エジプト政変 「軍介入に大義はあるか」

http://mainichi.jp/opinion/news/20130719k0000m070121000c.htmlより、
社説:エジプト情勢 モルシ氏の解放が筋だ
毎日新聞 2013年07月19日 02時32分

 エジプトの暫定内閣(16日発足)はイスラム勢力からの入閣がなかった半面、クーデターを主導したシシ国防相が第1副首相を兼任するなど、軍に配慮した布陣となった。国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ前事務局長が副大統領に、経済学者のベブラウィ氏が暫定首相にそれぞれ就任したことも含めて、エジプトの政治は世俗・リベラル派が一気に主流になったのである。
 ある意味では欧米が歓迎すべき状況だろう。イスラム色の強い政権よりも、欧米がくみしやすいのは確かだからだ。だが、米オバマ政権や欧州諸国には歓迎よりも憂慮と懸念が目立つ。イスラム勢力が参加しない政治体制には長期的な安定を望みにくいと心配しているのだろう。
 それも無理はない。エジプトの選択は尊重すべきである。だが、30年に及ぶムバラク独裁体制が崩れた後、この国は民主的な選挙でモルシ氏を新たな大統領に選んだ。そのモルシ氏がたった1年で権力の座から引きずり降ろされ、いまだ軍・治安当局の軟禁・拘束下にあることを、私たちはどう考えればいいのか。
 モルシ氏の政治に多くの国民が不満を持ち、失望したことは事実である。同氏がデモ隊の殺害を扇動したという刑事告発もあるという。しかし、それらは同氏を拘束しておく理由にはなるまい。暫定政権は同氏を速やかに解放するのが筋だろう。
 今月3日の政変について、米国はクーデターとは「即断しない」(ケリー国務長官)との立場だ。クーデターとみなせば、米国はエジプトへの支援を見直さざるを得ない。そうなれば対中東政策の要であるエジプトとの関係は悪化し、米国の同盟国イスラエルの安全保障にも影響しかねないとの判断からだ。
 だが、その米国も12日、モルシ氏の釈放を初めて求めた。欧州連合(EU)のアシュトン外務・安全保障政策上級代表(外相)も17日、エジプトを訪れ、加盟国の総意としてモルシ氏釈放を要望した。暫定政権がこの上、拘束を続けるのは対欧米関係においても得策ではあるまい。
 モルシ氏が自由になれば同氏の出身母体・ムスリム同胞団などのイスラム勢力が勢いづき、対立が激化する事態も予想される。だが、かといって、ムバラク政権のように力でイスラム勢力を抑えつけても民主化や安定、繁栄への展望が開けないことは、多くの国民が知っていよう。
 この国は長年、軍とイスラム勢力が抗争を続けてきたからだ。今は、そんな暗い過去へ逆戻りするかどうかの分かれ道ともいえる。だからこそ同胞団を含めた全勢力の話し合いが必要だ。モルシ氏を拘束する限り、そうした話し合いは望めまい。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130707/mds13070703270001-n1.htmより、
産経新聞【主張】エジプト軍介入 対話で民政に早期復帰を
2013.7.7 03:26 (1/2ページ)

 モルシー大統領退陣を求める大規模行動に揺れていたエジプトで、軍が大統領を拘束して権限を奪い、暫定大統領に最高憲法裁長官を据えた。
 同国初の民主選挙で選ばれたモルシー氏が、失政や悪政で過半の支持を失っていたにしても、民主的手続きによらず軍介入という非常手段で退けられたことは極めて残念だ。
 氏の出身母体であるイスラム原理主義組織ムスリム同胞団は、徹底抵抗の構えだ。軍と同胞団メンバーらとの全面衝突は、収拾不能の状況を招く。絶対に避けなければならない。そして、一刻も早く民政に復帰することだ。
 モルシー政権のこの1年で、物価高騰、失業者増大、エネルギー逼迫(ひっぱく)、財政悪化など経済は行き詰まり、治安も悪化した。氏は自らに絶対的権限を付与しイスラム色も濃い憲法を発布し、同胞団支持者以外の民心を離反させた。
 同胞団の利益代表と化し、国民全体の指導者であることに背を向けたのである。責任は大きい。
 軍が発表した「モルシー後」の行程表は、現行憲法の停止・改正と大統領選の早期実施をうたう。民政に戻す際に重要なのは、早急な履行はもちろん、同胞団も含む全員参加のプロセスである。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130707/mds13070703270001-n2.htmより、
2013.7.7 03:26 (2/2ページ)
 同胞団は約80年も存続し、100万人の団員を抱えて全土に根を張っている。軍と双璧の組織だ。それを排除するのではなく、体制内に取り込んで穏健化していかない限り、真の安定はあるまい。アラブの盟主エジプトの動向は、地域全体が注視している。
 その意味で、軍がモルシー氏拘束のみならず同胞団幹部の一斉逮捕に動いているのは問題だ。同胞団を、自らの既得権益と世俗主義への脅威と見なしてきた軍がつぶしにかかったのなら、反発を招くだけで逆効果ではないか。
 今回の大規模行動は、ムバラク独裁政権を崩した2011年に次ぐ「第2の革命」だ。政権への不満が民衆蜂起を引き起こし、事態沈静化を名分に軍が介入して政権が倒れる。悲しい循環が繰り返されれば民主主義は根付かない。
 民主化には、公正な選挙と並行して、関連の法や制度、本格的政党、人権・民主化団体など、下支えする「インフラ」の整備や国民教育が欠かせない。時間を要し、国民も忍耐を求められる。
 「負の連鎖」は断ち切らなければならない。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年 7月 5 日(金)付
エジプト政変―真の国民対話で収拾を

 エジプトで初めて民主選挙による政権が生まれて、わずか1年。民衆デモのうねりに乗じた軍が実権を奪い返し、ムルシ政権はあっけなく退場した。
 独裁からの夜明けを象徴した民主体制が軍の強権で白紙に戻ったことは、実に嘆かわしい。アラブの盟主を自負する大国が模索する新生国家への道のりの険しさをものがたる。
 軍は、昨年制定された新憲法を停止した。大統領と、その出身母体のムスリム同胞団の幹部ら多数を拘束し、最高憲法裁判所に暫定政権をゆだねた。
 自らが政権につかないからクーデターではない、と軍は主張している。だが、公正な手続きで選ばれた文民政権を軍の一存で排除したことは、正統性を欠く行為といわざるをえない。
 一方、ムルシ政権には世論の逆風があったことも事実だ。全土に広がった反政権デモは、独裁の打倒をめざした2年前をも上回る規模に達していた。
 怒りの矛先は主に経済の失政だ。石油関連と観光に頼る細い収入源と、慢性的な財政赤字。それは独裁時代から続く構造的な難題で、経験乏しい親イスラム政権には荷が重すぎた。
 急速に育つ中間層の若者らが満足できる雇用環境もない。物価の高騰や福祉切り下げなどへの怒りと合わさって、反政府の街頭行動が盛り上がる現象は、ブラジルなどでもみられる。
 どの政府も国民との広い対話でしか道は開けないのだが、ムルシ政権は違った。軍や世俗派を遠ざけ、大統領の権限を司法チェックの届かない大権に強めようとする独尊ぶりがめだち、国民を統合できなかった。
 軍は、失望した世論の風を読んで自らの復権に動いた。しかし、もし軍が旧体制への回帰に向かうなら、民衆は再び街頭を埋めるだろう。反政権デモは、実感できる民主革命の果実に飢えているのは間違いない。
 ムスリム同胞団は反発を強めている。何よりも避けねばならないのは、国を二分する内乱に発展して、大量流血に陥る事態だ。エジプトの不安定化は中東全体の流動化に直結し、世界経済にも打撃となる。
 今回の事態は、あくまで混乱をしずめるための応急措置とすべきだ。軍は、改めてムスリム同胞団を交えた真の国民対話を進め、国を束ねられる政権づくりを急がねばならない。
 米欧は注視の姿勢にとどまっている。エジプトの変革は、できるだけ外国の介入を控えることが賢明だ。アラブの伝統国の歴史のページをめくる主役は、自分自身でしかない。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013070502000133.htmlより、
東京新聞【社説】混乱エジプト アラブの春を本物に
2013年7月5日

 混乱のエジプトで、望まれるのは諸勢力でつくる“みんなの大統領”にほかならない。軍介入はそのための暫定的手段でなければならない。あくまで対話により、アラブの春を本物にしてほしい。
 “みんなの大統領”とは、一年前、選挙に勝ったモルシ大統領が自ら宣言した言葉だ。
 ムスリム同胞団の代表モルシ氏は、アラブの春を起こした若者たちの支援を得て、元軍幹部の候補を小差で破った。
 ネットワークシステムを使った若者グループは、長期独裁ムバラク政権を倒すため、経済的不公正をただすため、自分たちの一票をモルシ氏に投じたのだった。
 だから、モルシ氏は“みんなの大統領”と自らを位置付けた。
 ところがこの一年、モルシ政権は身内の同胞団にばかり手厚い政治を進めた。憲法にイスラム色を強め、大臣も地方知事も同胞団系を指名、任命した。
 逆にみんなのための公約はほとんど果たされず、失業は増え、治安は悪化し、投資は減った。
 現地の世論調査では、支持率は当初の80%から30%台へと転げ落ちていた。半数を大きく割ったことは、普通のイスラム教徒、また同胞団支持者からも批判が強まっていたことを物語る。
 つまり今度のデモはイスラム勢力対世俗勢力の面もあるが、政権の強権に多くの国民が不満と不安を抱いていたということだ。エジプト民衆革命は、かつてのナセル革命のようにエジプト人の愛国心を大いに満たしたが、その分、失望も大きかったというわけだ。
 とはいえ、いくら治安維持のためとはいえ、軍部が選挙で選ばれた大統領を拘束してその権力を奪ったことは、民主主義のルールに反する。アラブの春は力ずくで蹴散らされたことにもなる。
 軍部はあくまでも暫定仲介者として、次の民主的手続きへの移行だけを担うべきだ。その先に“みんなの大統領”はいるはずだ。
 同胞団を含む諸勢力はまず流血をやめ、速やかに暫定的統治体をつくるべく民主的手続きを進めねばならない。その決め方もデモクラシーのうちである。できなければ軍政復活を招く。
 歴史を振り返れば、革命には混乱がつきものでもある。今の混乱もその過程と見ることもできる。
 エジプトの政治はエジプト人が決めるしかない。エジプトは、政治、軍事、文化でアラブの牽引(けんいん)車である。中東全体の安定のためにも、よい手本を見せてほしい。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO56993460V00C13A7EA1000/より、
日経新聞 社説 エジプトの民主化を止めてはならない
2013/7/5付

 エジプト軍が憲法を停止し、モルシ前大統領を解任した。選挙で選ばれた大統領の権限を奪い、身柄を拘束するクーデターである。
 中東の民主化要求運動「アラブの春」によってムバラク政権が崩壊して2年あまり。民主化に逆行する事態を憂慮する。全ての政治勢力が参加する民政への移行を早急に実現しなければならない。
 きっかけは1年前に就任したモルシ前大統領に対する抗議デモだ。モルシ氏はイスラム組織「ムスリム同胞団」の出身である。イスラム教の教義に沿った社会の実現を目指す同胞団は、ムバラク政権下では非合法の組織だった。
 モルシ政権は旧政権崩壊後初の自由選挙で高い期待を受けて誕生した。しかし経済の低迷や治安の悪化が続く一方、自らの権限を強化するなど強権的な色彩を強めたために急速に支持を失った。
 国民の不満に向き合わなかったモルシ前大統領が負うべき責任は小さくない。しかし、民主的な手順で選ばれた大統領の強制排除は国際社会の理解を得られない。モルシ氏と同胞団の支持者は軍の介入に強く反発している。国民の分断が残す傷は深い。
 全土に広がった反大統領デモでは、同胞団の支持者との衝突で多数の死者が出ている。クーデターを受けて衝突の拡大が懸念される。これ以上の流血を最優先で回避しなければならない。
 エジプト軍の声明によると、大統領権限は最高憲法裁判所の長官が引き継ぐ。実務者内閣を設置したうえで、大統領選挙と議会選挙を早期に実施する。
 民主化の作業は振り出しに戻るが、もう一度踏み出すしかない。その際、同胞団の政治参加を閉ざしてはならない。民主化の実現には全勢力の参加が不可欠である。
 民主化を支える国際社会の役割はこれまで以上に重要となる。エジプトは中東最大の人口を抱える地域大国だ。民主化の行方はチュニジアやリビアなど、アラブの春で独裁政権が倒れたほかの国々も注視している。
 イスラエルと国境を接し、物流の動脈であるスエズ運河を抱えるエジプトの安定は世界経済に重要だ。すでにエジプトの混乱を理由に原油先物価格が上昇している。
 日本は選挙の実施支援やインフラ整備への協力を続けてきた。エジプトの民主化がこれ以上後退しないよう国際社会の支援の輪に積極的に加わっていく必要がある。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130705k0000m070125000c.htmlより、
社説:エジプト政変 軍介入に大義はあるか
毎日新聞 2013年07月05日 02時33分

 2年前、30年も続いた独裁政権を倒したエジプトの民衆が、今度は就任わずか1年の民選大統領を権力の座から引きずり下ろした。
 人々は今回も首都カイロ中心部の広場に集まり、政権打倒を祝った。その「人の海」に既視感がある。が、全く違うのは、前回が「民衆革命」と称賛されたのに対し、今度は「軍事クーデター」と呼ばれる点だ。
 この政変の背後にいたエジプト国軍は、モルシ大統領を拘束するとともに最高憲法裁判所の長官を暫定大統領に起用し、昨年暮れに施行されたばかりの新憲法も停止した。
 今後、軍の後見のもとで再び憲法を制定し、大統領や議会の選挙を行うという。だが、こうした政変と政治日程は、正当性や大義に問題があると言わねばならない。
 米オバマ政権が早期民政移管を求め、対エジプト支援を見直す意向を示したのは、もっともだ。軍が実権を握る限り、他の国々も積極的な支援をためらわざるを得まい。
 心配なのは、軍がモルシ政権の支持基盤であるムスリム同胞団の幹部多数を拘束し、今後の政治の枠組みからイスラム主義の同胞団を締め出す構えを見せていることだ。
 80年以上前に結成された同胞団は、ある時は武闘集団、ある時は福祉団体としてエジプトで支持を広げた。モルシ政権下でやっと日の目を見た同胞団が一転、軍や暫定政権への「聖戦」を発動すれば、果てしない混乱と流血が続く恐れがある。
 思い出されるのは、アルジェリアの前例だ。1990年代初め、同国ではイスラム政党が選挙で圧勝したが、軍が介入して選挙結果を白紙に戻し、10年に及ぶ内戦に突入して10万人以上が死亡したとされる。これを繰り返してはならない。親米国で「アラブの盟主」たるエジプトの政情不安は、中東から欧州、世界にも大きな影響を与えるからだ。
 現実問題としてモルシ氏の復権は難しく、今後は野党勢力のエルバラダイ氏(国際原子力機関の前事務局長)らが政治改革の中心になるのだろう。だが、同胞団などモルシ支持派の参加に道を開かなければ、真の「国民和解」はできまい。
 確かにモルシ氏や同胞団にも問題はあった。貧しいエジプトの庶民は、モルシ政権下で失業が増え物価が高騰するのを見て幻滅した。イスラム色の強い新憲法は女性を特に警戒させ、モルシ氏の剛腕が軍との確執を生んだ。軍は民衆運動に乗じてモルシ氏に報復した印象もある。
 だが、一日も早く民政に戻り、観光客が安心して訪問できる国にならなければ、エジプトの未来は暗い。庶民も満たされまい。悠久のナイルが流れる国に軍政は似合わない。

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