原発廃炉費用 「最終的に国民が負担」

http://mainichi.jp/select/news/20130819k0000e030145000c.htmlより、
英国:原発「解体先進国」 稼働26年、廃炉に90年
毎日新聞 2013年(最終更新 08月19日 09時33分)

 世界で最も廃炉作業が進む原子力発電所の一つ、英ウェールズ地方のトロースフィニッド発電所(出力23.5万キロワット、炭酸ガス冷却炉、2基)の作業現場に入った。1993年の作業開始から20年。責任者は「既に99%の放射性物質を除去した」と説明するが、施設を完全に解体し終えるまでになお70年の歳月を要する。「想像以上に時間とコストのかかる作業」(作業責任者)を目の当たりにし、日本が今後、直面する道の険しさを思い知らされた。【グウィネズ(英ウェールズ西部)で小倉孝保、坂井隆之】

 青く輝く人工湖沿いに、原子炉を覆う武骨なコンクリート建屋が2棟並んでいる。作業を担当するマグノックス社の指示に従い、ヘルメットをかぶり、目を保護する特製眼鏡をかけた。2011年3月の東京電力福島第1原発事故以降、日本のメディアがこの廃炉現場に立ち入りを許されたのは初めてだ。
 原子炉建屋に入ると目の前に焦げ茶色の巨大な金属筒があった。稼働中、発電タービンを動かす蒸気を発生させるために使われていたボイラーの一部だという。
 エレベーターで建屋の最上階に上がる。原子炉の真上にあたる巨大なホールのような空間の壁に沿って足場が組まれ、作業員が慎重な手つきで建屋の上部を取り壊すための準備作業を進めていた。建屋全体の高さを約53メートルから約30メートルまで下げ、廃炉完了まで長期間、コンクリート壁の安定性を保つのが目的だ。
 65年に運転を開始し、91年に停止した。原子炉の使用済み核燃料(燃料棒)は95年に取り出されたが、圧力容器周辺や中間貯蔵施設内の低レベル放射性物質の放射線量は依然高い。このため2026年にいったん作業を中断し、放射線量が下がるのを待って73年に廃棄物の最終処分など廃炉作業の最終段階に着手する。
 「初期に建設された原発は将来の廃炉を想定して設計されていない。初めて経験することが多く、手探りの作業だ」とベルショー計画部長は語る。
 原子炉建屋に隣接する放射性汚染水浄化装置(長さ33メートル、幅5メートル、高さ6メートル)では除染作業が行われていた。燃料棒冷却や除染作業で発生した汚染水はすでに抜かれている。別室から遠隔操作する工作機(重量5トン)3機が装置内部の汚染された壁をゆっくりと削り取っていく。

http://mainichi.jp/select/news/20130819k0000e030145000c2.htmlより、
 被ばくの危険があるため作業員が内部で作業できるのは短時間で、多くは遠隔操作になる。回収された放射性物質は密封され、敷地内の中間貯蔵施設に運び込まれていった。
 廃炉作業には稼働時を上回る約800人が携わる。第1段階だけでも30年以上にわたる作業のため、稼働停止後、敷地内に新たにレクリエーション施設なども設けられた。作業の中断、再開を経て全施設が撤去されるのは2083年。廃炉には稼働期間(26年間)よりもはるかに長い時間がかかるのが現実だ。
 この発電所は小規模で、稼働中に大きな事故もなく停止後速やかに廃炉作業に移ることができた。それでも廃炉に90年を要し、総費用は約6億ポンド(約900億円)になる。
 フィリップス安全担当部長は、事故の処理も終わっていない福島第1原発の廃炉作業について「ここに比べて作業員が動ける範囲が限定されるため、ロボットを多用することになるだろう。想像できないほど困難な作業になるのは間違いない」と話した。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130818k0000m070120000c.htmlより、
社説:原発廃炉の負担 国の役割も忘れるな
毎日新聞 2013年08月18日 02時31分

 経済産業省は電力会社が原発を廃炉にしやすくするため、年内にも会計制度を改正する方針を決めた。廃炉を決めた時に一気に負うコストを長期間に分散できるようにする。
 もっとも廃炉には、その作業から出てくる放射性廃棄物や使用済み核燃料の処理など電力会社だけでは手に負えない課題も多い。「脱原発依存」を進めるため、国も積極的に役割を果たす必要がある。
 今の制度は原発が40年間稼働することを前提に、40年かけて減価償却することと廃炉費用を積み立てることを認めている。そのため、途中で廃炉を決めると減価償却の終わっていない部分と、積立金が不足する分を特別損失として一括処理しなければならなくなる。電力会社の負担は極めて重い。
 経産省の試算では、国内の全原発を即時に廃炉にすると4.4兆円の特別損失が出て、北海道、東北、東京、北陸、九州電力と日本原電は債務超過に陥るという。このままでは電力会社が、原発の安全性を否定されても再審査を申請し続け、廃炉を先延ばしする事態も起きかねない。
 そこで、新制度では廃炉決定後も一部の減価償却を認め、廃炉費用の積立期間も延長するほか、その費用を電気料金でまかなえるようにする。要するに、電力会社のコストを長期に分散させた上、利用者の負担とすることで廃炉への抵抗感を和らげようという内容だ。
 原発が40年間稼働するというこれまでの前提は、原発の安全神話に基づくものだった。事故を受けて規制基準が刷新され、途中で廃炉になる可能性が高まった以上、会計制度も見直すのは当然といえる。
 しかし、負担を長期間に分散できるとしても巨額の費用そのものが減るわけではない。費用を電気料金に上乗せできるとしても、安易な値上げは利用者の反発を招きかねない。会計制度見直しだけでは、廃炉の決断を促す効果までは期待できまい。
 原発の推進は国策だったはずだ。その責任として、国による廃炉費用の負担も検討すべきではないか。国の役割は、費用負担の問題にとどまらない。廃炉の過程で出てくる大量の放射性廃棄物や使用済み核燃料の処理方法が確立しなければ、廃炉は進められない。
 立地自治体には、原発の稼働期間を通じて多額の交付金が支給されている。原発関連事業が主要産業である地域も多い。こうした地域の廃炉後の振興も考える必要がある。
 廃棄物処理も立地地域の振興も政治的な判断が求められる難題といえる。国が責任をもって取り組まなければ、「原発に依存しない社会」は実現しない。

http://mainichi.jp/select/news/20130807k0000m020132000c.htmlより、
原発廃炉:会計制度見直し 電力各社の負担、大幅減
毎日新聞 2013年(最終更新 08月07日 16時01分)

 原発廃炉に関わる会計制度見直しで、電力各社の負担は大幅に軽減される。みずほ証券の試算によると、現行制度なら計3兆4884億円(13年3月末時点)にのぼる電力9社の廃炉関連の損失は、新制度で半分以下(1兆6547億円)に低減される見込みだ。
 現行制度では、東電と北海道電力は保有するすべての原発を廃炉にした場合、それぞれ自己資本を上回る巨額の特別損失が発生する計算。新制度では廃炉決定後も電気料金で回収できる分、電力会社の負担は軽減され、廃炉が経営危機に直結する事態は避けられる。
 原子力規制委員会は原発専業の発電会社「日本原子力発電(原電)」の敦賀原発2号機(福井県敦賀市)について、原発施設の直下に活断層があるとの調査団の報告書を了承。同2号機の再稼働は極めて困難な情勢で、今後、廃炉の決断を迫られる可能性がある。
 ただ、現行の会計制度のまま、原電が同2号機の廃炉を決めれば、資産価値の喪失や引当金の積み立て不足などで1000億円規模の損失処理が一気に迫られる。純資産が1600億円強の原電の経営に深刻な打撃となるのは必至。今回の会計制度変更で負担の大幅な軽減にメドが付けば、同2号機の廃炉判断に影響する可能性がある。経産省幹部は「原発の安全基準を巡る環境が激変する中、電力会社が廃炉を決断するのに制度変更は不可欠だ」と説明する。
 一方、制度変更には東電の福島第1原発事故処理を側面的に支援する狙いもうかがえる。東電が見込んだ同原発1〜4号機の廃炉費用に加え、過酷事故を起こしたことで追加的に必要となった費用も電気料金で回収できる道が付くからだ。市場関係者は「制度変更は東電の財務の安定化に寄与するだろう」と指摘する。問題は更なる値上げに利用者の理解が得られるか。経産省の試算によると、新制度を使えば、廃炉費用が100億円増えるごとに、東電の電気料金(月8000円程度の標準家庭)が1.9円上がる計算という。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO58205180X00C13A8EA1000/より、
日経新聞 社説 原発の選別促す廃炉ルールを
2013/8/7付

 経済産業省の審議会が原子力発電所の廃炉に伴う会計制度について見直し案を示した。原発の新しい規制基準が施行され、安全性に照らした原発の選別がこれから本格化する。政府は会計制度だけでなく、こうした状況に対応した廃炉ルールづくりを急ぐべきだ。
 原発の廃炉は1基あたり400億~800億円の費用がかかり、電力会社はあらかじめ電気料金に上乗せして積み立てている。いまの制度は原発が40年以上稼働することが前提で、毎年の発電実績に応じて積立額を決めてきた。
 だが新規制基準は安全対策の強化を義務づけ、基準を満たさない原発は40年未満でも廃炉を迫られる。その場合、電力会社は積立金の不足や、設備の損失処理が巨額に膨らむ恐れから、廃炉を決断できないと指摘されていた。
 見直し案では廃炉費用の積み立てを稼働中だけでなく、運転終了から解体開始までを含め10年間延ばすことや、発電実績にかかわらず毎年一定額を積み立てることで不足分を補うとした。早期の廃炉を想定してこなかった制度の不備は明らかで、見直しは当然だ。
 電力会社が廃炉資金を確保できれば、安全対策に巨額のコストがかかる原発の再稼働を断念することも考えられる。経済性の観点から原発を選別するうえでも、こうした見直しは必要だ。
 課題も多い。廃炉費用は電気料金の形で最終的に消費者が負担する。だが廃炉が相次げば電気料金がどの程度上がるのか、詳しい試算が示されていない。経産省はそれらをきちんと説明すべきだ。
 廃炉に伴う電力会社の損失を会計上の処理で軽減するとした案についても、電気料金の過度な上昇を招かないよう、透明性の高い運用が求められる。
 会計制度以外にも、原子炉の解体で生じる放射性廃棄物の処分地の確保や、運転終了と同時に地元自治体への交付金が打ち切られる問題など、廃炉には課題が山積する。政府はこれらにも真剣に向き合うときだ。

http://mainichi.jp/select/news/20130807k0000m020096000c.htmlより、
原発廃炉:電気料金で費用回収も 経産省が新会計制度案
毎日新聞 2013年(最終更新 08月07日 01時21分)

 経済産業省は6日、電力会社が原発を廃炉しやすくするための新しい会計制度案を決めた。廃炉決定時に関連費用や損失を一括処理する現行制度を改め、廃炉決定後も分割処理し、電気料金から回収することを認める。稼働から40年たった原発の場合、廃炉決定後に10年かけて廃炉引当金の積み立て不足を電気料金で穴埋めできる。また、福島第1原発1〜4号機については、東電の見積もり分を超える廃炉のための追加設備導入費も電気料金で回収できるようにする。【大久保渉】
 経産省は有識者会議が6日まとめた新制度案を基に省令を改正。年内にも適用する方針。国の安全規制強化で廃炉を迫られる原発が相次いだ場合に備えるとともに、福島第1原発の廃炉作業を円滑に進める狙いがある。
 現行制度は、電力会社が廃炉を決めた時点で(1)原発の資産価値がなくなることに伴う損失(資産減損)(2)廃炉作業にかかる費用の引当金(廃炉引当金)の積み立て不足−−を特別損失として一括処理しなければならない。巨額の損失処理が一気に迫られるため、電力会社は廃炉に慎重にならざるを得ない。
 有識者会議は「廃炉費用を電気料金で回収できなければ、円滑で安全な(原発の)廃止措置に支障が出る恐れがある」と指摘。廃炉決定後も電気料金から廃炉引当金を積み立てることを認める。また、現在は原発稼働が前提の積み立てについて、運転停止中も計上を認める。さらに、原発の資産価値が廃炉決定で一気にゼロになるとはせず、徐々に減っていくとして、それに対応した費用(減価償却費)を電気料金に転嫁できるようにする。
 東電の福島第1原発の廃炉では、東電がすでに計上した廃炉コスト見積もり分(9600億円)を超える追加設備の取得費が発生する場合、その分を電気料金の原価に算入することを認める。同原発では放射線量の高い場所での作業への無人ロボット投入など特別な設備が必要。廃炉費用がどれだけ膨らむかは不明で、制度見直しが大幅な電気料金値上げにつながれば、利用者の反発も予想される。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130726/plc13072603260004-n1.htmより、
産経新聞【主張】エネルギー計画 「原発利用」を明確に示せ
2013.7.26 03:25 (1/2ページ)

 政府の電力政策の中期的な指針となる「エネルギー基本計画」の策定論議が本格化してきた。焦点は、原子力発電をどう位置付けるかである。
 安価で安定的な電力供給は、国民生活や産業にとって不可欠だ。年内にもまとめる計画では、民主党政権が決めた「原発ゼロ」と決別し、原発を有力な電源として活用する方針を明示しなければならない。安倍晋三政権には原発利用に正面から取り組む姿勢が問われている。
 計画は、日本の将来的なエネルギー需給を見据えながら、今後の最適な電源構成を示すものだ。それに合わせて新規の電源開発が進められる。
 計画の見直しは、平成23年3月の東京電力福島第1原発事故を機に始まった。しかし、当時の民主党政権が「2030年代に原発稼働ゼロを目指す」と決めたことで経済界などから批判が相次ぎ、議論が中断していた。
 昨年末の政権交代で見直し作業は再開されたが、同じ誤りを繰り返してはならない。
 すでに安倍首相は「原発ゼロ」の見直しを表明している。資源小国の日本としては、この方針を計画に明記する必要がある。原発の有効活用を今後も継続する姿勢を示すのは当然だ。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130726/plc13072603260004-n2.htmより、
2013.7.26 03:25 (2/2ページ)
 ただ、基本計画では具体的な電源別のシェアなどは示されない見通しという。原発再稼働の動向が不透明なためだというが、現在の電力事情を考えれば不満が残る。経済団体などには、原子力規制委員会による再稼働の審査作業を急ぐよう求める声が強い。
 国内の原発のほとんどが稼働を停止したままで、電力不足は解消のメドが立っていない。夏場を迎えて電力需要は拡大しており、台風などに伴う発電所の故障で突発的な停電の懸念もある。
 原発に代わり、火力発電が主要電源として使われているが、液化天然ガス(LNG)など輸入による燃料費の負担増は年3兆円を超える。今年上半期の貿易赤字は円安も加わって過去最大となった。電気料金の値上げは、浮揚し始めた日本経済には逆風だ。
 太陽光や風力など再生可能エネルギーの利用も課題だが、天候などに発電量が左右されるほか、コスト高という問題を抱えている。地域産業として育成する必要はあるが、過大な期待は禁物だ。現実的な政策を求めたい。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO56266130W3A610C1PE8000/より、
日経新聞 社説 福島廃炉へ国内外の知恵を
2013/6/16付

 福島第1原子力発電所の廃炉に向けて、政府と東京電力が工程表の改定案をまとめた。廃炉工程表は民主党政権が2011年12月につくったままで、安倍政権になってから最初の見直しになる。
 いまの工程表は事故が起きた4つの原子炉をひとくくりにし、建屋の除染や溶けた核燃料を取り出す時期の目安を示している。改定案では1~4号機ごとに汚染の状況に応じて工程を細かく見直した。廃炉を前進させるため、こうした見直しは欠かせない。
 炉心溶融により炉内に溶け落ちた核燃料の取り出しは、最大で約1年半前倒しして20年度に始めるとした。だが事故から2年以上たってもなお、溶けた核燃料がどこに、どんな形で残っているか分かっていない。もくろみ通りにいくか、不透明さは否めない。
 福島第1原発の廃炉は30~40年かかる長期戦である。政府や東電は地元に配慮して「前倒し」を強調したいのだろうが、むしろ安全を第一に、着実に廃炉をめざす体制づくりが急務だ。
 原発の敷地内では汚染水が大量にたまっている。炉の冷却に必要な装置も仮設のものが多く、安全の確保へ課題は山積している。
 改定案では、現場での作業は東電が責任を負う一方、核燃料取り出しに必要な遠隔操作ロボットなどの開発は国が支援するとした。政府は原子炉メーカーや研究機関を集めて研究開発組織をつくり、そのための拠点も設けるという。
 新たな組織には国内勢だけでなく、廃炉の経験をもつ欧米の企業なども加え、国内外の知恵を結集すべきだ。組織の運営方針を決める幹部級の人材を海外から起用するのも一案だろう。
 東電と新組織が連携し、現場で必要な技術を迅速に開発することが重要だ。新組織に参加する原子炉メーカーは今後、内外で本格化する廃炉ビジネスをにらみ、技術を磨きたい思惑もあるという。だが研究のための研究であってはならない。メーカーも使命感をもって取り組んでほしい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013061202000159.htmlより、
東京新聞【社説】福島廃炉計画 言葉より成果を見たい
2013年6月12日

 メルトダウンした核燃料を一年半早く取り出せるかもしれない-。政府と東電は、福島第一原発の廃炉計画を見直して言う。だが避難を強いられた住民、また国民は、何より、着実な成果を見たい。
 福島1、2号機では、圧力容器を突き破って固まっている、核燃料の「デブリ」の回収を始める時期が、これまでの見通しより一年半ほど前倒しされるかもしれないという。
 デブリとはもともと、破片とか残骸を指すフランス語。溶融燃料は文字通りそんな状態だろう。
 前倒しと言っても、実際に作業の準備が整うまでにあと七年。しかも構内の除染が進み、建屋の上部にクレーンなどが順調に取り付けられた場合のことである。
 それよりも、溶け落ちた核燃料が、どこへ、どんな状態で散らばっているのか、現段階では分からない。作業はおろか、放射線が強く、人が近づけるような状態ではない。前倒しの見通しは、甘いというしかないだろう。
 日本で初めて廃炉作業に取りかかった茨城県東海村の東海原発は、一九九八年に営業運転を終了し、二〇〇一年に燃料棒の取り出しを終えた。だが準備作業の遅れから、原子炉の解体にかかるのは、来年にずれ込んでいる。
 一九七九年にメルトダウンを起こした米国のスリーマイル島原発では、圧力容器内の溶解だったが、すべての燃料取り出しには十一年の年月を費やした。
 八六年に大爆発した旧ソ連のチェルノブイリ原発では、核燃料は飛散状態でもあり、取り出すことをあきらめ、コンクリートで固める「石棺」にした。しかし、その石棺も腐食が進み、それをさらに覆う棺が必要になった。
 事故がなく、炉内の様子を把握できても、原発を安全に葬ることは極めて難しい。
 ましてや福島の場合、複数基爆発という世界に例のない難事業、甘い見通しは禁物である。
 事故から二年三カ月。技術大国のはずなのに、作業ロボットはなぜまだできないのか。地下水はなぜ止められないのかと、福島県民は気をもんでいるだろう。
 時間がたてば、施設全体の劣化は進む。余震のたびに、不安を募らせている人も多いに違いない。
 長期の見通しはもちろん必要である。だが今大切なのは、少しずつでも具体的な成果を示し、安心安全が近づいていると実感できることではないか。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickupより、
朝日新聞 社説 2013年 6月 3 日(月)付
脱原発政策―廃炉促進へ専門機関を

 できるだけ早く、原発に頼らないエネルギー社会をつくる。
 福島の原発事故を経験して、多くの人たちがその思いを強くした。
 ただし、原発の後始末はやっかいだ。強い放射能に汚染された構造物や使用済み核燃料の処分には、時間もお金もかかる。技術的な課題も多い。電力会社は、負担の重さから廃炉に二の足を踏みがちだ。

■先送りへの懸念
 こうしたなか、経済産業省が廃炉を促す環境づくりに乗り出した。廃炉にともなう損失の計上をめぐって、会計処理を弾力化させる見通しだ。
 方向性には賛成する。ただ、これだけで原発の処理が一気に進むわけではない。
 廃炉の決定や放射性廃棄物の管理・処理を、国が主導する仕組みに改めなければならない。あわせて、業務を担う専門機関の設立も検討すべきだ。
 日本は原発について「国策民営」をとってきた。原発は各社の資産であり、廃炉も使用済み燃料の取り扱いも、一義的には事業会社が責任を負う。
 事業者は巨額の建設費を回収するために、原発を極力長く使い、その間に廃炉費用を積み立てるのが前提だった。
 だが、事故を機に状況は大きく変わった。
 日本原子力発電の敦賀原発2号機(福井県)は建屋の真下を活断層が走っていると、原子力規制委員会から認定された。今後も、新しい知見にもとづく規制基準を満たすことができず、廃炉を前倒しで求められる原発が出てくる。
 ところが、電力会社の経営は厳しい。火力発電の燃料代がかさみ、大手10社の3月期決算では原発を持つ9社のうち8社が赤字となった。純損失の合計は1兆6千億円近くに達する。
 このままでは、事業者の経営上の問題から、廃炉が先送りされるおそれがある。
 経産省が廃炉に対する特例を設けるのも、そのためだ。
 事業者が当初の計画より早く原発を閉める場合に、費用の積み立て不足や資産価値の目減りによる損失を、複数年度に分割して計上するのを認める方針という。

■世界では政府が関与
 世界を見渡すと、原発が国営だったなごりもあり、後処理に政府が関与する体制が目立つ。
 最終処分場の候補地選び、核不拡散やテロ対応など、国内外において粘り強い交渉や協調が求められるからだ。
 たとえば、英国は05年に「原子力廃止措置機関(NDA)」を設立し、原子力関連施設の解体にともなう政策や監視体制を一元化した。
 実際の廃炉は、国際入札を経て事業者を選び、ライセンスと目標を与え、運営が非効率にならないようにしている。使用済み核燃料のリサイクルで生じるプルトニウムの管理・処分も、NDAの管轄だ。
 ドイツでは、電力大手が所有する原発は自己負担での廃炉が前提だ。このため、メルケル政権が原発全廃を決めると、複数の社が政策変更による廃炉で損害が生じるとして、国に賠償を求める訴訟を起こした。
 一方、旧東独圏内にある老朽原発を主な対象とする廃炉専門の国営企業(EWN)があり、こちらは政府が廃炉を担う。
 そこで、電力大手も実際の廃炉作業では、将来の廃炉ビジネスをにらんで業容拡大をはかるEWNに委託するか、自ら取り組むか、損得をはかりながら両にらみで模索している。

■税金の投入も選択肢
 日本でも、原発の後始末を進めるには、会計処理の弾力運用だけでは不十分だろう。
 福島事故を教訓にすれば、新しい規制基準をクリアしても、事故の際の住民避難が現実的に難しい原発などは閉じていく必要があるからだ。
 廃炉の決定権が事業者側にある限り、こうした原発の廃炉は進まない。
 まず国が廃炉に関与するルールを定める。そのうえで、海外とも知識や情報を共有する専門機関を設立し、対象となる原発を移管すれば、効率よく脱原発を進められるのではないか。
 もちろん、処理に必要な費用をだれがどのように負担するか、各社の資産である原発をどう専門機関に引き継ぐか、など数多くの課題がある。
 廃炉費用は国民が払う電気料金から積み立てられているのだから、いっそのこと税金を投入して廃炉を急ぐ。あるいは、当面は最小限の原発は動かし、その原発も専門機関に移して、売電で得られる収益を廃炉費用にまわす――。さまざまな考え方がある。
 世界的な廃炉ビジネスへの参入を想定すれば、電力業界が率先して組織を設けてもおかしくない。原発専業の日本原電の改組も一案だろう。
 政府は早く検討の場を設け、論点を整理し、国民的な議論にかけるべきだ。

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