富士山 「世界文化遺産」に登録

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO56551160U3A620C1PE8000/より、
日経新聞 社説 富士山の新たな楽しみ方は
2013/6/24付

 富士山が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録されることが正式に決まった。国内で17件目の世界遺産となる。これは富士山と周辺地区が、人類が共有すべき価値ある財産として国際的に認められたことを意味する。地元自治体などは今後、損傷や破壊から守る義務を負う。
 今回は富士山が古くから山岳信仰の場となり、また浮世絵など芸術の題材として広く描かれ西洋の芸術にも影響を与えた点に、普遍的な文化的価値が認められた。
 自然との共生、今日の漫画にもつながる大衆芸術など、自分たちの文化の厚みを改めて見つめ直すきっかけにしたい。海外の人にも日本文化に親しんでもらう入り口になる。文化の場という側面を、どう伝えるか。政府や地元、旅行業界は知恵の絞りどころだ。
 富士山はすでに日本を代表する人気観光地だ。夏には登山者などで山頂まで混み合う。世界遺産への登録で国内外からの来訪者がさらに増えるのは明らかだ。地元の宿泊施設では今年夏の宿泊予約者が昨年を大幅に上回っている。
 富士山はかつて自然遺産として登録を目指したものの、ゴミの多さなどから断念した経緯がある。自治体やボランティア団体などの活動で状況は改善したとはいえ、資金や人員には限界がある。
 開発や観光客増加への懸念はユネスコの諮問機関からも聞かれる。入山料の制度化や入山規制を本格的に論じる時期ではないか。
 観光客一人ひとりの姿勢も問われる。慌ただしく頂上との間を往復することだけに気を取られては霊峰の名が泣く。危険でもある。畏れ敬う対象として、例えばふもとに長く滞在し、じっくり眺め、景観や文化を味わう。そうした新しい楽しみ方にも、もっと目を向けてはどうか。
 観光の玄関口となる自治体の一つ、富士市は屋外広告について規制を強めた。富士山の眺望を確保するためだという。さまざまな富士山の顔を見るという体験も、地域の観光資源に育てたい。

http://sankei.jp.msn.com/life/news/130623/trd13062303180000-n1.htmより、
産経新聞【主張】富士山が世界遺産 文化を守る誇り育てたい
2013.6.23 03:18 (1/2ページ)

 雨上がりの空に一段と晴れ姿が映えた。
 土曜の夕方まで待たされた朗報に多くの人が晴れ晴れとさわやかな気持ちになったはずだ。カンボジアで開かれている世界遺産委員会で22日、富士山の世界文化遺産登録が正式に決定した。
 現地調査などを行った専門家機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)がすでに登録すべきだと勧告しているので、順当な決定ではある。それでも、日本の象徴的景観が「文化」としての価値を世界に認められたことの意義は大きい。この誇りをこそ守り、育てていくべきだろう。
 世界遺産としての富士山は、静岡、山梨両県の広い範囲にわたる文化遺構などが構成資産となっている。イコモスはこのうち、富士山からの距離が遠い三保松原(静岡市)については対象から除外するよう勧告していた。
 日本政府はあくまで一体としての登録を目指し、委員会にも三保松原を含めて推薦した。それが認められたことは歓迎したい。遠く仰ぎ見る富士山の姿が人々の心にどれほど大きな勇気を与えてきたのか。それを皮膚感覚で知る日本人としては当然の結果だろう。
 今回の世界遺産登録では、富士山とともに「武家の古都・鎌倉」も推薦されていたが、不登録が相当とするイコモス勧告を受け、推薦を取り下げている。将来の再挑戦への道を残す苦渋の選択だ。

http://sankei.jp.msn.com/life/news/130623/trd13062303180000-n2.htmより、
2013.6.23 03:18 (2/2ページ)
 日本にいれば、当然分かっているはずだとして説明を省けるようなことでも、国際社会に出て行けばかんで含めるように説明しなければならない。そうした説得能力が必要なことは、日本の課題としてしばしば指摘されてきたが、三保松原の経験も含め、改めて認識しておく必要がある。
 世界遺産は、人類全体のために残すべき「顕著で普遍的な価値」を持つ文化、自然遺産が登録される。日本では文化遺産12件、自然遺産4件が登録されており、富士山は17番目となる。
 正式決定は素直に喜びたいが、同時にそれは日本にとって、人類が共有すべき貴重な遺産を守る責務を負うということでもある。
 観光客が増え、環境破壊やゴミ投棄が拡大するようでは、何のための世界遺産登録か分からなくなってしまう。登山者からの入山料の徴収といったことも含め、地元は積極的な守りの方策を打ち出すべきだろう。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130623k0000m070120000c.htmlより、
社説:世界遺産富士山 覚悟を決め環境保全を
毎日新聞 2013年06月23日 02時32分

 富士山が世界文化遺産に登録されることが正式に決まった。景勝地「三保松原」(静岡市)が含まれたことも併せて実に喜ばしいが、残された課題も多い。
 周辺の開発が随分と進んでいるうえ、内外から訪れる人も大きく増えるだろう。いかに環境を保全していくのか。冷静な覚悟が必要だ。
 世界遺産委員会は、神社や湖など構成資産全体の関連づけ、来訪者数の管理、登山道を含めた環境全体の整備を重く見て、2016年2月までに保全状況報告書を提出することを日本政府に要請している。目先の利益優先の無秩序な開発や、入山者が環境を傷めることから、富士山を守ることが強く求められている。
 ただ、こんなふうに考えるとどうだろう。富士山の環境が損なわれれば、その観光地としての魅力を失う。逆に文化遺産として位置づけられ、自然が美しく守られれば、質の高い観光地としてさらに評判を高めることになる。将来を見据えた長期的な視野に立てば、この考え方はさらに説得力を持つだろう。
 マイカーの規制、入山者の抑制、登山道の保全、景観や観光施設の整備。いずれも官民一体になった取り組みが必要だ。「全体でよくなる」「そのために苦労を分かち合う」という姿勢が不可欠で、特に地域の理解がなければ成り立たない。
 今回の登録は信仰の対象であり、芸術の源泉となってきた富士山の価値を評価したものだ。観光も、街づくりも、これに沿うことが求められる。それを観光客の充実感や、地域の人々の幸せにつなげることが必要だ。文化的考察を背景にした専門家のアドバイスも欠かせない。
 山梨、静岡両県は入山料を集めることで合意している。試験導入する今夏は、山頂をめざす登山者を対象に、ピーク時に1000円程度を任意の協力金として集める方向で議論を進めている。
 記念バッジや領収書を渡すことを想定しているが、この時にゴミ袋や富士山の文化的価値の解説書なども、手渡せばいいのではないか。
 日本イコモス国内委員長の西村幸夫・東大教授は「スイス・アルプス ユングフラウ・アレッチュ」(01年に世界自然遺産登録)などスイスの山岳が、めざすべきモデルとして考えられると指摘する。地元の合意で環境保全を進め、電気自動車の利用を進めるなど、規制によって保護と観光のバランスをとっている。「簡単ではないが、富士山はアジアのスイスになりえる」と話す。
 世界遺産登録をきっかけに、富士山を自然と共生する日本人の思想を肌で感じる場所にできないか。私たちはそんな課題に直面している。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013062202000138.htmlより、
東京新聞【社説】世界遺産登録 富士に学ぶ日本の文化
2013年6月22日

  私たちの富士山が世界文化遺産に登録される。古くから信仰の対象、芸術の源泉だった宝物が世界から認められることを素直に喜びたい。同時に、その歴史と文化をもっと知る契機にもしたい。
 独立峰の富士山だけでなく、その周辺に点在する神社や湧水、登山道、信仰遺跡群など合わせて文化遺産として認められた。
 その文化と歴史的な価値の影響が「日本をはるかに超えて及んでいる」と称賛された。登録は国内で十七番目になる。
 富士は、いろいろな顔を持つ。
 三、七七六メートル。地球的な規模でいえば、際立った高さではない。だが、これほど多くの人から見られてきた山も、そうはあるまい。
 それほどに、くっきりと、美しい姿である。
 万葉集に詠まれた山部赤人の短歌はよく知られる。太宰治の「富嶽百景」の一節「富士には月見草がよく似合ふ」も彼なりの富士の見方か。古今東西、幾多の文人、芸術家をとりこにしてきたか。
 一方で富士山もまた、人びとを見守ってきた。
 日本人の心のありよう、なかんずく信仰の対象として、深くかかわってきたのである。
 富士信仰が爆発的に庶民に広がったのは江戸中期の「富士講」からだ。みなで集まり費用を積み立てて富士に登れば、たとえ貧しい町民や農民であっても救われる、と。富士の前では、男女同格、万人平等という教えであった。これが、庶民の富士信仰の芽生えであり、信仰登山は広がった。
 ユネスコの世界遺産登録は、そもそも「人類共通の財産」として守り未来へ受け継ぐのが目的である。観光振興は二の次だ。
 むろん静岡、山梨両県など地元が活気づくのは歓迎したい。年間三十万人を超える富士登山者は今後さらに増えるだろう。
 だが、本来の信仰登山は減り、多くが数珠つなぎの観光登山に様変わりした。膨大なごみ。荒れる登山道。工事による景観の変化。これらをどう抑え、文化遺産と整合させていくか。
 五合目まで車で行ける時代に、裾野の文化・信仰遺産が置き去りでは、世界遺産として本末転倒になる。
 これらの課題を乗り越えて初めて真の世界遺産になる。保全と活用の両立を見すえれば、持続可能な観光地づくりも可能だ。
 自然との共生が日本文化であるからこそ、私たちの心のよりどころである富士山について、もっと知る努力を怠るまい。

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