風知草:ケネディの予言 山田孝男氏

http://mainichi.jp/opinion/news/20130624ddm003070080000c.htmlより、
風知草:ケネディの予言=山田孝男
毎日新聞 2013年06月24日 東京朝刊

 核兵器の拡散が止まらない。原発の建設も止まらない。核戦争・テロと核事故のリスクが史上最も高い時代へ我々は向かう。
 先週、ベルリンで発せられたオバマ米大統領の演説に、ケネディ元大統領の有名なベルリン演説(50年前の1963年6月26日)からの引用があった。
 ケネディは核戦争危機のピークで危機克服へ決意を示し、東西の壁で分断された西ベルリン市民を励ました。オバマはそれを踏まえ、2010年4月に続いて核兵器削減を提案、世界に核廃絶を呼びかけた。
 ケネディに逸話がある。大統領就任前の1960年、ニクソンを退けた有名なテレビ討論で、「64年までに10か、15か、20の国が核能力を持つだろう」と予言した。就任後は「70年代半ばまでに15か、20か、25の国」と言い換えた。
 この予言は外れた。米露英仏中にのみ核兵器保有を認める核拡散防止条約(NPT)が70年に発効、徐々に広がって190カ国が加盟したからである。
 規制を逃れ、新たに核兵器保有国になったのはインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮。今日の核兵器保有国は5大国と合わせて9カ国にとどまる。
 そこへ10番目の影が差してきた。イランだ。イランの核は中東諸国を核武装ドミノへ追いやる可能性がある。サウジアラビア、エジプト、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)……。
 一方、極東では、北朝鮮が韓国、日本を核武装へ駆り立てる可能性が取りざたされている。パキスタンの核技術者カーン博士が主宰した核の「闇市場」に連なる勢力が、他の途上国政府やテロリストの核武装を助ける可能性もある。
 こう見てくると、核兵器が「15か、20か、25」の国に行き渡るというケネディの予言は、今日の国際社会にこそ当てはまる。
 その現実を縦横に解説しているのが、「週刊エコノミスト」(小社刊)6月11日号から始まった連載「ケネディの予言/岐路に立つ核不拡散」である。
 筆者は核のゴミをめぐる国際報道で2011年度ボーン・上田国際記者賞を受賞した会川(あいかわ)晴之・毎日新聞前欧州総局長。詳しくは連載をお読みいただきたい。
 オバマ演説に先立ち、安倍晋三首相はワルシャワでポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリーの首相と会談した。安倍は、原発新増設を計画中の各国に技術協力を約束した。
 安倍は1月のベトナム訪問以来、原発のトップセールスに余念がない。この奮闘は、核兵器拡散が進む国際潮流とまったく無関係であるとは言えない。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130624ddm003070080000c2.htmlより、
 インドを見よ。この国は核の平和利用を探り、カナダなどの技術で原子炉をつくった。74年、その技術で核実験を強行、核武装に踏み切った。先行した中国の核実験をにらみ、隣国パキスタンに見せつけた、と見るのが通説である。
 原発輸出が安倍の独善だとは思わない。それは日米仏などの産官複合体の基本戦略だ。日米仏が売らなければロシアや中国が取って代わるだろう。
 核兵器と原発は同じ技術である。軍事利用と平和利用は切り離せない。いま世界で運転中の原発は400基超。建設中と計画中を加えると、近い将来、ほぼ600基に達する。原発輸出は核兵器拡散の可能性を広げる政策でもある。
 原子力は平和利用といえども人間の手に負えぬゴミが出る。世界に売り込んだ原発を縦横に制御できるのか。平和利用であればよいという思い込みを根本から改める時だ。(敬称略)(毎週月曜日に掲載)

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