毎日 問う:2013参院選 1~5

http://mainichi.jp/select/news/20130709ddm001010058000c.htmlより、
問う:2013参院選/1 外交 アジア政策、全体示せ−−白石隆・政策研究大学院大学長
毎日新聞 2013年07月09日 東京朝刊

 中国、インド、東南アジア諸国連合(ASEAN)の国内総生産(GDP)を合わせると既に日本の2倍になっており、国際通貨基金(IMF)によれば、2018年には3・5倍以上になる。日本では、東アジアの国際関係というとすぐ中国がテーマになるが、対東南アジア、対インド政策も包括的に考える時期に来ている。
 ASEAN統合は、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の基礎になる。日本がそれをどう支援するのか。インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイ、ミャンマーなどがさらに経済成長するために、インフラ整備や人材育成などの分野でどう協力するのか。戦略的に考えるときだ。
 安倍晋三首相は昨年末の就任後、東南アジア外交を活発化させている。ASEAN加盟の10カ国は政治的リスクが小さく、経済が伸びている。日本が連携しようとするのは当然で、「中国けん制」などという単純な政策ではない。
 中国はこれからの10年で日本よりはるかに大きな経済力を持つ国になる。「富国強軍」で米国に拮抗(きっこう)しようともしている。そういう国と緊張関係が長く続くのは、日本の安全保障と経済にとって望ましくない。
 中国も、沖縄県・尖閣諸島の問題を理由に、日本との関係や、この地域の安全保障を長期にわたって緊張させようとは考えていないはずだ。いずれは棚上げの方式を模索せざるを得ない。しかし、そこに至るには時間がかかる。中国が力に任せて領有権を主張しているときに日本が譲歩することはあり得ない。
 この地域の富と力の分布は、これからの10年でまた大きく変わる。それに対応したルール作りがカギになる。領土紛争は南シナ海にもある。国際紛争は国際法と国際的な規範に従って平和的に解決するのが基本。中国が勝手にルールを作り、それを押し付けるのは駄目だ。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)がいい例で、多国間の交渉によるルール作りに中国も参加するのが望ましい。
 韓国の最近の世論を見ると、韓国の人たちは、中国との関係を日本との関係以上に戦略的に重要と考えている。それが歴史問題についての朴槿恵(パククネ)政権の立場にも表れている。韓国の人たちが「日本は重要ではない」と考えるなら、日本としてはクールに、コレクト(政治的に正しく)に、韓国との外交関係を維持するしかない。

http://mainichi.jp/select/news/20130709ddm001010058000c2.htmlより、
 歴史認識をめぐる首相の発言で米国からも懸念の声が出たが、菅義偉官房長官がうまくさばいた。政治家は歴史認識の問題であまり発言しない方がいい。発言するほど政治的な争点になり、国際的な評価を落とす。【聞き手・中田卓二】
     ◇
 この参院選の大きな論点について、研究者、経済人らに話を聞く。=つづく

http://mainichi.jp/select/news/20130710ddm001010069000c.htmlより、
問う:2013参院選/2 経済 質的な成長目指せ−−三菱ケミカルHD・小林喜光社長
毎日新聞 2013年07月10日 東京朝刊

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」は一種の社会実験だ。政策を中途半端に小出しにしても効き目はなかった。だから「ドーンと行け」ということで、それによって超円高が修正された。それまでの下向き気分が変わって、明るくなった。政も官も課題に持続的に取り組もうという機運がでてきた。ここが重要だ。
 そういう感覚が出てくると、企業も給料を少し上げよう、設備投資を考えようと、いろいろな経済の因子が元気になる。付加価値の高い製品を中心に内需が改善し、国内の企業の収益環境は上向いてきた。企業の多くが海外で稼いでいた以前とは逆の状態だ。米国経済の回復の支えもあって、秋から冬にかけ実体経済も改善していく。燃料や食料の価格が上がっているが、今のところ、我慢できる程度の副作用ではないか。日本が本当に元気になるのか、元に戻るのか、今は正念場。この参院選はその方向性を国民全体が判断する極めて重要な機会だ。
 エネルギー問題は、中長期と短期とに分けた視点が求められる。原発は人類の英知を集めた技術だが、完全には制御できないことが分かった。40〜50年の時間軸で、依存しない方向に向かうべきだ。CO2(二酸化炭素)を閉じ込めたり、さまざまな素材として有用なカーボン源に活用する研究開発も進んでいる。自然エネルギーを本格活用する技術開発を加速させることは、原発事故を経験した日本の存在意義を高めることになる。
 しかし、原発を完全に代替できる技術を10年、20年で開発するのは難しい。原発を停止したことで貿易赤字は膨らんだ。エネルギーコストの増加により重厚長大産業は海外に出て行かざるを得ない瀬戸際にある。2030年代くらいまで20〜30基程度の原発を動かさざるを得ないだろう。経済が壊れてしまえば、脱原発を実現するための技術基盤もなくなる。
 核燃サイクル事業は中長期の方向から見て正しいのかどうか。使用済み燃料は埋め立て処分するのか、どこかに永久保管するのか。この問題は結論を出さないといけない。
 今後、日本経済が目指すべき方向は、これまでのような量的な成長ではなく、質的な成長だ。資源を大量に使って鉄を作るとか、石油から繊維原料を作るような事業は、海外にシフトせざるを得ない。例えば当社も、病気を治す薬ではなく、病気にならない健康管理とは何かを重視していく。そうなれば社会保障にもカネはかからなくなる。

http://mainichi.jp/select/news/20130710ddm001010069000c2.htmlより、
 質的成長・発展を目指すのは量的成長を目指すよりも困難だが、それを実現するパッション(情熱)こそ国民の活力になる。政治には、それを喚起する役割がある。【聞き手・大塚卓也】=つづく

http://mainichi.jp/select/news/20130712ddm001010064000c.htmlより、
問う:2013参院選/3 復興 政治家は生の声聞け−−岩手県陸前高田市のまちづくり会社専務・河野通洋さん
毎日新聞 2013年07月12日 東京朝刊

 ◇河野通洋(こうの・みちひろ)さん
 東日本大震災の津波で、経営するしょうゆ醸造会社「八木澤商店」の本店と製造工場が全滅した。「何が何でも再建する。そのために社員の雇用を守る」と、まず全国から集まった救援物資を配るボランティアを業務として認め、ハローワークに掛け合って給料相当分を休業補償で支給してもらい、営業拠点を市外の内陸部に移して同業者に製造委託した製品を販売。昨秋には本社機能を市内に戻し、今年2月から新築の工場で自社製造を再開した。
 震災直後、中小企業庁の課長さんらが「プレハブの仮設店舗や工場を国が無償で貸与する」と説明に来た。「完全なフライングだが、首をかけてでも法案を通して予算化させる」と。私たちが説明して回るのに必要だと言うと、名刺もくれた。「この国の役人は捨てたもんじゃない」と思った。警察官、自衛官、消防署員たちの犠牲をいとわない行動もそう。震災は、そういう公の人を「日本の誇り」と見直す機会になった。世界からも称賛された。
 それを台無しにしたのが政治家だ。被災地の視察に来る国会議員は多いが、自分のPRのためだ。民主党政権時代に閣議決定された中小企業憲章について考える超党派の会合が6月、国会内であり、被災地代表として呼ばれて話したが、国会議員は自分が話す時だけ来て、終わったら帰った。「現地の生の声を聞く気はないのだ」と思った。ある議員は「民主党政権が閣議決定したものを現政権で国会決議するのは無理」と言った。民主党、自民党という問題ではない。この国は機能不全を起こしている。
 そもそも、なぜ真っ先に福島に出先機関を作らなかったのか。臨時の国会議事堂を作ってもいい。国は福島を見捨てないというメッセージになる。宮城や岩手は5年、10年かかるとしても再建後の未来が見える。でも福島は見えない。いまだに15万人が避難している。日本国の経営を惰性でやっていたら、財政破綻は確実に起こる。そういう危機的な状況の下で国民の誰もが不安に思っている最大の問題が福島だ。
 地元の復興に向けては、土地取得のための地権者交渉に時間がかかりすぎる今の制度を抜本的に変えてほしい。内閣府の予算で起業した会社が約40社あるが、借りられる工場もなければ事務所もない。成長の源泉なのに、もったいない。

http://mainichi.jp/select/news/20130712ddm001010064000c2.htmlより、
 中小企業経営者は震災後、役員報酬をゼロにした。財政破綻の危機を本当に感じるなら、国会議員も報酬をゼロにしたらどうか。議会はボランティアで夜やればいい。昼は本業の仕事をして。政治家が範を示せば官僚も地方議員も変わる。【聞き手・上野央絵】=つづく

http://senkyo.mainichi.jp/news/20130713ddm001010038000c.htmlより、
問う:2013参院選/4 憲法 変える理由、考えよ−−東大法学部・長谷部恭男教授
毎日新聞 2013年07月13日 東京朝刊

 ◇長谷部恭男(やすお)教授
 憲法を変えるということの意味を知るには、憲法典(条文)の文言を変えることと、それが映し出す「国の組織・構造と国のあり方」を変えることを区別する必要がある。敗戦直後の憲法の変更のような、憲法の基本原理の変更が憲法を変える最も重要な場面だ。
 社会全体として統一的な決定が必要な場合に、どのような手続きを経て決めるべきかのルールは憲法に定められている。同時に、多数決で統一的に決めてはいけないこともあるということも憲法には書いてある。それぞれの人の生き方や根本的な信念がいかにあるべきかということについては、社会全体として多数決で決めないということだ。
 なぜかというと、そんなことを多数決で決めると社会に深い亀裂を生むからだ。自分の生き方や世界観を人に押しつけたいというのは、人間の自然な情だ。しかし、それをそのまま押し通そうとすると戦争になる。誰もが自分が正しいと思うことを真剣に遂行しようとすれば、人間らしい、安全で安定した公平な社会生活は成り立たない。
 社会全体で統一的に決定できることには限界がある。残りは各人が自分の考えに従って自由に生きる。それが公私を区分する現憲法の基本原理だ。
 この憲法の基本原理は単に国内だけの問題にはとどまらない。日本がどういう国と友好的であり得るのか、逆にどういう国とは友好的ではあり得ないのかを決める原理でもある。現憲法には前文にもあるとおり、人類普遍の原理が組み込まれている。その価値観を共有している国と日本は仲良くしている。だから、本当に動かそうとするなら覚悟が必要だ。
 変えるのなら理由と必要性があるかないかをよく考えるべきだ。その議論がまだ足りない。普通は法律を変える時は、なぜ変えるのか、どうして変える必要があるのかという議論を最初にするはずだが、それが十分ではない。
 変えること自体に意味があるかのように話が進んでいる。憲法は国の看板であることが分かっていないのではないか。憲法典が変えにくくなっているのは、政治家が危険なことや無用なことにエネルギーを注がないようにするためだ。

http://senkyo.mainichi.jp/news/20130713ddm001010038000c2.htmlより、
 市民は憲法のことを毎日考えて暮らす必要はない。しかし、政府が個人の世界観にまで踏み込んですべてを決めるような国は少なくなってきたとはいえ、まだたくさんある。戦争もなくならない。おかしな議論が出てきた時には、しっかり考えてもらわないといけない。憲法の基本原理を攻撃する人が現れたら、正々堂々と反論しなければならない。【聞き手・須藤孝】=つづく

http://mainichi.jp/select/news/20130715ddm001010049000c.htmlより、
問う:2013参院選/5止 民主主義 「思い託す」見極めを−−北大法学部・中島岳志准教授
毎日新聞 2013年07月15日 東京朝刊

 ◇中島岳志(たけし)准教授
 この参院選の最大の争点は「安倍内閣の是非」だという。メディアは、その核心は安倍内閣の金融・経済政策「アベノミクス」の評価だという。だが、争点はぼやけている。野党が「アベノミクス的ではない、もう一つの社会像」を具体的に示せていないからだ。
 日本社会が「スピード感」という言葉に惑わされ、短期的に考えるようになってきたとはいえ、数カ月先の景気の行方を争う参院選にするのはおかしい。これから10年、20年先までサスティナブル(持続可能)な経済・社会のあり方こそ問われるべきだ。
 私は、望ましいと考える社会と、どの政党が近いかを考慮すれば、投票の指標になると考えている。その座標軸は二つ。一つは、人間が抱えるリスクをどうとらえるか、にある。人は病気やけが、失業、災害など、さまざまな問題に見舞われるリスクを等しく負う。各党がそのリスクをどう扱おうとしているかを「リスクの個人化」「リスクの社会化」という二つに分けて考える。
 「リスクの個人化」とは自己責任で個人のリスクは個人で負うという発想で、「小さな政府」を志向する。「リスクの社会化」とは、個人のリスクを国や社会全体で薄く広く担おうという考え方で、「大きな政府」に向かう。この二分法では、アベノミクスの方向性は「リスクの個人化」にあてはまる。
 もう一つの軸は価値観。私は「リベラルか、パターナルか」と表現している。リベラルは、個人の生き方に権力は介入すべきではないという考え方。パターナルは逆に、権力が国民に一定の社会規範を示すべきだという発想だ。憲法改正や夫婦別姓、靖国神社参拝などの問題を考えると、自民党は「パターナル」の方向にある。日本維新の会もこれに近いだろう。
 ところが、これに対抗して「リスクの社会化」「リベラル」の旗を掲げる勢力が見えない。この参院選が「しらけている」といわれるのは、その選択肢がないからだ。とりわけ、昨年末まで政権の座にあった民主党の責任は大きい。

http://mainichi.jp/select/news/20130715ddm001010049000c2.htmlより、
 民主主義の原点は、有権者がどの候補なら思いを託せるか、見極めるところにある。選挙のたびに政党を移る候補者がいるからこそ人を凝視してほしい。選挙が終わると、憲法改正、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)、原発再稼働など、大きな政治判断が目白押しになる。どの政党がどの政党と組むと、自分が重視する政策はどう動くのか。投票にあたって見通してみてほしい。賢い有権者になろう。【聞き手・川上克己】=おわり

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