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日別アーカイブ: 2013年9月5日

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013091302000147.htmlより、
東京新聞【社説】秘密保護法案 軍事国家への入り口だ
2013年9月13日

 政府が進める秘密保護法案は、国が恣意(しい)的に情報統制を敷く恐れがある。「知る権利」と真正面から衝突する。軍事国家への入り口になってしまう。
 自由や人権などよりも、国の安全保障が最優先されるという思想が根底にあるのだろう。政府が公表した秘密保護法案の概要を見ると、そんな印象を強く持つ。
 かつて検討された法制と異なるのは、特段の秘匿が必要な情報である「特定秘密」の事項だ。(1)防衛(2)外交-は同じだが、「公共の安全および秩序の維持」の項目を(3)安全脅威活動の防止(4)テロ活動の防止-と改めた。

◆情報隠しが横行する
 公共の安全や秩序維持の文言は、社会のあらゆる活動に投網をかけると強く批判されたため、今回は変形させたのだろう。
 それでも問題点は山積だ。まず、特定秘密の指定範囲である。行政機関の「長」が別表で指定するが、中身があまりにも茫漠(ぼうばく)としている。防衛については十項目あり、「自衛隊の運用」が最初に規定されている。「運用」の言葉だけでは、どんな解釈も可能だろう。防衛相は恣意的に特定秘密のワッペンを貼り、さまざまな情報を国民の目から覆い隠せる。
 現行法でも昨年末時点で、防衛秘密の指定事項は二百三十四件にものぼる。秘密文書も膨大となり、一昨年末では約八万三千点が隔離された状態だ。
 外交分野でも同じだ。例えば「安全保障に関する外国政府との交渉」と別表に漠然と書かれているため、外相はいかなる運用もできよう。違法な情報隠しすら行われるかもしれない。
 ある情報が特定秘密に本当にあたるかどうか、国会でも裁判所でもチェックを受けないからだ。形式的な秘密ではなく、実質的な秘密でなければならないが、その判断が行政の「長」に任されるのは、極めて危うい。

◆「知る権利」への脅威だ
 安全脅威やテロの分野も解釈次第で、市民レベルの活動まで射程に入る恐れがある。
 言い換えれば、国民には重要でない情報しか与えられないのではないか。憲法は国民主権の原理を持つ。国政について、国民が目隠しされれば、主権者として判断ができない。秘密保護法案は、この原理に違背するといえよう。
 憲法には思想・良心の自由、表現の自由などの自由権もある。政府は「国民の知る権利や取材の自由などを十分に尊重する」と説明しているものの、条文に適切に生かされるとは思えない。
 特定秘密を取得する行為について、「未遂、共謀、教唆、扇動」の処罰規定があるからだ。あいまいな定めは、取材活動への脅威になる。容疑がかかるだけでも、記者やフリーランス、市民活動家らに家宅捜索が入り、パソコンや文書などが押収される恐れが生じる。少なくとも、情報へのアクセスは大きく圧迫される。
 「取材の自由」はむろん、「知る権利」にとって、壁のような存在になるのは間違いない。政府は「拡張解釈し、基本的人権を侵害することがあってはならない」旨を定めると言うが、憲法で保障された人権を侵してはならないのは当然のことである。暴走しかねない法律だからこそ、あえてこんな規定を設けるのだろう。
 驚くのは、特定秘密を漏らした場合、最高で懲役十年の重罰を科すことだ。現在の国家公務員法では最高一年、自衛隊法では五年だ。過去のイージスシステムの漏洩(ろうえい)事件では、自衛官に執行猶予が付いた。中国潜水艦に関する漏洩事件では、起訴猶予になった。現行法でも対処できるのだ。重罰規定は公務員への威嚇効果を狙ったものだろう。
 そもそも誰が特定秘密の取扱者であるか明らかにされない。何が秘密かも秘密である。すると、公務員は特定秘密でない情報についても、口をつぐむようになる。ますます情報は閉ざされるのだ。
 しかも、国会の委員会などで、公開されない秘密情報も対象となる。つまり国会議員が秘書や政党に情報を話しても罪に問われる可能性がある。これでは重要政策について、国会追及もできない。国権の最高機関である国会をないがしろにするのも同然だ。

◆憲法改正の布石になる
 新法の概要に対する意見募集期間も約二週間にすぎず、周知徹底されているとはいえない。概要だけでは情報不足でもある。政府の対応は不誠実である。
 米国の国家安全保障会議(NSC)をまねた日本版NSC法案も、秋の臨時国会で審議される予定だ。集団的自衛権をめぐる解釈も変更されかねない。自衛隊を国防軍にする憲法改正への道だ。
 秘密保護法案はその政治文脈の上で、軍事国家化への布石となる。法案には反対する。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO59415920X00C13A9EA1000/より、
日経新聞 社説 疑問点があまりに多い秘密保護法案
2013/9/7付

 国の安全や外交にからむ機密情報の漏洩を防ぐため、新たな法律をつくる作業が進んでいる。政府は法律案の概要を公表し、一般からの意見募集を始めた。秋の臨時国会に提出する構えだ。
 この法案には疑問点が多い。そればかりか法律の必要性そのものについても議論の余地が残る。もとより国民の権利侵害につながりかねない重大な問題である。さらに丁寧に説明を尽くし、慎重に検討を重ねていくべきであろう。
 法案では、防衛、外交、安全脅威活動、テロの4分野のうち特に秘匿すべき情報を、各省の大臣が「特定秘密」に指定する。公務員がこれを外部に漏らした場合、最高で懲役10年の刑罰を科す。
 特定秘密となりうる具体的な事項については、法律の別表で「安全保障に関する外国政府との交渉」などと個別に定める。だがこの規定は広すぎる。秘密の範囲拡大に歯止めがきかず、都合の悪い情報を隠す形で使われかねない。
 秘密の指定が妥当かどうか、事後的にでも検証できる仕組みが必要ではないか。さらに、一定期間が過ぎれば開示したり、個別の指定に対する異議や不服を受け付けて裁定する機関をつくったりすることも検討すべきであろう。
 罰則も重すぎないか。幅広く秘密の網をかけて重罰を科せば、公務員の側は萎縮してしまうだろう。本来公表すべきものまで秘密にするような副作用が心配される。2005年に個人情報保護法が施行された際の過剰反応を考えれば、十分起こりうることだ。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013090500644より、
秘密保全法、説明ないと抗議=公明

 公明党の石井啓一政調会長は5日、政府が特定秘密保全法案の概要について同党に説明せず、国民への意見募集を始めたのは問題だとして、自民党の高市早苗政調会長に電話で抗議した。公明党は、法案を検討するため同日に予定していたプロジェクトチーム(PT)設置も延期した。
 石井氏の抗議に対し、高市氏は「私どもも詳しい内容は聞いていない。まだ政調内の手続きはしていない」と釈明した。(2013/09/05-16:16)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013090501001024.htmlより、
公明、政府・自民に抗議 秘密保護法案めぐり
2013年9月5日 14時08分

 公明党の石井啓一政調会長は5日、機密を漏らした公務員らへの罰則強化を盛り込んだ「特定秘密保護法案」をめぐり、同党の了承手続きを軽視しているとして政府・自民党に抗議したと明らかにした。政府は自民党が法案概要を大筋了承した3日からパブリックコメント(意見公募)を始めているが、事前に公明党への説明がなかったという。
 石井氏は国会内で記者団に「公明党が理解しない限り、政府の法案として国会に提出するのは無理だ」と述べた。
 法案は、外交や防衛に関する機密のうち、特に秘匿の必要性がある情報を「特定秘密」に指定している。(共同)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013090402000116.htmlより、
秘密保護法案概要 「知る権利」懸念拭えず
東京新聞 2013年9月4日 朝刊

  政府は三日、秋の臨時国会に提出を目指している「特定秘密保護法案」の概要を公表し、国民から意見を募るパブリックコメント(意見公募)を始めた。概要と意見の応募方法は、インターネットの「電子政府の総合窓口」に載っている。期間は十七日まで。
 政府は公募に先立ち、自民党の「インテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチーム」(座長・町村信孝元外相)で法案の概要を説明した。
 概要によると、漏れると国の安全保障に著しく支障を与えるおそれがあり、秘匿が必要な情報を特定秘密に指定。公務員らが特定秘密を漏らした場合、最高十年の懲役刑を科すが、報道の自由など国民の知る権利の制限につながることが懸念されている。政府は新たに「拡張解釈し、国民の基本的人権を不当に侵害することがあってはならない」との条文を盛り込んだが、努力目標にすぎず、拡大解釈の歯止めにはならないとの声が強い。
 党側の出席者からは「新条文の『不当』とは、どういう範囲なのか」との指摘が出た。特定秘密の指定基準では「各府省庁で統一する必要がある」との意見で一致し、政府側に検討を要請。最高十年の量刑が適正かどうかは、党側で議論を続けることを確認した。外国の情報機関に漏らした場合も処罰の対象になると明記していないことを「不十分だ」とする声もあった。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130904k0000m070119000c.htmlより、
社説:秘密保護法案 懸念材料が多すぎる
毎日新聞 2013年09月04日 02時33分

 国家機密の情報漏えいを防ぐための特定秘密保護法案の議論が本格化してきた。政府は秋の臨時国会に法案を提出予定で、自民党など与党でも検討が始まった。
 「防衛」「外交」「安全脅威活動の防止」「テロ活動防止」の4分野のうち、秘匿の必要性が特に高い情報を行政機関の長が「特定秘密」に指定する。故意に漏らした公務員には最高懲役10年の罰則を科す。
 特定秘密の範囲が拡大すれば、国民の「知る権利」が損なわれる。だが、政府が予定している法案の概要では、その歯止めが明確でない。
 あいまいさを残す一方で、当事者を厳罰で縛ろうとする法案の骨格に対し、強い懸念を抱く。
 何が特定秘密になるのか。「外交」など4分野について別表で規定する。たとえば、外交ではその一つとして「安全保障に関する外国の政府または国際機関との交渉または協力の方針または内容」と掲げる。
 かなり抽象的な規定だ。行政機関の長の判断次第で指定の範囲は大きくふくらむ。さらに指定の有効期間は5年で、何回も更新可能だ。
 政府にとって都合の悪い情報の隠れみのになってしまう恐れはないか。指定の適切さを政府内部でどうチェックするのかも明確でない。
 米国では、重要な公文書でも期限がすぎれば公開される仕組みが整備されている。一方、日本は官庁側の裁量に左右されてきた。沖縄密約問題でも、米国で公文書が公開されているのに、政府はいまも文書の存在を認めていない。廃棄などずさんな公文書管理も随分、批判を浴びた。隠蔽(いんぺい)体質を改め、まず基本的な情報公開度を高めるのが先ではないか。
 さらに懸念するのは、特定秘密を知ろうとする側も罰則の対象としていることだ。特定秘密の取得行為に対し、最高懲役10年の罰則を科す予定だ。たとえば、漏えいをそそのかす行為も罰則の対象だ。
 だが、熱心に相手を説得する報道機関の取材とそそのかしをどう線引きするのか。また、取得行為は、報道目的に限らない。国民がそれぞれの立場で政府情報の公開を求める行為も規制対象になり得る。「国民の基本的人権を不当に侵害することがあってはならない」との規定も設けるというが、適切な運用が担保される保証はない。情報の提供側・受け手双方に対する萎縮効果は甚大だ。
 国家間で共有する情報など機密性の高い情報があるのは確かだ。そのセキュリティーに最善を尽くす必要性は分かる。ただし、一義的には情報を持つ官庁の情報管理の問題だ。幅広く民間人も巻き込み厳罰も導入しての法制化が本当に必要なのか。入り口からの議論が必要だ。

http://mainichi.jp/select/news/20130904k0000m010091000c.htmlより、
特定秘密保護法案:パブリックコメントを開始
毎日新聞 2013年(最終更新 09月04日 00時34分)

 自民党は3日、特定の秘密を漏らした公務員や不正に情報を入手した第三者を処罰する特定秘密保護法案の概要を大筋で了承した。これを受け、政府は同日、国民の意見を募るパブリックコメントを開始した。政府は秋の臨時国会に提出して成立を図る方針で、「知る権利」との両立や特定秘密の対象が論点となる見通しだ。
 法案は、諸外国との情報共有を進めるため、防衛▽外交▽安全脅威活動防止▽テロ活動防止−−の4分野で機密性の高い情報を「特定秘密」に指定。漏えいや不正入手には最高10年以下の懲役を科す。パブリックコメントは17日まで行われる。
 最大の論点は「知る権利」との兼ね合い。法案では、秘密の有効期間を「上限5年」としたが、行政機関の長の判断で無限に更新できる。法案の検討に着手した民主党政権は、不開示決定の是非を裁判官が判断できる情報公開法改正案も作成したが、安倍政権は見送っている。
 処罰は第三者も対象となるため、「報道の自由」を侵害しかねないとして日本新聞協会は反対を表明している。政府・自民党は「拡張解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害することがあってはならない」との規定を盛り込む方針だ。
 ただ、3日の自民党インテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチーム(座長・町村信孝元官房長官)では、出席議員が「不当とは何か」と政府の認識を追及。あいまいな規定で報道規制につながることに懸念もあり議論になりそうだ。
 秘密保護の対象となる4分野を巡っても、より限定した規定を求める意見がある。みんなの党の浅尾慶一郎幹事長は3日の記者会見で「客観的でないならば問題だ」と指摘。民主党にも刑期の長さを疑問視する見方があり、日本維新の会も「言論の自由」について内容を精査する方針だ。共産、社民両党は反対する構えだ。
 知る権利の保障をめぐっては、与党の公明党にも懸念が出ている。政府・自民党はパブリックコメントや与党調整を経て法案を提出する方針で、内容が変更される可能性もある。【小山由宇、高橋恵子】

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013090300888より、
秘密保全法案、政府が意見募集

 政府は3日、国の機密情報を漏らした公務員らの罰則を強化する特定秘密保全法案の概要を「電子政府の総合窓口」で公表し、国民からの意見募集を始めた。17日まで電子メールや郵送、ファクスで受け付ける。
 同法案は、国家公務員らが「特定秘密」を故意に漏らした場合、最長懲役10年の罰則を規定。罰則は唆した人物にも適用され、国民の知る権利や報道の自由が侵害されると懸念する声が出ている。(2013/09/03-21:43)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013090301002257.htmlより、
自民、秘密保護法案を了承 報道の自由に配慮
2013年9月3日 20時00分

 自民党の「インテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチーム」(座長・町村信孝元外相)は3日の会合で、機密を漏らした公務員らへの罰則強化を盛り込んだ「特定秘密保護法案」の概要を大筋で了承した。政府は、報道の自由を侵害するとの懸念に応えるため「国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならない」との表現を新たに概要に盛り込んだ。
 政府は、法案を10月召集予定の臨時国会に提出する方針だ。公明党は「政策の優先順位が低い」(党幹部)としており、成立は見通せない。
 法案提出に先立ち、政府は一般から意見を募るパブリックコメント(意見公募)を実施する。(共同)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130903/k10014255791000.htmlより、
自民 秘密保全法案を大筋了承
9月3日 19時25分

自民党は、政府が秋の臨時国会への提出を目指す「秘密保全法案」に関する作業チームの会合を開き、特に秘匿が必要な安全保障に関する情報を漏えいした公務員らに最高で10年の懲役刑を科すなどとした、法案の概要を大筋で了承しました。
政府は、外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議の創設に向けて、特に秘匿が必要な安全保障に関する情報を「特定秘密」に指定し、漏えいした公務員らに最高で10年の懲役刑を科すなどとした、「秘密保全法案」の成立を目指しています。
自民党は3日、この法案に関する作業チームの会合を開き、法案の概要について議論しました。
この中で、出席者からは「政府から情報が漏えいした事例も検証したうえで法案をまとめるべきだ」という指摘や、「諸外国によるスパイ活動にはより厳しく対応すべきだ」などという意見が出されましたが、最終的に大筋で了承されました。
政府は秋の臨時国会への法案の提出を目指し、3日に概要を公表し、国民からの意見を募ることにしています。
作業部会の座長を務める町村元官房長官は記者団に対し、「法案には基本的人権を不当に侵害してはならないという項目があり、報道の自由は確保できると思う」と述べました。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013082902000143.htmlより、
「機密」拡大解釈の恐れ 秘密保護法案 見えぬ意義
東京新聞 2013年8月29日 朝刊

 安倍政権が秋の臨時国会に提出を目指す特定秘密保護法案は、「国の安全保障に著しく支障を与える恐れがある」として指定する「特定秘密」が拡大解釈される可能性がある。今でも、公務員が国の機密情報を漏らすと国家公務員法や自衛隊法、日米間の協定に基づく法律で罰せられるのに、政府はさらに厳罰化して、機密情報の対象も際限なく広がりかねない法案を提出しようとしている。(金杉貴雄)
 菅義偉(すがよしひで)官房長官は二十八日の記者会見で「法案を提出する限り、その国会で成立を目指すのは当然だ。できるだけ国民に分かりやすい形で議論し、成立させたい」と臨時国会での成立に強い意欲を示した。
 公務員による情報漏えいを禁止する法律には、国家公務員の守秘義務違反に対する懲役一年以下または五十万円以下の罰金を定めた国家公務員法、「防衛秘密」を漏えいした場合に五年以下の懲役を科す自衛隊法がある。
 加えて、日米相互防衛援助協定(MDA)に伴う秘密保護法では、米国から供与された装備品等に関する情報を漏らせば、最長で懲役十年の罰則となる。
 政府は新たに特定秘密保護法案で、厳罰の対象を広げようとしている。政府が指定した「特定秘密」を漏らした場合には、秘密保護法と同じく最長十年の懲役を科す考えだからだ。
 問題は「特定秘密」の範囲。政府は「防衛」「外交」「安全脅威活動の防止」「テロ活動防止」の四分野と説明する。「安全保障に支障の恐れ」という定義はあいまいで、拡大解釈される余地が十分にある。しかも、この「特定秘密」を決めるのは大臣などの各省庁や行政機関の長だ。
 この法案が成立すれば、政府は重要な情報を、これを盾に隠すことができる。
 例えば、収束のめどが立たない東京電力福島第一原発など原発に関する情報について、政府が「公表するとテロに遭う危険がある」との理由で国民に伏せる事態も想定される。
 実際、原発事故の直後には、政府は「直ちに健康に影響はない」などと繰り返し、国民が知りたい情報を積極的に公表せず、信用を失った。外交でも、沖縄返還の際に財政負担を米国に約束した沖縄密約問題の情報は明らかにしなかった。同法案はそうした傾向をさらに強めかねない。

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201308/2013082800436より、
知る権利「極めて大事」=菅官房長官

 菅義偉官房長官は28日午前の記者会見で、機密情報を漏えいした国家公務員らの罰則を強化する特定秘密保全法案について「知る権利や取材の自由を十分に尊重しながら検討を進めている。知る権利や取材の自由は極めて大事だ」と述べ、国民の基本的人権を不当に侵害することにならないよう配慮する姿勢を示した。ただ、侵害を防ぐ具体的方策は今後詰めるとして、明らかにしなかった。
 菅長官は同法案に関して、外交・安全保障政策の司令塔となる日本版NSC(国家安全保障会議)創設法案と合わせ、秋の臨時国会で成立を目指す方針を改めて表明。「(NSCと)外国との情報共有は、その情報を保全することを前提に行われる。法整備は喫緊の問題だ」と強調した。(2013/08/28-12:25)

http://mainichi.jp/select/news/20130828k0000m010140000c.htmlより、
秘密保全法案:テロ防止も対象 「知る権利」配慮規定も
毎日新聞 2013年(最終更新 08月28日 03時02分)

 政府が秋の臨時国会に提出する秘密保全法案で、情報の保全措置を講じる「特定秘密」の対象を「テロ活動防止」「安全脅威活動の防止」など4分野としたことが27日分かった。国民の知る権利や報道の自由に配慮し、「本法を拡張解釈し、国民の基本的人権を不当に侵害することがあってはならない」との規定も盛り込む見通しだ。
 27日開かれた自民党の「インテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチーム(PT)」(座長・町村信孝元官房長官)で内閣官房担当者が説明した。法案の正式名称は「特定秘密の保護に関する法律案」。行政機関の長が指定する保全対象の「特定秘密」は(1)防衛(2)外交(3)安全脅威活動の防止(4)テロ活動防止−−の4分野。骨格段階では(1)(2)及び「公共の安全と秩序の維持」の3分野だったが「あいまい」との批判を招きかねない「公共」を(3)(4)と再定義した。
 特定秘密を漏らした政務三役を含む公務員には最高で懲役10年の罰則を規定。公務員らをあざむき、または脅迫する▽不正アクセス行為−−などで特定秘密を取得した第三者にも最高で懲役10年を科すとした。
 町村氏はPT終了後、記者団に「基本的人権を不当に侵害することがないと法律に明記する」と明言する一方、取材活動に関し「不法な方法は除外にはならないだろう」とも述べた。法案は9月中にまとめられ、パブリックコメントを経て国会に提出される見通しだ。【小山由宇、水脇友輔】

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013082701002251.htmlより、
漏えい、民間業者も罰則 政府の秘密保護法案
2013年8月28日 01時10分

 国の機密を漏らした国家公務員らへの罰則強化を盛り込んだ「特定秘密保護法案」で、防衛などの機密情報を扱う府省庁と契約を結ぶ民間企業の従業員も罰則対象とし、漏えいした場合は最高で懲役10年を科すことが分かった。機密情報を取り扱えるか適性を評価するため、社員の同意を得た上で犯歴や経済状態など個人情報を調査する。政府関係者が27日、明らかにした。
 政府は法案の拡大解釈による「基本的人権の不当な侵害」を禁じる規定を盛り込む方針だが、個人調査の対象を民間に広げることでプライバシー侵害の可能性も高まるため、国会では慎重な議論を求める声が強まりそうだ。(共同)

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201308/2013082700967より、
「不当な取材」定義不明確=秘密保全法案、政府が概要-自民幹部

 政府は27日、秋の臨時国会に提出する特定秘密保全法案の概要を自民党プロジェクトチーム(PT)に提示した。会合後、PT座長の町村信孝元官房長官は同法案が報道の自由を制約しかねないとの指摘について、「正常な取材活動は問題ないことを法律上明確にしたい」と記者団に強調。ただ「何が不当な方法かは議論が分かれるかもしれない」と述べ、具体的にどのような活動が違法とされるのかは明確になっていないことを認めた。
 同法案は、安全保障や外交に関わる国の機密情報の漏えいやその教唆を処罰対象としており、取材活動にも漏えいの教唆罪が適用されるとの見方がある。法案概要は「法適用に当たり、拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害することがあってはならない」と規定しているが、自由な取材の担保には不十分との指摘も出そうだ。
 政府側は会合で、法案提出前に国民の意見を聴くパブリックコメントを実施すると説明した。(2013/08/27-22:49)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013082701001921.htmlより、
秘密保護法案、報道は除外で一致 自民PT
2013年8月27日 19時42分

 自民党は27日、政府が秋の臨時国会に提出予定の特定秘密保護法案について協議する「インテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクトチーム」(座長・町村信孝元外相)会合を開いた。報道の自由を踏まえ、罰則対象から報道目的の除外を明記するよう求める方針で一致した。
 会合後、町村氏は「基本的人権である報道の自由を侵害することがあってはならないと明記する」と記者団に述べた。ただ「不法な方法による取材は除外とならないだろう」との認識も示した。
 9月3日の次回会合で法案概要を了承した後、政府はパブリックコメント(意見公募)を実施する。(共同)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013082501001595.htmlより、
罰則対象から報道目的除外を検討 秘密保護法案で政府
2013年8月26日 02時00分

 政府が、国の機密情報を漏らした国家公務員らへの罰則強化を盛り込む「特定秘密保護法案」に関し、罰則対象から「報道目的」の除外を検討していることが分かった。罰則の最高刑は懲役10年とし、民間人が施設に侵入し機密情報を得たケースなども対象となる。秘密保護担当相は森雅子少子化担当相が兼任する。政府関係者が25日明らかにした。
 法案をめぐっては、国民の「知る権利」や報道機関による取材の自由が制約されるとの懸念があり、報道規制にならないよう留意すべきだとの判断が働いたとみられる。拡大解釈による基本的人権の不当な侵害を禁じる規定も盛り込む方針だ。(共同)

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201308/2013082500110より、
政務三役も漏えい処罰対象=防衛産業も、最長懲役10年-特定秘密保全法案・政府

 政府が秋の臨時国会に提出する特定秘密保全法案で、安全保障や外交上の国の機密情報を漏えいした場合の罰則の適用対象に一般公務員だけでなく、閣僚や副大臣、政務官の政務三役や防衛産業などの民間企業の契約者も含めることが25日、分かった。政府関係者が明らかにした。罰則は最長で懲役10年。
 日本版NSC(国家安全保障会議)設置に合わせた法整備で、米国など同盟国と高度な軍事や対テロ情報を共有する上で情報管理を徹底するのが目的だ。ただ、報道の自由やプライバシー保護を脅かしかねないとの懸念もある。
 法案では、公になっていないもののうち「漏えいがわが国の安全保障に著しく支障を与える恐れがあるもの」を特定秘密に指定する。対象は別表で4分類され、「防衛」「外交」「外国の利益を図る目的の安全脅威活動の防止」「テロ活動の防止」が列挙されている。(2013/08/25-16:42)

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http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年 9月 5 日(木)付
婚外子差別―遅すぎた救済のつけ

 両親が結婚していたかどうかで子どもの相続分に差をつける民法の規定は、法の下の平等を定めた憲法に違反する。
 最高裁大法廷がようやく判断した。
 合憲とした前回の大法廷決定から18年。家族のかたちが多様になった。同様の規定があった他の先進国も、とうに改めている。遅すぎた救済である。
 対象は01年の相続だ。決定は、遅くてもこの時点で、規定は違憲だったとする。
 01年以降も、婚外子がかかわる遺産分割はいくつもあった。最高裁小法廷を含む各法廷でも相続差別規定に基づいた解決がはかられてきた。
 しかし、裁判や話し合いなどですでに確定したケースには影響を与えないと、決定は明示している。当事者にとっては納得しがたいだろう。
 決定が及ぶ範囲について、法律に近い拘束力を持つ判断を最高裁が示すのは異例だ。
 婚外子の権利を保障しなければいけない一方、すでに解決した相続問題を覆すことになれば社会の混乱は大きい。苦渋の選択ではなかったか。
 改めて浮かぶのは、この問題を立法で解決しなかった国会の無責任さである。
 両親が結婚していたかどうかに責任のない子どもに不利益を与えるこの規定の問題点は、国内外から指摘されて久しい。
 そもそも戦前の民法以来の規定である。96年に法制審議会が婚外子も同様に扱う民法改正案要綱を答申していた。
 しかし、自民党などは「法律婚の保護が必要」「不倫を助長する」などと反対し、法務省は法案を出せずじまいだった。
 すぐに法改正していれば、今回の決定のように、父母の死や裁判などの時期によって、救済されるかどうかが分かれるという不条理な状況は避けられたはずである。
 最高裁の違憲判断をもって、民法の規定が自動的に変わるわけではない。担当した裁判官14人の全員一致による決定の重みをふまえ、国会は一日も早く法改正すべきだ。
 父母や祖父母の殺人(尊属殺人)をより重く処罰する刑法の規定を最高裁が違憲としたときは、法改正まで検察官が尊属殺人罪ではなく殺人罪で起訴し、判例と法律の差を埋めた。
 相続にはこうした手当てが徹底できるとは限らず、法改正の遅れは許されない。
 11年には約2万3千人の婚外子がうまれた。今回の決定を、家族それぞれのかたちを尊重しあう新たな出発点としたい。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130905/trl13090503100001-n1.htmより、
産経新聞【主張】相続格差は違憲 「法律婚」の否定ではない
2013.9.5 03:09 (1/2ページ)

 最高裁大法廷は、結婚していない男女間に生まれた非嫡出子(婚外子)の遺産相続分を、嫡出子の半分と定めた民法の規定を、違憲とする初判断を示した。
 憲法は法の下の平等を保障しており、「父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のないことを理由に不利益を及ぼすことは許されない」とした判断は当然だろう。速やかに、民法も改正すべきだ。
 「婚外子の相続分は嫡出子の半分とする」という規定は明治31年に設けられ、昭和22年の民法改正でも引き継がれた。54年には法務省が両者の差異をなくす民法改正案をまとめたが、国会には提出されなかった。
 平成5年以降、東京高裁などでこの問題での違憲判断が相次いだが、最高裁は7年、「民法が法律婚を採用している以上、著しく不合理とはいえない」とする合憲判断を出し、婚外子側の訴えを退けていた。
 ただしこれを覆す今回の最高裁の判断は、法律による婚姻家族を否定したものではない。
 法律婚という制度は日本に定着しており、「重婚」を認めるものでも、「事実婚」や「非婚カップル」を助長し、「不倫」を推奨するものでもない。
 国内における婚外子の出生数の増加や、欧米で急速に進んだ婚外子への法的な差別撤廃の動きが背景にはある。
 だが、あくまで今回の判断は、個人の尊厳と法の下の平等に照らして婚外子の権利が不当に侵害されていないかとの観点から導き出されたものだ。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130905/trl13090503100001-n2.htmより、
2013.9.5 03:09 (2/2ページ)
 最高裁の判断が、国民の結婚観や家族観に誤った影響を与えるようなことがあってはならない。
 結婚や家族は個人のライフスタイルの問題だとする考え方もあるだろう。だが、法律婚によって築かれる家族は尊重、保護されるべき社会の最小単位である。その重要性は変わらない。
 付け加えれば、民法による相続の規定は強制されるものではなく、生前処分や遺言などによる相続分の指定がない場合に補充的に適用されるものだ。
 家族ごとに、さまざまな個別の事情があるだろう。相続は本来、被相続人が自らの人生を省みて配分を決めるものだ。その原則も指摘しておきたい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013090502000137.htmlより、
東京新聞【社説】婚外子差別違憲 つらい思いに終止符を
2013年9月5日

 婚外子の遺産相続は、法律婚の子の半分-。この民法の規定を最高裁が「違憲」と断じたことは、明治民法から続く婚外子差別の解消を迫る大転換である。国会は早急に不平等な法を正すべきだ。
 「子にとって自ら選択する余地のない事項で、不利益を及ぼすことは許されない」-。最高裁の決定は、婚外子の差別に「憲法違反」を突きつけた。憲法の「法の下の平等」などに照らし合わせれば、当然の結論といえよう。
 結婚していない男女の子も、個人として尊重され、権利も保障されねばならない。だが、婚外子の相続分は半分しか認められてこなかった。百十五年前の明治民法で、この定めが盛り込まれたのは、戸主を長とする「家制度」があったからだ。戦後の民法改正でも、そのまま引き継がれていた。
 こんな規定が今も残るのは、先進国では日本だけだ。欧米諸国は一九六〇年代後半から次々と、差別撤廃を遂げた。それを考えると、決定は遅すぎたほどだ。
 婚外子差別をめぐって、最高裁大法廷は九五年に「合憲」とし、それ以降も小法廷で「合憲」を続けてきた。法律婚を重視したことや、国会の裁量権に委ねた結果だ。だが、戦後間もない時期にも改正論はあったうえ、九六年には法制審議会が「相続分は同等」とする改正案を答申している。直す機会は過去にあったのだ。
 平等化を阻んできたのは、「不倫を助長する」「家族の絆を弱める」といった国会議員らの反対の声だ。だが、内閣府の世論調査では、婚外子への不利益な扱いについて「してはならない」との意見が今や61%にのぼっている。
 事実婚やシングルマザーが増加している社会の変化も大きい。国連の人権機関も差別をなくすよう勧告を繰り返している。
 尊属殺人の重罰規定など、最高裁が法律の定め自体を違憲と判断したのは、今回を含め、九件しかない。国会議員はその重みをよく考えてほしい。法そのものを変えないと、裁判を提起しない限り、婚外子は救われない。だから、早く法を是正すべきなのだ。
 相続格差のほかにも、問題は残る。出生届には嫡出子かどうかのチェック欄がある。未婚の母には、税法上の不利益もある。父から認知されていない子は、遺族基礎年金などを受給できない。
 「同じ父親から生まれたのに、なぜ?」-。こんなつらい思いには、もう終止符を打ちたい。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO59316250V00C13A9EA1000/より、
日経新聞 社説 国会は速やかに相続差別規定の撤廃を
2013/9/5付

 婚外子(非嫡出子)の相続分を嫡出子の2分の1とする民法900条の規定について、最高裁大法廷が「法の下の平等」をさだめた憲法14条に違反すると初めて断じた。大法廷は1995年に一度は合憲としており、それから18年、曲折を経ての判断である。
 私たちは差別規定を放置する政治の怠慢を何度も批判してきた。司法に命じられるまで動かなかったのは極めて残念だが、改正は900条4号ただし書きの該当部分を削除すればいい。10月の臨時国会での速やかな対応を求める。
 大法廷は違憲の判断に至ったさまざまな理由をまとめる形で、「家族の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたこと」「子にとって自ら選んだり変えたりできない事柄を理由に不利益を及ぼすことは許されないという考えが確立されてきたこと」を挙げている。その通りであろう。
 両親が正式に結婚しているか否かによって子の相続分を差別する規定は明治時代の旧民法に盛られた。男性が妻以外の女性との間に子をもうけることを念頭に、家庭を重んじつつ婚外子にも相応の相続権を与えるという趣旨だった。
 この規定は戦後の新しい民法にも引き継がれたが、その後、事実婚や国際結婚が増えるなど、結婚や家族の形が多様化し、国民の意識も大きく変わった。一方で民法の規定が、婚外子に対する社会的な差別意識にもつながっていると指摘されてきた。
 最高裁大法廷が95年に合憲の判断を示したとき、裁判官15人のうちすでに5人は違憲だと主張していた。その後、小法廷でも常に結論に反対する裁判官が出るという異例の経過をたどって、合憲が辛うじて維持されてきたのである。
 その間の判決や決定をみると、最高裁は合憲判断を繰り返しながら立法府に強く法改正を求めてきたことが分かる。裁判で違憲と判断すれば対象の事案以降の相続について次々訴訟が起こる可能性があるが、法改正で対応すればそうした問題は生じないからだ。
 それでも国会が何もしなかったことが全員一致の違憲判断につながった。大法廷は今回対象になった2001年以降の相続が差別規定を前提としたものであっても、確定していれば違憲の判断は法的に影響しないとしている。混乱を避けるためやむを得ないのだろうが、それで不利益を被る人がいるのではないかという疑問は残る。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130905k0000m070155000c.htmlより、
社説:婚外子差別違憲 長かった平等への道
毎日新聞 2013年09月05日 02時30分

 最高裁大法廷が、民法の相続格差規定について、従来の合憲判断を見直し、14人の裁判官全員一致で違憲判断を示した。
 結婚していない男女間の子(婚外子)の遺産相続分を、結婚した男女間の子の半分とした規定だ。法の下の平等を定めた憲法14条に違反するか否かが最大の焦点だった。
 審理の対象となったのは、2001年7月と11月に亡くなった男性の遺産相続が争われた2件の家事審判だ。大法廷は決定の中で「相続格差規定は、遅くとも01年7月時点で、憲法14条に違反していた」と述べた。最も基本的な憲法の人権規定を重くみた判断であり、違憲の結論は当然の帰結だ。

 ◇家族の多様化が背景に
 大法廷は1995年、現行の民法が結婚の届け出を前提とする法律婚主義を採用していることを根拠に、規定を合憲と判断していた。
 だが、この規定は、115年前の明治時代に施行された旧民法の規定を戦後、受け継いだものだ。
 戦後民主主義が広く社会に浸透し、結婚に対する考え方も変化した。近年では、事実婚やシングルマザーも増えた。離婚した後に事実婚を選択する人もいるだろう。家族の形は多様化している。国民意識の変化に照らしても、規定の合理性は徐々に失われてきたといっていい。
 世界的にこうした規定は撤廃され、少なくとも欧米にはない。先進国で同種規定があったドイツで98年、フランスでも01年に法改正が行われ、平等化が実現した。
 国連自由権規約委員会は93年、「差別を禁じる国際規約に反している」として、規定廃止を日本政府に勧告した。その後も、国連の人権機関が勧告を繰り返している。国際社会の潮流からも、相続平等への道を歩むのは避けられなかったといえる。
 決定も、そうした歴史や国際的な動きに言及したうえで、「法律婚という制度自体はわが国に定着しているとしても、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由として、その子に不利益を及ぼすことは許されない」との結論を導いた。その意味では、95年時点で違憲判断に踏み込んでもよかったはずで、時間がかかったのは残念だ。
 最高裁が、国際社会の動向を重視したのは、今回が初めてではない。大法廷は08年、日本人父とフィリピン人母の間に生まれた婚外子の子供たちが、日本国籍の確認を求めた訴訟の判決で、出生後の国籍取得に両親の婚姻を必要とする国籍法の規定を違憲と判断した。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130905k0000m070155000c2.htmlより、
 大法廷はこの判決で、「家族生活や親子関係に関する意識の変化やその実態の多様化」を根拠として挙げ、「諸外国が婚外子に対する法的な差別的取り扱いを解消する方向にあること」も考慮したとの判断を示した。この考え方は、今回の決定にも受け継がれた。婚姻を前提とした「家族のつながり」を重視する伝統的な家族観を認めつつも、価値観の多様化が進む中で、婚外子を含めた家族の実態に目を向ける司法の姿勢を示したものといえる。
 最高裁が少数者の声に真正面から向き合ったことも評価できる。社会の価値観が変わってきても、日本の出生全体に占める婚外子の割合は約2.2%だ。「子供に責任のない出生によって、法的な不利益を受けるのはおかしい」との当然の主張が、少数ゆえに政治の場で長年顧みられなかった。そこに司法がやっと光を当てた意味は小さくない。

 ◇国会は早急に法改正を
 最高裁の違憲立法審査権については、ともすれば、行政府・立法府の裁量を広く認め、国民の基本的な権利を重くみない「司法消極主義」との批判がついてまわる。
 もちろん、立法府が十分に機能していれば、司法が前面に出るケースは限られる。だが、国会の現状をみた場合、特に国民の基本的人権に関わるようなテーマでは、積極的な姿勢も必要ではないだろうか。
 大法廷の違憲判断を受けて、国会は法改正を迫られた。早急に民法改正の作業に入るべきだ。
 もともとこの問題では、法相の諮問機関である法制審議会が96年、相続の平等実現や選択的夫婦別姓の導入を盛り込んだ民法改正案を答申した。だが、伝統的な法律婚重視を主張する国会議員の反対が強く、法案は提出されず、十分な議論は行われてこなかった経緯がある。
 だが、もはや遅滞は許されない。相続差別の撤廃を優先するとしても、多様な家族観を前提とした大法廷の決定の趣旨を踏まえれば、選択的夫婦別姓の実現についても、しっかり議論をしていく必要がある。
 婚外子の差別は、相続だけに限らない。出生届には、今も「嫡出子」「嫡出でない子」のチェック欄が残る。また、パートナーと死別・離別した女性が対象の「寡婦控除」で、所得税や住民税の控除は婚姻歴のある母に限定され、未婚の母には適用されない。事実婚の婚外子の親権は、父母いずれかの単独親権だ。
 今回の決定を機に、不合理な差別的扱いがあれば、積極的に是正していくことが求められる。また、決定を踏まえた相続実務で混乱がおきないよう関係当局は努めてほしい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130905ddm003040120000c.htmlより、
クローズアップ2013:婚外子差別、違憲判断 家族観の多様化、反映
毎日新聞 2013年09月05日 東京朝刊

 「婚外子に対する差別意識を助長する」と批判されてきた民法の相続格差規定について、最高裁大法廷が4日、裁判官全員一致で違憲判断を示した。家族や結婚に対する価値観の多様化などを踏まえた結論だが、与党内には、法律婚を中心とする「伝統的な家族観」を重んじる保守系議員も少なくない。早期の法改正には不透明感も漂う。

 ◇「未婚の母」増加 国民意識に変化
 「現状を放っておけないから早く対応せよ、ということ」。全員一致の決定を受け、東京都内で記者会見した婚外子側の代理人、岡本浩弁護士は違憲判断をそう分析し、「少数者の声を多数意見を代表する国会で反映するのは難しい。その時は司法がやるしかない」と強調した。
 規定は、1898年施行の明治民法で設けられた。正妻の産んだ子とそれ以外の女性との間の子を区別し、原則的には正妻の子に「家」を継がせ、亡くなった場合などにはそれ以外の子に継がせようとしたことから、婚外子に「2分の1」という一定の相続権を保障した。いわば「家の存続」のための規定だった。
 戦後に現行憲法が制定され、法の下の平等を定めた14条で社会的身分による差別を禁じたことに伴い、相続分の平等化も議論されたが、「法律婚の尊重」の観点から規定は維持された。
 しかし、時代の移り変わりに伴い家族や結婚の形は多様化し、国民の意識は変化。国勢調査などによると、「未婚の母親」は2000年の6万3000人から10年間でほぼ倍増し13万2000人(10年)に。全出生数に占める婚外子も1990年の1・1%(1万3000人)から2011年には2・2%(2万3000人)まで増えた。一方、国の世論調査では、規定について「現在の制度を変えない方がよい」と答えた人は94年の49・4%から昨年35・6%に減少した。
 大法廷はそうした変化について「いずれか一つをとらえて規定を不合理とすべき決定的理由にならない」としながらも、「総合的に考察すれば家族の中における個人の尊重がより明確に認識されてきたことは明らかだ」と指摘した。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130905ddm003040120000c2.htmlより、
 一方で、決定は違憲判断による他の相続への影響にも配慮し、「違憲判断は確定した裁判や調停などに影響は及ぼさない」と線引きした。今回違憲と判断されたのは01年7月と11月に被相続人が死亡した遺産分割。この時期以降に現行の規定に沿って既に相続を決着させた婚外子側が、新たな判断に沿う形で改めて遺産分割をやり直すよう求める可能性があり、混乱も予想されるため、法的安定性を重視したと言える。金築誠志(かねつきせいし)裁判官は補足意見で「過去にさかのぼって(他の裁判などに)影響するのが原則だが、法や法適用の安定性を害するときは例外が許されてよい」と付言した。
 最高裁家庭局によると、12年末現在、遺産分割を巡り全国の家裁に係属中の審判や調停は計1万1224件。このうち婚外子の格差規定が問題となっているのは176件だ。
 ある婚外子の50代女性は最高裁の示した線引きについて「混乱回避のためには仕方ないが、不満に感じる人はいると思う」と話す。混乱回避の判断は、新たな不公平感を生む可能性もありそうだ。【和田武士】

 ◇民法改正、腰重い自民 保守系議員、高い壁
 最高裁の違憲判断を受け、政府は民法改正に着手する。菅義偉官房長官は4日の記者会見で「できる限り早く対応する」と述べ、秋の臨時国会への法案提出に前向きな考えを示した。谷垣禎一法相も「いたずらな混乱を生じさせてはいけない」と改正に意欲を見せた。だが「伝統的な家族観」を重視する自民党の腰は重く、改正が早期に実現するかはなお見通せない。
 同党の高市早苗政調会長は「政府と緊密に連携し、十分な法案審査等を通じて真摯(しんし)に対応したい」との談話を発表した。談話は「『一夫一婦制』や『法律婚主義』を危うくしかねない」という党内の批判的意見をあえて盛り込み、党政調で法案の「事前審査」を慎重に行う意向をにじませた。安倍政権には、支持基盤の保守層への配慮が欠かせないという事情がある。
 一方、婚外子の相続差別撤廃を掲げる公明党の山口那津男代表は「すばやく対応するのが国会の務め」と強調。「自民党にも働きかけてコンセンサスを作る努力をしたい」と述べた。
 法相の諮問機関「法制審議会」は1996年、相続差別の撤廃と選択的夫婦別姓制度の導入を答申し、法務省は民法改正案の提出をうかがってきたが、保守系議員の反発で断念させられた経緯がある。今年4月には、民主、みんな、社民の3党が、相続規定を撤廃する民法改正案を議員立法で参院に提出したが、廃案になっている。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130905ddm003040120000c3.htmlより、
 ある法務省幹部は「ようやく法案提出のチャンスがきた」と期待する。だが、「保守系議員の反発を考えると、答申通り婚外子と夫婦別姓をセットにした法案提出は難しいだろう」と話した。【横田愛、伊藤一郎】

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130905/k10014298591000.htmlより、
「婚外子」規定違憲で民法改正案提出へ
9月5日 4時46分

両親が結婚しているかどうかで子どもの遺産相続に差を設けている民法の規定について、最高裁判所大法廷が「憲法に違反する」という判断を示したのを受けて、政府は、早ければ秋の臨時国会に民法の改正案を提出することを目指して、与党側との調整を進めることにしています。
民法では、結婚していない両親の子ども、いわゆる「婚外子」は、結婚している両親の子どもの半分しか遺産を相続できないと規定されていますが、最高裁判所大法廷は4日、「家族の多様化が進むなかで相続を差別する根拠は失われた」と指摘し、「法の下の平等を定めた憲法に違反する」という初めての判断を示しました。
これを受けて、政府は、民法900条の「いわゆる婚外子の相続分は、嫡出子の半分とする」という規定を削除することを検討しており、早ければ秋の臨時国会に改正案を提出することを目指しています。
一方、与党側では、自民党の高市政務調査会長が、「最高裁判所の判断を厳粛に受け止め、政府と緊密に連携して真摯(しんし)に対応していきたい」としているほか、公明党は、法改正を急ぐべきだとしています。
ただ、自民党内には、「婚外子と嫡出子の相続を平等にすれば、伝統的な家族制度が崩れかねない」といった懸念もあり、政府は、改正案の提出に向けて与党側との調整を進めることにしています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130905/k10014298201000.htmlより、
「婚外子」規定違憲 ほかの制度議論も
9月5日 4時22分

両親が結婚しているかどうかで子どもの遺産相続に差を設けた民法の規定について、最高裁判所大法廷は、4日、「憲法に違反する」という初めての判断を示しました。この決定で、結婚していない両親の子どもを区別するほかの制度も、今後、見直しについての議論が行われるとみられます。
最高裁大法廷は、4日、結婚していない両親の子ども、いわゆる「婚外子」が結婚している両親の子どもの半分しか遺産を相続できない民法の規定について、「憲法に違反する」という初めての判断を示しました。
今後は相続に関する民法の規定が見直されることになりますが、婚外子を区別する仕組みや制度はほかにもあることから、幅広く見直しを求める声も上がっています。
このうち、出生届は、生まれた子どもが結婚した夫婦の子である「嫡出子」かそうでないかを記載することが現在も義務づけられています。
さらに、母子家庭などの税金を軽減する「寡婦控除」の制度は、配偶者と死別したり離婚したりした場合が対象で、未婚の人は含まれないため、婚外子に対する間接的な差別だとする指摘があります。
家族法が専門の早稲田大学の棚村政行教授は、「相続差別にかぎらず、できるかぎり子どもの側に立ってこうした差別を見直していく必要がある」と話しています。

4日の最高裁判断
民法の規定に対し、これまで見直しを求める人たちは、「家族の形は多様化していて親が結婚しているかどうかだけで差を設けるのは不合理だ」などと主張してきました。
一方で、見直しに反対する人たちは、「制度を見直すと、結婚せずに子どもを作る人が増え、家族の制度が崩れかねない」などと主張してきました。
4日の決定で最高裁は、「子どもは婚外子という立場を、みずから選ぶことも取り消すこともできない。現在は社会が変化し、家族の多様化が進むなかで、結婚していない両親の子どもだけに不利益を与えることは許されず、相続を差別する根拠は失われた」と指摘し、「民法の規定は、法の下の平等を定めた憲法に違反している」という初めての判断を示しました。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130905k0000m070160000c.htmlより、
記者の目:骨抜きの原発被災者「支援法」=日野行介
毎日新聞 2013年09月05日 00時46分

 東京電力福島第1原発事故による被災者支援を掲げる「子ども・被災者生活支援法」の基本方針取りまとめを担当していた復興庁参事官(当時)による暴言ツイッター問題をきっかけに、支援法の骨抜きを進める政府の「真意」を報じてきた。取材の過程で、政府の無責任ぶりと不透明な政策決定過程が明らかになり、不信感は増すばかりだ。
 支援法は原発事故による被災者支援のあり方を定めた理念法だ。昨年6月、超党派の議員立法で提案され全会一致で可決、成立した。放射性物質は自治体の境界を超えて拡散する。健康への影響の評価が定まらない現状では、被災者一人一人の意思を尊重した支援が求められる。このため、支援法は国の避難指示基準(年間累積線量20ミリシーベルト超)には達していないものの、放射線量が一定基準以上の地域を「支援対象地域」とし、国が住宅や医療面で被災者を支援すると規定した。支援対象地域での▽居住▽避難▽避難からの帰還−−のいずれについても、個人の選択を尊重するとした点に大きな特徴がある。

 ◇法の理念離れた対象地域決定
 だが、成立1年2カ月後の先月30日に復興庁が公表した基本方針案は、本末転倒と言うほかないものだった。放射線量の一定基準を定めないまま、福島県内33市町村を支援対象地域としたからだ。根本匠復興相は線量による画一的な線引きは「地域を分断する」としたが、「地域」ではなく「被災者」を支援するという法の理念とかけ離れている。
 もともと、支援法に基づく施策の推進を求める国会議員や市民団体は、法令などが定める一般人の線量限度(年間累積線量1ミリシーベルト)を支援対象地域の基準とするよう求めてきた。だが、復興庁は当初から1ミリシーベルトを基準にするつもりはなかったようだ。福島県外への対象拡大や財政支出増大などを懸念したと見られる。一方で1ミリシーベルトと20ミリシーベルト以外に基準となり得る数値がないため、基本方針案策定の先送りを続けたのが実態だ。
 基本方針案と同時に、約120の施策も発表されたが、ここからも骨抜きの意図が透けて見える。8割程度は各省庁が実施する既存施策で、県外避難者向けと見られる新施策は2、3だけ。昨年12月に新規受け付けが打ち切られ、復活を求める声が強かった県外避難者のための家賃補助も、「避難者の帰還が進んでいる」との理由で盛り込まれなかった。支援法にうたわれた「個人の選択の尊重」を無視して、福島への帰還促進を打ち出しただけと言わざるを得ない。

 ◇福島帰還ありき、検討の順序が逆
http://mainichi.jp/opinion/news/20130905k0000m070160000c2.htmlより、
 不透明なプロセスも問題だ。基準線量を定めなかった点について、復興相は「関係省庁との議論を踏まえた」と説明するが、議論はすべて密室で行われた。例えば復興庁元参事官は3月8日に「懸案が一つ解決。白黒つけずに曖昧なままにしておくことに関係者が同意」とツイートした。関係省庁の幹部が秘密裏に集まり、線量基準を含めた放射線対策の検討過程を、7月の参院選後まで表に出さないよう話し合っていたという。元参事官による書き込みがなければ、この「密議」自体が明らかにならなかったはずだ。
 原子力規制委員会は先月28日、避難者の帰還を促すための検討チームを設置した。空間線量の推計値に比べ、数値が低く出やすい個人線量計のデータを集めて避難者を安心させると共に、線量に基づかない支援対象地域指定の「科学的根拠」を後付けで示す狙いがある。だが、意図的に低くなるよう集められたデータは信用されるだろうか。そもそも、初めに帰還ありきでは検討の順序が明らかに逆だ。
 支援法は、施策に被災者の意見を反映し、プロセスを透明化するよう規定している。復興相は「職員が市民団体の集会で意見を聞いた」というが、元参事官は集会の参加者を「左翼のクソども」とツイッターで中傷していた。今さら「集会で意見を聞いた」と言われても説得力がない。実際、団体側からは「望んだものとかけ離れている」と憤る声が相次いでいる。1年2カ月も待たせた揚げ句、密室での協議を経て基本方針案を公表したところで、広い理解が得られるはずもない。
 支援法の付則は線量調査の結果に沿って毎年対象区域を見直すよう規定している。線量ごとの人口、財政支出の見込みなど、幅広いデータを示し、プロセスを透明化したうえで基本方針を決めるべきだ。国民が被災者支援の内容について議論を尽くせるよう、国は情報開示に努めなければならない。(東京社会部)