2014年度概算要求 「古い自民党に逆戻りか」

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO59355320W3A900C1EA1000/より、
日経新聞 社説 歳出増に歯止めかける意思はあるのか
2013/9/6付

 2014年度予算案の概算要求の結果がまとまった。一般会計の要求総額は過去最大の99兆2500億円で、13年度予算の92兆6100億円を大幅に上回った。
 旧来型の公共事業などの増額要求が相次ぎ、必要以上に膨らんでいるのは否めない。日本の財政悪化を食い止めるため、消費税増税で歳入を確保するだけでなく、歳出も厳しく抑制すべきだ。
 とりわけ重要なのは社会保障費の効率化である。高齢化の進展で自動的に増える年間約1兆円の「自然増」に切り込まないと、歳出の拡大に歯止めがかからない。
 しかし安倍政権は自然増を容認する概算要求基準を示した。厚生労働省の要求総額は過去最大の30兆円超に膨らんでいる。14年度の予算編成では、診療報酬制度などへの切り込みが欠かせない。
 公共事業の増額も目につく。国土交通省は道路整備や治水、農林水産省は土地改良のための農業農村整備などを増やした。老朽化したインフラの補修や公共施設の耐震化に一定の投資が必要なのは確かだが、不要不急の支出も紛れ込んでいるようにみえる。
 予算の無駄やばらまきを排除し、歳出全体をスリム化しながら、日本経済の成長基盤を固める事業に重点配分する。安倍政権に望みたいのはその工夫である。
 成長戦略の実行などを後押しする「優先課題推進枠」の要求額は3兆5100億円に達した。硬直的な予算配分に政治主導でメリハリをつけ、限られた財源をうまく活用できるのならいい。
 だが防災・減災や地域活性化などを名目に、必要性や経済効果が乏しい事業を積み上げるのでは困る。iPS細胞研究の支援や再生可能エネルギーの普及などに資する事業を選別すべきだろう。
 特別会計で管理する東日本大震災の復興支出も精査してほしい。13年度予算の4兆3800億円よりは少ないが、3兆6300億円の要求額がある。被災地復興との関連性が乏しい事業が紛れ込むようでは、復興増税を課している個人や企業の理解を得られない。
 安倍晋三首相は10月上旬までに、消費税率引き上げの時期と幅を決断する。増税とその使途を確定させるのは早い方がいい。
 だが増税を実行しても歳出の抑制を怠るようなら、財政再建の実が上がらない恐れがある。14年度の予算編成では支出の選別がより厳しく問われるはずだ。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO59234640T00C13A9EA1000/より、
日経新聞 社説 古い派閥政治は願い下げだ
2013/9/3付

 自民党の派閥が元気を取り戻しつつある。衆院選と参院選の連勝で主要各派はどこも大幅に勢力を拡大した。泊まりがけでの夏の研修会を復活させ、団結固めに努めるなど存在感を高めている。
 野党時代はどの派も頭数が減り、資金集めは楽でなかった。事務所を縮小し、総会は党本部の会議室で開く派閥もあった。夏に避暑地でゴルフに興じつつ、政局への戦略を練る余裕は失われた。
 それだけに各派とも再び議員が寄り集う姿は誇らしいのだろう。「大勢が参加して研修会を開くことは喜びだ」。最大派閥である町村派の町村信孝会長は長野県での研修会で満面の笑みだった。
 この勢いを何にいかすのか。自民党は過去において「派閥あって党なし」とまでいわれた党内抗争を繰り返した歴史がある。古い派閥政治に逆戻りしないように留意してもらいたい。
 それには私利私欲のために徒党を組んでいると思われないことが大事だ。新人議員の囲い込み競争があまり激しいのは浅ましい。研修会が公共事業予算分捕り合戦の出陣式のようにみられては安倍内閣の支持率に影響しかねない。
 多数が集うところに人の輪ができるのは自然であり、派閥の全てを否定する必要はない。自民党の衆院議員は当選1~2回で半数を占める。先輩議員が指導する場のひとつに派閥があってもよい。
 ただ、自民党が野党時代にまとめた党改革計画を読み直すと、派閥について「党運営に関与させない」と全否定に近い表現だった。党と派閥がどう役割分担していくのか。この機会に論議を深めることは党全体のガバナンスの強化につながろう。
 いまの安倍政権は首相官邸が政策決定機能を握っており、派閥は閣僚人事などへの発言力まで取り戻したわけではない。派閥の「復権」とはしゃいで党の遠心力になってはすぐに失速しよう。
 政策論議を盛り上げ、党のこれからを担う人材が競う場になるよう期待したい。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年 9月 2 日(月)付
防衛の行方―装備を増やすだけでは

 防衛省が14年度予算の概算要求で、今年度当初比2・9%増の総額4・8兆円を計上した。
 中身をみると、新たな案件が目白押しである。
 米軍の無人偵察機グローバルホークの15年度の導入をめざして、調査費が2億円。実現すれば4機で数百億円ともいわれる高額の装備だ。
 離島の守りを担う水陸両用準備隊を新たに編成し、水陸両用車2両を調達する。
 安倍政権のもと、中国・北朝鮮をにらんだ抑止力強化の動きが鮮明となっている。
 だが問題は、このような装備の増強によって、ほんとうに日本の安全保障環境が良くなるのか、という点にある。
 なにが日本を守るのか。それを考えることが出発点だ。
 たしかに自衛隊の能力は一つの重要な要素だが、それだけではない。国際情勢を冷静に複眼的に分析し、外交・安全保障戦略をたてる。そのうえで、自衛隊の任務を規定し、必要な装備を整えなければならない。
 それを国内外に明確に説明することも必要だろう。日本の針路への疑念を招けば、安保環境は悪化するばかりである。
 装備を増やせば安全になる、という単純な話ではあるまい。ましてや米国の軍需産業のお得意さんとなるべく、購入をはかるような理屈は通らない。
 見過ごせないのは、米軍の新型輸送機オスプレイの15年度の導入に向け、1億円の調査費を計上していることだ。
 米海兵隊のオスプレイの沖縄への追加配備が大きな反発を招いたばかりである。本土への訓練の分散移転も進んでいない。そんななかで、自衛隊によるオスプレイ導入が幅広い理解を得られるとは思えない。
 装備の増強を偏重する防衛政策は、国家と国家が兵器で衝突する従来の安全保障観に引きずられてはいないか。
 むしろ、取り組みを加速させるべきなのは、サイバー攻撃への対応だろう。情報システムを守れなければ、自衛隊の運用どころか国全体の中枢が麻痺(まひ)しかねない。サイバー関連経費として240億円を盛り込んだが、対策を急がねばならない。
 さらに言えば、原発こそ日本の安全保障の急所である。そこから目をそらしてはならない。福島第一原発の事故の教訓を踏まえ、大災害やテロ攻撃などによる最悪の事態を想定することも大切な国防政策だろう。
 古い戦争の既成概念にとらわれず、新しい安全保障のあり方を根本から考えていく必要があるのではないか。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年 8月 31 日(土)付
予算編成―しまりのなさに驚く

 来年度の予算編成で、各省庁が財務省に概算要求を出した。
 一般会計の総額は過去最大の99・2兆円で、今年度予算を7兆円近く上回る。省庁ごと、分野ごとでも軒並み増額だ。
 査定はこれからだが、財政再建などどこ吹く風と言わんばかりのしまりのなさに、あきれるほかない。
 景気の回復基調を受けて税収は増加が見込まれ、来春には消費増税も想定される。
 一方、安倍政権はデフレ脱却へ「機動的な財政運営」を掲げる。先の参院選で業界団体の支援を受けた与党からは「予算を増やせ」の声がかまびすしい。古い自民党そのままだ。
 「入り」が増え、「出」には追い風が吹く。要求しなければ予算はつかないから、とにかく目いっぱい要求する。
 そんなゆるみきった構図の象徴が「特別枠」だろう。
 省庁の縦割りを超えて予算を重点配分するのが建前だが、防災や経済成長、地域活性化など実態は何でもありだ。
 国土交通省や農林水産省が特別枠をフルに使い、公共事業費の要求額を今年度予算より2割近く増やすなど、すっかり「別ポケット」になっている。
 財政難への危機感がないのだろうか。
 「入り」と「出」の現状を、今年度の一般会計で改めて確認したい。
 全体で92・6兆円に及ぶ歳出の半分近くは、借金(国債)でまかなっている。消費税収は社会保障にあてることになっているが、社会保障費が29兆円を超えるのに対し、国の消費税収は11兆円に満たない。
 税率を今の5%から10%に上げても足りず、しかも社会保障費は高齢化で毎年1兆円程度増えていく。
 消費税を除く所得税、法人税などの税収と、公共事業費など社会保障以外の政策経費を比べても、9兆円近い赤字だ。
 財政再建への出発点である「基礎的財政収支の黒字化」とは、こうした政策にかかわる不足分をゼロにすることだ。これ以外にも、過去に発行した国債の元利払い費(国債費、今年度は22兆円余)があることも忘れてはなるまい。
 財政の立て直しは、一朝一夕には達成できない。
 国の成長率を底上げして税収を増やす▼必要な増税策を実行する▼できるだけ少ない予算で効果をあげて歳出を抑えていく――この三つについて、不断の努力が欠かせない。
 このままの甘い姿勢では、いまに厳しいしっぺ返しが来る。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130831/fnc13083103320000-n1.htmより、
産経新聞【主張】概算要求 野放図な分捕り許されぬ
2013.8.31 03:31 (1/2ページ)

 来年度予算の概算要求が締め切られ、要求総額は99兆円を上回り過去最大となった。東日本大震災の復興費を加えると、実質で100兆円を超える規模だ。
 日本経済の再生には、財政再建も大きな課題である。国の財政は各省庁の予算獲得合戦を許す状況ではないことを忘れてもらっては困る。
 安倍晋三首相はこれから行う要求の絞り込み作業を通じて、財政規律の確保に向けた覚悟を示さなければならない。
 要求総額が膨らんだのは、既存の経費に上乗せできる「優先課題推進枠」が設けられ、成長戦略向けなどを名目に3・5兆円に上る各省庁の要求が殺到したことが原因だ。
 消費税増税の実施の判断がまだ行われておらず、税収見通しが立てられないことを理由に歳出上限を決めなかったのも、要求増につながった。
 今月初めに決定した概算要求基準は、公共事業や教育など裁量的な経費を一律で10%減らすとした。一方、推進枠は削減した後の額の3割相当を要求できる仕組みだ。各省庁はこぞって上限までの予算を要求した。
 推進枠は、成長戦略や防災などの優先課題に予算を重点配分するのが目的だ。道路や整備新幹線などの公共事業に加え、科学技術振興費やODA(政府開発援助)など主要な歳出項目で強気の要求が並んでいる。だが、真に「重点化」を図ったのか、首をかしげたくなるものも少なくない。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130831/fnc13083103320000-n2.htmより、
2013.8.31 03:31 (2/2ページ)
 医療や年金などの社会保障費も増え続け、高齢化に伴う自然増分を盛り込んだ結果、初めて30兆円を突破した。効率化や抑制への具体策はどこへ行ったのか。
 地方交付税の切り込みも大きな課題だ。総務省は特別会計を含め16兆7600億円を要求した。今年度比3千億円減だが、地方は景気回復に伴う税収増が見込める。さらに削減を検討すべきだ。
 消費税増税をにらみ、自民、公明両党は国土強靱(きょうじん)化などで歳出増圧力を高めているが、消費税は社会保障財源に充てられる。公共事業など他の歳出を増やす余裕を生み出すものではないはずだ。
 一方で、中国が奪取を図る尖閣諸島を守るため海上保安庁や防衛省の必要な予算、人員を確保せねばならない。効率化と同時に優先順位の明確化が問われている。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013083102000140.htmlより、
東京新聞【社説】概算要求の膨張 古い自民党に逆戻りか
2013年8月31日

 二〇一四年度予算に対する各省庁の概算要求は、一般会計の要求総額が過去最大の九十九兆円台に膨張した。自民党が政権復帰して初の本格的な予算編成だが族議員の跋扈(ばっこ)する古い自民に逆戻りか。
 消費税増税の判断前で税収が見通せないため、不確定要素が残る概算要求ではある。しかし、国民に財政再建が必要だと増税を突き付けながら、同時に大盤振る舞いの予算を組もうというのは到底理解することができない。ここまで財政を悪化させた張本人は、長期にわたって政権にいた自民党ではなかったのか。
 今回、政府が決めた概算要求基準では、公共事業や防衛費など一般的な政策予算(裁量的経費)は本年度(一三・二兆円)より10%削減を求めた。代わりに「優先課題推進枠」という特別枠を設け、成長戦略や防災、地域活性化などの名目であれば、どんな予算要求でも受け付けるようにした。事実上の「何でもあり」である。
 国土交通省はこの枠を目いっぱい使い、道路整備や新幹線、治水などすべての項目で、本年度をそれぞれ17%上回る上限額まで要求した。これではメリハリも工夫もない、単なる「一律増額要求」である。
 公共事業の中では、土地改良のための農業農村整備事業も膨張し、「建設族」に負けじと「農林族」も予算に群がった。旧来の族議員政治に逆戻りしたといわれても仕方あるまい。
 二〇〇〇年代以降、公共事業費は削減傾向が続いてきたが、安倍政権発足に伴って大幅増に転じている。大胆な金融緩和と機動的な財政出動というポリシーミックス(金融・財政政策の組み合わせ)で景気浮揚を図るアベノミクスは常識的な経済政策であり、一時的な公共事業の拡大はやむを得ない面はある。
 だとしても、度を越したバラマキや、費用対効果の低い事業など「何でもあり」の余裕はないのである。財政規律を失ったと市場に判断されれば、金利高騰というアベノミクスが最も恐れる事態に陥りかねない。
 国土強靱(きょうじん)を掲げて国政選挙で勝利したとはいえ、国民は古い自民の復活を期待したわけではない。かつて自分たちが財政赤字の山を築いたことを忘れてもらっては困る。それは財務省とて同類である。増税ばかりに頼るのではなく、膨張した概算要求を切り込み、歳出削減で財政再建を実現するぐらいの気概を示してほしい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130831k0000m070101000c.htmlより、
社説:防衛費 議論置き去りが心配だ
毎日新聞 2013年08月31日 02時33分

 国民的な議論や日米の役割分担の検討が不十分なまま、南西諸島などの防衛強化を目指して国防の根幹に関わる政策が、既成事実のように積み重なっていく。防衛省がまとめた来年度防衛予算の概算要求を見ると、そんな懸念を抱かざるを得ない。
 概算要求の総額は4兆8928億円で、前年度予算額に比べて2.9%増となった。概算要求の基礎となったのは、先月の「防衛計画の大綱」(防衛大綱)の中間報告だ。
 中間報告のうち敵基地攻撃能力の関連予算要求は見送られたが、沖縄県・尖閣諸島など離島防衛強化のための水陸両用機能については、両用作戦専門の部隊の準備隊を陸上自衛隊に新設することや、水陸両用車2両を約13億円で購入することなどが盛り込まれた。機動展開能力の向上については、米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイを2015年度から自衛隊に導入するための調査費1億円が計上された。このほか警戒監視能力の強化や、弾道ミサイル攻撃への対応、サイバー攻撃への対応など新規事業が目白押しだ。
 安全保障環境を考えれば、南西諸島防衛を強化し、必要な装備を整えるのは妥当な政策判断だ。
 しかし、安倍政権になって見直しに着手した防衛大綱は、年末の策定に向けてようやく中間報告がまとまった段階で、集団的自衛権の行使容認や、日米防衛協力の指針(ガイドライン)を巡る議論もこれから本格化する。いわば安全保障政策の基本方針が定まっていない状態で、既成事実を積み重ねるように予算要求が行われているようにみえる。
 例えば水陸両用機能は、大綱の中間報告では海兵隊的機能と併記された。「誤解されやすい」(防衛省幹部)として、今回の概算要求の資料から海兵隊的機能の表現は消えたが、いずれにしても、軍事行動の際の「殴り込み部隊」として知られる米海兵隊のような機能が自衛隊に本当に必要なのかどうかは、相当な議論が必要になるだろう。将来、集団的自衛権の行使容認と結びついて運用されるようなら、見過ごすわけにいかない。
 1機100億円とされるオスプレイの導入も費用対効果など慎重な見極めが必要だ。米軍普天間飛行場への配備に沖縄県民が反発していることから、自衛隊が導入すれば県民が反対しにくくなるといった政権の政治的思惑もささやかれている。
 また麻生太郎副総理兼財務相が、先日の講演で「尖閣を守る意思を明確に伝える」として防衛費増強を明言したように、防衛費の増額ありきの空気が政権を覆っている。政府には、無駄削減にくれぐれも注意を払うよう強く求めておきたい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130830k0000m070145000c.htmlより、
社説:公共事業 「旧来型」復活許されぬ
毎日新聞 2013年08月30日 02時33分

 2014年度政府予算の各省庁の概算要求が今月末で締め切られる。安倍政権の経済政策、アベノミクスが進める成長戦略や防災を旗印に、道路やダム、土地改良のための農業農村整備事業といった公共事業費の要求額が膨らんでいる。高齢化に伴って社会保障費が1兆円近く増えることも加わって、一般会計の要求総額は過去最大規模になる見通しだ。
 00年代から削減傾向が続いてきた公共事業費だが、安倍政権発足直後の12年度補正予算で大幅に上積みされ、13年度当初予算で増加に転じ、その流れが続いている。今回の概算要求では、重点施策に名を借りた「旧来型」の公共事業など、多岐にわたる分野で事業費拡大の動きが加速していることに強い危惧を抱く。
 各省庁は今月初めに閣議了解された概算要求基準に従い要求する。来年4月の消費増税の最終判断が出ていないため税収見通しが示されず、全体の予算規模が示されていない。その中で各省庁には公共事業や教育、防衛などの政策に充てる裁量的経費を13年度当初予算より10%削減して要求するよう求めた。そのうえで、成長戦略や防災などに重点配分する特別枠を設け、各省庁が削減後の金額の30%分、総額約3兆6000億円まで要求できるようにした。
 国土交通省が要求する公共事業費は、13年度当初予算より17%増になる。本来は減らすはずの公共事業を増やせるのは、特別枠をめいっぱい使い、「災害時の代替ルート」を名目とした道路整備、水害に備えるダムや堤防のかさ上げといった防災がらみの事業費を増やすためだ。
 自民党は災害に強い国土づくりを7月の参院選で公約に掲げており、歳出圧力を強めている。特別枠いっぱいに膨らむ要求を見ると、重点化、効率化が図れているのか疑問だ。各省庁の要求を財務省が査定して年末に予算案を策定するが、きちんと絞り込めるのか心配になる。
 とくに懸念されるのは、来年4月に消費税が8%に増税されることを当て込んで予算を拡大させる動きだ。消費増税法には景気条項と呼ばれる付則がある。消費増税が実現すれば「財政の機動的対応が可能になる」として、成長戦略や防災など経済成長に向けた施策を検討するとの規定だ。税と社会保障の一体改革に関する自民、公明、民主3党の合意を受けて法律に盛り込まれた。
 今まさに、消費増税の是非をめぐり政府の集中点検会合が開かれている。そこでは増え続ける社会保障費の痛みをどう分かち合い、財政健全化への道筋をつけるかが議論されている。消費増税を求めておいて、一方で公共事業の大盤振る舞いでは国民の理解は得られない。

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