強い農業 「所得倍増できるはずです」?

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130527/fnc13052703170000-n1.htmより、
産経新聞【主張】農業と成長戦略 「世界で勝つ」決意を胸に
2013.5.27 03:17 (1/2ページ)

 環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉に日本が7月から参加することが正式に決まり、国内農業の強化策が一段と脚光を浴びている。
 農業政策は、今夏の参院選でも大きな争点となる。安倍晋三首相が先頃明らかにした成長戦略第2弾でも、インフラ輸出などとともに、農業についても「世界で勝つ」をキーワードとして、競争力強化を目指す決意を示したのは当然だ。
 この中で首相は、今後10年間で農業・農村全体の所得を倍にし、平成32年までに農林水産品の輸出額を1兆円へと倍増させることなどを明らかにしている。
 だが、問題はスローガンに肉付けする具体策だ。数値目標を示す以上、首相は達成への具体的根拠と道筋も併せて示し、与野党の活発な議論を促す責務がある。成長戦略を選挙向けの「絵に描いた餅」に終わらせてはならない。
 首相も認めたように、日本農業を取り巻く状況は極めて厳しい。農業従事者の平均年齢は66歳で、耕作放棄地は滋賀県全体とほぼ同じ面積になった。保護政策を最優先し、他産業のような生き残りへの体質強化を怠ってきたツケが一気に噴き出したともいえる。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130527/fnc13052703170000-n2.htmより、
2013.5.27 03:17 (2/2ページ)
 安倍首相は、生産から加工、流通・販売まで一体で手がける「6次産業化」を農業再生の柱に据えた。新たなビジネスモデルの構築を目指す意欲がある生産者には、公的資金による経営支援制度「儲(もう)かる農業開拓ファンド」を設ける考えも示した。その方向性は基本的に正しいだろう。
 ただ、今回の戦略には、増える耕作放棄地を「農地集積バンク」に集め、意欲ある担い手に貸し出す仕組みなど、発表済みのものも少なからず含まれている。
 首相は農家への「新たな直接支払い制度」の創設にも触れたが、自民党がバラマキと批判する民主党政権時代からの戸別所得補償制度との違いは分かりにくい。
 何より、規制改革にほとんど触れていないのは解せない。硬直した農業委員会制度の見直しや企業の農業参入規制の緩和などは、農地の集約化や経営の効率化を進めるうえで避けては通れない。
 首相は自らを本部長とする「農林水産業・地域の活力創造本部」の初会合で「農林水産業を若者に魅力ある産業にし、日本の農山漁村、故郷(ふるさと)を守る」と述べた。その決意の実行が問われている。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO55504010X20C13A5PE8000/より、
日経新聞 社説 市場に目を向け経営感覚を磨け
2013/5/27付

 日本の農業が産業として育つためには、それぞれの農家が市場の動きに目をこらし、生産と販売手法に反映させていくことが重要だ。農産物の買い手である消費者と企業に対して、栽培の工夫や品質の強みを的確に伝える努力も求められる。
 内外の市場を開拓し、農産物の付加価値を高めるために農家はつねに買い手を意識し、経営感覚を磨いてほしい。

崩れる生鮮市場の常識
 イチゴ、スイカといった好きな農産物をスマートフォンなどで育て、できあがると生産者から実際に新鮮な作物がとどくゲーム通販「畑っぴ」は、2010年のサービス開始から参加者が増え続け、ついに2万人を超えた。
 「30代後半から40代の主婦が多く、一般的なネットゲームの顧客層とはまったく違う」とゲームの運営会社は驚く。
 生鮮品は自分の目で確かめないと買わない――。つい数年前まで、これが消費者行動についての常識だった。だからネット通販なんて広がらない、と。ところが、今では楽天、ヤフーなどが手掛けるネット商店街には野菜や果物、コメなどを売る店が目白押しだ。
 千葉大学で植物工場の研究を進める丸尾達教授のもとには、食品企業から早く工場を本格普及させてほしいと要請が強まる。「野菜需要もすでに半分は業務・加工向けだ。供給量や価格の安定、雑菌の少なさなど企業が重視する要素は一般の消費者とは違う」
 消費者の購買動機や需要の変化は加速し、常識と思われたものが通用しなくなる。消費者と企業は農産物や販売手法のどこに魅力を感じ、購入に動くのか。農家は四方八方にアンテナを張りめぐらさないと市場での競争力を失う。
 農林水産省の調べで、11年8月から今年2月までにコメの先物取引で現物決済に使われた銘柄は、風評被害に苦しむ福島県産コシヒカリに次いで新潟県産コシヒカリが多く、全体の2割強を占めた。
 先物の受け渡し決済に使われるのは、買い手に人気があるからではなく、現物のコメ市場で荷余り感が強いからだ。コメ先物を上場する大阪堂島商品取引所は3月、新潟コシヒカリを受け渡しに使う際の割増金を10月決済からなくすことを決めた。もはやプレミアムはないと判断されたわけだ。
 ブランド米の代名詞だった新潟コシヒカリ。生産者や産地農協にはブランド力を過信し、今まで通りにつくれば売れると考えた油断がなかっただろうか。
 オーストラリア産牛肉は日本市場で4割の販売シェアを握る。理由は03年に発生したBSE(牛海綿状脳症)で米国産の供給が激減したことだけでなく、豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)が進める綿密なマーケティング活動が見逃せない。
 畜産農家はMLAに牛1頭あたり数豪ドル(1豪ドル=約98円)のお金を出し、それがMLAの原資になる。農家には自分の出したお金がどれだけ市場開拓に奏功したかの結果とともに、日本の消費者や企業が豪州産食肉のどこに魅力を感じ、どこに不満を持つかの情報が送り返される。

競争が付加価値を生む
 海外産地を脅威と考え、守りを固めるだけでは国内農業は成長しない。海外の生産者がどのように市場を開拓しているのか、日本が「攻めの農業」をめざすなら学ぶことは多いはずだ。
 安倍晋三首相は農産物の付加価値を高め、輸出を伸ばすことで農家の所得を10年間で倍増させる成長戦略を打ち出した。だが、肝心の農家が競争力を強めようと意識し、創意工夫を打ち出さなければ所得は伸びない。
 農家が新たな付加価値を生むためには、市場での活発な競争が必要だ。政府に求められるのは横並びの保護ではなく、思い切った規制改革で農家や企業が自由に競争できる環境をつくることだ。
 名古屋大学の生源寺真一教授は「農家が消費者をつかみ、市場の声に耳を傾けることはビジネスとしての農業の面白さにつながる。それが若い人を農業に引きつけることにもなる」と指摘する。
 国内でも近江牛などのブランド和牛産地が香港、シンガポールといったアジア市場の開拓に乗り出した。こうした動きを農産物全体に広げ、農家や農業団体の意識改革につなげたい。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013052600070より、
農業公約に疑問の声=道筋見えぬ「所得倍増」-自民

 夏の参院選で自民党が公約に掲げる「農業・農村所得倍増目標10カ年戦略」の実現に、党内で疑問の声が広がっている。党は石破茂幹事長をトップとする実施本部を週内にも設置し、詳細を詰めるが、説得力を伴う公約に仕立て上げられるかは不透明だ。
 10カ年戦略は4月25日、党の農林部会などの合同会議で決定した。安倍晋三首相が3月、環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加を表明し、党側は、参院選に向けて農家の不安を和らげるには、大胆な計画を打ち出す必要があると判断した。
 所得倍増のための具体策として、同戦略は、農地の集約を進めて農地利用面積を8割に引き上げたり、新規就農者を年間2万人に倍増したりするとしている。首相も先に発表した成長戦略第2弾で、「農業・農村の所得倍増」を目指すと表明。6月にまとめる成長戦略の柱の一つに据える方針だ。
 ただ、これらの具体策を実現するための工程表は示されていない。倍増するとしている「農業・農村所得」の基になる水準もはっきりせず、今後の実施本部の議論に委ねられている。
 10カ年戦略について議論した5月24日の党農林部会では、「絵に描いた餅に終わる」「所得倍増の言葉だけが独り歩きしている」といった懸念の声が相次いだ。
 自民党は当初、「所得倍増」と言い切ろうとしたが、農水省が「根拠がない」と難色を示し、「目標」の文言を付け加えた経緯がある。それでも「無理がある」(自民政調幹部)との声は多く、有権者への説明に苦慮しそうだ。(2013/05/26-14:06)

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130520/plc13052003190005-n1.htmより、
産経新聞【主張】成長戦略第2弾 規制改革もっと踏み込め
2013.5.20 03:19

 これから放たれる矢が日本経済の先行きを決める。そう言ってもいいだろう。「アベノミクス三本の矢」の最後となる成長戦略のことだ。
 安倍晋三首相が成長戦略の第2弾として企業の設備投資や農業活性化の支援策を表明した。「世界で勝つ」を合言葉に、日本の工業製品や農産品の輸出拡大を目指すとした。
 円高修正が進んで輸出環境は大きく改善している。日本を世界に売り込もうという戦略の方向性は正しい。「絵に描いた餅」に終わらせないため、6月にまとめる成長戦略では規制緩和などの肉付けをしなければならない。
 議論の舞台となった産業競争力会議では、企業の国際競争力を強化するため、先進国の中で高い法人税の実効税率の引き下げや解雇規制の緩和を求める意見が強かった。夏の参院選を控えて抵抗が強い改革は見送られる方向といわれるが、こうした取り組みから逃げてはなるまい。
 日本経済の底力を高めるには民間活力の喚起が欠かせない。それには成長戦略を通じて企業の設備投資を促し、技術革新を加速させる必要がある。
 第1弾では働く女性の活用などを盛り込んだ。続く第2弾は今後3年を「集中促進期間」と位置付け、税制優遇などの政策総動員で設備投資の1割拡大を図る目標を示した。リース活用による投資支援などを打ち出したが、これだけでは力不足が否めない。
 農産品輸出や農業所得の倍増計画も示した。こうした「攻めの農業」を実現するには、農業の効率化に向け、拡大が続く耕作放棄地を含めた農地の集約化が欠かせない。農家の高齢化も進んでおり、次代の農業の担い手を育てることが不可欠である。
 しかし、企業による農地保有や農業生産法人への企業出資の緩和などの規制改革には踏み込んでいない。これでは農業への新規参入は見込みにくい。農地の賃貸や売買の許可権限を持つ農業委員会の役割などを見直し、大規模農家の育成を図るべきだ。
 産業競争力の強化には、安価で安定的な電力供給も忘れてはならない。だが、原子力発電所の再稼働が進まず、電気料金の引き上げが相次いでいる。
 成長戦略では投資支援に加え、安全性を確認した原発の早期再稼働も打ち出すべきだ。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013051802000135.htmlより、
東京新聞【社説】成長戦略第2弾 危うくないか所得倍増
2013年5月18日

 安倍政権が成長戦略の第二弾をまとめ、農産品輸出拡大などに加え「農業の所得倍増」も打ち出した。しかし、実現には危うさがつきまとう。参院選を前にした選挙対策だとわらわれないか。
 安倍晋三首相が東京都内で行った講演で「正式に『農業・農村の所得倍増目標』を掲げたいと思います」と語った。
 あえて「正式に」と念を押したのは、自民党農林部会が決定済みの「所得倍増目標」を追認したからだ。自民党は補助金を含む三兆円の農業所得を十年間で六兆円に引き上げる「所得倍増」を明示する方針だったが、党内から懐疑的な意見が相次ぎ、目標に格下げした経緯がある。
 首相はそれでも「施策の総動員で、必ずや所得は倍増できるはずです」などと、自ら過大とさえいえる期待感をにじませた。作り話に終わらないか気がかりだ。
 所得を倍増させる三兆円は、攻めの農業で見込まれる農業所得の増大を当て込んでいる。政府は農林漁業の業域を加工や販売などにも広げる六次産業に発展させ、現在の生産額を十年で一兆円から十兆円に増やし、二兆円を活用しようとのもくろみだ。他の政策も含め計三兆円を捻出する算段だ。
 二〇一一年、農業を主業とする農家と準主業の農家を合わせた一戸当たりの年平均農業所得は百二十二万円にとどまる。主業の平均農業所得は四百七十万円に達したが、準主業は工場勤めなど農外収入がないと生活維持が難しい。
 それだけに、首相の突然の所得倍増発言をいぶかる農業関係者は決して少なくないだろう。
 今、真摯(しんし)に向き合うべきは農業活性化を中心に据えた成長戦略第二弾の内容ではないか。農地集約や農産品の輸出拡大を着実に進め、高齢化が著しい農業に多くの若者を呼び込む政策が何より欠かせない。
 農業に携わる人は減り続け、就業者二百五十二万人の平均年齢は六十六歳を超えた。三十九歳以下の若い新規就農者は増えてはいても、低収入などを理由に定着するのは年一万人ほどにすぎない。日本農業は自壊の道をひた走っているようにさえ映る。
 首相は今夏の参院選を見据え、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加に対する農業関係者の反発を和らげようと所得倍増を打ち出したのだろうが、夢をばらまくだけでは強い農業は望めない。食べていける農業の姿を、女性も呼び込める政策を丁寧に示すべきだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130518ddm003010099000c.htmlより、
クローズアップ2013:安倍政権、成長戦略第2弾 経済上向き、鼻息荒く
毎日新聞 2013年05月18日 東京朝刊

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」の成長戦略第2弾は、4月に発表した医療、雇用、子育て分野の成長戦略に続いて、民間投資拡大や農業所得の倍増、大学改革などが盛り込まれた。歴史認識問題が再燃し、国の内外で批判が高まる中、金融緩和と財政政策というアベノミクスの「矢」で円安・株高が続く経済分野は政権の追い風。ただ、成長戦略は、経済成長のためもっとも重要といえる三本の矢の一本だけに、その実効性が問われる。

 ◇政策具体化は途上
 「農業の構造改革を、今度こそ確実にやりとげる」。安倍晋三首相は17日の講演で、こう述べ、「農地集積バンク」の新設、農産物輸出の1兆円への倍増や、「10年間で農業・農村全体の所得を倍増させる」目標などを打ち出した。
 歴代政権はこれまで、デフレを脱却し、経済成長を進めるための施策を打ち上げては、十分な成果を出せなかった。安倍首相も2007年の第1次内閣で13年までに農産物輸出を1兆円に増やす目標を打ち出したが、福島第1原発事故に伴う風評被害などで12年の輸出額は4497億円と07年の5160億円のピークから減少している。今回は、国別、品目別に輸出戦略を作り、目標に再チャレンジする。
 政府が輸出拡大の主力と考えているのはみそやしょうゆのほか、麺類やおかずなど日本食のレトルト食品といった加工品。アニメなどの日本文化を広げるクールジャパン戦略と連携して日本の食文化の浸透を図り、輸出額を12年の1300億円から5000億円に拡大することを狙う。ただ、加工品の原料は小麦や大豆など輸入に頼っている品目が多く、国内の生産者に対するメリットは大きくない。このため、JA全中の万歳(ばんざい)章会長は「輸出拡大がすぐに日本農業再生につながるとは考えにくい。過大な期待は的外れだ」と懸念を示す。
 農業の生産性を上げるための農地集約で安倍首相は「農地集積バンク」を提唱した。都道府県単位で設置する「農地中間管理機構」が、貸し出しを希望する農家や耕作放棄地の所有者から借り上げ、大規模農地に整地するなどしてまとめて貸し出す。今後10年間で、各地域の中心的な農業経営体に農地の8割を集積させることが目標だ。農地所有の自由化を求める声が企業などから強く出ているが、首相はそこまで踏み込まなかった。
 また、首相は景気拡大に直結する民間の設備投資を促進させることも強調し「国内投資を阻害する要因は一掃する」と訴えた。今後3年間を「集中投資促進期間」と位置付けるといい、企業の設備投資額を1割程度引き上げ、08年のリーマン・ショック以前の水準、年間70兆円規模とする目標を掲げた。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130518ddm003010099000c2.htmlより、
 企業が必要とする新技術の応用などのための規制緩和を一定期間、特例でその企業だけに認める「企業実証特例制度」も新設するという。ただ、経済産業省が「具体的な検討はこれから」というように、政府が6月に策定する成長戦略にどこまで具体策を盛り込めるかは不透明な部分も多い。首相は講演で、「(企業経営者は)雇用や報酬という形で、働く人たちに果実を行き渡らせてほしい」と述べたが、有効な政策の着実な実行にかかっているといえる。【中井正裕、大久保陽一】

 ◇歴史認識、争点化避け
 「強い経済あっての外交、安全保障、社会保障だ。経済政策に軸足を置いて、これからも政策運営にあたっていく」−−。安倍首相は17日、成長戦略第2弾を盛り込んだ講演の締めくくりで、経済政策に最優先で取り組む姿勢を強調した。
 4月に発表した第1弾は「女性の活躍は成長戦略の中核」と医療や雇用、子育てに焦点を当て、支持層の掘り起こしを狙った。今回は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉参加によるダメージを懸念する農林水産業に対し、「『強い農業』をつくり上げる」とメッセージを送った。
 農業分野を重視したのは、TPPの交渉参加になお慎重な農業団体に配慮するのが狙いだ。首相は18、19両日、大分、佐賀、福岡各県を訪問し、耕作放棄地を活用して農業の6次産業化に取り組む企業などを視察予定。しかし、「10年間で農業・農村全体の所得を倍増させる」という目標は、自民党が参院選公約で掲げる「所得倍増目標10カ年戦略」を踏襲したにすぎず、具体的な戦略はこれからだ。
 政府は経済再生への取り組みをアピールするため、成長戦略のメニューを小出しに公表する戦術をとってきた。政府関係者は第2弾の取りまとめについて「講演前日の16日までずれ込んだ」ともらす。6月中旬に成長戦略全体の発表を予定しているが、「目玉探し」の難しさものぞく。
 安倍政権下では、首相の発言や閣僚の靖国神社参拝を受けて、歴史認識問題が再燃している。高支持率を保っているものの、中国、韓国に加え、米国からも懸念の声が浮上。政府・自民党は夏の参院選を控え、主要争点を歴史認識から経済へと仕切り直そうとしている。
 元々、参院選までは金融・財政政策を中心に手堅く政権運営し、与党で参院の過半数を確保した後、憲法改正など念願の課題に着手するというのが、首相の基本戦略。一時、改憲の発議要件を緩和する96条改正を参院選の争点に掲げることにも意欲を示したが、ここにきて、経済重視へ「原点回帰」の姿勢を鮮明にしている。【鈴木美穂】

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年 5月 13 日(月)付
農地の集約―構造問題にこそメスを

 農林水産省が水田を念頭に、農地を集約して経営規模を大きくする対策をまとめた。
 都道府県ごとにある農業公社の役割を改め、農地の「受け皿機構」にする。これまでは売買での集約に主眼を置いていたが、まずは機構が農地を借り受け、区画を大きくする基盤整備もして貸し出す。
 特に耕作放棄地については、所有者すらわからない場合、一定の手続きに従って利用権の設定を進めていく。
 ざっとそんな内容だ。面積など具体的な目標を掲げて取り組むという。
 規模を大きくすれば生産コストが下がり、安く売ることができる。低迷する国内のコメ消費をてこ入れし、輸出を伸ばしていく可能性も広がる。
 ただ、これで農地の集約が本当に進むのか。基盤整備に名を借りた公共事業を増やすだけに終わらないか。心配である。
 コメでは、経営規模の拡大が長年の課題だ。成果があがっていないのはなぜなのか。
 たとえば、ほぼ市町村ごとに置かれている農業委員会のあり方だ。農地の貸し借りや売買に大きな権限を持つが、恣意(しい)的な農地転用など、不透明な運営が批判されてきた。どこをどう改めていくのか。
 農家に対する経営所得安定対策(旧戸別所得補償制度)も見直しが欠かせない。
 基本的に、零細な兼業農家でも水田の面積に応じて現金を受け取れる今の仕組みは、農地を売ったり貸したりすることへの妨げになっている。
 自民党も、民主党が決めたこの仕組みを「バラマキだ」と批判してきた。なぜ放置しているのか。
 生産コストを下げるには、やる気のある農家や企業が、創意工夫を重ねながら自由に生産できる環境が不可欠だ。コメ消費の低迷にあわせて作付面積を抑える生産調整(減反)の見直し・廃止も避けられない。
 農水省が、こうした構造問題にメスを入れないまま、「攻めの農林水産業」を掲げても、空虚に響くだけだ。参院選での農業票を意識する自民党に配慮しているのなら、本気度を疑われても仕方あるまい。
 日本が交渉に加わる環太平洋経済連携協定(TPP)では、農業、とりわけ高関税で守ってきた米作への影響が必至だ。一定の対策と、それに伴う予算が必要になるだろう。
 しかし、農地の有効活用が進まなかった過去の対策への真剣な反省なしでは、納税者の納得は得られまい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013051202000147.htmlより、
東京新聞【社説】週のはじめに考える 大胆な農業改革に踏み出せ
2013年5月12日

 大胆な金融緩和の効果もあって、景気に明るい光が見えてきました。この後、日本経済を成長軌道に乗せるには、農業をはじめ大胆な改革が不可欠です。
 円安を背景に企業の好調な決算が相次いでいます。東京証券取引所の平均株価は一万四〇〇〇円台を突破しました。日銀の展望リポートも景気の先行きについて「本年央ごろには緩やかな回復経路に復していく」と書いています。
 これは、いわゆる「アベノミクス」効果を否定できません。衆院解散で安倍晋三政権の誕生が見込まれた昨年十一月以来、平均株価は六割も上昇しました。

◆民主党政権以来の懸案
 野党や経済専門家の中には「やがて資産バブルになるだけ」とか「家計に恩恵が回っていない」と批判する声もありますが、これだけ株価が上がると、期待が盛り上がるのは当然ですね。企業の業績回復は、いずれ雇用やボーナス、賃金に跳ね返るはずです。
 さて、では日本経済はもう安心かというと、残念ながらそうは言えません。金融緩和ができるのはデフレ脱却まで、景気刺激効果にしても、せいぜい目先二、三年程度の話にすぎないでしょう。
 この先、息の長い成長を目指そうと思えば、日本経済の構造的あるいは制度的な難問に踏み込んでいく必要があります。その代表的分野の一つが農業です。
 農業改革は民主党政権でも重要課題の一つでした。いまとなっては忘れかけていますが、民主党政権も規制・制度改革委員会を作って農業ワーキンググループで取り組んでいたのです。
 当時の資料をみると、いまの安倍政権が取り組もうとしている課題と重複していることに気が付きます。たとえば「農業生産法人の要件緩和」。これは株式会社が農業に参入しやすいように、農業生産法人の設立条件を緩和してはどうか、という案件でした。

◆TPP参加を追い風に
 現在の農地法では、農業者以外の人が農業生産法人に出資して事業を始めようとすると、厳しく条件が課せられます。出資比率はもちろん事業内容、役員の業務が定められ、満たさないと設立できません。そういうハードルを低くしようとしたのです。
 しかし結局、条件緩和は実現せず今日に至っています。同じテーマはいまの規制改革会議でも一応、テーブルの片隅には上がりかけました。しかし、まだ具体的な議論は始まっていません。
 農家は平均年齢が六十五歳を超えて高齢化が進んでいます。中には「農地を貸して自分は土地代で暮らしたい。相手は会社でもいい」という声もあります。ところが「株式会社は採算が悪化したら撤退する。耕作放棄地が増える」など、訳の分からない反対があって結論が出ませんでした。
 民主党時代の資料には「農業委員会のあり方の見直し」といった項目もあります。農業委員会は法律に基づいて選挙で委員が選ばれる仕組みになっていますが、実際には、地元の農協や土地改良区代表といった農業の利害関係者が選ばれるケースが多い。
 農業委員会の仕事は何かといえば、農地転用に関して許可権者の都道府県知事に意見を述べることです。現実には委員会が「ダメ」と言えば転用は難しくなるので、事実上の許可権限を握っている、と言ってもいい。
 当時の議論はここにメスを入れて、農業委員会のあり方を抜本的に見直そうとしたのです。農地が宅地に転用されれば、巨額の含み益が転がり込む。まさしく既得権益に切り込もうとしたのですから、大変な話でした。
 こういう改革を断行しようとすれば、政治家は血を流す覚悟が必要です。たとえば農協には正・準組合員合わせて約九百五十万人の組合員がいると言われますが、家族・親類を加えれば五千万人近いでしょう。選挙では無視できない大変な勢力になります。
 安倍政権は環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加を表明しました。七月にも正式な議論に加わる予定です。まずは聖域なしで関税引き下げを議論するTPPに参加するなら、農業改革は待ったなしの課題になります。
 安倍首相は「農業を成長産業にする」と言っています。それなら単なる国内対策だけでなく、輸出拡大を目指した品種改良やマーケティング、海外セールスの強化策も不可欠でしょう。

◆抵抗勢力の岩盤と戦え
 あえて言えば、財政金融は「決めればできる」手軽な政策です。カネを出して文句を言う人は少ないのですから。しかし規制改革には抵抗勢力が必ずいて、霞が関を含めた厚い岩盤と戦わねばなりません。そこを突破できるかどうか。試金石は農業改革です。政権の姿勢をしっかり見なければ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130506k0000m070100000c.htmlより、
社説:農業強化策 農地集約へ本気を示せ
毎日新聞 2013年05月06日 02時33分

 「農業の担い手の所得が10年で倍増する姿を目指す」。自民党が夏の参院選公約で掲げる目標だ。その実現に向け、政府は農地の貸し借りを仲介して経営規模拡大を図る管理組織の新設を打ち出した。
 農業の構造改革は、待ったなしの課題である。政府・自民党の取り組みを環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉参加への農家の不満をそらすパフォーマンスに終わらせてはならない。
 現在、地域の中心になる「担い手農家」が耕作している農地は全体の半分弱にとどまる。自民党の公約は10年で担い手に農地の8割を集約させ、再生可能な耕作放棄地もフル活用することを目指す。
 稲作農家の平均農業所得は、耕作面積が平均1ヘクタール程度の現状では110万円にとどまるが、20ヘクタール規模になれば1000万円を超える。ところが、規模拡大はなかなか進まない。一方で耕作放棄地は年々広がり、今では滋賀県の広さに匹敵する。
 そこで政府が打ち出したのが、都道府県ごとに農地の賃貸借を仲介する管理組織の新設だ。貸し出したい農家や耕作放棄地の所有者から管理組織がいったん借り受け、大規模農地に整備して希望者に貸し付ける。整備の費用は管理組織が負担する。株式会社が農地を借りて、農業に参入することもできる。
 都道府県ごとの農地仲介機関は今もあるが、売買を中心にしているうえに財政基盤が弱いため、実績は上がっていない。新しい管理組織は、それらを賃貸借中心に作り替え、数千億円規模の財政資金を投入して財政基盤を強化するという。農地の集約、耕作放棄地の解消に本腰を入れる取り組みとして評価したい。
 もっとも、農地集約と矛盾した政策を温存するようでは、その本気度が疑われる。例えば、安倍晋三政権が民主党の戸別所得補償制度に代わって導入した補助金制度だ。
 農地を農地として維持することが目的で、コメに限らず、麦・野菜などの畑作や畜産農家も対象になる。零細農家でも農地を使っていれば補助金をもらえるわけだから、貸し出す気にはなるまい。必要不可欠な所得補償は残しつつ、集約を加速する制度に改めるべきだ。
 都市近郊には、耕作もしないのに宅地への転用、高値での転売期待から農地を抱え込んでいる農家も少なくない。そうした現実への対応も工夫すべきだろう。
 規模拡大による経営の効率化を促しながら、効率を落とす生産調整(減反)を維持するのも矛盾ではないか。「所得倍増」を絵に描いた餅に終わらせないよう、足並みのそろった農業政策を求めたい。

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