敬老の日に考える 「ただそこにいるだけで」

http://sankei.jp.msn.com/life/news/130916/trd13091603170002-n1.htmより、
産経新聞【主張】敬老の日 「杵柄」で日本の支え手に
2013.9.16 03:16

 高齢者が現役世代を、そして日本を支えていくという「逆転の発想」が求められる時代になったとはいえまいか。
 総務省が公表した3月末時点の人口動態調査によれば、65歳以上の高齢者が全人口の25%近くを占め、15~64歳の勤労人口の割合(62・47%)は過去最低となった。
 これまでは高齢者問題といえば年金や医療、介護など、「高齢者を支える」視点で語られることが多かった。もちろん支えを必要とする人には手厚い施策が欠かせないが、勤労人口の減少と社会保障費の膨張で、高齢者を一律に支えられる側と見る意識は根本的な転換を余儀なくされている。
 元気な高齢者には可能な範囲内で、労働や社会活動に参加できるような社会基盤を構築していかねばならない。政府の社会保障制度改革国民会議の報告書も「働く意欲のあるすべての人が働ける社会を目指し、支える側を増やすことが必要」と明確に示している。
 高齢者の元気は間違いなく社会に活力をもたらす。この5月に三浦雄一郎さんが史上最高齢の80歳7カ月でエベレスト登頂に成功した快挙に、国内が沸き返った例を見てもそれは明らかだろう。闘病とリハビリを続けていた文楽太夫の竹本住大夫さんも今年、88歳での舞台復帰を果たした。いつまでも現役、いや「働き盛り」であり続ける姿に感服するばかりだ。
 市井でも意欲的に活動する高齢者は多い。京都府内のニュータウンでは、平均年齢約70歳というメンバーが地域住民向けのケーブルテレビを自主放送している。現役時代に培った知識などを生かしているといい、独居が増えた町を「シルバーパワーで元気にしたい」との意気込みも頼もしい。
 高齢者に「支え手」となってもらえるよう、電子メディアを使った支援方法も研究されている。例えば日曜大工が苦手、家庭料理が作れないといった若い世代を、それらが得意な高齢者が手助けできるようになれば、高齢者の生きがいや収入増につながり、世代間の交流も促進されよう。
 わが国にはお年寄りの経験や技能が発揮されることを称(たた)えていう素晴らしい慣用句がある。「昔取った杵柄(きねづか)」だ。「敬老の日」のきょう、ご長寿の方々には心からお祝いを申し上げるとともに、皆さんの「杵柄」が十分に活用されることを願ってやまない。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013091602000140.htmlより、
東京新聞【社説】敬老の日に考える ただそこにいるだけで
2013年9月16日

 綿の実の毛玉の中には、小さな種が潜んでいます。高齢社会。正直、重たいイメージですが、今を生き抜く力や知恵も、たくさん詰まっているようです。
 チヨちゃんがそこに座ると、縁側に、ひだまりができるようだと言われます。
 チヨちゃんこと、戸田チヨ子さん(86)は、福島県いわき市の応急仮設住宅団地で一人暮らしをしています。本来の住所は、福島第一原発に近い広野町。避難指示は解除になりました。しかしまだ生活環境が整わず、わが家には帰れません。
 チヨちゃんは、手芸が大好きです。端切れを縫って袋物やアクセサリーを作ったり、新聞のチラシを折って壁飾りに仕立てたり…。一番楽しい時間です。そんなチヨちゃんに、ある日、仕事が舞い込みました。

◆希望の種プロジェクト
 発注元は「ザ・ピープル」。いわき市小名浜地区で災害ボランティアセンターを運営するNPO法人です。ピープルは去年から、原発事故の風評被害で耕作ができなくなった田んぼや畑に綿を植え、農地からふるさとの再生を試みる「希望の種」プロジェクトを進めています。
 食べ物ではない農産物を育ててみようと、農家を励まし、ボランティアの力を借りて有機栽培のコットンを収穫し、人形やTシャツを作って売っています。この秋は、三十カ所、計三ヘクタールの畑から約一トンの収穫を見込んでいます。
 チヨちゃんの仕事は、綿の実を詰めた人形を作ること。
 「ちょっこほっこ(簡単)にはできません。でもがんばります。魂をこめて作っています」
 手仕事に取り組むチヨちゃんの小さな丸い背中には、威厳のような何かが漂います。
 チヨちゃんは、材料の綿の中から見つけた種を鉢にまき、軒先で育てています。

◆抱きしめてあげたいの
 「綿の実ができたら、抱きしめてあげたいの」と、童女のようにはにかみます。ただそこにいるだけで周りを元気にする人です。チヨちゃんの四畳半には、仮設仲間やボランティアの訪問と、そして笑いが絶えません。
 いわき市内の綿畑を見に行きました。専業農家の伊藤登志子さん(72)が丹精込めた畑です。
 広さ約五十アール。元は水田でした。帰化植物や竹に覆われ、荒れ果てた田んぼを懸命に耕して、温室で育てた綿の苗を植えました。整然とよみがえった綿畑には、オクラのような黄色い花が咲き、来月末には初めての収穫です。
 「ありがたいよお、こうやって仕事ができて。この繰り返しが、幸せというものなんだ」
 伊藤さんの額に、大粒の汗が光ります。
 「チヨちゃんの笑顔、登志子さんの汗。本当に頭が下がります」
と、ザ・ピープル事務局長の甘南備(かんなび)かほるさん(70)。そう言うご自身も、世間的には「高齢者」と呼ばれる世代なのですが。
 福島の未来をこの人たちが育てています。
 つい先日、冒険家の三浦雄一郎さんと、食卓を囲む機会がありました。一キロのステーキをぺろりと平らげる健啖(けんたん)ぶりは有名です。
 その折に「三浦さんにとって、年齢とは何ですか」と尋ねると、「自分自身の歴史です」と即座に答えてくれました。八十歳を過ぎてエベレストの登頂を成し遂げた“超人”だけの言葉でしょうか。多分、そうではありません。
 子どもたちが未来をたくさん持っているように、お年寄りは過去を豊富に持っています。どちらも同じ時間です。
 世の中がこぞって目先の利益を追い求め、あたふたしている今だから、長い時間を丁寧に紡いで織り上げた高齢者の半生そのものが、貴重な資産になるはずです。
 戦争や公害の語り部だけではありません。そういえば五十六年ぶりに、東京五輪が開かれることになりました。新しい五輪を開くには、古い五輪の記録を、ひもとかなければなりません。
 食堂のメニュー一つを作るにも、先人が残した大学ノートを引っ張り出したりするのでしょう。

◆物語を聞いてみよう
 きょう敬老の日。おじいちゃん、おばあちゃんの肩たたきをするのもいいのですが、夜眠る前に物語をせがんでみませんか。
 綿のような記憶の中から、未来の種が出てくるはず。希望の種はきっと見つかるはずだから。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130916k0000m070125000c.htmlより、
社説:地方移住型の特養 検討は慎重を期しつつ
毎日新聞 2013年09月16日 02時32分

 東京など大都市圏で急増する高齢者の介護は社会保障の大きな課題のひとつだ。東京都杉並区は静岡県南伊豆町に特別養護老人ホームを整備し、区民を優先入所させる計画を進めている。これをきっかけに「地方移住型特養」を制度的に後押しするかをめぐり議論が起きている。
 自治体間協力で特養の入所待ち問題に対処するのはひとつの考えだが、介護は住み慣れた区域で行うという原則を曲げてはならない。国、地方は運用基準などについて慎重を期しつつ検討を進めてほしい。
 杉並区の計画は自治体交流の実績もあり温暖な南伊豆町で区立施設の跡地に定員60〜80人の特養ホームを整備し、区と地元の希望者を優先し入所させるものだ。政府の産業競争力会議が注目し、全国的に応用できるかどうか、厚生労働省の有識者会議で検討している。
 東京など大都市圏では今後75歳以上の高齢者が急増する。東京都内の特養などの入所待機者はすでに4万人を超し、新宿区の特養は「1000人待ち」の深刻な状態にある。
 人口減少社会への備えとして自治体がさまざまな分野で連携する枠組みが現在、検討されている。特養運営は雇用などにもつながるため、地方のいくつかの自治体は入所の受け皿として名乗りをあげている。特養ホーム入所などのため移住した高齢者には移住元の自治体が引き続き財政負担する特例がある。これを拡充するかなどが論点となっている。
 だが、「本人の意思に反して遠隔地に移住させられないか」などの懸念や慎重論は根強い。特養は寝たきりや認知症など、常に介護が必要な高齢者が対象だ。厚労省は介護、医療、生活支援を一体化させる「地域包括ケアシステム」を推進している。住み慣れた地域での福祉サービスを確保する努力が不可欠であり、地方入所に過大な期待を抱くことはこうした流れを妨げかねない。
 一方で多くの都内の高齢者がすでに「移住」している実態もある。毎日新聞の調査によると4月現在、東京23区だけで1万5000人近い高齢者が住んでいた自治体以外の各種施設に入所している。地方移住型特養についても基準を示したうえで無原則な運営に歯止めをかけていくのがむしろ現実的な対応ではないか。
 杉並区は計画を介護需要に対応する選択肢のひとつと位置づけており、本人の意思はもちろん、家族との連絡の度合いなどを重視して入所者選定に慎重を期すと説明している。移住先の自治体との信頼関係も含め、こうした点は重要な要素となる。住民理解を得るため、具体化にあたっては運営基準などの透明性確保を十分にこころがけてほしい。

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