今、平和を語る:鎌田七男さん

http://mainichi.jp/area/news/20130729ddf012070016000c.htmlより、
今、平和を語る:広島原爆被爆者援護事業団理事長・鎌田七男さん
毎日新聞 2013年07月29日 大阪夕刊

 ◇被爆者に学んだ核の脅威 遺伝子傷つけ重複がん誘発
 被爆者として戦後を生き抜き、原爆の惨を身をもって示してきた人たちの高齢化が進んでいる。今、被爆者に何が起きているのか。被爆68年の夏を前に広島原爆被爆者援護事業団理事長で、広島大原爆放射能医学研究所(現原爆放射線医科学研究所)の所長を務めた鎌田七男さん(76)に聞いた。

−−在宅が困難な被爆者を支援する特別養護施設が広島市内に4施設あり、600人が入居されています。その中の3施設(500人)を運営しているのが公益財団法人の原爆被爆者援護事業団です。まず、被爆者の実情からお聞かせください。
 鎌田 私が園長をしている特別養護ホーム「倉掛のぞみ園」には300人が入居しています。女性が男性の4倍以上で、平均年齢は87・2歳です。100歳代の方は9人で、いずれも女性です。長寿者がおられるのは、健康チェックが徹底されているからではないでしょうか。ただし、1人当たり平均して11種類の病気を抱えています。半数が認知症です。その4分の1が中等から軽症の認知症で、寝たきり状態の方が15%を占めます。平和学習で来園される児童や生徒に被爆体験を話せる人は、残念ながら10人ほどになりました。

−−被爆者特有の症状はありますか。
 鎌田 高齢化に伴い、被爆時に浴びた放射線の影響と思われる重複がんが、ホームの入居者にも見られます。

−−被爆者の重複がんについては、放射線障害を科学的に解説した平和学習教材「広島のおばあちゃん」(シフトプロジェクト)で著者として、「おばあちゃん」にこう語らせています。
http://mainichi.jp/area/news/20130729ddf012070016000c2.htmlより、
 <「がん」はね、まず1つ目の遺伝子が狂って、2つ目、3つ目の遺伝子も狂って6つ目とか7つ目の遺伝子も異常になった頃に「がん」が出来てくると考えられているんよ(大腸がんでは7つ目で「がん化」するといわれています)。被爆者の場合は、いろんな身体の部分(器官)に被爆し、一度にいくつもの遺伝子に放射線で傷つけられているから、「がん化」への素地(5つ目や6つ目の異常)がすでにできており、それに「がん」を起こしやすい物質(たとえば、たばこの中のタール)や「がん」の治療薬(遺伝子に傷をつける薬もある)がからだに入ると、普通の人より早めに、いろんな場所に「がん」を作ってくるようになると考えられているんよ。からだに3つも「がん」ができるなんて、かわいそうだよね。だから、核戦争は絶対にしてはいけないのよね〜>
 鎌田 爆心地から500メートル以内で被爆されて、奇跡的に助かった78人の被爆者を血液学の医師として、40年にわたってフォローしています。健康な被爆者であっても強い放射線を浴びた人は、染色体の異常を示す細胞の数が多いことなどが分かりました。この78人のなかに、四つのがんと闘っている女性がいます。彼女は11歳のときに、爆心地から430メートルの小学校で被爆しました。51歳で甲状腺がん、62歳で大腸がん、67歳で髄膜腫、72歳で神経鞘腫(しょうしゅ)を発症したのです。また、ずっと健康でこられた女性が2005年に大腸がんになり、1年もしないうちに肺がんになったというケースもあります。
 普通はがんにかかると、転移がないように気をつけます。しかし被爆者の場合、転移ではなく新たながんが出てくることがあるのです。全身被爆されていたら、どこにがんが発症してもおかしくない状況にあります。

−−被爆者は生涯にわたり苦しめられます。
http://mainichi.jp/area/news/20130729ddf012070016000c3.htmlより、
 鎌田 直接、放射線を浴びなくても、残留放射線による染色体の異常も見られました。被爆直後に広島市内に入った入市被爆者がそうで、白血病が普通の人より3・4倍の高率で発症しているのです。アメリカがネバダの砂漠で核実験をしたデータではわからなかった残留放射線の影響とみられます。砂漠とちがって広島市内では人々が生活をしており、そこには生活道具としての金属がたくさんありました。これらが原爆で放出された中性子により放射化されたのです。だから入市被爆者にも脱毛があったし、染色体の異常も確認することができるのです。

−−厚生労働省は08年になって残留放射線の影響を認め、これまで却下してきた入市被爆者を原爆症と認定するようになりました。長い期間、被爆者を診てこられた科学的なデータが突きつけた真実の成果です。
 鎌田 これだけ時間がかかったのは、私たち科学者が努力をしてこなかったからです。無念の思いを抱えて多くの被爆者が亡くなりました。被爆者は私に多くのことを教えてくれた教育者です。
 一方で、被爆者と染色体の異常に関する論文を発表するまでには、5年間の葛藤期間がありました。被爆者に不安を与えないかと悩みましたが、広島の科学者として事実を示しておくことは大切だと思いました。

−−原爆については。
 鎌田 核兵器は非人道的な兵器です。被爆者を診てきた私は、3度使われることがあってはならないと思っています。だから、核兵器の恐ろしさを訴え、核廃絶に向けて力を注ぎたい。

−−次世代による被爆の継承が課題になっています。広島市は昨年から「被爆体験伝承者」の研修を始め、鎌田さんは「原爆の人体への影響」を2時間にわたって今年も話されました。被爆の実相を伝えていくうえでの心構えは。
 鎌田 被爆者を自分の身に置きかえて、私がそうだったならばと考えることではないでしょうか。講演で私が提示した科学的なデータを、「そうなんだよな」と理解して記憶するだけではいけません。たとえば腕にケロイドができたため、真夏でも長袖のシャツを着て腕を隠した被爆者に自身を重ねることができて初めて、被爆体験を受け継ぐ伝承者になれると思います。<聞き手・専門編集委員 広岩近広>

 ■人物略歴
 ◇かまだ・ななお
http://mainichi.jp/area/news/20130729ddf012070016000c4.htmlより、
 1937年鹿児島県生まれ。61年に広島大医学部卒業、同大原爆放射能医学研究所の助教授、教授を経て、97年から退官する99年まで所長を務める。広島大名誉教授。2001年から現職に就き、核戦争防止国際医師会議日本支部理事としても活動している。02年に永井隆平和記念・長崎賞、09年に日本対がん協会賞、13年にNHK放送文化賞を受賞。

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