参院選きょう投票 「お任せ」はやめよう
http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年 7月 21 日(日)付
選挙と若者―投票すれば圧力になる
そこを行くリクルートスーツの君。きょうは参院選の投票日だって知ってた?
まだ内定がとれないんで、投票に行く余裕がない?
君が「なんとか、正社員に」って必死になるのは当然だ。就職したとたん、年収は正社員と非正社員との間で平均80万~160万円の差がつき、年齢が上がるにつれどんどん広がる。
90年代以降、正社員への門は狭まるばかり。最近は大卒男子でも4人に1人は、初めて就く仕事が非正規だ。
そうなると、職業人として鍛えられる機会が少なくなる。伸び盛りの若いころ、その経験をしたかどうかは大きい。
「とにかく正社員に」という焦りにつけいるブラック企業もある。「正社員」をエサに大量採用し、長時間のハードな労働をさせ、「使えない」と見切ればパワハラで離職に追い込んでいく。
「若い頃はヘトヘトになるまで働かされるもんだ。辛抱が足りない」なんて言う大人もいるけど、まったく的外れ。
非正規もブラックも、若者を単なるコストとして扱う。会社の目先の利益のために。人を長期的に育てていこうという意識はない。
おかしいよね、こんな人材の使いつぶしが横行する社会は。
しかも団塊世代と違って君たちの世代は数が少ない。一人ひとりが目いっぱい能力を磨いて働き、望めば家庭をもち子どもを育てられる。そうしないと、日本の将来は危ういに決まってる。声をあげなきゃ。
こんな試算がある。
20~49歳の投票率が1%下がると、若い世代へのツケ回しである国の借金は1人あたり年約7万5千円増える。社会保障では、年金など高齢者向けと、子育て支援など現役世代向けとの給付の差が約6万円開く。東北大の吉田浩教授と学生が、45年にわたるデータを分析した。
もちろん因果関係を証明するのは難しい。でも、熱心に投票する高齢者に政治家が目を向けがちなのは間違いない。
どの党や候補がいいか分からないし、たった一票投じたって意味ないって?
こう考えたらどうだろう。政治家は、有権者の「変化」に敏感だ。票が増えれば、そこを獲得しようと動くはず。
前回の参院選の投票率は、60~70歳代が7割以上、20歳代は4割以下だった。でも低いからこそ上げやすい。上がれば政治家はプレッシャーを感じる。
さて、投票に行ってみようって気になったかな。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130721/elc13072103190043-n1.htmより、
産経新聞【主張】参院選きょう投票 「強い国」へ確かな選択を
2013.7.21 03:18
■憲法改正への姿勢見極めたい
参院選の投票日を迎えた。今世紀前半の日本の政治動向にもかかわる選挙の重みを感じながら、有権者は棄権することなく、投票所に足を運んでほしい。
最大の注目点は、衆参のねじれが解消され、「政権の安定化」が図られるかどうかだ。忘れてならないのは、日本が繁栄と安全を確保していけるかどうかの岐路に立たされていることである。
デフレから脱却して景気を回復軌道に乗せられるのか、中国が力ずくで奪取を図ろうとする尖閣諸島を守り抜けるのか。これがかなわなければ、国家再生を望むことは難しい。
≪日本の岐路を直視せよ≫
安倍晋三首相が進めるアベノミクスの評価や憲法改正への取り組みなど各党は一定の方向性を示した。内外の危機を克服できるのはどの政党なのかを十二分に見極めることが求められる。
どの程度の時間が割かれたかはともかく、最大の争点の一つは国民の間でも支持が拡大している憲法改正だった。
自民党や日本維新の会は、憲法改正の発議要件を緩和するため96条改正を主張した。安倍首相は終盤戦で「憲法9条を改正し、(自衛隊の)存在と役割を明記していくのが正しい姿だ」と語った。
与党の公明党が、自衛隊の存在や国際貢献を書き加えるなど「加憲」の立場から9条論議に応じる姿勢を示したのも注目点だ。
民主党は「未来志向の憲法を構想する」との抽象論にとどまり、96条の先行改正に反対する一方、9条への明確な見解を示さなかった。共産党などは「平和憲法を守れ」と改正反対を主張した。
とりわけ9条を変えなければならないのは、今の9条の下では自衛権が強く制約され、抑止力が働かないためだ。憲法改正を通じて「強い日本」を取り戻そうと腐心しているのは誰かも、重要な選択肢としなければならない。
首相が大胆な金融緩和と機動的な財政出動、企業の投資を喚起する成長戦略を「三本の矢」として打ち出したアベノミクスに対する評価も大きな論点だった。
与党は年率2%の物価上昇目標を掲げ、今年1~3月期の国内総生産(GDP)は個人消費を中心に年率換算で実質4・1%の高い伸びを示した。6月の日銀短観でも大企業の景況感が改善し、設備投資を増やす姿勢が示された。順調な滑り出しといえる。
維新やみんなの党は、規制改革への大胆な取り組みなどアベノミクスの成長戦略の不十分さを指摘したが、民主党など多くの野党は、物価上昇や金利上昇などアベノミクスの「副作用」を批判し、安定雇用の確保や賃金の引き上げに重点を置く政策を提示した。雇用や賃上げにも企業収益の向上が不可欠だ。その道筋を明確に示せたといえるだろうか。
≪「一票」が政策を変える≫
国民生活や産業に直結するエネルギー政策でも、自民党と野党との姿勢の違いが鮮明となった。自民党は、安全性を確保した原発の早期再稼働について、政府が地元の説得にあたるとした。
民主党などは「脱原発」を進めるという。太陽光、風力など再生可能エネルギーの拡大を強調するが、原発の代替電源をどの程度確保できるかは不透明のままだ。
火力発電の大幅増が電気料金の引き上げにつながり、中小企業などに重い負担を強いている。毎年夏と冬に節電を求められる状況も変わらず、電力の安定供給が果たされているとはいえない。資源の少ない日本にとっての原発の必要性について、改めて冷静に考えることが重要だ。
先送りが許されない社会保障制度改革では、サービス抑制や負担増など有権者に不人気な政策について、与野党とも議論を逃げる姿勢が目立ったのは残念だ。政権当時に税と社会保障の一体改革を自民、公明と進めた民主党が「社会保障切り捨て」と抑制策の批判を始めたのは無責任だ。
懸念されるのは低投票率だ。昨年暮れの衆院選は59・2%で過去最低となり、6月の東京都議選も43・5%と低迷した。選挙後には個々の有権者にとって恩恵を被るもの、新たな負担を迫られるものなど多くの政策が実施される。自分の投票で政治は変わらない、などという他人任せの態度では現状を変えることはできない。
より多くの人が自ら一票を投じることを望みたい。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013072102000115.htmlより、
東京新聞【社説】参院選投票日に考える 国の仕事、国民の希望
2013年7月21日
投票の日です。争点はさまざまですが、国にはそのなすべきことがあり、国民には望むことがあります。その二つは本来同じであってほしいのですが…。
まず、基本的な問いを発してみます。
それは、国は国民を本当に守ってくれるのかという問いです。
そう考えた時、福島の被災者のこと、また津波のあと、いまだに仮設住宅などで苦労している人々のことを思い浮かべる人は少なくないはずです。
それは、政治への国民の失望を一側面で裏付けています。災禍を受けた同胞が、なぜ救われないのか。国という権力は果たして国民を守るのかという心配です。
◆企業の方が証明せよ
こんなことを思い出します。
昭和のころですが、三権の一つの司法が国民を救ったことがありました。
公害に対してでした。イタイイタイ病や水俣病、大気汚染など。誇らしい高度成長の陰で公害は各地に起きていました。
患者は当然ながら加害企業を相手取り裁判を起こします。
しかし民法の不法行為として争う損害賠償請求訴訟では、原告が被害と汚染源の因果関係、また過失を証明せねばなりません。だが実際には被告企業は自らに不利な証拠は出しませんし、それが国策に関係するのなら国は欠陥を認めようとはしません。
そんな厚い壁を、疲れ果てた患者たちに打ち破れというのは無理です。お金も手段もありません。 つまり、患者は国家から放置されてしまうのです。
そこで最高裁は全国から担当判事を集めて会議を開いたあと、こう決めました。
もし疫学的調査などで因果関係が強く推認されるのなら、企業が自分は“犯人”ではないと証明せよ、としたのです。
◆権力のもつべき意志
原告は立て続けに勝訴。司法は“国寄り”と見られてきただけに画期的とまで評されました。
しかし考えてみれば、画期的というのもおかしなことです。不当に不公正な目に遭っている人を救うのは当たり前、それを実行しただけのことなのです。それこそは権力のなすべき仕事なのです。
福島などの被害を思う時、国会や内閣という権力は一体何をしてきたのか。復興予算の流用はなぜ止められなかったか。そして国民は守られたのか。残念ながらそう思わざるをえません。
選挙で見極めるべきは、権力が本来もつべき意志と力を、どの政党、どの人物なら発揮できそうかということです。
その一方、国民の側には社会的合意を前提とし、抑制も我慢も必要になります。国民全体の幸福を求めるためです。そのために公正と平等の実現が不可欠なのです。
公正と平等の実現が今なすべき権力の仕事とするなら、権力が未来に向かってなすべきこととは国民の希望に応えようと努力することでしょう。
国民にはもちろん、いろんな考えの人がいます。
たとえば、憲法に関する議論にしても、護(まも)ろうとする立場の人の一方で、たとえば自衛隊が違憲に見えてはおかしいから、それを認めるように変えられないかという人もいます。
確かに九条を逐語的に読めば、軍隊の存在は書いてありませんから、そういう言い方もできるかもしれない。
しかし、これまでの九条の定着を考えるのなら、そこには日本が半世紀以上をかけて築き上げてきた平和主義があるでしょうし、そもそも九条の戦争放棄条項とは、アメリカが押しつけたという見方の半面、戦争で亡くなった兵士や市民の尊い犠牲のうえに当時、国民的合意として成り立ったともいえるのです。
世論調査などを踏まえれば、字句を直すだけで、その精神を放擲(ほうてき)してもいいという人は少ないように思われますし、もし字句を直したのなら、いっしょに現状も改変されてしまうという不安をもつ人も少なからずいるでしょう。
◆見えずとも在るもの
そういう世論の訴えは、原発や消費税、また格差の議論などにもうかがえるところです。国民の意思は見えずとも在るのです。
政治家は時に大衆迎合はしないと言います。しかしそれを軽々に言うのは、むしろ権力の横暴ではないか。だいたい国民はそれほど愚かでも強欲でもありません。
権力の方向と国民の希望とがかけ離れていることほど、その国の不幸はありません。溝が深いのなら、国民でなく権力の方が姿勢をあらためるべきです。
以上当たり前のようなことを述べてきましたが、その当たり前ができているのかどうか。考え直していいのかもしれません。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130721k0000m070121000c.htmlより、
社説:きょう投開票 「お任せ」はやめよう
毎日新聞 2013年07月21日 02時32分
「けふ(きょう)だ・活(い)かせ一票」「自由な意思で投票を」「傍観は罪悪だ」−−。1946年4月10日、戦後最初の衆院選当日の毎日新聞(東京)1面にはこんな見出しが躍っている。女性が初めて選挙権を得る一方、投票年齢も戦前の25歳以上から20歳以上に引き下げられて初の総選挙。民主国家に生まれ変わる熱気が紙面から伝わってくる。
それから67年。きょうは第23回参院選の投開票日である。有権者それぞれの1票を大切に、という私たちのメッセージは今も変わらない。
今回の参院選は基本的には第2次安倍内閣半年の評価を問うものだ。だが、結果次第では参院の与野党勢力は大きく変わり、安倍内閣は久しぶりの長期政権となる可能性が出てくる。ここ数年の日本の方向を決定づけるかもしれないということだ。経済政策だけでなく憲法改正や原発政策など、数年どころか日本の未来を左右する争点が目白押しだったのはだれもが認めるところだろう。
にもかかわらず低投票率を予想する声が開票前から出ている。昨年12月の衆院選の投票率は戦後最低。先月の東京都議選も低かった。その流れが続くのでは、というわけだ。
特に懸念されるのは若い世代だ。昨年の衆院選では最も高い60代の投票率が約75%だったのに対し、20代は約38%。深刻な格差といっていいだろう。政治家は投票してくれる高齢者を優遇しがちになる。それでいいのかどうか。若い世代には今一度、考えてもらいたいと思う。
若者だけではない。「勝敗は既に見えていて関心がわかない」との声もあちこちで聞く。だが、実際には改選議席が2〜5の選挙区を中心に大激戦になっているところも少なくない。やはりあなたの1票が結果を変えるのである。
「投票したくなる政党がない」という人もいるかもしれない。ならば自分が大切にする政策を一つに絞って、一番自分に近い考えを訴えた政党がどこかで選ぶ方法もある。6年間、参院議員として国政を任すのだから政党より候補者本人を重視して選択するのもよいだろう。
いずれにしても投票せずに政治家に全てをお任せする「傍観」はいけない。選んだ議員が行う政治の恩恵に浴するのも失政のツケを引き受けることになるのも私たち有権者だからだ。
冒頭紹介した毎日新聞1面には「憲政の神様」といわれた尾崎行雄の寄稿文も掲載されている。尾崎はこう書いている。「とにかく誠実堅固にして権益のために心を動かさない人を選ぶべきである」「選挙人の責任もまた重い」と。まだ投票を済ませていない人はこの言葉をかみしめながら投票所に足を運ぼう。