日印原子力協定 「核不拡散の原点どこに」

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130531/plc13053103100003-n1.htmより、
産経新聞【主張】日印首脳会談 経済と安保で連携強めよ
2013.5.31 03:09 (1/2ページ)

 安倍晋三首相が来日したインドのシン首相と会談し、経済、安全保障両面で両国関係を強化していくことで一致した。
 インドとの連携は、米国などとともに、自由や民主主義、法の支配といった普遍的価値観を共有する国々との連帯を強め、結束を図っていく意味がある。
 共同声明では「国際法の諸原則に基づく航行の自由への関与」に言及し、東シナ海や南シナ海で権益拡大の野心をあらわにする中国を牽制(けんせい)している。これを両国でどう具体化していくかだ。防衛面などの協力を進めてほしい。
 両首脳は、日本の原発輸出の前提となる原子力協定の「早期妥結」で一致したが、核拡散防止条約(NPT)に加盟していないインドとの協定締結には一部に慎重論もある。交渉にあたってはインド側に、軍事転用を許さない措置を講じるよう求めていく必要があるだろう。
 首脳会談では、インド政府が進めるムンバイ-アーメダバード間の高速鉄道計画について、共同調査を行うことでも合意した。「トップセールス」の成果の一つとして歓迎したい。
 人口12億のインドは、経済の急成長で電力や鉄道などインフラ需要が大きい。中国と並ぶ2大新興経済国であるインドの巨大市場は、日本にとっても魅力的だ。成長戦略を進めていく上でも、なくてはならぬパートナーだ。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130531/plc13053103100003-n2.htmより、
2013.5.31 03:09 (2/2ページ)
 安全保障分野では、海上自衛隊の救難飛行艇US-2の輸出に向けた合同作業部会の設置や、海自とインド海軍の共同訓練の活発化で合意した。
 日本とインドの安保協力では、両国の外務、防衛当局による次官級の「2プラス2」や米国を含む3カ国の外務当局による局長級対話などがある。
 中国は、パキスタンやスリランカ、ミャンマーなどで港湾開発に協力することで、インド洋での拠点づくりを着々と進めている。
 力を背景にした中国の海洋進出は、日印両国にとって共通の懸念であり、いかに押しとどめていくかが問われている。
 シン首相の訪日に先立って中国は、李克強首相が就任後初の外遊先としてインドを訪問し、中印の「相互信頼」を強調した。こうした関係が本物かどうか、日本は中国の動きを見極めながら、戦略的外交を展開すべきだ。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO55665900R30C13A5EA1000/より、
日経新聞 社説 日印の戦略的関係をどう築いていくか
2013/5/31付

 安倍晋三首相は来日したインドのシン首相と会談し、経済や安全保障など幅広い分野で両国が連携を深めることで合意した。
 インドの人口は2020年代に中国を上回り、世界一になる見込みだ。直近の経済成長率は鈍化しているものの、日本企業にとって巨大な消費市場を抱えるインドの魅力は大きい。
 ただ日印の貿易額は日中のおよそ20分の1の水準にとどまる。インフラ不足や煩雑な行政手続き、汚職や腐敗といった問題がビジネスの障害となっているからだ。
 会談では日本が円借款を供与し、ムンバイの地下鉄建設などインフラ開発を加速することになった。インフラ不足解消への取り組みはもちろん重要だが、ビジネス環境の改善も促していきたい。
 日印の協力は、台頭する中国をにらんだ外交や安全保障戦略にとっても大切だ。中国軍の海洋進出にはインドも懸念を抱いている。
 共同声明では海上自衛隊とインド海軍による共同訓練の定期化などを確認した。日印が足並みをそろえて中国に責任ある行動を働きかけていくことは、アジア太平洋の安定にもつながるはずだ。
 今回の会談では、日印の原子力協定交渉の加速でも一致した。インドは2020年までに原発を18基建てる計画で、日本の原発メーカーがもつ最新技術や運転ノウハウに寄せる期待は大きい。
 だが交渉にあたっては、インドが核拡散防止条約(NPT)に入らず核実験を重ね、核兵器を持っていることを忘れてはならない。
 日本が提供する技術や機器、情報が核兵器の研究・製造に応用されないよう、厳しく監視する仕組みが要る。いまはインドの一部の原子力施設に限られている国際原子力機関(IAEA)の査察対象を広げ、再処理工場なども含めるよう同国に求める必要もある。
 日本は唯一の被爆国として核兵器を持たず、他国の核武装にも協力しないことを基本方針にしてきた。安倍首相が会談で、インドが署名していない包括的核実験禁止条約(CTBT)の早期発効の重要性を訴えたのは当然だ。インドにNPTへの加盟や核軍縮を粘り強く働きかけることも重要だ。
 日本にとって、世界で存在感を高めるインドとの戦略的かつ重層的な関係づくりは欠かせない。幅広い協力分野のなかで原発をどう位置づけるか。安倍政権はそれを明確にする必要もあるだろう。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013053002000125.htmlより、
東京新聞【社説】日印原子力協定 経済優先がすぎないか
2013年5月30日

 安倍晋三首相は来日中のインドのシン首相と原子力協定をめぐり交渉の再開で合意した。原発技術の輸出は福島第一原発事故の教訓より経済を優先している。しかも核不拡散の原則に反している。
 「暑い時期は気温が四〇度を超えるがエアコンが使えない。寒い時期は二~三度まで下がるが暖房が使えない。多くのインド人はとにかく電力がほしい。それが原子力かどうかなんて気にしない」
 ニューデリーに住むインド人男性は、電力不足への市民の不満をこう話す。停電は日常茶飯事だ。
 インド政府は電力供給の“切り札”に原発の増設を進める。現在、稼働中の原発は二十基あり、今後十年間で二十五基を新設する。発電量に占める原子力の割合を今の約2%から二〇三〇年までに十三倍に増やす目標だ。
 そのため日本の原発技術はのどから手が出るほどほしいだろう。既に欧米からは技術協力を得ているが、原発政策を担う政府機関・インド原子力公社の幹部は以前、「日本との協力が最優先だ」と語った。日本にとっても大きな市場になることは間違いない。
 だが、インドは必ずしも福島の教訓まで求めていないように見える。膨大な除染や賠償費用について、この幹部は「それは津波のコストであって原発技術が起こしたわけではない」と語った。
 原発事故は多くの人の命や生活を脅かす。その教訓が共有されていないのではないか。
 安倍首相は「事故の経験と教訓を世界と共有することによって、世界の原子力安全の向上に貢献していく」と言うが、原発政策はあまりに経済優先ではないか。国内では新増設に慎重なのに海外へは積極的に輸出するのでは、国際社会の信頼を得られない。
 核の拡散も懸念される。インドは核保有国だが、核拡散防止条約(NPT)に加盟せず、包括的核実験禁止条約(CTBT)にも署名しておらず国際社会の監視が届きにくい。
 米国がインドの経済成長に目を付け既に原子力協定を結んだ。日本も参加する原子力供給国グループもインドを例外にして核技術輸出を解禁した。これではNPT体制が揺らぎかねない。
 日本が語るべきはNPT加盟を促し核兵器削減と開発中止を訴えることである。協定交渉では核実験すれば原発の技術協力を停止するとの条件を求めるべきだ。それが唯一の被爆国の責務である。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130530k0000m070126000c.htmlより、
社説:日印関係 海洋安全保障も経済も
毎日新聞 2013年05月30日 02時33分

 インドのシン首相が来日し、安倍晋三首相との間で、経済、政治・安全保障協力の強化や、日本からの原発輸出の前提となる日印原子力協定の締結交渉促進などで合意した。
 核拡散防止条約(NPT)に加盟せずに核兵器を保有しているインドと原子力協定を結ぶことには懸念が残る。ただ全体的に見れば、インドは経済と政治・安全保障の両面で国際社会での重要性を増しており、日印関係の現状は、その潜在的可能性に比べると、まだまだ不十分と言わざるを得ない。インドとの関係強化を加速させるべきだ。
 インドの人口は2025年に約14億6000万人となり、中国を抜いて世界第1位になる見通しだ。経済は減速傾向が著しいが、それでも成長率5%を維持している。10年先を考えれば、魅力的な巨大市場であることに変わりはない。
 ところが日印貿易の額は、日中の20分の1にも満たない。日本企業のインド向け直接投資も伸びていない。シン首相は訪日で、エネルギーや交通インフラへの投資を促した。
 インドへの投資が進まないのは、電力不足、通関などの手続きの煩雑さ、州ごとに制度が異なることなど、環境がなかなか整わないからだ。日本政府は、主要な州政府との協力強化なども含め、投資環境の整備を積極的に支援してほしい。
 インドの存在感は安全保障分野でも顕著だ。インドは中東・アフリカからのシーレーン(海上交通路)が通過するインド洋に面し、もともと地政学的に重要な位置にある。
 そのインド洋で、中国海軍は、ソマリア沖から西インド洋に拡大する海賊被害への対策として、護衛艦などを派遣する国際社会の行動に参加している。また中国は、パキスタン、スリランカ、バングラデシュなどインド洋沿岸諸国の港湾開発に投資して戦略拠点としている。これらがインドを包囲しているように見えることから「真珠の首飾り」と呼ばれ、インドは神経をとがらせている。
 中国のインド洋進出をけん制する意味からも、日印両国が海洋の安全保障で連携することは重要だ。
 海上自衛隊とインド海軍は昨年6月、横須賀沖で初めての海上合同訓練を行った。日印の外務・防衛当局の次官級対話や、日米印3カ国の局長級の政治対話なども活発化している。こうした動きを今後、いっそう強化していってほしい。
 日印両国は昨年、国交樹立60周年を迎えた。天皇、皇后両陛下も年内にインドを訪問される方向だ。経済、政治・安全保障はもちろんだが、人や文化・学術交流の促進などを通じ、日印の絆をさらに重層的なものにしていく努力も必要だ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130528k0000m070060000c.htmlより、
社説:原子力協力 前のめりでは危ない
毎日新聞 2013年05月28日 02時31分

 どうも違和感がある。2年前の東京電力福島第1原発の事故以来、日本は「脱原発」を真剣に模索し、原発の再稼働にも慎重な姿勢を取ってきた。だが、安倍晋三首相の、少なくとも国外での言動を見る限り、事故の重大さを忘れ、原発ビジネスに奔走しているように見える。しかもトップセールスの相手は、中東からインド、東欧へと広がる気配だ。
 安倍首相が4〜5月の外遊で、トルコやアラブ首長国連邦、サウジアラビアへの原発輸出や関連技術供与に意欲を見せた時、私たちは首相の前のめりな姿勢に懸念を表明した。トルコは地震国で、中東の政情はなお不安定という事情もある。が、それ以前に、原発にまつわる日本国民のつらい体験を、首相が謙虚に受け止めているのか疑問だったからだ。
 また、29日のインドのシン首相との日印首脳会談では原子力協定交渉が一つの焦点になりそうだが、この協定にも問題がある。核拡散防止条約(NPT)は米英仏露中の5カ国だけに核兵器保有を認め、NPTの枠外で核兵器を持ったインドへの原子力協力は本来、禁じられていた。
 しかし、米国のブッシュ前政権は任期切れ直前(08年)、インドと原子力協定を結び、日本を含めて45カ国が加盟していた原子力供給国グループ(NSG)に強く働きかけて、インドとの原子力協力を例外的に認めさせたのである。
 その背景には、成長するインドが2020年をめどに20基近い原子炉建設を計画していることが挙げられる。仏英露もインドと原子力協定を結び、原発ビジネスを展開すべく、進んだ技術を持つ日本の参入を待っている。確かに巨額のビジネスは魅力だし、中国の膨張が目立つ近年、日本にとってインドとの連携は重要度を増している。
 だが、大国のご都合主義でNPTの空洞化が進む事態は歓迎できない。NPTは原子力の平和利用を認めているが、原発が必ずしも安全でないことは、スリーマイル島やチェルノブイリに続いて福島での事故が如実に示した。日本は事故の教訓を世界に発信し続ける義務がある。世界で原発が増え続けることを自明とせず、たとえば再生可能エネルギーの技術開発のために日本が国際社会で主導的な役割を果たす道もあるはずだ。
 核不拡散への努力も怠ってはなるまい。オバマ米大統領は「核兵器のない世界」をうたってノーベル平和賞を受賞したが、核兵器を保有するインドやパキスタン、保有が確実な北朝鮮やイスラエルの非核化は一向に進まず、世界はいわば漂流している。今こそ日本の出番だろう。世界の漂流を止めるために、唯一の被爆国の良識と決意が問われている。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年 5月 25 日(土)付
日印原子力協定―核不拡散の原点どこに

 政府がインドとの間で、原子力協定締結に向けた協議を再開させる。原発技術の輸出をにらんでのことだ。
 インドは核不拡散条約(NPT)に加わらないまま、核兵器保有に至った国である。
 一方、日本はNPT体制の下で、核兵器の廃絶を目標にかかげる被爆国だ。
 インドと原子力協定を結ぶことは、NPT体制をさらに形骸化させることにつながる。
 協定より先に、まずNPTへの加盟や、包括的核実験禁止条約(CTBT)の署名を求めるべきだ。
 日印の公式協議は10年6月以来3回開かれたが、福島第一原発事故で中断していた。
 来週、シン首相が来日し、安倍首相と首脳会談を予定している。その共同声明に協議再開を盛り込む方針だ。
 インドでは軍事用を含め原発20基が稼働しているが、ほとんどが国産の小型炉で海外からの大型原発導入を熱望している。
 日本の原発技術は、米国製やフランス製の大型原発にも使われており、日印が原子力協定を結ばなければ米仏からの原発輸出も難しい。このため、米仏両国は日本政府に協定締結を非公式に促してきている。
 しかし、NPTに照らすと、これは大問題だ。
 核兵器保有を米ロ英仏中の5カ国に限り、核保有国は核軍縮に努める。他の国は核保有を図らない代わりに、平和目的の原子力技術の提供を受ける。
 そうしたNPTの精神を顧みなかったインドに技術を提供することは「NPTを守らなくても、原子力技術は手に入る」というメッセージになる。
 インド、パキスタン、北朝鮮といったNPT未加盟・脱退宣言国が次々に核実験をし、加盟国であるイランの核開発も止められない。NPT体制の弱体化は目を覆うばかりだ。
 それでも、日本がNPTを壊す側に回ってはいけない。
 08年、インドへの原発輸出を狙う米国の働きかけで、日本など原子力供給国グループ(当時45カ国)はインドへの技術提供を認める特例を決めた。
 その際、日本の外務省は「インドに非核保有国としてのNPT早期加入、CTBTの早期署名・批准を求める立場に変わりはない」と説明した。
 日印間で協議が始まったのを受けて、10年の長崎平和宣言は「被爆国自らNPT体制を空洞化させるものであり、到底、容認できない」と抗議した。
 被爆国としての筋を通すべきだ。

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