火山国の備え 「富士山は噴火するのか」

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO55319100S3A520C1EA1000/より、
日経新聞 社説 火山災害から「想定外」なくせ
2013/5/22付

 内閣府の有識者検討会が火山噴火対策の強化を提言した。東日本大震災後、火山の活発化に研究者が警戒を強めているが、地震や津波に比べて火山防災は後手に回っている。行政、企業、市民が連携し、大規模噴火を「想定外」としない対策づくりを急ぎたい。
 2004年のスマトラ沖地震後にインドネシアで噴火が相次いだように、大地震が噴火を誘発した例は多い。列島に110ある活火山でいまのところ噴火の兆候は観測されていないが、「どこかで、いつ起きてもおかしくない」と火山学者は注意を呼びかけている。
 日本は火山国でありながら、防災体制は貧弱だ。住民の避難計画があるのは鹿児島県の桜島など一部にとどまり、数十~数百人が避難する中・小規模の噴火しか想定していない。溶岩流や火砕流などの被害予想を示した防災マップづくりも遅れている。
 検討会はこうした状況に危機感を強め、特に注意が必要な47火山で広域の避難計画づくりを提言した。大規模噴火が起きれば1つの火山で数千人以上が避難を強いられる。事前に都道府県の枠を越えて受け入れ先を決めるなど、地元住民の安全を守る対策は急務だ。
 不安が残るのが、大量の火山灰が降る噴火に対して都市があまりに無防備なことだ。
 富士山が1707年の宝永噴火と同じ規模で噴火すると、東京では2~10センチの火山灰が積もる。車がスリップして交通がまひするほか、送電線の漏電による大規模停電、水道の給水停止など、社会や経済の混乱が予想される。だが提言は「被害想定が困難」として、具体的な対策を盛らなかった。
 国が運輸、電力会社などに予想される被害の規模などの情報提供を求め、被害想定を示すことから対策づくりを始めるべきだ。
 一般企業や市民も火山灰による健康被害をどう防ぐかや、灰をどこに処分するかなど、課題が山積する。行政だけにまかせず、企業や市民も自身の問題としてとらえて対策を探るときだ。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年 5月 20 日(月)付
火山国の備え―研究と防災を近づけよ

 2年前、東日本大震災の本震から4日後の夜、おおぜいの火山学者が緊張した。富士山の真下を震源とするマグニチュード6・4の地震があったからだ。
 巨大地震の直後から数年のうちに、周辺で火山の噴火が起きる。
 そんな世界的な経験則そのままに、富士山が噴火するのではないかと考えたのである。
 さいわい、その後、富士山やほかの火山で変わったことは観測されていない。
 これを機に内閣府の有識者会議は大規模火山災害への備えを点検し、先週、政府主導で具体的な対策を急ぐよう提言した。
 110の活火山がある世界有数の火山国にしては、現在の防災体制は地震以上に貧弱で、相当のてこ入れが必要だ。
 有識者会議の提言は、ないないづくしの現状を訴える。
 火山灰が大都市に与える影響が十分にわかっていない。実践的な避難計画は霧島山と桜島にしかない。特に注意が必要な47火山でさえ観測体制は必ずしも充実していない。火山防災に関する研究や予算をまとめる組織がない……、といった具合だ。
 火山の防災について、政府の取り組みはきわめて弱かった。
 1914年の桜島大正噴火から100年近く、比較的静穏な時期が続き、切実感がなかったことが根本原因だ。
 しかし、研究と防災に長期的に取り組む必要があるのは明らかだ。提言が求めるように、政府主導で進めるべきだ。
 現在、日本の火山研究者は大学に約40人。気象庁や国土地理院、各省の下の研究機関を合わせても約80人で、活火山の総数にも足りない。まとめ役の気象庁は政府内で発言力が小さい。
 まず、地震の調査研究と防災をつなぐ地震調査研究推進本部のような仕組みをつくるべきだと提言は求めている。この組織は中央防災会議の意見にもとづき、防災上の要請を反映させた調査研究計画を決めて、役立っている。
 地震と別に本部をつくるかどうかは置いて、火山研究に防災の観点を強めることができるだろう。従来は研究者の責任感に頼りすぎだった。人材を育てながら研究と防災の距離を縮めないと、資金面でも人材面でも火山防災は前に進まない。
 海外を見ると、米地質調査所が有名な米国をはじめ、イタリアやインドネシア、フィリピンといった火山国は先を行く。人材を一つの組織に集め、監視・研究だけでなく火山情報の発表やハザードマップ(災害予測図)づくりも担っている。

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