記者の目:原発プロパガンダ 杉本修作氏

http://mainichi.jp/opinion/news/20130802k0000m070119000c.htmlより、
記者の目:原発プロパガンダ=杉本修作(大阪社会部)
毎日新聞 2013年08月02日 00時49分

 「『停電は困るが原子力はいやだ』という虫のいいことを言っているのが大衆」「ワイフ(妻)こそ最良の協力者。ワイフが(原発を)理解すればどこかの井戸端会議でも影響力を発揮する」。1991年、旧科学技術庁から委託された財団法人「日本原子力文化振興財団」(原文振)が専門家を集め、国の原発広報のあり方についてまとめた報告書「原子力PA(パブリック・アクセプタンス=社会的受容)方策の考え方」の一節だ。国や電力業界の原発広報を取材すると、こうした国民を見下したような考え方が今に受け継がれていることが分かる。
 私は、国や電力業界による安全神話づくりとそれに協力した市民団体の実態を、キャンペーン記事「原発プロパガンダ」(初回=3月25日朝刊)で報じた。原発広報に協力する団体の多くは、意外にも女性団体で消費生活アドバイザーの有資格者が幹部に多かった。
 女性が不安に思う食品の放射能汚染について消費者の代表である彼女たちが安全性を説くと、役人の言葉より説得力がある。

 ◇原子力委員が 「民」の顔で推進
 91年の報告書には「女性は地域の消費者センターを頼りにしている。(センターを)取り込めたら強い味方になる」との記述がある。消費生活アドバイザーらが運営する団体の協力を取り付けたことから、報告書の指摘が忠実に実践されていることがうかがえる。
 市民団体の協力手法は多様だった。子供向け人形劇で原発をPRしたり、「クッキング講習」などと広告に記しながら、実際には原発の集中講義などを開いたりしていた。こうした団体の草分け的存在がNPO法人「あすかエネルギーフォーラム」だ。創設者は現在、内閣府原子力委員会委員を務める秋庭悦子氏。同団体には多い年で4000万円余の事業収入があり、2011年度末時点で3800万円余の預金があった。東京電力福島第1原発事故後も活動を続け、会報誌では「過度に放射線を怖がる必要はない」「自然エネルギーはコストが高い」と、原発の「安全性」や「必要性」などを訴えてきた。
 私は何も、市民団体が原発を推進すること自体を問題視しているのではない。
 しかし、原発推進活動をしている団体のリーダーが原子力委員として国の原子力政策に関与している▽さらに、その団体の活動資金のスポンサーがほとんど明らかにされない−−ことに疑念を持った。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130802k0000m070119000c2.htmlより、
 「あすか」はNPO法人として東京都に毎年会計報告書を提出しているが、寄付者などの情報が一切書かれておらず、事務局に取材を申し込んでも「報告書に書いてある通り」と、情報開示に応じなかった。その後の取材で、そのスポンサーが電力会社10社でつくる「電気事業連合会」(電事連)や東電、原文振などと判明したが、あすかや電力業界は今も公式には明らかにしていない。電力会社からの支援が公になれば、市民団体の看板が疑われるため、表に出せないのかもしれない。

 ◇公正さ確保へ 解体も選択肢に
 秋庭氏は01年に「あすか」を設立して以降、経済産業省資源エネルギー庁などの専門部会委員などを歴任し、10年1月に原子力委員になった。原子力委では、98年に初めて女性委員を任命して以降、5人の委員のうち1人は、原子力の専門家ではないフリージャーナリストや市民活動家の女性が務めてきた。原子力政策に直接かかわる委員のポストは推進派の女性たちにとって最大の栄誉といえよう。秋庭氏は就任と同時に、あすかの理事長職を退くが、その後も「あすか」の活動は続けていた。しかも、原子力委は秋庭氏の活動を「公務」と認め、公用車も利用させていた。秋庭氏も認めている。
 原子力委はこれまで一貫して原発を推進してきた。しかし、原発事故があった以上、従来の姿勢を改め、より中立、公平な立場に是正することが求められるはずだ。にもかかわらず、秋庭氏は事故後もあすかの活動にいそしみ、関連団体の行事に委員会の定例会を欠席してまで参加したこともあった。しかも、原子力委がそれを承認していた。原発の是非について国論が割れる中、委員の原発推進活動を「公務」と認める組織に公正な政策提言は期待できまい。政府は今、次期臨時国会をめどに原子力委の組織の見直しを検討しているが、解体も選択肢に入れて議論すべきだ。
 原発推進の市民団体の多くは官から政府機関内のポストや補助金を与えられ、電力マネーも得て、電力業界に有利な活動を展開している。形を変えることはあれ、原子力ムラのプロパガンダは続いてきた。国民を欺くような広報戦略には、今後も厳しい目を注いでいかなければならない。

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