シリア情勢 「正念場のオバマ外交」

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO59436960Y3A900C1PE8000/より、
日経新聞 社説 シリアの混迷を深めただけだ
2013/9/8付

 G20首脳会議はシリアへの軍事介入をめぐる立場の違いが際立つ結果に終わった。軍事行動への支持を求める米国に対し、開催国ロシアは国連安全保障理事会の決議なしでの攻撃に反対し、参加国の主張は二分された。
 国際社会の分裂はシリアの混迷を深めるだけだ。急がなければならないのは内戦の終結である。そのためには国際社会の結束が不可欠だ。主要国は溝を埋める努力をあきらめてはならない。
 会議では介入をめぐり激しいやりとりが交わされる一方、総括となる首脳宣言はシリア問題に触れなかった。急きょ設定された米ロ首脳会談も物別れに終わった。
 新興国を含む世界の首脳が一堂に集まる今回の会合は、打開策を見いだす格好の機会だった。それにもかかわらず、対立ばかりが浮き彫りになったのは残念だ。
 非人道的な化学兵器の使用は許されない。オバマ米大統領は「国際規範を守るために行動しなければならない」と主張する。だが、軍事介入への支持は広がらず、米議会の承認の行方も不透明だ。
 問題は介入の根拠だ。米国は独自調査でアサド政権が化学兵器を使ったと結論づけたという。しかし、公表されている報告書を見る限り、決定的な証拠と言い切れない。国際社会が納得する情報を示し、理解を得る努力が必要だ。現場に入った国連調査団の調査結果も待つべきだろう。
 ロシアや中国の責任も重い。国連安保理はアサド政権寄りの立場を取る両国の反対で、有効な手を打ててこなかった。軍事介入に反対するなら、対案を示す必要がある。米国と合意しながら、開催が遅れているシリア問題の国際会議の実現に率先して動くべきだ。
 安倍晋三首相はオバマ大統領との会談で、シリアやその周辺国への人道支援を拡大する方針を伝えた。シリア情勢は中東の原油に依存する日本にとっても、ひとごとではない。難民対策など地域の安定を取りもどすための支援を惜しむことがあってはならない。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130907/amr13090703120000-n1.htmより、
産経新聞【主張】G20とシリア 米国は関与へ理解広げよ
2013.9.7 03:12 (1/2ページ)

 サンクトペテルブルクで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会合で、シリア問題が重要テーマとなり、軍事介入の準備を進める米国と、これに反対するロシアが、駆け引きを繰り広げた。
 オバマ政権が武力行使に踏み切るに際しては、可能な限り多くの国から理解と支持を取り付けるべきだ。武力行使は世界の安全保障秩序を守るためのものだが、最終的に目指すのは和平の実現だ。そのためにも国際社会の後押しは欠かせない。
 シリアで化学兵器が使用されたことはほぼ間違いなく、これが国際規範に著しく反していることについての異論は聞かれない。米国は、アサド政権側が化学兵器を使ったとする証拠を提示したが、ロシアが強く反発している。さらなる証拠があれば、オバマ政権には可能な限りの開示を求めたい。
 G20会合を前に、米側の要請で急遽(きゅうきょ)、日米首脳会談が開催された。安倍晋三首相は「米国の強い責任感に敬意を表したい」と述べたが、軍事介入への「支持」には踏み込めなかった。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130907/amr13090703120000-n2.htmより、
2013.9.7 03:12 (2/2ページ)
 国連安保理の決議抜きでの武力行使となることへの批判もある。だが問題は、拒否権を持つロシアが、アサド政権を擁護していることだ。同調する中国とともに過去3度、拒否権を行使して、制裁警告などの決議案を葬ってきた。
 露中への説得をあきらめるべきではないが、安保理が機能しないなら、その枠外で紛争解決を模索せざるを得ない。安保理決議抜きの武力行使の是非をめぐり、G20でも意見は割れた。
 国際社会の分裂は内戦激化を許すことにもなる。
 オバマ政権は、武力行使は化学兵器使用に対する懲罰であり、数日で終わるとしているが、それで事態は改善するだろうか。一過性の攻撃ではなく、内戦終結に向けた努力の継続が求められる。
 オバマ政権はこれまで紛争への本格関与を避けてきた。だが、軍事介入の後には交渉のテーブルを用意するなど、和平の達成に力を尽くしてほしい。
 日本も同盟国として支援を惜しむべきではない。
 安倍首相はオバマ大統領に「難民や周辺国支援に一層、積極的な役割を果たしていく」と伝えた。難民が殺到しているヨルダンやトルコ政府とも連携し、和平に効果的な支援を行うべきだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130907k0000m070136000c.htmlより、
社説:シリア情勢と日本 攻撃の根拠が知りたい
毎日新聞 2013年09月07日 02時30分

 米国のオバマ政権が、化学兵器使用が疑われるシリアのアサド政権への軍事攻撃を検討する中、日本政府が難しい対応を迫られている。
 政府内では、米国が国連安全保障理事会の決議なしに攻撃に踏み切った場合、イランや北朝鮮など大量破壊兵器絡みで国際社会と対立する国々への影響も考慮して、米国の同盟国として支持や理解を表明すべきだという考え方が強い。しかし、化学兵器が使われたのは間違いないとみられるものの、使用したのがアサド政権なのか反体制側なのかという、肝心な点がはっきりしない。米国はまずアサド政権側が使用したと主張する明確な根拠を示してほしい。日本は米国に証拠提示を迫るべきだ。
 ロシアで開かれた主要20カ国・地域(G20)首脳会議にあわせ、安倍晋三首相は、オバマ大統領と会談し、米国が計画するシリア攻撃について「非人道的行為を食い止める責任感に敬意を表する」と述べ、シリア情勢改善に両国が緊密に連携することを確認した。踏み込むことを避けた首相の対応は、不明な点が多い現時点では妥当なものと言えよう。
 最大の不明点は、化学兵器を誰が使用したかだ。米政府の報告書では、8月21日のダマスカス郊外での化学兵器使用疑惑について「アサド政権が使用したと強く確信している」としているが、断定できるのか疑問だ。仏政府の報告書も同様だ。
 仮に化学兵器を使ったのが反体制側なら、「アサド政権に化学兵器使用を思いとどまらせる懲罰的攻撃」という米仏の攻撃の根拠は崩れる。
 2003年のイラク戦争で、当時の小泉純一郎政権は、安保理決議がない米英両軍の攻撃を支持し、復興支援で自衛隊を派遣したが、開戦の根拠となった大量破壊兵器は見つからなかった。欧米では反省から検証が行われたが、日本では戦争支持の経緯や責任はうやむやのままだ。
 シリア攻撃に近いケースとされる1999年のコソボ紛争では、安保理決議がないまま、アルバニア系住民の保護という人道的介入を理由に北大西洋条約機構(NATO)がユーゴスラビアを空爆した。日本は理解を示し、人道復興支援をした。しかし、人道的介入の考え方には、拡大解釈を生むなど批判もある。
 シリア情勢は、安保理決議にロシアと中国が反対し、安保理が機能しない中、国際社会が紛争にどう対処するかという重い課題を突きつけている。安保理決議なしの軍事攻撃が制裁の方法として妥当なものかは、なお議論が残るが、まずは最低限、明確な証拠の提示がなければ、攻撃の妥当性を判断しようがない。政府は、米国がしっかりとした根拠を示すよう外交努力を強めるべきだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130907ddm003030109000c.htmlより、
クローズアップ2013:転機迎えたG20 政治駆け引きに終始
毎日新聞 2013年09月07日 東京朝刊

 ロシアのサンクトペテルブルクで開かれていた主要20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)は、主要議題の経済問題に関する議論がかすみ、シリアを巡る政治的な駆け引きに終始して閉幕した。アサド政権が化学兵器を使用したとして軍事攻撃の準備を進める米国と、攻撃に真っ向から反対するロシアの対立が鮮明になる一方、主要8カ国首脳会議(G8サミット)に参加しない中国など新興国の存在感も増し、G20サミットが転機を迎えている。

 ◇新興国、ロシアと足並み
 「シリア情勢を話し合う機会が得られるよう何人かの参加者から要請された」。ロシアのプーチン大統領の開幕あいさつは、世界経済の安定を議論してきたG20サミットの変容を告げるものでもあった。
 日本政府関係者は当初、「G20では経済を取り上げ、政治的な問題については、議長国・ロシアと米国を中心に主に2国間会談で話し合う」と見ていた。しかし、プーチン大統領の仕切りでシリア問題が急きょ議題になった。
 「(シリア攻撃への賛否は)50対50ではない」。G20サミット閉幕後の記者会見でプーチン大統領は、自国をはじめ中国、インド、インドネシア、ブラジルなど軍事介入に「断固反対」している新興国など8カ国の国名を具体的に挙げ、米英仏など攻撃に賛成する国より“多数”であることを強調した。
 プーチン大統領はG20議長国としての立場を利用し、世界の金融・経済問題を議論するサミットで、シリア問題の討議を実現させた。議長は多様な意見をまとめるのが本来の役割だが、ロシアがシリアへの軍事介入阻止に向けた「対米包囲網」の構築にまい進した。大統領としては、G20内でシリア攻撃反対が主流であることを印象付け、「外交的成果」を上げたといえる。
 6月にG8首脳会議で、シリアのアサド政権を支持するロシアは完全に孤立した。しかし、G20の枠組みでは戦略的パートナーシップを強める中国や、中露を含む新興5カ国(BRICS)がシリア問題などでロシアと足並みをそろえた。プーチン大統領は欧米中心のG8より、G20のほうが「居心地がいい」(外交筋)と感じている。ロシアがめざす「多極化世界」を推進する意味でも、今後G20に軸足を置いた外交を展開していくものとみられる。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130907ddm003030109000c2.htmlより、
 一方、オバマ米大統領は来週、軍事介入の承認を議論する上下両院を念頭に置いた行動に終始した。サミットで対シリア軍事攻撃への支持を拡大させ、議会にアピールする狙いがあった。当初、予定になかった日本との首脳会談を設定。軍事攻撃への態度を明確にしていないメキシコや、攻撃に反対する中国やブラジルなどBRICS各国首脳とも積極的に会談し、説得工作を続けた。
 しかし、欧州連合(EU)のファンロンパウ欧州理事会常任議長(大統領)が安保理決議に基づかない攻撃に懸念を示すなど、足元の支持も揺らいだ。ロシアが主導した今回のサミットで、米国の「孤立感」が浮き彫りになったのが実情で、オバマ大統領は苦しい立場に追い込まれたともいえる。【サンクトペテルブルク田中洋之、ワシントン白戸圭一】

 ◇薄れる経済アピール
 「経済成長や途上国の開発問題について議論する貴重な機会だが、各国の関心がシリア問題に集中した」。メキシコのペニャニエト大統領は英BBCの取材に、財政健全化目標の設定や新興国の景気減速への対応などの経済問題について、G20サミットで十分議論できなかったとの認識を示した。
 G20サミットは、リーマン・ショック後の世界的な金融危機に対処するため、2008年11月に始まった。先進7カ国(G7)だけでなく、国際社会で存在感を高める中露やインドなどの新興国にも参加してもらうことで、より実効性のある対策作りを目指してきた。欧州債務危機への対応策として浮上した、国際通貨基金(IMF)の資金基盤の強化には、中国などが相次いで協力を表明するなど、一定の役割も果たした。
 ただ、先進・新興国の思惑の違いが表面化する場面も目立っている。
 背景には、金融危機の最悪期を脱し、「先進国経済が勢いづき始めた一方、多くの新興国が減速している」(ラガルドIMF専務理事)ことがある。
 特に、景気回復過程にある米国が、量的緩和政策の縮小を模索していることを受け、新興国からの投機マネー引き揚げの動きが広がっている。中国の習近平国家主席は「(先進国が)自国の利益を追う時は、(新興国など)他国の利益、発展にも気を配るべきだ」と指摘。株安、通貨安に見舞われた新興国は「先進国の急な政策変更が、世界経済を不安定化させている」との不満を募らせている。
 開幕前には、BRICS5カ国が非公式の首脳会議を開き、金融危機の際に外貨準備を融通し合う安全網の設立と、それぞれの拠出額を決定。IMFなど欧米主導の安全網と一線を画す姿勢を示した。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130907ddm003030109000c3.htmlより、
 今後も政治・外交を論議していくのか。先進国と新興国との隔たりは縮まるのか。金融危機克服という目標を失った今、G20サミットは大きな岐路に立っている。【サンクトペテルブルク坂井隆之、北京・井出晋平】

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年 9月 5 日(木)付
シリア情勢―G20は存在感を示せ

 米国がシリアへの軍事介入を検討するなか、主要20カ国・地域(G20)首脳会議がロシアで開かれる。
 死者11万人を超え、深刻化する一方のシリア情勢に打開の方向性を見いだすべく、議論を尽くしてほしい。
 米政権は、シリアのアサド政権が化学兵器で1400人以上の住民を殺害したことを、介入の根拠としている。
 一方、英政権は、議会の承認を得られず介入を断念した。米国とともに戦ったイラク戦争で、介入の大義とされた大量破壊兵器が見つからず、戦線も泥沼に陥った。英下院が退けたのは、このときの教訓が大きい。
 実際、米政権は議会の承認を得る方針に転じたものの、機密を理由に化学兵器使用の具体的な証拠を十分に示していない。アサド政権を後押ししてきたロシアや中国は「政権が化学兵器を使った証拠はない」と反論し、対立が続いている。
 化学兵器の使用が、人道上許されないのは言うまでもない。
 だが、現状では軍事介入について国際社会の納得を得られるとは言えまい。
 しかも、シリアでは反体制派が結束できず、イスラム過激派もふくめ、仲間うちの抗争が続く。周辺国の思惑も複雑に交錯している。
 米政権のいう限定的な攻撃を加えても、紛争が周辺国に拡大するなど、かえって事態の悪化につながる恐れが大きい。
 G20はほんらい経済協議の場だが、シリア情勢の混迷は中東原油のさらなる高値を招き、先進国と新興国とを問わず経済を直撃する。
 いまこそG20首脳は、これまでの対立を乗り越え、事態の打開に向けて足並みをそろえるべきである。とりわけ議長を務めるロシアのプーチン大統領の責任は大きい。
 国連は化学兵器使用の現地調査を終え、その分析に入っている。オバマ米大統領は介入の決定を急ぐのではなく、まずはその結果を待つべきだろう。
 安倍首相やドイツのメルケル首相は、国連安全保障理事会の場で中ロをふくむ合意を形成することの必要性を指摘している。その方向性は正しい。
 中ロの首脳も、米国の軍事介入の動きを批判するだけでは無責任だ。事態が少しでも好転するよう、建設的な役割を果たす必要がある。
 安倍首相は、プーチン大統領と5日に会談する。北方領土問題が中心議題だが、シリア情勢で米との協調に動くよう、強く働きかけるべきである。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130904/plc13090403160003-n1.htmより、
産経新聞【主張】日米首脳協議 シリア関与で同盟深めよ
2013.9.4 03:16 (1/2ページ)

 安倍晋三首相がオバマ米大統領とシリア情勢をめぐって電話協議し、日米が緊密に連携することを確認した。
 オバマ政権は、シリアのアサド政権が化学兵器を使って、多数の住民を殺傷したとして軍事介入を決断した。両首脳が「いかなる事態でも化学兵器の使用は人道上、許されない」との考えで一致したが当然の認識だ。
 国際社会はアサド政権に対し、断固とした態度を示すべきだ。軍事介入はそのための選択肢の一つではあろう。
 だが、武力行使には、ロシア、中国が激しく反発している。フランスとともに軍事介入に加わると表明していた英政権は、最終的に議会の反対で断念した。米政権は厳しい立場に立たされている。同盟国として日本が米国をどう支えていくのかが問われている。
 アサド政権の化学兵器使用に「強い確信」があるとする米政府報告書は、通信傍受記録などを根拠としており、具体的な証拠は含まれない。
 開示しにくい機密情報が含まれるとの事情は理解できるが、米政府には、より丁寧で納得のいく説明がほしい。
 イラク戦争では、米英両国などがイラクが所持しているとして開戦理由に掲げた大量破壊兵器が見つからなかった。
 安倍首相はオバマ氏に「安保理の決議を得る努力も継続してほしい」と要請した。武力行使を含め、アサド政権に対していかなる行動を起こすにせよ、米国は最後まで国際社会の合意形成をあきらめてはなるまい。安保理決議があれば日本も支援が容易になる。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130904/plc13090403160003-n2.htmより、
2013.9.4 03:16 (2/2ページ)
 アサド政権を擁護するロシアと中国は5日からサンクトペテルブルクで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合の場で、武力行使に反対する構えだ。
 安倍首相は、G20で予定される日露首脳会談でプーチン大統領を説得し、米露の歩み寄りを積極的に促すべきだ。
 米議会の承認が前提だが、オバマ政権は軍事介入すれば、それが限定的であれ、シリア情勢への関与を深めざるを得なくなる可能性がある。
 日本のできることは限定的だが、シリア難民の支援など、米国の要請にも耳を傾けながら連携することが重要だ。そのことが同盟を深化させる。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013090302000144.htmlより、
東京新聞【社説】シリア情勢 正念場のオバマ外交
2013年9月3日

 「化学兵器による人道的犯罪を座視していいのか」-国際社会に問いつつ、オバマ米大統領がシリア空爆を延期した。国際協調主義と人道的判断の両立は可能か、オバマ外交の正念場だ。
 「アサド政権側は、ロケット砲による化学兵器使用を三日前から準備し、二十一日未明にダマスカス近郊を攻撃した」「死者は子供四百二十六人を含む千四百二十九人」「反政府勢力側にはこうした攻撃能力はない」
 ダマスカス近郊で起きた化学兵器によるとされる大量殺人事件に関し米政府が先週末発表した報告書の一部だ。ケリー国務長官は「サリンの成分も検出された」とも発表した。
 十年前のイラク戦争に例えれば、米軍はこの段階で武力行使に踏み切ったことになろうか。オバマ大統領が空爆を延期し、議会の同意を求める判断を下した背景には、その際に明らかになった大量破壊兵器の不在、終戦までの九年間が招いた米国の威信低下の教訓があったに違いない。
 頼みの英国が戦列を離れ、国内外世論の支持もないなか、オバマ政権が当面の武力行使を見送ったことは理解できる。しかし、「化学兵器使用による大量住民殺害、内戦による十万人の死者という人道的犯罪を座視していいのか」というオバマ氏の問いは重く残る。
 冷戦終結後の国際協調ムードは、地域紛争解決のため、国連や米国を中心に人道的介入の可能性を探る動きを生んだ。しかし、イスラム過激派の台頭、米中枢同時テロ後の米国一極支配を経て、国際社会は新たな国際協調下の紛争解決法を見いだせないままだ。
 現段階での武力行使は、明らかにオバマ大統領が否定していた米国による単独介入に逆戻りしかねない危険性をかかえる。
 今週五日からロシアで開かれる二十カ国・地域(G20)首脳会合では、シリア問題が議題に浮上するのは必至の情勢だ。開催国ロシアは、中国と共にアサド政権に強い影響力を持っている。自国の権益保護だけを思うのでなければ、人道的な惨劇回避に向かって、アサド政権を説得する責務があろう。また、オバマ政権には、その妥協を引き出す外交力こそ求められよう。
 オバマ政権はまだ単独での武力行使を排除していない。伝家の宝刀は、抜く前の抑止力にこそ真価がある。あくまで他の外交手段が尽きた最後の手だてであることを再度確認したい。

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