参院選 自民圧勝「傲らず、暮らし最優先に」

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickupより、
朝日新聞 社説 2013年 7月 22 日(月)付
両院制した自公政権―民意とのねじれ恐れよ

 「1強体制」の本格到来を思わせる、安倍自民党の勝ちっぷりである。
 自民、公明両党は、非改選とあわせて参院の半数を大きく上回る議席を得た。
 昨年の衆院選に続き参院も自公が制したことで、07年の参院選以来、政権の国会運営を左右してきた衆参両院の「ねじれ」は当面、解消する。
 同時に、安倍首相はかつての自民一党支配時代をほうふつさせる安定した権力基盤を手にしたことになる。向こう3年は国政選挙はないというのが、政界のもっぱらの見方だ。
 この間、ジェットコースターのような変転きわまりない政治が続いた。首相交代は年中行事のようになり、「決められない」が政治の枕詞(まくらことば)になった。
 安定した政治のもと、景気回復など山積みになった内政・外交の懸案に腰を据えて取り組んでほしい――。
 今回の選挙結果は、そんな切羽詰まった民意の表れといえるだろう。
 とはいえ、有権者は日本の針路を丸ごと安倍政権に委ねたわけではない。首相は経済のほかは十分に語らなかったし、投票率も振るわなかった。

■アベノミクスを評価
 小泉首相による05年の「郵政解散」以降、衆院選で大勝した政権党が、その次の参院選で過半数を割る逆転劇が繰り返されてきた。
 その始まりとなったのが、安倍氏が首相として初めて臨んだ07年参院選での自民党の歴史的大敗だった。
 この6年の「負の連鎖」を、今回、安倍政権がみずから断ちきることができたのは、その経済政策「アベノミクス」が、一定の信認を得たからにほかならない。
 民主党政権の末期に比べ、株価は5千円ほど高くなった。円安も進み、首相は選挙戦で国内総生産(GDP)がマイナスからプラスに転じた、12年度の公的年金の運用益が過去最高となったと胸を張った。
 野党は、賃金が増えていないのに食品の値段が上がっているなどと、アベノミクスの副作用を訴えた。それでも、ひとまずは数字を残した安倍政権に寄せる本格的な景気回復への期待が、声高な批判を打ち消した。

■期待は「両刃の剣」
 ただし、この期待は両刃の剣であることを、首相は忘れてはならない。
 景気が腰折れしたり副作用が高じたりすれば、失望の矛先はまっすぐに首相へと向かう。
 政権の実力が本当に試されるのは、これからなのだ。
 中小企業や地方で働く人たちの賃金は上がるのか。消費税率を予定通りに引き上げられるのか。それで医療や介護を安定させられるのか。
 いずれも、くらしに直結する課題である。安定政権の強みは、こうした分野でこそ大いに生かしてもらいたい。
 一方で、有権者は決して政権にフリーハンドを与えたのではない。与党も含め政治に注ぐ視線は依然厳しい。そのことを首相は肝に銘じるべきだ。
 首相は締めくくりの街頭演説で「誇りある国をつくっていくためにも憲法を変えていこう」と改めて持論を強調した。
 日本維新の会やみんなの党をあわせて機運が高まれば、やがて改憲も視野に入るという思いなのかもしれない。
 だが、朝日新聞の最近の世論調査では、改憲手続きを定めた憲法96条の改正には48%が反対で、賛成の31%を上回った。
 連立を組む公明党の山口代表が「憲法改正を争点にするほど(議論が)成熟しなかった」と語ったが、その通りだろう。
 首相が意欲を見せる、停止中の原子力発電所の再稼働にも56%の人が反対している。
 首相が民意をかえりみず、数を頼みに突き進もうとするなら、破綻(はたん)は目に見えている。衆参のねじれがなくなっても、民意と政権がねじれては元も子もあるまい。誤りなきかじ取りを望みたい。

■野党の再生はあるか
 それにしても、つい7カ月前まで政権を担っていた民主党の退潮は目を覆うばかりだ。改選議席は半分を割りこみ、2大政党の一翼の面影はない。
 96年の結党以来、「政権交代可能な二大政党制」を意図した制度のもとで野党結集の軸となった。もっとも、こうした党のなりたちが、「政権交代」のほかに党員をたばねる理念や目標を持つことのできない弱点にもつながっていた。下野から半年あまりたったいまも、この弱みは克服できないままだ。
 昨年の国政進出で民主党に迫る勢いをみせた日本維新の会もまた、橋下徹大阪市長の一枚看板に頼らざるを得ないもろさをあらわにした。
 野党の自壊といっていい。
 自公両党は、憲法改正をのぞけば「補完勢力」など必要としない状況にある。
 しばらくは続きそうな1強体制に、野党はただ埋没するだけなのか、それとも再生に歩み出すのか。
 野党だけの問題ではない。日本の民主主義が機能するかどうかが、そこにかかっている。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130722/elc13072205510110-n1.htmより、
産経新聞【主張】衆参ねじれ解消 「強い国」へ躊躇せず進め 痛みが伴う課題にも挑戦を
2013.7.22 05:50

 「強い日本」を取り戻すために有権者は政治の安定を求め、強力な政権が内外の危機を克服することに期待を託した。
 第23回参院選で自民、公明両党が非改選議席と合わせて安定多数を確保し、衆参ねじれの解消を果たした意味合いといえよう。
 内政・外交面での安倍晋三政権の施策が国民から信任された。
 民主党は改選議席を大きく下回る大惨敗を喫した。一時は政党支持率で民主を上回った日本維新の会も、第三極を形成するには至らなかった。衆院選以降の「1強多弱」が改めて示された。

 ≪成長戦略の具体化急げ≫
 圧勝を受け、安倍首相は「決める政治を力強く進める」と語った。社会保障費の抑制をはじめ国民の痛みを伴う改革の議論の「封印」を解き、躊躇(ちゅうちょ)せずに取り組まねばならない。
 自民党は、憲法改正の発議要件を緩和する96条改正の先行方針を公約から外した。参院選までは憲法問題で突出しない方が良いとの判断からだが、国家の根幹の課題を放置しておけない。戦力不保持などをうたう現行の9条下では自衛権が強く抑制され、尖閣諸島の危機への対処も難しい状況にあることを忘れてはならない。
 経済政策では、アベノミクスの3本目の矢と位置付けられる成長戦略の具体化が残っている。
 生産設備の更新や事業再編に取り組む企業の税負担を軽減し、投資を喚起しなければならない。雇用の増加や賃金の引き上げで家計に成長の恩恵をもたらすには、企業収益の向上が欠かせない。
 企業活力を引き出す大胆な規制改革も必要だ。農業や医療など反対の多い分野も、聖域とせずに取り組む覚悟を問われよう。
 経済成長に不可欠な電力の安定供給を確保するため、安全性が確認された原発の早期再稼働を主導する立場も貫かねばならない。
 選挙後直ちに取り組まなければならないのは、社会保障制度の問題だ。政府の「社会保障制度改革国民会議」は近く最終報告書をまとめる。焦点は、社会保障費が膨張を続ける中でいかにサービスの抑制や負担増に踏み込むかだ。
 自民党は公約でも「国民会議の審議の結果」を見守る立場で、具体策への言及を避けた。無責任な態度を続けることは許されない。70~74歳の医療費窓口負担の2割への引き上げなど、不人気な改革こそ首相の指導力が必要だ。
 憲法改正が大きな争点となった今回の選挙で、自民のほか改正方針を明確にしている各党が議席を増やしたことに注目したい。
 維新、みんなの党との3党では、改正発議に必要な3分の2以上の勢力を参院で構築するには至らなかった。だが、参院選を機に公明党も「加憲」の考え方から9条改正論議に応じる姿勢を示した。衆院では自民、維新などで3分の2以上を占める。参院で3党に公明を加えれば、潜在的には両院で改正発議が可能な環境に大きく近づいたといえ、その意義は大きい。

 ≪海江田氏の続投は疑問≫
 気になるのは、公明党が連立政権内での「ブレーキ役」を強調したことだ。首相が意欲を示す集団的自衛権の行使容認や原発再稼働に反対し、慎重論を唱える意味なら、課題を実現する「安定」とは程遠いものとなりかねない。
 昨年の党分裂、衆院選惨敗で政権から転落した民主党は、再び大敗し、党再生がまったく軌道に乗っていないことを露呈した。
 アベノミクスの「副作用」を批判したが、説得力を持つ対案は示せないなど政策面の力不足が大きい。財源確保策を示すことなく、巨額の財源を必要とする最低保障年金の創設を改めて持ち出したが、有権者に受け入れられると本気で考えたのだろうか。
 国民の信頼を回復できず、受け皿としての存在も示せなかった海江田万里代表の責任は極めて重大だ。海江田氏は21日夜、続投の意向を示したが、現体制のまま党再生を図れるとは思えない。
 維新は、橋下徹共同代表の「慰安婦」発言が強い批判を浴びる前から失速傾向が強まっていた。東京と大阪に拠点が分かれ、重要政策や党運営をめぐる混乱を繰り返している印象は否めない。信頼回復へ課題は多い。
 受け皿となる有力な野党がなければ、与党は緊張感を欠き、政権交代可能な二大政党も望めない。野党全体の立て直しが急務だ。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013072202000157.htmlより、
東京新聞【社説】参院選、自民が圧勝 傲らず、暮らし最優先に
2013年7月22日

 参院選は自民党が圧勝した。衆参「ねじれ」は解消したが、安倍晋三首相は傲(おご)ることなく、暮らしをよくする政策の実現にこそ、力を尽くすべきである。
 六年前の参院選で自民党を惨敗させ、その後、首相がほぼ一年で交代する政治の不安定化を招いた安倍首相にとっては、雪辱を果たしたというところだろう。
 自民党勝利の要因は三十一ある一人区のうち、民主党の牙城とされる三重や滋賀などを含む二十九で議席を得たことだ。複数区でも取りこぼしはなく、政権を奪還した昨年暮れの衆院選の勢いが衰えていないことを印象づけた。

◆絶対的支持でなく
 自民党は圧勝だが、絶対的支持を得たわけではない。三年前の前回を下回る低投票率、民主党の凋落(ちょうらく)、非自民票の分散が相対的に自民党を押し上げたと見るべきだ。
 首相は選挙戦で、政権交代後に進めた金融緩和、財政出動、成長戦略の「三本の矢」が経済指標を好転させ、経済再生には「これ以外に道はない」と訴え続けた。
 十三、十四両日行った共同通信の全国電話世論調査で、投票先を決める際に重視する課題に「景気や雇用など経済政策」を挙げる人が35%と最も多く、「年金や医療など社会保障制度」(27%)が続いた。
 輸入品価格が上昇する一方、所得は上がらず、景気回復を実感するに至っていない国民は多い。暮らし向きを少しでもよくしてほしいという切実な願いが、自民党への投票につながったのだろう。
 首相はこの秋に召集予定の臨時国会を「成長戦略実行国会」と位置づけるなど、参院選後も引き続き、経済優先の政権運営に努める腹づもりのようではある。
 長年のデフレから脱し、暮らし向きがよくなったと、国民が実感できることがまず重要だ。優先順位を間違えてはならない。

◆暴走、公明が止めよ
 改憲勢力とされる自民党、日本維新の会、みんなの党に、有権者は参院で非改選を合わせて三分の二の議席を与えなかった。自民党が目指す九条改正による国防軍創設や集団的自衛権の行使容認などは機が熟しているとは言えない。
 とはいえ党内に改憲派を抱える民主党の動向次第で、改憲論が再燃する可能性は捨てきれない。
 ねじれが解消した状況は首相が「自民党らしい」政策の実現に動きやすい環境でもある。それが暮らしをよくする政策ならいいが、「自立」を強調し、弱者切り捨てにつながるなら見過ごせない。
 安倍内閣が成長戦略として検討する「限定正社員」導入や、生活保護費、社会保障費の抑制、消費税増税などがどうなるのか、引き続き監視する必要がある。
 自民党政策を厳しく批判し、「自共対決」を掲げた共産党が十二年ぶりに選挙区で議席を得た。東京では無所属の脱原発候補が当選した。自民党はこうした有権者の意思も謙虚に受け止めるべきだ。
 政権が「暴走」しそうになった場合は当面、公明党に歯止め役を期待するしかあるまい。
 公明党は選挙戦で憲法九条改正や九六条先行改正への反対を訴えた。集団的自衛権の行使容認にも慎重で、原発ゼロを目指す方針も示す。自民党との違いは鮮明だ。
 この際、与党内で政策が違うなどと野暮(やぼ)は言うまい。自民党の独善を正し、国民の声を政治に反映させる。公明党の責任は重大だ。
 野党には総じて厳しい選挙結果だった。特に結党以来最低の議席となった民主党は、公約破りの普天間「県内移設」回帰や消費税増税強行、稚拙で不誠実な政権運営に対する「懲罰」的投票が、政権転落後も続いている。
 政権交代可能な時代だ。世論の動向次第で自民党政権の命脈がいつ尽きるとも限らない。自民党に代わる選択肢を常に用意することが、政治への安心感につながる。
 民主党が必要とされるには、生活者、納税者、消費者の立場に立つという結党の原点に立ち返り、党を立て直さなければならない。時間がかかっても、どんなに苦しくても、やり抜く責任がある。
 一人区のうち、野党が選挙協力した沖縄では勝利し、山形では善戦した。「一強」となった自民党に立ち向かうには、野党勢力を結集する必要性を、すべての野党がいま一度、認識すべきである。

◆「環視」続ける必要
 選挙は代議制民主主義下で最大の権利行使だが、有権者はすべてを白紙委任したわけではない。
 この先、憲法、雇用、社会保障、暮らしがどうなるのか。選挙が終わっても、国民がみんなで見ているぞという「環視」、いざとなったら声を出すという積極的な政治参加が、民主主義を強くする。
 今回の参院選がインターネット選挙運動の解禁とあわせ、「お任せ」から「参加型」民主主義への転機となるのなら、意義もある

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO57586630S3A720C1PE1000/より、
日経新聞 社説 経済復活に政治力を集中すべきだ
2013/7/22付

 第23回の参院通常選挙は21日、投開票の結果、自公両党で過半数を確保、衆参のねじれが解消した。昨年12月の衆院選につづく自民党の大勝により安倍晋三内閣は安定政権へのきっかけをつかんだ。
 1989年の参院選で自民党が惨敗して衆参ねじれ状態となり、93年の衆院選での敗北で長期単独政権の55年体制が崩れてから、ちょうど20年。連立政権の時代となって政権交代も経験した日本政治は、また新しい段階に入った。

■「古い自民」に歯止めを
 ただ投票率が前回2010年(57.92%)より大幅に低下した。ネット選挙の解禁による投票率の押し上げ効果も弱かったようだ。
 投票率が低調だったのは、与党が設定した争点の前で野党は埋没してしまい、選挙戦の行方が早くから見えてしまったためだ。
 衆参ねじれの解消を目標にかかげた自民党の選挙戦略は、安倍内閣の半年余について、その経済政策であるアベノミクスへの評価に絞り込むことだった。
 資産がある有権者にとっては、内閣発足時からだけでも日経平均株価が4割も上昇し、プラスの「業績評価投票」となった。資産のない有権者は、アベノミクスで景気回復への期待が高まり、所得増への「将来期待投票」となった。
 憲法改正や外交、エネルギーなど、イデオロギー色の強い争点は後ろに引っ込めて、経済の一点に集中させたことが功を奏した。
 対する野党は、戦略・戦術で失敗した。昨年末の衆院選で民意が離れた民主党は、失った有権者の信頼を取り戻すことができないまま、安倍政権への政策的な対立軸も示せなかった。日本維新の会、みんなの党も含めた野党各党がバラバラで、非自民の受け皿を作れなかったのも響いた。
 民主党はとりわけ深刻だ。議席数が半分以下に激減しただけでなく、98年の結党以来、最低の獲得議席となった。自民党に対峙していこうとすれば、政党としての立ち位置をしっかり定めなければならない。
 安全保障や経済政策での維新やみんなの立地状況も考えると、保守で競争志向には位置できず、中道リベラルで再分配志向の政党としての路線をはっきりさせるしかないだろう。今後、党を割って出直すぐらいの覚悟で臨まないと、もはや民主党に明日はない。
 自民党は選挙大勝によって浮かれることのないよう求めたい。懸念されるのが古い体質の復活である。既得権益の保護・分配への志向・偏狭なナショナリズムの3つのバネが働く可能性があるためだ。とくに規制改革にブレーキをかけ、公共事業の増額にアクセルを踏み込む動きには要注意だ。
 昨年末の衆院選と今回の参院選で誕生した新人議員が多数派を占め、派閥のタガがゆるんでいる中で、派閥単位の党のガバナンス(統治)に代わる新たな型はできていない。政策決定では右肩上がりを前提に利益の分配を進めてきた自民党だが、今や必要なのは「負担の分配」のための調整システムである。
 第2次安倍内閣は、参院選をへて安定政権への道筋を切りひらく環境が整った。首相の党総裁任期は15年9月までで、もし3年後の16年夏の次の参院選まで国政選挙がないとすれば、この3年が日本政治にとっては課題処理の絶好のチャンスだ。

■カギ握る成長戦略実行
 まず求められるのは経済再生をやりとげることだ。農業や医療などの岩盤規制を打ち破り、環太平洋経済連携協定(TPP)反対派も説得して、効果的な成長戦略を実行していくのは今しかない。第4の矢ともいわれる財政規律のために社会保障を中心とする歳出カットも進めていかねばならない。
 将来期待で票を投じた有権者は、かりに所得が増えないとなれば、失望という名の電車に乗りかえて、あっという間に安倍内閣から去っていくだろう。そうならないようにするためにも、アベノミクスの成功に、すべての政治資源を集中させるべきだ。
 現行憲法に問題があり、改憲の必要性があるのはその通りだ。ただ国力の回復が何よりも求められる現在、優先させるべきテーマは経済再生である。改憲論議は同時並行で進め、急ぐものは立法改革で対応すればいい。
 経済力を高め国の安全保障を確かなものにするためにも、中国、韓国との関係修復は差しせまった課題だ。選挙が終わったのを機に局面打開への動きを促したい。
 今回の選挙が、政治と経済の失われた20年と決別し新生日本づくりの転機となることを望みたい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130722k0000m070242000c.htmlより、
社説:衆参ねじれ解消 熱なき圧勝におごるな
毎日新聞 2013年07月22日 03時46分

 政治の安定、そして着実な改革を求める民意の表れであろう。
 参院選は投開票の結果、自公両党が70議席を超す勝利を収め衆参両院の与野党ねじれ状態の解消が決まった。第2次安倍内閣は衆院が解散されない限り約3年、政権運営を主導できる基盤を得た。
 経済を重視した政権運営への評価とともに、野党が批判票の受け皿たり得ない状況が自民の圧勝を生んだ。この結果を有権者から白紙委任を得たと錯覚し、数におごるようではただちに国民の信頼を失う。改革実行にこそ衆参両院の与党多数を生かしてほしい。

 ◇政治の安定求めた民意
 投票率が伸びない中での「熱狂なき自民圧勝」が衆院選、東京都議選に続き繰り返された。自民党の獲得議席が60を超すのは「小泉ブーム」に沸いた2001年以来だ。安倍晋三首相が掲げる経済政策、福島原発事故を踏まえたエネルギー政策の是非など幅広い課題が問われた選挙戦だが、最終盤はむしろ野党同士が攻撃し、つぶし合う状況になった。
 自民党の1強が際立ち他党との均衡の崩壊すら感じさせる選挙結果がなぜ導かれたのか。第一の要因は首相の政権運営に対する国民の期待感の継続である。
 衆参ねじれは野党の健全なチェック以上に政治の混乱を印象づけた。自公の政権奪還以来、円高は修正され株式市況は好転、与党の内紛も目立っていない。多くの有権者は実際に「アベノミクス」の恩恵をこうむったわけではあるまい。それでも自民党が相対的に安定しているとの思いから1票を投じたのではないか。
 同時に、有権者の政治離れの中での圧勝という危うさも指摘しなければならない。投票率は3年前の前回参院選より落ち、戦後最低を更新したさきの衆院選と同様、低投票率傾向だった。行き場を失った批判票の多くが棄権に回ったことは否定できまい。
 だからこそ、有権者から託されたものを首相や自民党ははき違えてはならない。
 進む超高齢化、深刻な財政難の中で遠くない将来、人口減少社会は確実に到来する。税と社会保障の改革を軌道に乗せ、国民の痛みと負担を伴う改革であっても逃げずに責任ある制度を構築すべき時だ。
 外交も政権基盤が安定してこそ、中韓両国との関係立て直しなど中長期的な戦略が構築できる。長期政権の足がかりが得られた今こそ、内外の課題に取り組む好機である。
 首相や自民党にとって「参院選乗り切り」がこれまで政権の目的のようになっていた。圧勝の反動でタガがゆるみ、党の古い体質が頭をもたげたり、偏狭なナショナリズムが勢いづいたりする懸念はぬぐえない。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130722k0000m070242000c2.htmlより、
 一方、野党の状況は深刻だ。民主党は惨敗を喫し、1998年の結党以来、最低の獲得議席に落ち込んだ。安倍内閣に明確な対立軸を提示できず、発信力を著しく欠いた海江田万里代表の責任は大きい。
 今や党の存在意義すら問われる。小選挙区制の下で2大政党化や政権交代を実現しながら政権運営に失敗し、党の目標を見失ったままだ。税と社会保障をめぐる自公民3党合意を進めた具体案の提示やエネルギー政策の肉付けを怠り、アベノミクスもあいまいな「副作用」批判でかわしているようでは有権者の目に「第2自民党」にしか映るまい。

 ◇存在意義問われる民主
 今回、安倍内閣への対決姿勢が鮮明な共産党が健闘した。野党第1党の民主党が有権者から忌避され政策論争を提起できず、政治から活力を奪っている責任を自覚すべきだ。
 日本維新の会やみんなの党など第三極勢が旋風を起こせなかったのも自民党の補完勢力ではないかという印象をぬぐえなかったためだろう。巨大与党に是々非々路線を貫くことは困難だ。野党としての立ち位置を明確にできるかが問われよう。
 非自民を売り物に野党が政権交代をアピールできる時代はすでに終わっている。安倍内閣へ対立軸を示し、政権の受け皿をじっくりと構築すべきだ。その能力すら欠くようでは野党勢の再編も免れまい。
 今参院選で自民、維新、みんななど改憲派の非改選と合わせた合計議席は改憲の発議に必要な参院の3分の2以上に至らなかった。とはいえ、「加憲」を主張する公明党の動向次第では憲法をめぐる議論は今後の政治の行方をなお左右し得る。
 首相は選挙戦終盤に憲法9条改正への意欲を示したが、改憲の具体的内容や優先順位まで国民に説明しての審判だったとは到底言えまい。改憲手続きを定める96条改正も含め、性急な議論は禁物である。
 ねじれ状態が解消しても衆参両院の役割があいまいな構造は温存されている。参院のあり方など統治機構の将来像を優先して議論することを改めて求めたい。
 与党の節度と、政策を軸にした野党の連携という車の両輪が回らなければ政治は緊張感を失う。まかり間違ってもかつて政権を独占した「55年体制」時代の復活などと、自民党は勘違いをしないことだ。政党の真価がかつてなく問われる局面であると心得てほしい。

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