日本とミャンマー 「インフラ支援が重要だ」

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO55543410Y3A520C1EA1000/より、
日経新聞 社説 飛躍へ足場が整うミャンマーとの関係
2013/5/28付

 日本の首相としては実に36年ぶりのことだ。安倍晋三首相がミャンマーを訪れ、テイン・セイン大統領と会談した。軍事政権の時代に停滞した両国の関係に、新たな飛躍をもたらすための出発点としなければならない。
 首脳会談で首相は、同国の対日債務およそ5000億円の返済をすべて免除し、新たに910億円の政府開発援助(ODA)を今年度中に供与すると表明した。
 同国の延滞債務は日本が本格的に援助を再開するうえで障害になっていた。歴史的な訪問を機に一挙に清算し、関係発展の足場を整えたといえる。
 ミャンマーは「アジア最後のフロンティア」と呼ばれ成長が期待されているが、停電が頻発するなどインフラは脆弱だ。日本の本格的な援助は同国経済の立て直しや民生の改善に役立つ。
 日本企業にとっては投資環境の改善につながり、日本の成長にも貢献する。ミャンマーは地政学的に重要で、戦略的な観点からも関係の強化が求められる。
 ただ、日本政府は過去の援助が巨額の不良債権となったことを反省する必要がある。同国がかつて日本の援助にもかかわらず最貧国に転落したのはなぜかを分析して日本の納税者に説明し、今後の援助にも生かしていくべきだ。
 首脳会談を踏まえて発表された共同声明が、民主化や法の支配の強化などを促す方向を打ち出したのは、評価したい。日本の援助を生かすには経済の面だけでなく政治や社会の改革も欠かせない。
 首相の訪問にあわせ、同国最大の都市ヤンゴンの南郊にあるティラワ経済特区を開発する覚書に両国の企業が署名した。日本の援助の一部も同特区向けだ。同国を代表する産業の拠点に育てたい。
 首脳会談でテイン・セイン大統領は、同国南東部にあるダウェーの開発への協力も求めた。先ごろ来日したタイのインラック首相も、ダウェー開発への協力を安倍首相に促した。こうした要請にどう応えていくかは難しい問題だ。
 ティラワもダウェーも港湾を軸に産業集積地を育成しようという構想で、重複投資や共倒れの懸念がある。両拠点を有機的につなげ発展させる知恵が問われる。
 安倍首相にはおよそ40の日本の企業や大学、地方公共団体の関係者が同行した。日本の幅広い力の結集を促すようなトップセールスで、意義深い。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130527ddm003010166000c.htmlより、
クローズアップ2013:日ミャンマー首脳会談 中国にらみ、多彩な支援 安全保障でも関係強化
毎日新聞 2013年05月27日 東京朝刊

 安倍晋三首相は26日、ミャンマーのテインセイン大統領との首脳会談で、官民総力でミャンマーの経済開発と民主化を支援する意向をアピールした。ミャンマーに強い影響力を持つ中国を念頭に、安全保障面での協力も含めた多角的な支援で、ミャンマーとの関係強化を図りたい考えだ。ただ、インフラの未整備が支援の障害になるなど不安要素も残っている。

 ◇「未開市場」挽回狙う
 「経済協力に限らず、文化・人的交流、防衛協力など裾野の広い交流を進めたい」。首相は26日、首脳会談後の共同記者発表で、日本のミャンマー支援の幅広さを強調した。
 首相は日本企業約40社の幹部を連れてトップセールスを展開したほか、首相と妻昭恵さんは自ら建設にかかわった小学校をそれぞれ視察し、草の根での取り組みもアピールした。テインセイン大統領は会談で、祖父・岸信介元首相、父・晋太郎元外相と3代でミャンマーを訪問し、社会活動も行ってきた首相を「家族ぐるみの友人」と持ち上げた。
 ミャンマーは軍政時に国際的に孤立し、中国に支援を頼ったことから、中国の影響力が大きい。だが、外務省幹部は「中国は資源開発など自国利益優先で、経済は伸びなかった。水力発電所の建設計画で、電力のほとんどを中国に送り、環境面での配慮もなかったため、中止となった事業もある」と指摘する。政府関係者は「経済・資源目的だけとは違う、日本らしい支援のあり方を見てほしいというのが首相の思いだ」と解説する。
 ミャンマーの魅力は安くて質の高い労働力だ。一般労働者の月給は約94ドルで、中国の約5分の1、ベトナムの半分。人口約6200万人と市場規模も大きく、「最後のフロンティア」とも呼ばれる。
 だが、電力・道路などのインフラが未整備なため投資に慎重な日本企業も多く、日ミャンマー経済筋は「中国をはじめ他国に比べ出遅れている」と指摘する。ミャンマーは2014年の東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国として会議を主催するためインフラ整備を重視しており、日本政府は人材育成や技術協力などのきめ細かい支援で、日本企業のインフラ事業などの受注につなげたい考えだ。
 外務省幹部は「ミャンマーには中国の強い影響力に対し、欧米・日本を入れてバランスを取りたいとの思いがあり、それが民主化の一因となっている」と述べ、民主化を進める現政権への経済支援の重要性を強調した。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130527ddm003010166000c2.htmlより、
 ミャンマーは安全保障面でも重要な場所に位置する。中東から日本への原油タンカーの海路であるインド洋に面し、中国はミャンマーを通じてインド洋への進出をうかがう。首相が共同声明に防衛当局間の安全保障対話の強化を盛り込んだのはこのためだ。海上自衛隊の練習艦が今年10月、ミャンマーに初寄港するほか、サイクロン被害が多いミャンマーの災害対応協力などを絡め関係強化を図る。
 米国もミャンマーの重要性を認識しており、2月に行った東南アジア最大級の多国間軍事演習「コブラゴールド」にミャンマーのオブザーバー参加を初めて認めた。日米で取り込みを図る構図が浮かぶ。【小山由宇、吉永康朗】

 ◇電力不足、進出足かせ インフラ整備に遅れ
 ミャンマーのインフラ整備の遅れは、この国に暮らすと、より実感できる。特に「電力」がはなはだしい。猛暑の中、最大都市ヤンゴンでは今も計画停電という名の不意打ちの停電が断続する。多くの市域で水道からは濁った水しか出ないが、民間アパートの上階では電力ポンプで水をくみ上げている場合が多く、停電と同時に断水にも見舞われる。
 電力事情は2011年の「民主化」以降、改善の兆しを見せたが、今年は軍政期に逆戻りした感がある。
 天然ガスの一大産出国ながら、外貨獲得のため大半を隣国タイなどに輸出しており、電力の7割を水力発電に頼る。国土の多くが熱帯モンスーン気候にあり、渇水のため発電量が減少していた乾期から、今ようやく雨期を迎えたばかりだ。
 日本貿易振興機構(ジェトロ)ヤンゴン事務所によると、全人口6000万のうち、電力にアクセスできるのは都市部を中心に25%。だが、安価な中国製の家電が大量流入して電力消費が増え、近年の電力需要が年率15%程度で伸びる中、供給が追いつかない。
 工業団地では今年、例年より早い年初から計画停電に入り、今月6日以降は24時間停電に追い込まれている。この国で唯一、国際レベルに近いインフラを備えたヤンゴン北郊の工業団地「ミンガラドン」。縫製業を中心に日系企業3社が稼働する。ただ、電力事情は同じで、自家発電なしに操業はできない。
 ジェトロ・ヤンゴン事務所の高原正樹所長は「ミャンマーは電圧が不安定で、溶接作業をすると品質にムラが出る。常時、自家発電を使わざるをえない業種もある」と語る。製造業の進出について「瞬間停電も多く、作業途中の停電で(システムが影響を受け)工程がゼロになるような(電子機器などの)業種は難しい」と、ハードルの高さを指摘した。
 切り札と期待されるのが、日本が主導する「ティラワ経済特区」開発だ。しかし、一部開業は2〜3年先だ。【ヤンゴン春日孝之】

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130527/plc13052703180004-n1.htmより、
産経新聞【主張】ミャンマー訪問 国造り支援が成長を促す
2013.5.27 03:18 (1/2ページ)

 安倍晋三首相がミャンマーを訪問してテイン・セイン大統領と会談し、「新しい国造りを官民の力を総動員して応援していく」と表明した。
 同国は、人口6000万を超す将来有望な生産拠点にして市場だ。軍政時代の孤立から脱し、「アジア最後のフロンティア」と呼ばれる。
 安倍首相は首脳会談で、910億円の政府開発援助(ODA)の実施や2000億円の対日債務の解消を約束した。支援などをテコに日本企業の進出を促し、両国の経済成長につなげてほしい。
 訪問には約40社の日本企業幹部が同行した。ロシア・中東歴訪に次ぐ、首相によるトップセールス第2弾として歓迎したい。
 日本企業の進出先としてはすでに、最大都市ヤンゴン郊外でティラワ経済特区建設が進んでいる。だが、ネックとなるのは電気、水道などのインフラの貧弱さだ。まさに、インフラビジネスを得意とする日本企業の出番だろう。
 軍政下、中国は孤立につけ込む形でミャンマーに浸透し、同国の対中依存が過度に進行した。
 民主化に舵(かじ)を切ったミャンマーはそれへの反省から、米欧などとの関係改善を図ろうとしている。テイン・セイン大統領が先に訪米し、オバマ大統領との会談で改革への一層の努力を表明したのも、そうした姿勢転換の表れだ。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130527/plc13052703180004-n2.htmより、
2013.5.27 03:18 (2/2ページ)
 日本は独立前からミャンマーとは深い関係を持つ。1977年の福田赳夫首相以来36年ぶりとなった安倍首相訪問を契機に交流を活発化させ、「永続的な友好関係」(共同声明)を築いてほしい。
 ただし、日本は米国とともに、支援するだけでなく、注文すべきは注文し、一層の民主化を迫っていかなければならない。それが、ミャンマーを中国の影響下から引き戻すことにもつながる。
 少数民族問題や宗教対立といった問題も抱えている。軍は多様な国民を束ねられるのは自分たちだけだと軍政を正当化した。国民和解に向けて関与していくことも民主化支援の一つだ。日本政府は少数民族地域の開発支援などに一段と力を注いでもらいたい。
 ミャンマーは武器輸入などで北朝鮮と関係がある。北について、首相は「拉致、核、ミサイル問題の3つの解決が重要だ」と述べ、大統領も理解を示したという。あらゆるルートで北を動かし、具体的な成果を示してほしい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130525k0000m070117000c.htmlより、
社説:日本とミャンマー インフラ支援が重要だ
毎日新聞 2013年05月25日 02時31分

 安倍晋三首相が24日、ミャンマー入りした。26日まで滞在し、テインセイン大統領らと会談する。日本の首相の訪問は1977年の福田赳夫氏以来36年ぶりだ。日本はインフラ整備を中心に幅広い分野で支援し、民主的な国づくりを後押ししていくべきだ。
 長年の軍事政権下で国を閉ざしてきたミャンマーは経済も停滞し、アジアの最貧国に転落した。しかし、2年前の民政移管以降、民主化路線に踏み出し、経済も開放して外資導入で成長を目指している。天然資源が豊富で人口6000万人を超える有望市場は「アジア最後のフロンティア」と目され、外国企業の投資合戦が本格化しつつある。
 ミャンマーが経済開発を進めるうえで最大のネックはインフラの弱さだ。最大都市ヤンゴンでさえ日常的に停電が起き、水道の普及率は約6割にとどまっている。道路や鉄道といった交通や情報通信などの基盤整備も遅れている。
 安倍政権は成長戦略の一環として海外でのインフラ受注を現在の3倍の30兆円に拡大する目標を掲げている。経済開発に外国からの投資や技術協力が欠かせないミャンマーは、さまざまな分野で日本の技術力を生かせる大きな可能性がある。既に火力発電や港湾整備、郵便システムなどで支援の協議が進んでいる。
 日本は今年、26年ぶりに円借款の再開を決め、500億円規模の供与を表明した。援助の対象にはヤンゴン近郊で日本とミャンマーが共同で開発を進める経済特区のインフラ整備などが含まれる。援助が有効に使われ、日本企業の進出が活発化すれば、両国の互恵的な関係の発展にもつながるだろう。
 テインセイン大統領は今年に入って欧州と米国を相次いで訪問するなど、軍事政権時代に中国一辺倒だった姿勢を転換し、多角的外交を進めている。オバマ米大統領との会談では民主化推進を約束した。日本も共通の価値観を持つ国として関係を強化していく好機だ。
 インドと中国の間に位置するミャンマーは、アジアの安全保障を考えるうえで地理的に重要な存在だ。来年には東南アジア諸国連合(ASEAN)の議長国を初めて務める。アジアの安定を図っていくためにも対話を強化していくことが重要だ。
 ミャンマーは民主化に動き始めたとはいえ、政府と少数民族の対立が続く地域があるなど、まだまだ不安定な状況だ。軍の強い権限を規定した憲法の改正など、本当の民主国家に生まれ変わるためには課題も多い。民主化が決して後戻りすることがないよう、日本は長期的な視野で協力していく必要がある。

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