シリア内戦 「平和解決を探れ」

http://mainichi.jp/opinion/news/20130531ddm003030103000c.htmlより、
クローズアップ2013:シリア内戦 周辺国介入し戦闘拡大 9万人犠牲、先見えず
毎日新聞 2013年05月31日 東京朝刊

 中東のシリアで、アサド政権と反体制派の内戦が泥沼化している。紛争開始から2年を過ぎ、死者9万4000人、難民160万人に達した。27日、欧州連合(EU)は劣勢の反体制派への武器供与を決めたが、戦闘の激化を招く危険もある。反体制派を支持する米国と、アサド政権を支えるロシアは両サイド参加の国際和平会議を提案したが、開催できるか未知数。周辺国の思惑もからみ、解決の糸口すら見えていない。
 シリアでは、反体制派が北部のトルコ国境や南部のヨルダン国境周辺などを拠点に、都市の郊外や農村部で支配地を拡大。主要戦力は、離反政府軍兵士らが作る「自由シリア軍」や、国際テロ組織アルカイダ系のイスラム過激派だ。部族勢力や民兵組織などが乱立し統制が弱い。これに対し、兵器の種類や量、兵員数で勝るアサド政権側は、首都ダマスカスなど主要都市の中心部を固める戦術を展開。昨夏以降、戦闘は激化し、一進一退の攻防が続く。
 シリア内戦は、宗派紛争の様相も深める。反体制派は人口の約7割のイスラム教スンニ派が多い。一方、アサド政権の支持基盤は人口の1割強のアラウィ派だ。戦闘の長期化で両派の溝が広がった。アラウィ派が多い西部バニアスでは今月、100人以上のスンニ派住民が虐殺されている。
 中東の要の位置にあるシリアの内戦には、周辺国も介入している。イスラム教シーア派国家のイランは、シーア派と近いアラウィ派系のアサド政権を支援。レバノンのシーア派組織ヒズボラも、激戦が続く中部クサイルなどに数千人規模の援軍を送っている。
 一方、スンニ派が多くイランを警戒するサウジアラビアやカタールはトルコやヨルダン経由で反体制派に武器や物資を供給しているとされる。
 ヒズボラと何度も交戦し、最新兵器の流出を恐れるイスラエルも今月、首都ダマスカス近郊を2度空爆した。
 戦況が悪化する中、政治的な解決は糸口さえ見えない。米国とロシアは今月7日、両派が参加し和平実現を探る国際会議を提案した。だが、反体制派の主要組織「シリア国民連合」は、アサド大統領らの排除が和平の前提条件として会議への出席すら未定。政権側は「無条件の対話」を強調し和平に消極的なのは反体制派だと印象付けようとしている。【カイロ秋山信一】

 ◇EU、「武器供与」で政権に圧力
http://mainichi.jp/opinion/news/20130531ddm003030103000c2.htmlより、
 欧州連合(EU)のシリア反体制派への武器供与決定に関し、推進派の英外交筋は「EUに軍事支援という選択肢もある、という政治的メッセージをアサド政権に伝えたかった」と理由を解説する。シリア内戦に対しEU内には無力感が強い。「人道支援だけで悲惨な状況は変えられない」(フランス外交筋)と考える英仏は供与を要求。米露提案の国際和平会議前に反体制派の立場を強める狙いもあった。
 ただ、武器供与を決めた27日のEU外相会議でも意見は割れた。オーストリアや北欧諸国は平和構築に力を注いできたEUの共通外交政策の転換は「受け入れられない」と抵抗。しかし、「一致しなければ、EUの影響力が低下する」(ウェスターウェレ独外相)との危機感から、猶予付きの限定的供与で妥協が図られた。
 供与には厳しい制限がある。2008年の「武器輸出管理原則」を適用し▽紛争を長期化・悪化させる▽テロにつながる−−場合、輸出は禁止。さらに「武器を渡すこと自体も難しい」(南ドイツ新聞)。
 英仏は武器供与の具体的計画は示していないが、ヘイグ英外相が即座に渡す可能性を「排除しない」と語るなど、アサド政権の揺さぶりを図る。一方で、激化の一途をたどるシリアでの戦闘が、武器供与で悪化する可能性もあり、EU諸国は慎重な判断を迫られる。【ブリュッセル斎藤義彦】

 ◇米、反体制派支援 露、政権転覆警戒 和平会議開催は一致
 反体制派を支援するオバマ米政権は、EUによるシリア反体制派への武器供与の決定を、「国際社会が反体制派を支援する意思の表明」(国務省)と評価した。国内経済再建を優先し、シリア情勢への軍事的関与に消極的だったオバマ政権に対しては、国内で消極姿勢への批判も出ていた。英仏などの同盟国が供与を決め、一息つく余地ができた形だ。
 オバマ政権の関与回避策は当面続く見通し。カーニー米大統領報道官は29日、飛行禁止空域設定は「大統領の選択肢だが、現在有力と言うのは不正確だ」と述べた。懸念されるアサド政権の化学兵器使用も、オバマ大統領は「レッドライン(超えてはならない一線)」と言明したが、具体的措置に踏み切る気配はない。
 米政権の消極姿勢への批判が強まっており、マケイン上院議員(共和党)は27日、シリアで反体制派幹部らと会談した。
 一方、ロシアは、EUの武器供与決定がアサド体制転覆につながることを警戒する。アサド政権は地中海岸の港を提供してくれる重要な武器売却先だ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130531ddm003030103000c3.htmlより、
 リャプコフ外務次官は28日、シリアへの供給を約束した対空ミサイル「S300」は、内戦への介入抑止効果があると指摘。リビアのカダフィ政権が北大西洋条約機構(NATO)の軍事介入で崩壊した事態の再現を許さない考えを示した。立場は対立するが、米露はシリア国際和平会議を提案、6月中にスイス・ジュネーブで開催する案が浮上。同月5日に国連を交え協議するが、先行きは不透明だ。【ワシントン白戸圭一、モスクワ田中洋之】

 ◇シリア情勢の推移
11年 3月 首都ダマスカスで反政府デモ。当局は弾圧するが全土に拡大
    8月 国連安保理が弾圧を非難する議長声明
12年 2月 国連総会が弾圧非難決議
    4月 反体制派団体が「弾圧開始以来の死者1万人」。アナン前国連事務総長提案の停戦発効。安保理が停戦監視団派遣を承認
    8月 監視団解散。国連調停が破綻
   12月 130以上の国・機関参加の「シリアの友人」会合が反体制派統一組織「シリア国民連合」を「唯一の正統な代表」と承認

13年
 1月 6日 アサド氏、反体制派との対話拒否
 3月 6日 国連がシリア難民100万人突破と発表
   21日 国連がシリアでの化学兵器使用疑惑の調査を発表
 5月 7日 米露が政権側と反体制派双方を招く国際会議の開催で合意
   14日 「11年3月以来の死者9万4000人」と反体制派
   15日 国連総会が「シリア国民連合」の設立を歓迎する決議
   27日 EUが反体制派への限定的武器供給で合意

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO54930960S3A510C1PE8000/より、
日経新聞 社説 シリア内戦の平和解決を探れ
2013/5/12付

 米国とロシアが内戦の続くシリア情勢の打開を目指して、当事者と関係国による国際会議を開く方針で一致した。
 対話による解決で米ロが歩調をあわせることは重要だ。国際社会はこの機会を逃してはならない。混乱が周辺地域に広がる前に停戦を実現する必要がある。
 アサド政権と反政府勢力の衝突では7万人が死亡し、今も血が流れ続けている。有効な手を打てずに放置してきた国際社会の責任は重い。なかでも国連安全保障理事会は米国とロシアの立場の違いからまったく機能してこなかった。
 重火器で依然勝る政府軍に対し、反政府勢力はまとまりを欠く。シリア国外からイスラム過激派が入り込み、アルカイダ系の国際テロ組織との連携を公言する組織も現れた。レバノンのイスラム教シーア派民兵組織のヒズボラもアサド政権側について内戦に加わっているという。
 ヒズボラはレバノン南部を事実上支配し、イスラエルと対立する。イスラエルによるとみられるシリア領内への空爆も相次いで起きた。シリアからヒズボラへ武器が渡ることを阻止するためだったとされる。
 シリア情勢は国土が分裂し、周辺国を巻き込んで混乱が広がる様子を見せている。加えて心配なのは内戦で化学兵器が使われた可能性が出てきたことだ。
 誰がどのように使ったのかは慎重な検証が必要だ。米政府は政権側が弾圧に使ったことを確認できれば、反政府勢力への武器供与などに踏み切る考えだという。
 非人道的な化学兵器の使用は許されない。だがアサド政権の受け皿が見えない状況で武器を供与し、政権を武力で倒せば、混乱を長引かせることになりかねない。
 国際会議の実現は容易ではない。米ロは全勢力が参加する「移行政府」樹立を探るとしているが、アサド大統領の処遇をめぐり政権と反政府勢力の溝は深い。しかし、もはや時間の猶予はない。平和解決を全力で探る時である。

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