東京市場大波乱 「冷静に考え直す時だ」

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130531/fnc13053103160000-n1.htmより、
産経新聞【主張】財政健全化 目標実現こそ成長支える
2013.5.31 03:08 (1/2ページ)

 政府が6月に閣議決定する経済財政運営の指針「骨太の方針」の策定が進む中、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が財政健全化に向けた報告書をまとめた。
 アベノミクス効果で景気が上向く一方、長期金利の動きは神経質で、株式市場も荒い展開をみせている。その分、かつてないほど政府の財政運営にも市場の注目が集まっている。
 財政規律を維持し、市場や海外の信頼を保つことこそが経済再生の鍵だ。財政健全化の重要性を説く報告書の重みは増している。
 景気回復とともに設備投資などの資金需要が増え、緩やかに金利が上がるのは正常な姿だ。
 だが「アベノミクス三本の矢」の1本目で日銀が「異次元の金融緩和」による国債の大量購入を打ち出して以来、日銀による財政赤字の肩代わり懸念が市場からは消えない。2本目が大規模な財政出動だっただけになおさらだ。財政への信認が崩れれば国債価格急落(金利急騰)を招きかねない。
 報告書は、そうした事態を避けるために財政健全化が不可欠とした。ともすれば景気浮揚策と相反するとみられがちな財政健全化だが、報告書は、逆に成長を支えると指摘している。
 選挙で財政健全化を掲げることには与野党を問わず拒絶反応がある。景気の腰折れを防ぐために棚上げすべきだとの声さえある。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130531/fnc13053103160000-n2.htmより、
2013.5.31 03:08 (2/2ページ)
 確かに、政府が歳出抑制や増税に取り組めば、短期的には需要を減らす。しかし、財政健全化が着実に進めば、社会保障などへの国民の将来不安を和らげ、消費を促す。金利上昇を抑えることで、企業の投資を活発化させ、住宅ローン需要の増大にもつながる。
 安倍晋三政権は、財政健全化目標として平成27年度の基礎的財政収支の赤字幅を22年度の水準から対国内総生産(GDP)比で半減させ、32年度には黒字化を実現するとしている。骨太の方針でもこの点は強調するという。
 ただ、その道のりは厳しい。消費税率の段階的引き上げで27年度の赤字半減を達成しても、32年度の黒字化には、なお約15兆円の収支改善が必要だからだ。
 骨太の方針では、一歩踏み込んで、財政健全化への道筋を具体的に示すべきだ。それが「3本目の矢」の成長戦略とともに、アベノミクスを息の長い経済成長につなげる条件である。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO55394280U3A520C1EA1000/より、
日経新聞 社説 市場急変に振り回されず日本の信頼保て
2013/5/24付

 長期金利が一時1%まで上昇し、日経平均株価が1000円を超す下げとなるなど、金融市場の値動きが大きくなってきた。市場の乱高下の背景にあるのは、世界的な金融緩和で市場にあふれた投機マネーの存在だ。
 市場の短期的な動きに振り回されず、企業の成長力強化や政府の財政再建策によって日本への信頼を保つ必要がある。
 日本国債が売られたのは、前日の米国市場の流れを受けてのことだ。米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が議会で量的緩和を縮小する可能性にふれたため、米長期金利が2%台にはね上がった。こうした市場の動きを見て、日本でも慌てて債券を売る投資家が増えた。
 これまでも日本の長期金利は景気回復への期待を映して、上昇してきた。しかし金利の過度の上昇は金融緩和の効果をそぐことになりかねず、株価の下落にもつながる。今後も日銀は国債購入のペースを調節したり、機動的に資金を供給したりすることで、市場の不安を和らげてほしい。
 政府も、消費税の増税と歳出削減を組み合わせた財政健全化の道筋を示し、日本の経済運営に対する信用を維持しなければならない。日銀の国債購入が財政赤字の尻ぬぐいという印象を市場に与えれば、長期金利がさらに上昇する恐れがあるからだ。
 一方、株価が大幅に下げたのは、中国の景気減速を示す景気指標の発表をきっかけに、短期売買を繰り返すヘッジファンドなどが株式の売却を急いだからだ。
 こうした株式市場の動揺を静めるために大きな役割を果たすことができるのは、政府や日銀ではなく企業である。
 今の日本企業はリーマン・ショック後に合理化を進め、円安にも大きく助けられた結果、業績が著しく回復している。上場企業の約半分が、手元資金で負債を完済できる実質無借金の状態にあるなど、財務体質も良い。企業がこうした強みを投資家に訴えていけば、今後も株価が大きく下がり続けるとは考えにくい。
 さらに豊富な手元資金を配当に回すのか、M&A(合併・買収)などの成長投資に回すのかといった方針も示すべきだ。
 株価が不安定な今だからこそ、企業が経営戦略をきちんと説明し、長期保有の株主を増やしていく重要性が増している。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130524k0000m070173000c.htmlより、
社説:市場大波乱 冷静に考え直す時だ
毎日新聞 2013年05月24日 02時32分

 かけ声主導、期待頼みの足早な上げ相場には、やはり無理があったということだろう。23日の東京株式市場は大揺れとなり、日経平均株価は前日比1100円超の大幅安で取引を終えた。債券市場も乱高下し、国債の利回り(長期金利)が、1年2カ月ぶりに1%まで急騰した。
 マネーの急膨張はかえって経済を不安定にすると見るべきだ。立ち止まり、冷静に日本経済の問題と処方箋を点検する機会としたい。
 日銀が「異次元の金融緩和」でお金の量を倍増させれば、インフレ期待から株価が上がり、企業の設備投資が復活し、賃金も増え、デフレが終わる−−。安倍政権や黒田東彦総裁下の日銀が唱えてきたシナリオである。株価を押し上げれば、経済の成長力もついてくるという発想のようだが、実態と離れた、マネー主導の株高は、ちょっとしたきっかけで崩れてしまう。
 マネー主導というのは株価上昇のピッチや市場の値動きの幅が表している。日経平均は23日、朝方に一時、5年5カ月ぶりの1万5900円台を付けていた。半年間に約70%の値上がりである。それが一転、高値から1400円も下落したのだ。
 中国経済の悪化を示す指標が出たことが理由の一つに挙げられているようだが、他のアジア市場の下落率が1〜2%台だったのに対し、日本は7%超と突出している。午後になり急激に下落した値動きからも、市場がいかに投機的なお金に支えられていたかがうかがえよう。
 確かにこの間の株価上昇には評価できる面もあった。リスクを取ることに臆病になっていた投資家の姿勢が変わったことや、企業経営者が自信を取り戻しつつあることなどだ。
 しかし、株価上昇や景気回復を、日銀が供給するお金の量を増やすことで実現しようという考えは、安易過ぎる。長年先送りしてきた構造改革など難問への取り組みや経営の改革などで達成すべきものだからだ。
 一方、日銀の大規模な量的緩和を受けて乱高下している長期金利には、むしろ経済の不安定要因になりそうな兆しがある。日銀の国債購入量が急増し市場で自由に売買しにくくなったことが、わずかな売りで金利が急騰する背景になっている。
 今回の市場の波乱を一過性の調整と見なし、現行の路線を突き進むのか。それとも金融緩和頼みを修正し、痛みの伴う改革に本腰を入れるのか。対応次第で今後の日本経済に大きな影響を与えそうだ。
 市場の警告が早く出てくれたお陰で、あの時変われてよかった−−。将来そう振り返ることができるよう、安倍政権や黒田日銀の柔軟さに期待したい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130524ddm003020152000c.htmlより、
クローズアップ2013:東証急落 投資家の不安噴出
毎日新聞 2013年05月24日 東京朝刊

 23日の東京金融市場は大荒れとなり、日経平均株価が13年ぶりの下落幅で急落。安倍政権の経済政策「アベノミクス」の期待先行のもろさが浮き彫りになった。市場では依然として「相場の一時的な調整で株の上昇トレンドは変わらない」(農林中金総研の南武志主席研究員)との見方が強いが、今夏に政府が策定する経済成長戦略や中期財政計画の中身次第では、外国人投資家らの失望売りで不安の連鎖につながる可能性もある。【窪田淳、工藤昭久】

 ◇売りが売り呼ぶ展開
 「何かがおかしい」。23日午前11時過ぎ。東京都中央区の中堅証券会社の営業部に緊張が走った。パソコンに表示される日経平均株価が急速に下げ足を速めていた。
 「とにかく、顧客にいったん売却を勧めよう」。営業部員は電話をかけ続ける。この緊張感は、2008年9月のリーマン・ショック時以来だ。
 企業からの株式注文を扱う大手証券では、午後に入り、買い注文のキャンセルが相次いだ。買い注文が薄いなか、ヘッジファンドなどの投機筋が断続的に売りを浴びせた。
 午後2時28分には、大証の日経平均先物の価格が制限値幅の下限に達したため、取引が一時ストップ。「先物の売買ができないなら、現物を売るしかない」と現物株の売りがさらに膨らんだ。個人投資家も、膨らむ損失にろうばいし、売却に動いたとみられ、「売りが売りを呼ぶ展開」になった。
 急落の予兆はあった。5月以降、大きな材料もないのに、日経平均株価は上昇を続けた。上昇と下落を繰り返しながら株価が徐々に上がる場合は下落も小さいが、急ピッチな上昇は下落も急激というのが、市場関係者の経験則。投資家は売却のタイミングを探っていた。日経平均株価の先行きの振れ幅の予想を指数化した「日経平均VI」は、東日本大震災以来の高水準に達した。「VI」の別名は「恐怖指数」。投資家の不安が振れ幅の大きさになって現れるという。
 23日の急落のきっかけは長期金利の急上昇だった。指標となる新発10年物国債利回りは朝方、約1年2カ月ぶりの高水準となる1%ちょうどまで上昇(国債価格は下落)。日銀が金利全体の押し下げを狙って4月に導入した金融緩和策とは逆の動きが続き、「日銀への信頼が多少なりとも揺らぎ、投資家心理を冷やした」(大和住銀投信投資顧問の門司総一郎経済調査部長)。

 ◇終了前1時間、700円超
http://mainichi.jp/opinion/news/20130524ddm003020152000c2.htmlより、
 景気回復に伴う「良い金利上昇」なら、株価の押し上げ要因になる。しかし、実体経済が追いつかない中での金利上昇は、日本経済にマイナスに働く。昼前に中国の景況感悪化を示す指標が発表されると、1万5800円台で推移していた日経平均は下げに転じた。午後に入って円高が加速すると、株売りに拍車がかかり、午後2時から取引終了までの1時間で一気に700円超も急落した。
 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘投資情報部長は「目先の日経平均株価は1万6000円が天井で、調整が続く可能性があるが、下落基調に入ったわけではない」と見る。もう一段の下落があったとしても、企業業績の改善が明らかになれば、次第に値を上げると見ているためだ。期待先行のアベノミクス相場に冷や水を浴びせた今回の急落。今後の実体経済の改善度合いを市場関係者は注目している。

 ◇期待先行のもろさ露呈
 23日の東京金融市場の動揺は、アベノミクスの危うさを示した。副作用も改めて確認され、政府・日銀は難しい政策運営を迫られそうだ。
 アベノミクスはデフレから脱却し、経済成長を図るため、大胆な金融緩和、機動的な財政政策、成長戦略を「三本の矢」とする安倍政権の経済政策。黒田東彦総裁率いる日銀の大規模な金融緩和と、公共事業を活用した政府の大型補正予算はすでに実行され、その効果で日本の景気回復期待は高まり、株高、円安が加速。個人消費や企業の生産活動に一定の回復が見えてきた。
 しかし、そのアベノミクスが生み出した「株高、円安」に冷や水を浴びせたのは、アベノミクスそのものが抱える負の側面だった。まず顕在化したのが金融緩和の副作用。日銀が大量に長期国債を購入するため、市場に流通する国債が減少。日銀以外の市場参加者が買いにくくなり、長期金利は不安定な動きを続ける。日銀の黒田総裁は22日の記者会見で「柔軟な国債買い入れを通じて長期金利の安定に努める」と説明したが、23日も不安定な動きは続いた。
 一方、機動的な財政政策と表裏の関係にある財政再建策の中身も問われ始めている。政府は今夏に中期財政計画をまとめる方針だが、野村証券の尾畑秀一シニアエコノミストは「長期金利が1%を付けたことで、信頼性の高い財政政策を示さないと、財政悪化を懸念した外国人の国債売りが加速する恐れがある」とも指摘する。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130524ddm003020152000c3.htmlより、
 最後に残る成長戦略は成長産業を育成し、民間投資を引き出すもの。政府は医療や農業分野を成長産業に盛り込む方針を示しており、最終案を6月中にまとめる方針だが、「法人税減税や成長産業への投資減税などを盛り込まないと日本経済の抜本的な立て直しにはつながらない」(大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミスト)との見方もある。市場の懸念を払拭(ふっしょく)するには時間がかかりそうだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130523k0000m070120000c.htmlより、
社説:日銀緩和と新興国 世界の安定あってこそ
毎日新聞 2013年05月23日 02時35分

 日銀の大規模な金融緩和が新興国経済に影響を及ぼし始めている。円安が進み株式市場が活況に沸く日本とは裏腹に、新興国では通貨高から輸出にブレーキがかかり、対抗措置として利下げに踏み切る中央銀行も出てきた。
 こうした緩和の連鎖が続けば、カネ余りに拍車がかかり、あちこちでインフレやバブルが生まれるなど、世界経済が不安定化する恐れがある。日銀は22日の金融政策決定会合で、物価上昇率が安定して2%近辺となるまで、今の緩和を続ける方針を確認したが、長期化はマネーのひずみを増幅させるリスクを伴う。
 結果的に自国経済に跳ね返る経済・金融危機を招いては元も子もない。日本など量的緩和を進める先進国は細心の注意を払う必要がある。
 日銀が黒田東彦総裁の下で大規模な量的緩和を決めた今年4月以降、インド、オーストラリア、韓国、ベトナムなどが相次ぎ、利下げした。国内経済を浮揚させる狙いだが、円などに対する自国通貨の値上がりで、産業界の不満が募り、政治家が中央銀行に緩和圧力をかける傾向も強まっているようだ。
 例えば今月利下げに踏み切った韓国では、ウォンが対円で半年に約25%上昇し、中銀に「より積極的な役割を」と利下げを求める声が与党幹部などから上がっていた。今月末に金融政策委員会を控えたタイでは、中銀に対する緩和圧力が勢いづく。すでに利下げ済みの国でも、追加措置への期待が消えそうにない。
 新興国の通貨が値上がりしているのは、日米など主要国による大規模な量的緩和を受けて、あふれ出したマネーがより高い利回りを求め新興国に流入しているためだ。
 しかし、そうした国の影響力は限られ、金融緩和で対抗しようとしても資金の流れを単独で反転させるのは難しい。必要以上に緩和すれば国内でインフレを招いたり不動産市場を過熱させたりする危険がある。投機マネーは逃げ足が速く、新興国の通貨を一転、急落させることもある。
 日本を責めるのは筋違いだとの見方もあるだろう。「円安の副作用があったとしても日本がデフレから脱却すれば世界経済にもプラスだ」というのが政府・日銀の主張だ。歴史的にみて、まだ円安とは言えない、との指摘もあるし、大規模な量的緩和を先に始めたのは米英で、日本単独の仕業でないのも事実である。
 とはいえ、世界経済の安定した成長があってこそ日本の繁栄も持続するというものだ。その世界経済の安定に尽くすのは主要通貨を持つことに伴う責務である。手遅れにならないよう、米国はもちろん、日本もしっかり認識しておくべきだ。

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