東奔政走:「橋下・維新」の急失速 前田浩智氏

http://mainichi.jp/feature/news/20130531org00m020009000c.htmlより、
東奔政走:「橋下・維新」の急失速 反自民票行き場なく、強まる政治不信
2013年06月03日

 【週刊エコノミスト 6月11日号】
 ◇前田浩智(毎日新聞政治部長)
 政治は一夜にして変わる。それを地で行ったのが、日本維新の会の橋下徹共同代表だろう。
 問題になる発言があったのは大阪市役所への登庁時。記者団から、日本の植民地支配を認め謝罪した「村山談話」(1995年)への認識を問われ、「侵略とは何かという定義がないのは確かだが、敗戦の結果として、侵略だということはしっかりと受け止めなければならない」と述べた。ここまでなら穏当だった。
 ところが、自ら従軍慰安婦問題へと話を転じた。「意に反して慰安婦になった人には配慮しなければいけない」と述べつつも、「銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で、命かけて走っていく時に、慰安婦制度っていうものが必要なのは誰だってわかる」とオーバーランした。

 ◇「もう先がない」
 すぐに撤回すれば、傷口はきっと浅かった。でも、「本音で勝負」の人である。「現代社会においても慰安所と同じような業態は世界各国にある」などと従来述べてきた。発言から2週間後の5月27日には日本外国特派員協会で弁明に及んだが、「慰安婦の方々には誠実な謝罪とおわびを行い、悲劇を繰り返さない決意をする」と謝罪姿勢をアピールしたものの、「私が容認していると誤報された」「米英も現地の女性を利用した」とも強調し、火消しは進まなかった。
 橋下ブランドは赤丸急上昇の注目株だった。大阪発の一言を、500キロ以上離れた国会が気にかける。問題発言の少し前から「賞味期限」が指摘され始めていたとはいえ、豊臣秀吉が関白として大阪に陣取って以来の関西の政治的存在感だった。
 その維新が党内からでさえ「もう先がない」との声が漏れる。参院選立候補辞退の動きも出てきた。以下では、橋下ブランドの急失速で失われしものを考えてみたい。
 一つが、憲法改正の発議に必要な3分の2の勢力を、夏の参院選で、自民、維新、みんな、新党改革の4党が獲得するという現実味をほとんどなくしてしまったことである。参院定数は242。3分の2は162。4党の参院での非改選議員数は62だから、参院選では100議席以上を確保しなければならない。相当に高いハードルであり、維新の獲得議席が民主党を上回る事態にならなければ無理と考えられていた。

http://mainichi.jp/feature/news/20130531org00m020009000c2.htmlより、
 カギを握るのが全国で10ある2人区。ここは、自民党が1人ずつしか候補者を立てていない。どこも自民党が優勢な中で、残る1議席を野党同士が奪い合う構図だ。維新はみんなの党とすべての2人区で選挙協力することで合意していた。問題発言前の毎日新聞の電話世論調査(4月)では、「今参院選があるとしたら比例代表でどの党に入れますか」との問いに、維新は11%に上った。みんなは6%で合計すると17%。一方、民主党は7%にとどまり、候補者をそろえることができれば、相当に優位に立てる情勢だった。
 しかし、みんなの党の渡辺喜美代表は選挙協力の解消を宣言した。橋下氏との共倒れを恐れたためで、渡辺氏は「基本的価値観のところでわだかまりが生じた」と説明した。夫婦間に例えれば、「性格の不一致」。これに対し、橋下氏は「しょせん、選挙で有利か不利かということだけで、組む組まないを考えていたということで、組んでも将来、いいことはない」と言い返した。要は「財産目当てだ」と言っているようなもので、一時は合併の話さえ出た両党の破局は決定的となった。
 改憲勢力が3分の2に届かなくても大きく近づく場合、民主党は第二極の座から滑り落ちることが想定された。同党の中にも改憲派は相当数いる。参院選の結果次第では、憲法改正を軸に野党再編が起きるとの見方もあったが、永田町の話題からあっという間に消え失せた。
 民主党は逆に、漁夫の利を得る。改選数3以上の6つの複数区で1議席ずつ得られたとしても、2人区の苦戦が伝えられる中では、「20議席などとうてい不可能」(同党幹部)。その情勢が一変するからだ。民主党首脳の一人は6月の東京都議選を重要視していた。脳裏には、97年の都議選がある。国政第2党の新進党が1議席も取れなかった選挙だ。同党はその年の暮れ、解党へと一気に進む。都議選で敗北すれば、参院選で踏みとどまることも難しくなり、「新進党の二の舞いになるのではないか」と恐れていたわけだ。その可能性があれよという間に遠のき、危機感が薄れた分、「のど元過ぎれば……」となって、民主党の出直しが遅れることを心配する声さえ聞く。

 ◇元気付く公明党
http://mainichi.jp/feature/news/20130531org00m020009000c3.htmlより、
 「古女房のありがたみが自民党も分かっただろう」(公明党幹部)。維新の失速で元気になっているもう一つの政党が公明党だ。連立組み替えは与太話のような扱いになった。同党はさらに、衆参同日選にも反対している。安倍晋三首相は6年前の参院選のリベンジに執念を燃やしている。「親の仇」と述べるほどだ。参院選の勝利を確かなものにするためにも、同日選説が消えなかったが、取り沙汰されることがめっきり減った。「公明党の支援なくして当選できない衆院議員が100人以上いる」(自民党選対幹部)からだ。公明党を怒らせて、衆院選で次も圧勝できる保証はどこにもない。
 こうした状況の中で深刻なのは、反自民の有権者が投票先に困ってしまうことだろう。昨年暮れの衆院選で、比例代表の得票は、自民党1662万▽民主党962万▽維新1226万だった。民主党は09年の前回選挙から2022万票も減らしたが、圧勝した自民党も200万超減らしている。民主党を見限った有権者は自民党に回帰したわけではなく、維新をとりあえず支持したケースが多かったとみられる。維新に流れた票の多くが行き場を失い、漂流することが懸念される。
 参院選で過去最低の投票率は、95年の44.52%だ。自民、社会、さきがけの3党による連立政権が前年に誕生し、その正否を問う最初の国政選挙だったが、長年対立してきた自民、社会両党が手を結ぶ一方で、新党も永田町の抗争の中で埋没し、国民の政治不信に歯止めがかからなかった。政治状況からすれば、今の方がずっと危機的だろう。投票率がまたも50%を切るようであれば、その結果を民意と言い切れるのか。維新失速で政治の悩ましさだけは一段と増したようである。

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