天然ニホンウナギ 絶滅危惧種に指定
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO55808800U3A600C1EA1000/より、
日経新聞 社説 日本のウナギがいなくなる
2013/6/4付
ウナギの稚魚が一段と少なくなっている。水産庁の発表では、昨年末から4月末までに国内の養殖施設に供給された稚魚の量は約12トンと、不漁が深刻になった前年を25%下回る。夏に向けて需要が増えるウナギだが、当面は資源保護を最優先したい。
ウナギにはいくつかの種類があり、国内で主に食べているのは日本や韓国、台湾、中国などにいるニホンウナギだ。養殖施設は夏場の需要期に合わせて稚魚のシラスウナギを調達し、それを育てて出荷する。
国内の稚魚の漁獲量はピークだった1963年の232トンから減り続け、2011年はわずか5トンにすぎない。養殖施設は足らない稚魚を台湾、中国などからの輸入で補っているが、漁獲量は東アジア地域全体で減っている。
海洋汚染などとともに、過剰な漁獲が天然資源の減少につながったとみられる。
環境省は今年、ニホンウナギを絶滅の恐れのある野生生物に指定した。絶滅の危険性は2番目に高いグループで、ライチョウなどと同じだ。ここまで資源の減少が進んでしまった現実を消費者も真剣に受け止める必要がある。
ウナギを食べ続けるためには、天然資源に頼らずにすむ完全養殖の技術を官民あげて高め、事業化を急がなくてはならない。それ以上に優先すべきなのは資源管理の徹底だ。政府は昨年、国内での資源管理を強化するだけでなく、台湾や中国などと国際的な資源管理に取り組むことを決めた。
稚魚の取引価格は今年も1キロ200万円を上回った。養殖業者や料理店の負担も大きいが、異常な高値で密漁の増加が懸念される。国内だけでなく、東アジア全体で密漁や乱獲が起きないように監視しなければならない。
ニホンウナギが減少しているため、アメリカウナギなどを調達する企業も増えている。ただ、こうした動きが新たな資源の減少を招かないよう、アジア以外の国とも連携して管理体制を築くときだ。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013022302000124.htmlより、
東京新聞【社説】絶滅危惧指定 ウナギが問うている
2013年2月23日
ウナギがとうとう絶滅危惧種になってしまった。稚魚のシラスは四年連続で極度の不漁。私たちは、うな丼を子孫に残せるのだろうか。ウナギはその身をもって人間に、持続可能性を問うている。
石麻呂に 吾(わ)れもの申す 夏痩(や)せに よしといふものぞ 鰻(むなぎ)とり食(め)せ
万葉集にある大伴家持の歌である。人とウナギ。千年を超える本当に長いつきあいなのだ。
環境省は今月初め、ニホンウナギを絶滅危惧種に指定した。IB類という分類は、アマミノクロウサギやライチョウと同じなのだから深刻だ。私たちは長い友達を食べ尽くそうとしているらしい。
ウナギは謎の多い魚である。生まれ故郷は東京からはるか二千キロも南のマリアナ諸島西方海域らしい。それがわかったのも一九九〇年代になってのことだった。
透明な木の葉のような幼生は波に漂い、黒潮に乗り、シラスと呼ばれる稚魚に育って、日本や台湾など東アジアの河口にたどり着く。そして川をさかのぼり、五年から十年かかって成魚になり、産卵のために海へ下って再び長い旅に出る。私たちはそのシラスを捕まえて、工夫した餌を与え、成魚にしたものを食べている。半養殖である。
完全養殖の技術は確立しつつあるものの、卵からシラスに育つのはごく少なく、商品になるにはまだ時間がかかる。
シラスの不漁が続いている。この冬の漁獲は、「三年連続の超不漁」と言われ、ウナギが高騰した去年の実績を大きく下回る。養殖ウナギ生産全国二位の愛知県では、昨年十二月漁獲量が「ゼロ」と報告された。
シラス激減の原因は、第一に乱獲、乱食、開発による河川環境の変化、そして温暖化の影響で潮の流れが変わり、幼生が沿岸にたどり着けなくなったことなどが挙げられる。すみにくくなったのだ。
愛知県は昨年秋、下りウナギの漁獲自粛やシラスの漁期短縮といった規制に乗り出した。全国三位の宮崎県は毎年十月から三カ月間、体長二五センチを超える親ウナギの漁獲を禁止した。
当面は、国内の河川で成魚の漁獲を規制し、東アジア各国が協力して資源保護体制を整えることだ。並行して完全養殖の実用化を待ちたい。
小さなシラスは今の時代が抱える環境問題の象徴的存在だ。私たちは持続可能性を問われている。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130220k0000m070129000c.htmlより、
社説:ウナギの保護 食文化を守るためにも
毎日新聞 2013年02月20日 02時30分
脂ののった身が、舌の上でとろける。ウナギのかば焼きは、日本が生んだ素晴らしい発明品の一つだ。
そのウナギ(天然ニホンウナギ)が、環境省のレッドリストで絶滅危惧種に指定された。ここ数年、極度の不漁が続いていたが、乱獲や生息する河川環境の悪化により、近い将来に野生で絶滅する恐れが高いとされた。絶滅の危険度は、国の特別天然記念物のアホウドリより1ランク高く、かなり深刻な状況だ。
指定で漁獲や取引が規制されるわけではないが、世界最大のウナギ消費国である日本は、資源管理を徹底し、周辺諸国とも連携して保護・増殖に率先して取り組む責任がある。
ニホンウナギは回遊魚で、太平洋のマリアナ海溝付近で産卵し、稚魚(シラスウナギ)が海流に乗って台湾、中国、日本などアジアの沿岸にやってくる。日本人が食べるウナギの大半は養殖ものだ。人工ふ化が実用化しておらず、養鰻(ようまん)業者が稚魚を捕獲、池で育てて出荷している。国内の稚魚の推定漁獲量は09年の約25トンから、10年以降は9トン台に低迷する。国内生産の不足分は中国や台湾からの輸入で穴埋めしてきたが、稚魚の減少傾向は日本と変わらない。
ウナギ資源の回復に最も有効なのは乱獲防止だ。特に、産卵のため川を下るウナギの捕獲規制を速やかに進める必要がある。水産庁の呼びかけで、鹿児島や愛知など4県で下りウナギの保護などが始まっている。全国的な取り組みに拡大すべきだ。
稚魚の捕獲規制も重要となる。
問題は、ウナギが回遊する各国と協調しないと、効果が上がらないことだ。水産庁は日本と中国、台湾の3カ国・地域で稚魚の漁獲データの共有などで協議を始めているが、具体化を急いでほしい。天然の稚魚に頼らない、ウナギの完全養殖技術の確立にも期待したい。
対策の基礎となるのが、ウナギの生態や生息状況などの詳細なデータだ。水産庁は来年度から、各地のウナギ分布域や分布量、稚魚の来遊時期や来遊量、来遊場所の調査事業を始める。ウナギは重要な漁業資源でありながら、そうしたデータがいままでなかったことに驚く。資源量や生息域もよく分からずに、適切な保護対策を打てるわけがない。
中国や台湾で生産されるウナギも多くは日本にやってくる。日本が資源管理の先頭に立つのは当然だが、適正な養殖業者の国際認証制度の導入なども検討してはどうか。密漁対策にもなるだろう。
ウナギは高値が続くだろう。それもやむを得まい。食材を食い尽くし、絶滅に追い込めば、伝統的な日本の食文化も消えてしまうことを、消費者も認識すべきである。
http://mainichi.jp/area/news/20130217ddp041040012000c.htmlより、
現場発:ウナギ養殖、波高し 稚魚不漁、廃業検討業者も 絶滅危惧種指定し保護、人工ふ化急ピッチ
毎日新聞 2013年02月17日 西部朝刊
ニホンウナギの稚魚・シラスウナギの不漁が続き、養殖ウナギ生産量が全国トップクラスの鹿児島、宮崎両県の産地を直撃している。環境省はニホンウナギを絶滅危惧種に指定して保護に乗り出したが、資源回復の行方は不透明で、人工ふ化による完全養殖の実用化にもハードルが残る。【村尾哲、黒澤敬太郎、野呂賢治】
「シラスウナギが取れない状況では仕方がない。自分もいつまで続けられるか」。養殖ウナギ生産量全国1位の鹿児島県。同県薩摩川内市の川内地区養鰻(ようまん)業振興協議会の崎原茂会長(63)は廃業を考える同業者が出てきたことに肩を落とした。
同県の昨年12月〜今年1月のシラスウナギ漁獲量は32キロ。過去最低だった前年の同時期より7割減った。同3位の宮崎県も8日現在で前年同期比半減だ。不漁は10年から続き、「歴史的不漁」と言われた昨年を更に下回る状況だ。
水産庁などによると、国産、中国・台湾産のシラスウナギ価格は1キロ当たり100万〜200万円に高騰しているという。
宮崎県最大規模の養鰻業者「大森淡水」(宮崎市)は、通常出荷時200〜250グラムのサイズを300グラム以上まで育てることで出荷量を確保して、しのげないかと思案する。
ウナギの生態に詳しい望岡典隆・九大准教授は「ウナギの乱獲、生息地の環境悪化、海洋環境の変化が複合的に影響している」と要因を指摘。資源回復策として、産卵のため海へ向かう親ウナギ(下りウナギ)とシラスの保護や、多自然型の河川整備などを挙げる。
環境省が絶滅危惧種に指定した狙いも、保護意識の高まりや、河川工事の際にウナギの遡上(そじょう)を妨げない配慮、漁業方法の改善などにあるとみられる。
全国2位の愛知県は昨年10月、下りウナギの漁獲自粛やシラスの漁期短縮を発表。宮崎県は下りウナギの漁獲を禁止した。鹿児島県も下りウナギの保護策などを導入する方向で検討している。
ウナギ養殖業者でつくる「全日本養鰻協議会」の村上寅美会長(熊本市)は「資源の保護と共に、一日も早く完全養殖が実用化できるよう国にバックアップしてもらいたい」と訴える。
独立行政法人水産総合研究センター(横浜市)によると、ウナギから卵を採り、人工ふ化させる完全養殖の実用化には解決すべき大きな課題が二つ残る。
http://mainichi.jp/area/news/20130217ddp041040012000c2.htmlより、
一つは稚魚のエサ。現時点ではサメの卵が有効とされるが、コストがかかり、安定供給が難しい。もう一つは量産体制の構築だ。ふ化率が低い上、水槽内での高密度飼育では死ぬ率が高いという。
水産庁は12年度から5カ年計画で約4億8000万円の予算をつけ、16年度までに1万匹規模のシラスウナギ安定生産を目指す。
■ことば
◇ニホンウナギ
産卵場はマリアナ諸島沖で、ふ化すると北赤道海流、黒潮に乗って回遊し、河川に入り成長する。成魚になると再び海に戻り、産卵場に向かう。養殖ウナギは天然の稚魚(シラスウナギ)を育てる。絶滅危惧種指定に捕獲や流通を規制する法的拘束力はなく、知事の許可を得てシラスウナギ漁ができる。
http://mainichi.jp/select/news/20130201k0000e040166000c.htmlより、
ニホンウナギ:絶滅危惧種に環境省が指定
毎日新聞 2013年(最終更新 02月01日 14時04分)
環境省は1日、不漁が続く天然のニホンウナギ10+件を「絶滅危惧種」に指定した。乱獲や生息する河川環境の悪化で「近い将来に野生での絶滅の危険性が高い」と判断した。指定に法的な規制力はなく、漁獲や取引は制限されない。しかし、日本は世界最大のウナギ消費国とされ、専門家からは指定をきっかけに、保護対策の強化を求める声が上がっている。
◇乱獲や河川環境が悪化
ニホンウナギ10+件は、国内で絶滅のおそれのある生物を列挙した「レッドリスト(汽水・淡水魚類)」の見直しで「絶滅危惧1B類」に分類された。絶滅危惧種は3分類されるが、2番目に絶滅の危険性が高く、イトウやムツゴロウと同ランクになった。これまでは評価するデータがない「情報不足」に分類されていたが、最新の漁獲量の分析や、産卵の場所や時期の特定など、謎に包まれていた生態の解明が進み、絶滅の危険度が明らかになった。
水産庁によると、ニホンウナギ10+件の成魚の漁獲量は、1961年の3387トンをピークに09年は267トンと約13分の1まで激減した。養殖用の稚魚(シラスウナギ)も63年の232トンから10年は6トンと約39分の1にまで落ち込んでいる。
環境省によると、減少の主な原因は、乱獲に加え、河川の堰(せき)やダムの建造で遡上(そじょう)が妨げられ、生育できなくなったことが挙げられる。また、太平洋赤道域の海面水温が平年より高くなるエルニーニョ現象が起きると、産卵場が本来のマリアナ諸島沖から南下し、シラスウナギが海流に乗って北上できなくなることも影響していると考えられている。
水産庁の呼びかけで、養殖が盛んな鹿児島、宮崎、愛知、静岡の4県では、産卵のために川から海に出て行く親ウナギの漁を禁止するなどの規制や検討が昨年から始まっている。
環境省は、捕獲などを規制する「種の保存法」の対象にはしないとしているが、石原伸晃環境相は1日の閣議後の記者会見で「関係省庁と一丸となって保護に取り組みたい」と述べた。
一方、高知県・四万十川や福岡県・筑後川のように天然ウナギ漁が地域生活に根付いているところもある。ウナギの生態に詳しい望岡(もちおか)典隆・九州大准教授(水産増殖学)は「指定をきっかけに、環境保護対策は地域ごとに関係者と合意形成をはかる必要がある」と指摘する。
http://mainichi.jp/select/news/20130201k0000e040166000c2.htmlより、
このほか、「絶滅」指定されていた淡水魚クニマスは、山梨県・西湖で10年に生息が確認されたため「野生絶滅」に変更された。
今回の見直しで、汽水・淡水魚類の絶滅種は3種、野生絶滅種は1種、絶滅危惧種は23種が新たに加わり167種となった。【比嘉洋、藤野基文】
◇ニホンウナギ
世界で19種いるウナギの一種で、日本や朝鮮半島南部、台湾、中国など東アジアの温帯・亜熱帯地域に広く分布する。産卵場はマリアナ諸島沖で、ふ化すると北赤道海流、黒潮に乗って回遊し、河川に入り成長する。成魚になると再び海に戻り、産卵場に向かう。全長1メートル。養殖ウナギは天然の稚魚(シラスウナギ)を育てたもので、日本養鰻(ようまん)漁協連合会によると、年間2万〜2万2000トン生産されている。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013020102000254.htmlより、
ニホンウナギ 絶滅危惧種に すぐには食卓に影響ないが…
東京新聞 2013年2月1日 夕刊
環境省は一日、絶滅の恐れがある野生生物を分類した「レッドリスト」のうち汽水・淡水魚類の改訂版を公表し、不漁が続くニホンウナギを絶滅危惧種に指定した。
レッドリストに法的拘束力はなく、取引や漁は規制されないが、今後は保護の機運が高まるとみられる。石原伸晃環境相は一日の閣議後記者会見で「ウナギが食べられなくなるということではない。われわれの食文化になくてはならないもの。関係省庁が一丸となって守っていく」と述べた。
かつて秋田県の田沢湖だけに生息し「絶滅」指定していたクニマスについては、山梨県の西湖で二〇一〇年に生息が確認されたのを受け、本来の生息地以外に存続している「野生絶滅」に見直した。魚類の絶滅指定の見直しは初めて。
なじみの深いドジョウも、外来種との交雑などで絶滅の危険性が懸念されるとして新たに掲載。危険度を評価する情報が足りないため「情報不足」と分類した。
ニホンウナギは開発による生息環境悪化や食用向けの乱獲などで漁獲量が激減している。生態は不明な部分が多いため、環境省はこれまで「情報不足」としていた。今回、漁獲量の推移などから「三世代で72~92%が減少した」と推定。近い将来、野生での絶滅の危険性が高い「絶滅危惧IB類」とした。
http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit2より、
朝日新聞 社説 2012年7月27日(金)付
ウナギ減少―資源保護に転じる時だ
今こそ、資源としてのウナギの保護に乗り出すべきだ。さもないと、私たちの食卓から消えることにもなりかねない。
ウナギのかば焼きの値上がりが続く。原因は稚魚であるシラスウナギの3年続きの不漁だ。
日本は、世界のウナギの約7割を消費しており、保護に率先して取り組む責任がある。
その生態を考えれば、国際的な協調が欠かせない。ニホンウナギは3千キロかなたの太平洋で産卵する。幼生は黒潮に乗って運ばれ、日本や中国などの川を上って数年から十数年かけて成長し、産卵場所に帰る。
ニホンウナギの資源量は1970年代の1割程度にまで減った。乱獲に加え、生育の場である河川環境の悪化がある。
気候変動の影響もいわれる。エルニーニョなどの影響で産卵場所がずれるなどして幼生が黒潮に乗れず、東アジアに戻れなくなるとも考えられている。
卵から完全養殖する技術は開発が続いているが、コストも量も実用化にまだ遠い。当面は天然のシラスウナギをとってからの養殖が頼りだ。
日本と中国、韓国、台湾の研究者に業界代表も加わった東アジア鰻(うなぎ)資源協議会はこの春、緊急提言をした。漁獲を規制することが急務とし、とりわけ、産卵のため海に戻る親ウナギの一時的な漁獲制限を求めた。
つまり、食べるのは当面、養殖だけにしよう、というのだ。
日本での消費のうち、天然物は約0.1%だ。養殖物も味では負けない。天然物は将来、資源が回復したときの楽しみとしてよいのではないか。
シラスウナギ漁も、現在は、都道府県ごとに漁期を定める方法で制限されている。科学データに基づき日本全体で総合的に管理することが必要だ。
緊急提言は、河川環境の保全なども挙げている。
政府も中国など関係国との協議を始めた。10年以上にわたる協力の実績がある協議会とも連携してほしい。
東京大の研究チームは09年、天然ウナギの卵を初めて洋上で採ったが、その一生はなお謎に包まれている。謎のまま絶滅させるわけにはいかない。
ヨーロッパウナギはすでに絶滅危惧種とされ、ワシントン条約で国際取引が規制されている。米国は、アメリカウナギに加えてすべてのウナギの規制をするよう、提案する構えだ。そうなれば、日本など東アジア諸国への影響は大きい。
科学的な調査を踏まえ、国際的な資源の保護と利用の両立を図るモデルをつくりたい。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120421/k10014611771000.htmlより、
ウナギ 資源保護で日中が一致
4月21日 4時45分
ウナギの稚魚、シラスウナギの漁獲が激減している問題を受けて、日本と中国の水産当局は、漁獲規制を含めた資源保護の取り組みを検討していくことで一致し、近く担当者レベルで具体的な協議を始めることになりました。
農林水産省によりますと、去年のシラスウナギの国内での漁獲量は、乱獲などで5年前の3分の1に当たる9.5トンまで激減し、代わりに香港を経由した中国産などの輸入が増え続けているということです。
20日に東京で開かれた日本と中国の水産当局による定期協議では、こうした状況を踏まえて、シラスウナギの資源保護について協議しました。
この中で日中両国は、今の水準で稚魚の漁獲を続ければ資源が枯渇しかねないとして、資源保護の取り組みを共同で検討していくことで一致しました。
具体的には、稚魚や親ウナギの生息状況に関する情報を交換し、稚魚の漁獲規制や輸出抑制を含めた資源保護の在り方について、近く担当者レベルで具体的な協議を始めることにしています。
記者会見した水産庁の宮原正典次長は「ウナギの生産大国である中国と資源保護に向けて共通の意識を持つことができた。稚魚の不漁がこれだけ続く原因は、過剰漁獲にあることに間違いないので、それをどう乗り越えるかが今後の課題だ」と述べました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120414/k10014445441000.htmlより、
ウナギ稚魚 中国に輸出抑制要請へ
4月14日 4時16分
ウナギの稚魚であるシラスウナギの漁獲が激減するなか、中国から入ってくる稚魚は増え続けていることから、政府は、資源保護のために中国政府に対して、日本への輸出を減らすよう要請することになりました。
ウナギの稚魚であるシラスウナギの国内の漁獲量は、乱獲などによって去年、5年前の3分の1に当たる9.5トンまで激減しました。
その一方で、去年香港を経由して輸入された中国産などの稚魚は、日本国内で流通する稚魚の半分以上を占めるまで拡大しています。
このため、政府は、中国からの稚魚がこのまま増え続ければ、資源の枯渇につながりかねないとして、中国政府に対して、ウナギの稚魚の輸出を減らすよう要請することになりました。
来週、東京で開かれる日中両政府の水産当局による定期協議で正式に要請することにしています。
また、今回の要請をきっかけに、ウナギの稚魚の漁獲量が多い日本と中国で、資源保護の取り組みを強化したい考えで、国内での漁獲規制の検討と併せて早急に対策を講じることにしています。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2012041002000106.htmlより、
東京新聞【社説】シラス高騰 うな丼が教える危機
2012年4月10日
一キロ二百五十万円。一匹約四百円。ウナギの稚魚、シラスウナギの値段が高騰している。三年連続の不漁。この“少子化”は種の存続を脅かしかねない。うな丼を安くうまく食べ続けるためには-。
うな丼がピンチに陥っている。
ひつまぶしの本場、名古屋市中央卸売市場の成魚の卸売価格は一キロ六千円台と、昨年の二倍以上になることも。一品千円の値上げを余儀なくされた専門店もある。ピンチは全国で起きている。近ごろはウナギも温室育ちという。年末にウナギを囲いの中の“温水プール”に入れて、土用の丑(うし)の日に出荷量のピークが来るよう“栽培”されている。
シラスウナギの不漁続きに対し、昨年までは越年在庫と輸入で何とかしのいできたが、香港からの輸入も半減、養鰻(ようまん)池が空っぽになりかけて、とうとう街のうなぎ屋さんも悲鳴を上げた。体長数センチのシラスが一匹当たり四百円もしてしまうから、たまらない。廃業を決めた店もある。
ウナギは謎の多い魚である。東大海洋研究所などが産卵場所を特定したのは、まだほんの三年前だ。東京からはるか二千キロ南、マリアナ諸島の西から日本への長い旅路の果てに、川を上って成魚になる。激減の理由も定かでないが、海流異常説が有力だ。
ヤナギの葉のような、ウナギの幼生レプトケファルスは、自力では長旅に出られない。海流に乗って移動する。温暖化などの影響で潮の流れが変わり、幼生たちが日本の河口までたどり着けなくなっている。幼生は大海を漂いながら人知れず死んでいく。このような「死滅回遊」に乱獲が重なって、絶滅の恐れもあるのだという。
「ウナギは養殖」と思われがちだが、シラスを捕って池で大きくするだけだ。完全養殖の技術はあるが、実用化にはほど遠い。うな丼という食べ方自体が、早晩難しくなるのではないかと、流通業者も真顔で心配する。
水産庁は先月末、養殖業者や自治体関係者などを集めて「シラスウナギ対策会議」を開いた。温暖化対策、資源保護のあり方、河川環境の改善、完全養殖技術の改良など、大切な食文化を維持するための課題は山積だ。だが、それだけではウナギの絶滅は防げまい。
世はグルメブームが続く。
だが、うな丼危機は、私たち消費者にも、取り尽くし、使い尽くし、食べ尽くす文化の再考を求めている。