今、平和を語る:水島朝穂さん

http://mainichi.jp/area/news/20130624ddf012070025000c.htmlより、
今、平和を語る:憲法学者・早大教授、水島朝穂さん
毎日新聞 2013年06月24日 大阪夕刊

 ◇自衛隊は「国際災害救助隊」に 国益ではなく「地球益」見つめよ
 参院選の争点にあげられている改憲の先には、自民党の改憲草案に明記された国防軍の創設がある。これに対して、憲法学者で早大教授の水島朝穂さん(60)は、自衛隊を「解編」して「国際災害救助隊」を常設すべきだと提唱する。憲法の積極的平和主義を生かした「軍事力によらない平和づくり」を、水島さんに聞いた。

−−まずは、改憲の動きから。
 水島 憲法の本質は権力を拘束し、制限することにあります。その憲法を、国民の側からではなくて、統制されている権力者のほうが変えようというのですから、国民の納得できるプロセスが求められます。私は憲法を変える「三つの作法」と呼んでいますが、まずは変える側に「高度の説明責任」があります。次に「情報の公開と自由な討論」がなされなければならない。最後は「熟慮の期間」です。残念ながら安倍晋三首相は、目指すべき国家像から改憲の必要性に至るまで説得力のある根拠を示していません。「占領下で制定された」とか「我々の手で憲法をつくり時代を切り開いていく」などと、抽象的で観念的な理由を並べているだけです。

−−集団的自衛権の行使を容認しないと、日米同盟が崩壊するとの声もあります。
 水島 イラク戦争でもそうでしたが、このままではアメリカに見捨てられるという。ならばアメリカの誰が、日本を見捨てるというのですか。限られた政治家と軍事産業の関係者を除けば、アメリカ国内にはいろいろな意見があって、東アジアの安定を考えると日本は集団的自衛権を行使しないほうがいいと考える人だって少なくない。日米関係は将来的に、過度な軍事的関係から、もっと対等で豊かな関係に変えていくべきでしょう。

−−自衛隊の国防軍化は、違憲をなくすためだと言います。
 水島 軍隊を禁じた憲法のもとで実質的な軍隊が存在するのは矛盾です。それを解決する方法は二つあります。9条を明文で改正して軍隊にする。これはきわめて安易な解決法です。自衛隊がここまで大きくなり、矛盾も肥大化してきたので、明文改憲を行い国防軍にするというのが自民党です。

http://mainichi.jp/area/news/20130624ddf012070025000c2.htmlより、
 憲法施行後3年で朝鮮戦争が始まり、再軍備が求められる。でも、憲法改正をするにはハードルが高い。そこで、警察予備隊からはじまり、1954年に「自衛力」という考え方をひねり出した。自衛権がある以上「自衛のための必要最小限度の実力」は憲法上許されるという政府解釈です。60年近くこの解釈のもとに存在した自衛隊について、国民の評価は主に災害派遣が中心でした。PKO活動なども加わりましたが、「国防軍」となって海外で武力行使をするところまで支持があるわけではない。入隊時、「わが国を防衛すること……」と宣誓した自衛隊員も、長らく「専守防衛」の頭で活動してきた。客観的には違憲と分かっていても、憲法を変えて「国防軍」にすると言われると困惑してしまう。ここまで自衛隊でやってきたし、誇りを持っている、何も今さら「国防軍」にしなくてもいいと思っている自衛官は少なくないはずです。

−−そこで、自衛隊を解編して「国際災害救助隊」にする構想ですが、水島さんは21年前から訴えています。
 水島 矛盾のもう一つの解決法がこれです。もはや国益を突出させる「国益防衛軍」、略して「国防軍」は時代錯誤です。海外派遣にしても、非軍事の活動に徹して、国際的な公共福祉のため活動する。自衛隊を「解編」して「国際災害救助隊」にする構想は、64年にイギリスで制作され、日本でも何度となく放映されたテレビ人形劇「サンダーバード」(国際救助隊)から得ました。非戦と非武装に徹底した「国際災害救助隊」こそが、憲法の積極的平和主義にかなうと思います。

−−著書の「ベルリンヒロシマ通り」(中国新聞社)に「ニッポン国際救助隊法(第一次)案」を掲載しました。平和協力は海外の大規模な「自然災害」「環境破壊」「放射能汚染」「飢餓危機」「伝染病の蔓延(まんえん)」など多彩です。そのうえで<この目的を達するため、陸海空軍その他の戦力および軍隊類似組織の参加または協力は、これを認めない>とあります。
 水島 軍隊は国家が丸々持っていますが、「サンダーバード」は家族による救助隊だから国家に所属していません。国益ではなく、地球益のために出動するところは、「国際災害救助隊」もまったく同じです。

http://mainichi.jp/area/news/20130624ddf012070025000c3.htmlより、
−−今年3月に防衛省が製作した啓発ポスターは、なんと「サンダーバード」とコラボしたものでした。自衛隊の「国際協力活動」「災害救助活動」「自衛官募集」などの啓発ポスターです。
 水島 私が提唱している「サンダーバード」を取り入れたのは、「国防軍になります」では若者が集まらないと思ったからでしょうか。自衛官の家族のなかには、国防軍では話が違う、「サンダーバード」になるのは賛成だという方が少なくないと私は見ています。

−−編著の「きみはサンダーバードを知っているか」(日本評論社)で書かれました。<軍隊をもつ最大の理由は、「脅威」の存在である。それは結局のところ、相手が「何をするかわからない」という「不信」から発しているのである>
 水島 国防軍を保持すれば、他国に口実を与え、軍拡競争に拍車をかけるのは目に見えています。「現代軍事法制の研究」(日本評論社)を著したとき、哲学者・カントの次の言葉を序文にいれました。<常備軍は、時とともに全廃されなければならない。なぜなら、常備軍はいつでも武装して出撃する準備を整えていることによって、ほかの諸国をたえず戦争の脅威にさらしているからである>。そうしないためにこそ日本国憲法は、国家が武装することを、自ら放棄する勇気を世界に示したのです。<聞き手・専門編集委員 広岩近広>=次回は7月29日掲載予定

 ■人物略歴
 ◇みずしま・あさほ
 1953年東京都生まれ。早稲田大大学院法学研究科博士課程満期退学。広島大総合科学部助教授などを経て96年から早稲田大学法学学術院教授(憲法・法政策論)。法学博士。憲法学者として執筆、講演、テレビやラジオのコメンテーターとして活躍、著書は「憲法『私』論」(小学館)など多数。今月には、「戦争とたたかう−憲法学者・久田栄正のルソン戦体験」(岩波現代文庫)を刊行、戦争体験から平和憲法の本質を論じている。

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