参院選 TPPと農業「ばらまき合戦はやめよ」

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013072002000132.htmlより、
東京新聞【社説】TPP交渉 日本の「農」に耐久力を
2013年7月20日

 環太平洋連携協定(TPP)交渉に日本が合流する。安倍晋三首相のいう「国益にかなう最善の道」を切り開くには、攻めの交渉力に加え、輸入農産品と渡り合える日本農業の耐久力が欠かせない。
 TPP交渉にいかに臨むのか。交渉は各国が利害得失をむき出しにする二十一世紀の秩序づくりの場であり、そこで決められる貿易ルールは国内に大きな影響を及ぼす。国内外の両面を見据えて進めるべきだろう。
 成長するアジアは交渉を主導する米国の経済繁栄と密接につながっており、米国の国債を買い支えている中国は経済的に欠かせない存在でもある。米国はTPPをアジア回帰の重要な道具と位置づけ、ゆくゆくは中国を同じ土俵に引き入れる思惑も秘めている。
 今や貿易のルールづくりは機能不全に陥った世界貿易機関に代わり、TPPや米・欧州連合(EU)自由貿易協定交渉など大国を軸に進められているのが実態だ。
 TPP交渉はマレーシアで始まっており、今回で十八回目。交渉は関税や知的財産権など二十一分野にまたがり、二十三日に途中参加する日本としてはコメや麦などの重要五品目を関税撤廃の例外にできるか否かが最大課題となる。
 弱みを抱えているのは日本だけではない。一段の自由化を唱える米国でさえも国内農家保護を理由に砂糖を、カナダも乳製品の例外扱いを主張するとみられている。
 攻めの交渉を貫き、互いの弱みを駆け引きの材料にして折り合う道もあるが、700%を超えるコメの高関税率をそっくり維持するのは現実的ではない。交渉の結末が日本国内に及ぼす影響を最小限に抑え込む耐久力が求められる。
 日本農業は自由化交渉がなくても危機的状況にある。自給率は先進国中最低の39%。農業従事者の平均年齢も六十六歳という高齢社会。それでも、徐々に変化している現実を見落としてはならない。
 二〇一一年には、約一万五千人に上る三十九歳以下の新規就農者のうち、家の農業を引き継ぐ自営就農者が減る一方で、農業生産法人などの門をたたく農家出身以外の若い新規雇用就農者は四割を超えた。
 農地を集積した二十ヘクタール以上の大規模経営体も全体の三割以上を占め、コスト削減に挑んでいる。
 こうした変化は輸入農産品を迎え撃つ日本の農の耐久力を強める可能性を秘める。自給率引き上げのためにも、政府の政策支援に加え、国民全体で後押しすべきだ。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年 7月 19 日(金)付
TPP交渉―守りの国益論を超えて

 環太平洋経済連携協定(TPP)の18回目の交渉が、マレーシアで行われている。今回が初参加となる日本は、米国による承認手続きを待って、会合の終盤に加わる予定だ。
 TPPをめぐっては常に「国益」が叫ばれてきた。反対派は「国益を損なう」と主張し、賛成派も「国益はしっかり守る」と強調する。
 そうした国益論の大半は、高い関税で守ってきたコメをはじめとする農産品の保護問題に集中し、「守り」の議論ばかりが目立つ。
 だが、TPPの交渉分野は関税の削減・撤廃にとどまらず、金融や通信といったサービス取引、投資の促進と保護、競争政策、知的財産権など幅広い。
 「総合的に消費者の利益につながるか」という視点を基本に、ルールづくりにかかわる。分野ごとの利害得失を分析し、マイナスの影響が予想される場合は、必要な対策を検討していく。政府はこうした姿勢を貫かなければならない。
 心配なのは、政府を支え、監視する役回りの国会が、守りの国益論に縛られているように見えることだ。
 衆参両院の農林水産委員会は今春、TPP交渉について決議をした。コメ、麦、牛肉・豚肉など5品目を挙げ、「聖域の確保を最優先し」「10年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も含め認めないこと」などを政府に求めている。
 決議の中心となったのは、自民、公明、民主の3党だ。3党の参院選での公約も、基本姿勢は国会決議の線で共通する。
 通商交渉は、攻めと守り、押したり引いたりの積み重ねだ。利害が一致する国、対立する国がテーマごとに異なる展開も珍しくない。
 特定の分野で、業界保護を優先するかのような方針に固執すれば、交渉過程で孤立したり、他の分野で思わぬ譲歩を迫られたりしかねない。
 世界貿易機関(WTO)での多国間交渉が暗礁に乗り上げた後、世界の通商交渉は二国間・地域間に軸足を移した。米欧や日欧、東アジア全体、日中韓など多様な枠組みで交渉が進む。
 これらはTPPに触発された面が少なくない。中国も関心を強め、習近平(シーチンピン)国家主席がオバマ米大統領にTPPの継続的な情報提供を求めた。世界の変化はダイナミックだ。
 日本が「聖域」にばかりとらわれていては、さまざまな経済交渉で端役に追いやられてしまう。自ら交渉を引っ張るという主体性を忘れてはならない。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO57467280Y3A710C1EA1000/より、
日経新聞 社説 自由化に勝つ農業改革の意志と具体策を
2013/7/18付

 各党の農業政策を判断する上で欠かせない視点が2つある。一つは農業で自由な競争を縛ってきた規制を変える改革の意志があるかどうか。もう一つは強い農業をどう築くのか。説得力があり、希望がわくようなアイデアの有無である。
 自由貿易の潮流は、逃げることができない世界の現実だ。環太平洋経済連携協定(TPP)をはじめ、どの通商交渉でも、いずれは農産物の市場開放が避けて通れない。高い関税に頼って国内を守るこれまでの農政は、既に限界に来ている。
 競争力がある農家の育成に全力をあげるべきだ。その上で力が足りなければ、関税以外の方法で生産者を支援する。こうした改革の具体案で各党は競ってほしい。
 自民党は農家所得を10年で倍増するという大胆な目標を掲げた。総裁の安倍晋三首相の発言は「農業を魅力ある産業に変える」と力強い。だが肝心の実現への道筋は曖昧だ。食品加工や流通を合わせて農業全体で付加価値を高め、輸出も増やすというが、具体論を欠けば絵に描いた餅にすぎない。
 同党は全国一律で実施するコメの生産調整(減反)の見直しには触れていない。コスト低減に必要な農地集約については賃借を基本とし、企業による農地所有に消極的だ。本気で改革にカジを切る意志は伝わってこない。
 自民・公明両党が強化を目指す農家への直接支払制度は、コメだけでなく野菜や果実を含めた農地全般を対象にする。関税で国内価格を高止まりさせるのではなく、農家の所得を財政で補う考え方は正しいが、横並び保護に陥る恐れもある。バラマキ色が強かった民主党の戸別所得補償制度よりも改革が後退するのでは困る。
 みんなの党と日本維新の会は、自公、民主より自由競争を重視する立場だ。TPPを推進しつつ企業の農業参入を促し、減反政策と農協制度を抜本的に見直すとしている。ただ、どちらも競争力の強化策を明確に示せてはいない。
 日本の農業は危機的な状況にある。高齢化が進み、後継者不足が深刻だ。自由化に耐える力をつけなければ、国内生産は崩壊してしまう。政治が考えるべきは目の前の農村票ではなく、明日の農業の姿であるはずだ。各党は農業問題の核心を避けず、正面から向き合って議論を深めてもらいたい。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130715/plc13071503440004-n1.htmより、
産経新聞【主張】参院選とTPP 強い農業の実現どうする
2013.7.15 03:43

 日本は今後も、世界の成長を取り込んでいける貿易立国たり得るか。
 その答えは、安倍晋三政権が参加を決めた環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の成否にあり、といっても過言ではない。参院選ではTPP参加をめぐる各党の姿勢が問われている。
 大切なのは、交渉参加への賛否ではない。参加に伴う市場開放の影響を受ける農業分野で競争力をいかに高めるか、青写真を示すことだ。改革の具体案をめぐり論戦を深めてほしい。
 先行して交渉を進める米国やオーストラリアなど11カ国は、15日から25日までマレーシアで会合を開く。日本の交渉参加を承認する米議会の手続きを経て、日本は23日から初参加できる見通しだ。
 参加各国は年内の交渉妥結を目指している。日本は出遅れを挽回すべく交渉力を発揮しなければならない。同時に、市場開放にも備える必要がある。その柱になるのが農業の競争力強化である。
 自民党は参院選公約で「守るべきものは守り、攻めるべきものは攻める」と強調する一方、公約を補完する総合政策集ではコメなどを念頭に「聖域を確保できなければ脱退も辞さない」とする。民主党も公約で「脱退も辞さない姿勢で臨む」としている。
 TPP参加に強く反対する農業団体などへの配慮だろう。だが、将来におけるアジア・太平洋地域との貿易や域内への投資を犠牲にする「脱退」では、日本経済の安定的な成長は望めまい。
 自民党は、採算割れしたコメ農家などを支援する「直接支払い制度」も設けるという。しかし、自らばらまき政策と批判してきた民主党政権下の「戸別所得補償」とどこが違うのか。
 その民主党は畜産、酪農分野で所得補償制度の導入を主張する。真の農業基盤強化につながるとは思えない。一律に補償するのではなく、意欲ある農家を支援していく制度が不可欠なのである。
 TPP参加を訴えるみんなの党と日本維新の会は株式会社の農業への参入、減反政策の見直し、農協改革を求め、傾聴に値する。具体像をもっと論じてほしい。
 TPP参加に反対する共産党や社民党の公約では、農業再生に向けた構想が見えない。
 交渉参加を「攻めの農業」に転じる好機とすべきだ。それを見送れば日本農業の明日はない。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年 7月 8 日(月)付
農業政策―ばらまき合戦はやめよ

 高齢化、後継者の不足、増え続ける耕作放棄地……。
 課題が山積みの農業をどう立て直していくか。日本が近く交渉に加わる環太平洋経済連携協定(TPP)では、関税の大幅削減・撤廃がテーマになる。その成否がどうあれ、抜本的な改革は不可欠だ。
 焦点は、関係者が多く、広い農地を使う「土地利用型」の農業だろう。コメや麦など、高い関税で守ってきた品目だ。食料自給率を左右し、集落や環境の維持にもかかわる。
 農業政策には二つの側面がある。大規模化などでコスト削減を追求する産業政策と、集落維持などの機能に注目して予算を投じる社会政策だ。
 限られた財源を有効に使うには、目的がどちらなのか、はっきりさせた上で対策を講じることが欠かせない。
 ところが、参院選での各党の公約をみると、目的をごっちゃにしたまま予算だけ増やそうという主張が目立つ。
 代表例は、民主党政権が始めた戸別所得補償制度(いまの名称は経営所得安定対策)をめぐる主張である。
 自民党は、民主党の戸別所得補償を「ばらまきだ」と批判してきた。ところが、それを「日本型直接支払制度」に発展させるという。平野部か山間部か、作物が何かにかかわらず、農地として利用していれば現金を給付するという内容だ。
 自民党政権は00年度、農業に不利な中山間地域に限った支払制度を設けた。農業を一定期間続けることなどを条件に現金を渡す仕組みで、集落や水源の維持を促す社会政策の性格が強い。この考え方を平野部にも広げるつもりらしい。
 ばらまき政策、極まれりである。政府は最近、農地を農家から借りて集約し、企業などに貸し出すために、都道府県ごとに「農地中間管理機構」を置く計画をまとめた。平野部では、こうした産業政策を軸に、規制や税制で後押しすることを考えるべきではないか。
 「直接支払いの拡充」を掲げる公明党、畜産・酪農分野での所得補償制度の導入検討をうたう民主党も含めて、再考を求めたい。
 農業では、農協のあり方やコメの減反見直しなど、長年の構造問題も横たわる。
 みんなの党と日本維新の会は、これらに風穴を開けると唱えるが、「既得権層と闘う」姿勢を強調するだけでは物足りない。農業の競争力強化にどうつなげるのか、具体論と改革の全体像を聞かせてほしい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130707k0000m070084000c.htmlより、
社説:視点・参院選 TPPと農業=論説委員・大高和雄
毎日新聞 2013年07月07日 02時30分

 ◇守りより攻めを語れ
 参院選の後には、日本が初めて参加する環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の交渉会合が待っている。いまだに農業への打撃を心配し、参加に反対する政党・候補者は少なくない。しかし、TPPを否定してみても農業の衰退が止まるわけではない。選挙戦で論じられるべきは、交渉撤退の是非よりも国内農業を強くする具体策であるはずだ。
 日本は23日から25日まで、マレーシアでの交渉会合に参加する予定だ。与野党とも「国益」の堅持を主張する。その「国益」とはコメ、麦など農産品の「重要5品目」を関税撤廃の例外として守ることのようだ。
 国内農業を守り、発展させることは国益にかなう。地球規模で食料需給の逼迫(ひっぱく)が心配される中、国内の生産基盤を失ってはならないからだ。しかし、高率関税を維持しても、それで農業を守れるわけではない。
 安い外国産品の輸入を阻めば、高い国内価格が維持される。効率化でコストを引き下げようという誘因は働きにくい。結果的に高コストの弱い農家も温存され、構造改革は進まない。そうして衰弱してきたのがこれまでの国内農業だ。
 農業の保護は必要だ。欧米でも保護は厚い。しかし、手法が異なる。欧米では安い外国産品の輸入で国内価格が下がった場合に、農家の所得を補助金で補う直接支払いが中心だ。これなら、規模などに応じて優先給付することで競争力強化を誘導することもできる。
 高い関税を維持するのか、輸入を認めた上で農家の所得を補うのか。本当に高率関税で守るべきものは何か。いずれにしてもコストを負担するのは消費者であり、国民だ。保護のあり方を選択肢として示すのも政治の責任だと考える。
 コメには生産調整(減反)もある。規模拡大による生産性向上を目指す安倍政権の成長戦略とは明らかに矛盾する。公示前日の党首討論会で、安倍晋三首相が減反廃止を迫られる場面があった。首相はまともに答えず、規制や既得権益の厚い壁を感じさせた。品質に勝る日本のコメは、輸出にも堪えるはずだ。国内消費だけを前提にした減反は、もうやめるべきだ。
 アジア・太平洋地域の国々との貿易・投資抜きで、日本経済が立ち行かないことは間違いない。TPPへの参加で、そのルール作りに日本の意向を反映させることも「国益」だ。
 今必要なのは、TPP参加を農業強化の好機にしようという「攻め」の姿勢だ。各党・各候補者にその覚悟を問いたい。

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