天安門事件 「風波」のように消せぬ

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013060402000140.htmlより、
東京新聞【社説】天安門事件 「風波」のように消せぬ
2013年6月4日

 中国指導部から「政治改革」の言葉が消えた。それどころか一党独裁堅持のため、言論統制を強めている。民主化の動きを武力弾圧し、国際的に孤立した天安門事件の教訓を思い起こしてほしい。
 中国は一九八九年六月四日の大事件を、逆に軽く「政治風波」とも呼ぶ。二十四年を経る前に、共産党は北京や上海の大学に対し「報道の自由」など現体制を脅かしかねない七つの言葉を、授業で使わないよう通達したという。
 本紙の取材に、上海の大学教授は学内の会議で大学幹部から口頭で説明があったと明らかにしている。政権基盤のまだ固まらない習近平指導部が、内向けに保守色を強めているなら気がかりだ。
 七つの禁句には「公民の権利」「司法の独立」など、民主政治の基礎となるような言葉が並ぶ。
 九〇年代生まれの「九〇後」と言われる多くの学生にとって事件は生まれる前のことだ。
 中国は、一党独裁を守るために民主化の動きを武力弾圧した共産党の過去の誤りを総括せず、若者にきちんと教えてもいない。
 さらに、教育の場でこのような“言葉狩り”をするのなら、中国の若者たちは将来、多様な価値観を持つ世界の若者たちと、国際社会で共に未来を語る知的基盤すら失うことにならないか。
 二〇一二年の全国人民代表大会(全人代)を振り返ると、温家宝前首相は「政治体制改革が成功しなければ経済体制改革は徹底できない」と危機感を述べた。
 ところが、習指導部が発足して初の今春の全人代では、習総書記は一転、「共産党指導の堅持」や「中華民族の偉大な復興」を強く訴えた。習氏も李克強首相も政治改革には重きを置かなかった。
 今の中国の大きな問題は、不平等な競争社会で階層が固定化され、とめどもない格差が広がっていることだ。政治改革でこうした社会矛盾の解決に切り込むのではなく、大国の夢をふりまき求心力を高めるようなやり方では、一時的な安定しか手に入れられない。
 中国は事件を「反革命暴乱」とし、「政治風波」とも呼んできた。中国語で「もめごと」という意味もある「風波」という言葉で、武力弾圧を矮小(わいしょう)化しようとするのなら誤りである。
 民主活動家への締めつけや言論統制は今また、強まっている。事件を風化させ、人々の記憶から風や波のように消し去るのは、歴史の逆行にほかならない。

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