう。全証拠のリスト化は早期に実現してほしい。
 心のケアにも、もっと配慮が必要だ。死刑を言い渡した事件で、福島県の女性が「急性ストレス障害」と診断され、今月、国家賠償を求める訴訟を起こした。メンタルヘルスサポートの仕組みがあるが、全国二百十七カ所の提携先で、無料カウンセリングの利用は五回までと制限されている。もっと手厚いケアが望まれる。
 裁判員に課される守秘義務も重すぎる。判決に至る経緯や評議の内容は、生涯、口にしてはならない定めで、違反の場合は懲役刑の罰則まである。これでは精神的な負担になるのは当然だ。
 むしろ、市民がどのように考えて、結論に至ったかをある程度、オープンにした方が、将来、裁判員になる人にも参考になり、社会的な蓄積にもなるはずだ。守秘義務の緩和へ踏み出してほしい。
 何より改善を求めたいのは、被害者や遺族が法廷で意見を述べる場面だ。まだ被告が有罪か無罪か決まっていない段階で、悲痛な思いや、犯人を憎む気持ちを吐露したら、裁判員の判断に影響を及ぼさないだろうか。いったん有罪か無罪を評決し、有罪の場合に限り、法廷で被害者・遺族の意見を聞くのが筋ではなかろうか。
 裁判員に期待されるのは、市民の常識と良識である。「よい経験だった」という積み重ねこそ、この制度の浸透をより深め、民主主義を鍛え直す。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO55229000Q3A520C1PE8000/より、
日経新聞 社説 裁判員の守秘義務を見直せ
2013/5/20付

 裁判員制度の導入から21日で4年となる。裁判員法は施行から3年過ぎた後に見直しを検討するよう定めており、制度の改善をめぐる議論は大詰めを迎えている。
 法務省の検討会は、見直し作業のたたき台となる報告書を3月に公表した。極めて長期の審理が予想される事件を対象から外すことや、大災害が起きた地域の住民を裁判員の候補から除外するなどの改善点をあげている。ともに重要な検討課題である。
 だがこれだけでは不十分といわざるをえない。報告書では、裁判員に課せられている守秘義務について、現状維持を求める意見が多数を占めているからだ。
 国民全体で裁判員の経験を共有し、より良い制度にしていくためには守秘義務の範囲縮小が欠かせない。この問題は制度導入の前から指摘がなされている、見直しの最大のテーマである。6月に予定される最終報告に向け、いま一度踏み込んだ議論を期待したい。
 裁判員になると、判決に向けて話し合う評議の内容や経緯について口外することを、生涯禁じられる。違反した場合は最高で懲役6月の罰則まで設けられている。裁判員の精神的負担は重い。
 「評議で自由な意見交換ができなくなる」との理由は理解できる。しかし現状では自由な意見交換がされているのかさえわからない。
 たとえば被告が犯行を否認するなか、状況証拠だけで死刑判決か無罪かを選ぶような、厳しい判断が迫られるケースがある。
 判決の結果は別にして、裁判員がどのような議論を経て証拠を判断したのか。裁判官はどのように助言し、説明を尽くしたのか。守秘義務を緩和し、こうした点を明らかにして初めて、制度全体の有効な検証が可能になる。
 被害者のプライバシーや、個人の発言を特定するようなやり取りは明かさない。こうした点を守れば、ことはたりるのではないか。裁判員の経験を次の裁判員が教訓として受け継いでいけなければ、制度の発展につながらない。

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