記者の目:国政で挫折した橋下氏 野口武則氏

http://mainichi.jp/opinion/news/20130822k0000m070097000c.htmlより、
記者の目:国政で挫折した橋下氏=野口武則(大阪社会部)
毎日新聞 2013年08月22日 00時22分

 自民党大勝の参院選で橋下徹共同代表(大阪市長)率いる日本維新の会は8議席と苦戦した。7月27日の党執行役員会で橋下氏が代表職の辞意を表明したのは、結党の原点である「大阪都構想」実現に向け、市長職に専念するためだったという。自ら主張した野党再編は国会議員に任せた、事実上の国政撤退と言える。国政政党の党首としての橋下氏は、なぜ挫折したのか。

 ◇外から発信、党首に限界
 「国政に手を掛けたから大阪市議会を何とか運営できている。(当選者の)数はいろんな評価があるが、当初描いた戦略通りだ。日本維新の会としてある程度区切りが付いた」。橋下氏は同30日、大阪の所属議員との会議でそう語った。言葉通りなら大阪の政治闘争を乗り切るために国政政党を利用したことになる。
 2011年4月の統一地方選で地域政党「大阪維新の会」は大阪市議会で単独過半数に届かず、公明党との協力を余儀なくされた。同年11月の大阪市長と知事のダブル選挙で勝利後、国政進出を公言した。「決められない政治」と既存政党を批判し、先鋭的な改革を唱える地方政治家の旗手として期待感は最高潮にあった。さらに国政に手を掛け、昨年の衆院選では、公明と関西の選挙区ですみ分けることを材料に協力関係を固めた。都構想の関連法案は、橋下氏が「政党が動く気配がないなら、国政(進出)をやる」と各党に突きつけ、昨年8月に賛成を引き出し成立した。

 ◇大阪改革のため既成政党へ圧力
 選挙の強さと橋下氏の発信力を背景に地方から既存政党に圧力をかけ、大阪府・市の改革を進める手段としての国政進出は成果があった。しかし、国政政党としての成果はどうか。54議席と躍進した昨年の衆院選後、国会で存在感は乏しい。「国会議員団の情報発信が少ない」「維新らしさが伝わらない」。実際に橋下氏は通常国会の際、大阪選出の国会議員に不満のメールを送っている。2月には日銀総裁人事で、賛否よりもアピールの仕方にこだわった。自身も安倍政権の金融緩和を評価しながら、政府の黒田東彦総裁案を容認した国会議員団を「与党ぼけ」と批判した。
 ベテラン議員は「人事に反対して存在感を示そうとするのはどうか」と、旧来の野党的な振る舞いに疑問を呈した。地方政治家として外から発信を続け、意見対立すると共同代表辞任をちらつかせる。国政政党の党首でありながら、国政とは距離を置いているように見えたのは、こうした言動のためだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130822k0000m070097000c2.htmlより、
 批判を浴びた5月の従軍慰安婦発言は、内容や表現の問題もさることながら、党の統制のなさを露呈した点でも問題は深刻だった。「自民の補完勢力」とやゆされる中、歴史認識問題で差別化を狙ったのだろう。しかし、国会議員や大阪府議らを取材しても、事前に準備して国内外への影響を考慮した形跡はない。発言後に国会議員団がサポートし、海外メディア用に公式見解をまとめて火消しに努めたが遅かった。組織をまとめる立場のトップが、外から「先鋭的」に発信し続けるだけ。そんな党運営に国会議員団の多くが不満を漏らしている。

 ◇求められる利害調整能力
 国会議員団が独自の動きを強めるのも当然だ。当初、橋下氏に近い大阪系と、合流した旧太陽の党系で確執があったが、議員同士は日々顔をつき合わせる中、相互の垣根は低くなった。地元や国会で利害調整の経験を積んだ自民出身の旧太陽系が原発など政策の違いをのみ込み、分裂を回避した。
 7月27日の執行役員会では、橋下氏の辞意表明は続投を求める多数決に押し切られた。執行役員12人の構成は当初、大阪系7人、旧太陽系5人とされていたが、このときは在大阪幹部5人、国会議員団7人の枠組みに変わっていた。大阪に回帰して国政政党をリセットしたい橋下氏に対し、代表辞任による解党を懸念する国会議員団が結束してその外堀を埋めていたのだ。
 橋下氏は今後、大阪で実績を上げて自ら国政を狙う可能性を探るのだろう。しかし今のスタイルでは行き詰まる。政治家には、選挙で有権者にメッセージを伝える能力と、多様な利害を調整する能力が求められる。橋下氏は大阪では、突出した発信力で「民意」を得て、利害調整の場面も押し切ってきた。しかし、選挙は政治の一つの手段であって、すべてではない。都構想は今後、大阪市を再編する区割りや財源調整など、住民の損得が絡む利害調整の局面に入る。民意だけでの強行突破は困難だ。それをどう乗り越えるのか。橋下氏は今、党首としてだけでなく、政治家としても真価が問われている。

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