電力改革 「利用者の利益を第一に」

http://mainichi.jp/opinion/news/20130603k0000m070080000c.htmlより、
社説:電力改革法案 成立させて覚悟を示せ
毎日新聞 2013年06月03日 02時33分

 電力システム改革の工程を盛り込んだ電気事業法改正案の国会審議が、ようやく始まった。提出から1カ月半も、たなざらしになったのは7月の参院選をにらんだ野党の駆け引きが原因だという。
 自由な競争を促し、電気料金抑制やサービス向上につなげるために欠かせない改正だ。しっかりと審議し、早期成立を目指してほしい。
 今回の法改正は、「規制と独占」に守られた電気事業に競争原理を本格導入するための第一歩といえる。
 改革は広域系統運用機関の設立、小売りの全面自由化、発送電分離と3段階に分けて実施されるが、とりわけ発送電分離をめぐっては大手電力の抵抗が大きく、与野党内にも根強い慎重論がある。年限を切って改革の工程を示す今回の改正法案が成立しなければ、改革は足踏みし、後戻りするおそれも出てくる。
 一方で、産業界では改革を先取りする動きが出てきた。トヨタ自動車が電力小売りへの参入を発表したのをはじめ、小売りへの新規参入が着実に増えている。神戸製鋼所が、休止する神戸市の高炉跡地で発電事業を検討するなど、発電事業への参入が進む兆しもある。
 中部電力は東京電力と共同で、茨城県内に火力発電所を新設する方針だ。発電した電気の一部は中部電が東電管内で販売する計画で、大手10社による事実上の地域独占を揺るがすきっかけになるかもしれない。
 こうした取り組みが増えれば、競争原理が働き、サービスの向上や料金の抑制が期待できる。エネルギー価格が高止まりしているだけに、システム改革は喫緊の課題である。産業界で出始めた芽を摘むことなく、伸ばしていくためには改正法案を早く成立させ、改革実行を担保する必要がある。
 ところが、今国会での成立のめどは立っていない。もちろん、電力安定供給の確保、送電コストがかさむ離島や過疎地への供給責任、その料金の抑制策など解決すべき問題は少なくない。
 原発の運営や損害賠償のあり方、原発事故の後始末や賠償に追われる東電の将来像をどう描くかといった重い課題も改革を進める上で、避けては通れない。
 だからといって、改革の手を緩めていいわけではない。システム改革を3段階に分け、時間をかけて進めることにしたのは、その過程で残された課題に取り組み、解決策を見いだすためではないか。
 国民の生活に大きな影響を与えるテーマだけに、国会での充実した論議が期待される。無益な国会戦術で時間を浪費すべきではない。まずは改正法案を成立させ、改革への覚悟を示すべきだ。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO53534890T00C13A4EA1000/より、
日経新聞 社説 工程表に沿って電力改革を着実に進めよ
2013/4/3付

 政府は電力市場の改革を段階的に進める方針を閣議決定した。2016年をめどに電力の小売りを全面自由化し、18~20年をめどに電力会社の発電と送電部門を分離して別会社にする。
 私たちは電力市場に多様な企業の参入を促し、競争を通じて供給力を高める仕組みが不可欠だと訴えてきた。政府が改革の実施期限を明示したことは重要だ。
 自民党は発送電分離に必要な電気事業法の改正案を「15年の通常国会に提出する」とした改革方針の当初案を「提出を目指す」に弱めたが、政府は決定した工程表に沿って改革を着実に実行に移していかねばならない。
 東日本大震災後、原子力発電所の大半が止まり、電力の供給不安が長引いている。原発を代替する火力発電向けの燃料輸入の急増が電気料金を押し上げている。
 関西電力と九州電力は1日から企業向けの電気料金を引き上げた。5月には家庭向けも値上げする。電力コストの増大は家計や企業経営を圧迫し、景気回復の足かせとなりかねない。
 電力を安価で安定的に供給する仕組みに作り直す必要がある。電力会社が事実上独占してきた小売市場を開放し、「新電力」と呼ぶ新規事業者の参入を促すことが欠かせない。
 太陽光や風力など再生可能エネルギーの利用を増やすことも重要だ。発電できる場所に偏りがある再生可能エネルギーの導入を促すために、電力会社の区域を越えて全国で電力を効率的にやりとりできる送電網や、すべての事業者が公平に送電線を利用できるルールを整えなければならない。
 国有化の下で経営の再建に取り組む東京電力は1日から会社組織を、発電と送配電、小売りの3つの事業部門に分ける社内カンパニー制に移行した。同じ社内でも「サービスやコスト面で競争原理を導入する」(広瀬直己社長)試みは電力改革を先取りする。
 ただ、需給の綱渡りが続き、エネルギー政策での原発の位置付けが明確でない状況で改革を性急に進めれば、かえって電力の供給が不安定になるとの批判もある。
 こうした心配に応えるには制度設計が重要だ。多様な事業者の参入により送電時の周波数が乱れるなどの技術的な課題をしっかり検証することが欠かせない。安全が確認できた原発を早期に再稼働させていくことも必要だ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130403k0000m070143000c.htmlより、
社説:電力改革 利用者の利益を第一に
毎日新聞 2013年04月03日 02時32分

 電力事業に競争原理を導入する電力システムの改革方針が、閣議決定された。これで改革に一定の道筋はついたが、気がかりな点がある。大手電力会社の送配電部門を分社化する発送電分離に関する法案の提出時期にあいまいさを残したことだ。
 分離に対する大手電力の反発は強く、自民党内にはその意向を反映した抵抗も少なくない。政府は利用者である国民本位の改革を着実に実行する必要がある。
 改革は、15年をめどに電力需給を全国的に調整する広域系統運用機関を創設し、16年をめどに家庭向けを含めた電力販売を全面自由化する。さらに、18〜20年をめどに発送電を分離するという3段階で実施する。それぞれの段階に応じ、法案も3回に分けて提出する方針だ。
 経済産業省の審議会がまとめた改革案に沿った内容だが、政府原案で「15年」と明示していた発送電分離関連の法案提出時期は、「15年提出を目指す」に修正された。自民党の事前審議で慎重論が続出し、修正を迫られたためだ。
 茂木敏充経産相は「文学的な表現で言葉が変わっても大きな方向は変わらない」と述べた。安倍晋三政権は7月の参院選を控え、改革に後ろ向きの姿勢は見せたくないはずだ。修正は党内の慎重派を抑えるぎりぎりの表現だったということだろう。
 しかし、この修正が「文学的」なレトリックにとどまる保証はない。
 大手電力は、原発事業の先行きが見通せない段階で分離すれば、経営が立ちゆかなくなると心配している。送電部門の切り離しが、会社解体につながるとの懸念もある。
 電力業界は、選挙協力や資金支援で自民党を支えてきた。自民党内の慎重論は業界の反発の反映だろう。業界は法案化までに政治への働きかけを一段と強めるはずだ。発送電分離が先送りされたり、骨抜きになったりする可能性も否定できない。
 自民党が改革案を了承する際、政府に原発再稼働への努力を求める決議を付けたことも気になる。再稼働を電力改革の前提条件にしたのでは、国民の理解は得られまい。
 安定した電力供給の確保、送電コストがかさむ離島や過疎地の料金抑制など課題は少なくない。しかし、発送電分離は公平な競争環境確保のために欠かせない。それは新規参入を促し、サービス向上や料金抑制につながるだけでなく、再生可能エネルギーの普及にも役立つはずだ。
 政府は法案を提出する15年に向け、分離を円滑に実施するため、残された課題の克服に努める必要がある。守るべきは電気を使う家庭や事業者の利益であって、大手電力の既得権ではない。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130403ddm003020149000c.htmlより、
クローズアップ2013:電力改革、閣議決定 発送電分離、骨抜きも
毎日新聞 2013年04月03日 東京朝刊

 ◇業界・自民に慎重論
 政府は2日、電力制度の改革方針を閣議決定した。大手電力会社の送配電部門を別会社にする「発送電分離」や、家庭など小口利用者向け電力供給の全面自由化などの抜本改革に踏み切る。実現すれば、大手電力が地域ごとに小口の電力供給を独占する体制が崩れ、競争が活発化して電気料金が下がるなどの効果も期待される。ただ、電力業界や自民党には慎重論も根強い。消費者本位の電力制度を実現できるのか、改革の推進力が問われる。【大久保渉、浜中慎哉】

 「消費者にとって選択の幅が広がる。最終的には、支払う電気料金の低下につながる」。茂木敏充(もてぎとしみつ)経済産業相は2日の記者会見で、電力改革の効果を力説。安倍晋三首相も2日の日本経済再生本部で、「改革方針の内容を速やかに実行に移し、遺漏なく実施すること」と指示を出した。
 今回の改革は、大手以外の発電会社が増える環境を整え、競争を起こして電力会社の経営効率化や料金値下げなどを誘発する狙いがある。首相は、電力小売りの全面自由化や、電力大手の送配電部門を別会社にする発送電分離を打ち出すことで、改革姿勢をアピールして政権浮揚を図るとともに、経済活性化につなげたい考えだ。
 とりわけ発送電分離は、大手が抵抗してきた改革の本丸だ。
 新たに発電事業に参入する企業(新電力)は、顧客に送電する設備を持たない。このため大手電力の送配電網を借りて送電しているが、「送電網などを借りる料金(託送料)の根拠が不透明で、割高だ」「送電容量が不足しているなどの理由で十分に使えない」などの不満が根強い。発送電一貫体制は新規参入を阻む障害とみなされてきた。送配電部門を別会社にすれば、新電力も公平に使えるようになり、経産省幹部は「競争の障壁がなくなる」と指摘する。
 しかし、改革がスムーズに進む保証はない。「絶対に容認できない」「大手電力が値上げに追われ、文句を言えないうちにやろうとするのが見え見えだ」。3月18日の自民党経済産業部会では、発送電分離への反論が噴出した。政府原案は関連法案提出を「15年」と明記していたが、「15年提出を目指す」という努力目標への後退を余儀なくされた。その後の党総務会でも、原発再稼働への最大限の努力や、東京電力の経営安定化など4項目の条件順守を求める念の入れようだった。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130403ddm003020149000c2.htmlより、
 背景には、巨額の設備投資などで地域経済と密な関係を築く大手の政治力がある。大手は過去の自由化論議でも、「競争激化で経営が揺らげば、電力の安定供給に支障が生じかねない」などとして、発送電分離に反対してきた。発電所から顧客まで電気を送る手段を独占し、都合の良い条件で新電力に「開放」すれば、競争を抑えられる。
 実際に、既に自由化されている企業や工場向けの新電力の市場シェアはわずか3・5%。大手が他電力の顧客を奪う競争もほとんど起きていない。電力関係者は「特定の顧客の料金を下げれば、別の顧客にも値下げを迫られ、際限がなくなる」と、競争を避けたい心情を語る。
 茂木経産相は2日、発送電分離の時期に関する表現について「(実施は)7年先の話。『目指す』を、つけてもつけなくても、意味は変わらない」と強調、改革後退との見方を否定した。ただ、経産省幹部は「後に発送電分離などを覆されても文句を言えないレベルに後退した」と指摘、文言の微妙な修正が、改革停滞の布石にならないか警戒する。

 ◇値下げ、競争促進カギ
 電気の小売りが全面自由化されれば、大手電力の地域独占が崩れ、消費者が自由に電力会社を選べるようになる。電気料金の値下げ圧力も強まりそうだが、発送電分離などの改革を進めることが前提だ。
 全面自由化が実現すると、現在は地域の大手電力からしか電気を購入できない家庭やコンビニなどの小口利用者も、より安い料金を提示した他の大手電力や、新電力に乗り換えることができる。経産省は「電力会社間の競争で、電気料金の値下げ圧力も強まる」と見る。太陽光や地熱など再生可能エネルギーの専業事業者を選ぶ消費者が増えれば、再生エネの普及にもつながりそうだ。
 一方で、発送電分離が実現する18〜20年には、政府の電気料金の規制も撤廃される。現在は、家庭など小口利用者向けの料金を値上げするには、政府の認可が必要だ。関西電力と九州電力の料金値上げでは、政府が両社に人件費削減などを迫り、料金の値上げ幅を圧縮させた。
 自由化や発送電分離で発電会社が増え、競争が活発化すれば、顧客は安い事業者を選ぶため、電力会社は規制がなくても料金を抑えようとする。心配なのは、改革が中途半端で新規参入が進まず、大手電力の地域独占体制が崩れない事態だ。原発再稼働の行方が見えないため、将来の電力需給が読めず、参入に二の足を踏んでいる事業者もいる。再稼働が進んで電力が余る事態になれば、発電事業のうまみが減るからだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130403ddm003020149000c3.htmlより、
 競争が起こらなければ、大手電力の経営効率化も停滞しかねず、「燃料費高騰などで、かえって電気料金が高くなるのでは」との心配もある。政府は十分な競争が行われるまで、料金規制を残す方針だ。
 日本総研創発戦略センターの井熊均(いくまひとし)所長は「新規参入が少ないと、消費者の恩恵が小さくなる可能性がある。確実に改革が実行できるよう、周到な計画を作ることが大事だ」と指摘する。

 ◇電力システム改革のスケジュール
第1段階 広域系統運用機関の設立
・2013年法案提出、15年実施
・全国規模の需給調整や送配電網整備の計画を策定。地域間の電気のやりとりを指示

第2段階 小売り全面自由化
・14年法案提出、16年実施
・家庭が自由に電力会社を選べるようになる

第3段階 発送電分離
・15年の法案提出を目指し、18〜20年をめどに実施
・大手電力から送配電部門を切り離して別会社に。大手も新電力も送配電設備を公平に使えるようにし、競争環境を整える

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