時代の風:アベノミクス イアン・ブレマー氏

http://mainichi.jp/opinion/news/20130616ddm003070163000c.htmlより、
時代の風:アベノミクス=米ユーラシア・グループ社長、イアン・ブレマー
毎日新聞 2013年06月16日 東京朝刊

 ◇日本は再生するのか
 窮地に陥った日本経済に「活」を入れるアベノミクスが全速力で進められるなか、安倍晋三首相は17、18日に英国・北アイルランドで開催される主要8カ国首脳会議(G8サミット)に出席する。
 成果を持続できるのだろうか?政治的には望みがある。衆議院は自民党主導の連立で圧倒的多数を占め、来月の参院選も有利に戦うだろう。安倍首相の政治的な勢いは、多分、消費税引き上げ第1弾が予定される来春までは続くだろう。
 来年、物事はさらに複雑になるが、アベノミクスはうまくいく余地がある。期待ほど早く賃金が上がらなかったり、インフレで消費者の購買力が落ちたりしても、政策を撤回する必要はない。
 2015年秋まで、安倍首相は誰かと自民党総裁の座を争う必要はなく、次の国政選挙を16年まで実施する必要もない。つまり、自民党は、あと3年は彼らの政策を実行することができる。それは、過去20年で15人の首相が登場した国にとって偉業である。
 さらに、より複雑で重要な問題は、アベノミクスによって日本がダイナミズムと自信を取り戻すことができるかどうかだ。こちらはもっと手ごわい。
 第一に、国の債務の問題がある。もし、安倍政権が過度な支出削減を急ぎ過ぎたり、増税が早過ぎたりすると、インフレ政策が阻害されるかもしれない。だが、もし政府の動きが遅すぎたり、投資家が憂慮する債務問題を放置したりすると、日本の国債市場の信用を失わせるだろう。
 より気がかりなのは、それが問題かどうかという議論が続いていることだ。政策当局者は、国家の危機という現実を無視している。
 10年、当時の菅直人首相は基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を15年度に国内総生産(GDP)比で半減させ、20年度までに黒字化するとの目標を掲げた。安倍首相は「目標に現在、変わりはない」とするが、約束通り実行できるか懸念も残る。
 安倍首相の意欲的な政策が達成されるかを疑う理由は他にもある。彼は新しい医療技術や薬の開発支援、女性や若者を労働力に取り込むこと、農業分野の強化、経済特区を作ることなどに力を入れている。確かにこれらはすべて重要だ。
 だが、解雇を容易にし、停滞する産業から生産的な部門への労働者の流れを良くする案にはちゅうちょしている。さらに、企業に賃上げや国内投資などを求めているが、法人税の減税はしていない。財界リーダーの支援は重要なのに、彼らの忍耐にも限度がある。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130616ddm003070163000c2.htmlより、
 他にも長期的な課題がある。低出生率と高齢化という人口統計学上の問題だ。新たな労働力を確保するため、移民受け入れの必要性はますます高まっている。安倍首相は、女性の人材活用が緊急の課題だと認めているが、その成功には文化的、政治的な変化が求められるだろう。
 さらに、最も重要なこととして、06年から07年にかけての前回首相時に陥ったナショナリズムのわなを避けなければならない。
 国家の威信と自信を取り戻すことは、経済不振に20年間耐えてきた大国・日本にとって重要であり、日本はいつの日にか憲法を改正し、国防軍という名の軍隊を持つようになるだろう。その日は近いかもしれない。しかし、日本には中国や韓国、他の近隣諸国の疑念と論争をあおるような、独断的で挑戦的でさえある外交政策上のアプローチをも望む人がいる。
 日本の強さというものは、経済力や改革する力、企業、労働者、消費者の力によってもたらされるのだ。軍事的な能力や、外国に対する挑発的な姿勢を強めることによってではない。
 我々が昨秋、目にしたように、中国が日本に見せた最大の脅威は、東シナ海の中ではなく、日本企業が汗を流してシェアを築いた中国の国内市場にあった。中国政府は、政治的に有用であると判断すれば、反日デモが広がるのを認める傾向があるのだ。
 アベノミクスが進むにつれ、米国を含めた第三国は、懸念をしている。安倍首相と閣僚が、日本の国力の真の源泉であり、その未来でもある経済力を増強することによってではなく、愛国心をあおることで、政治的な力を高めようとする誘惑に、屈しないだろうか、と。【訳・長野宏美】=毎週日曜日に掲載

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