JR北海道 「鉄道事業者の資格なし」

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO60364950Z20C13A9PE8000/より、
日経新聞 社説 「安全優先」の組織に立て直せ
2013/9/29付

 タガのゆるみは深刻だ。北海道旅客鉄道(JR北海道)でレールの点検や保守のずさんさが次々に明らかになった。交通機関として何より優先される運行の安全確保が、なぜおろそかになったのか。背景を究明し、再発防止へ早急に手を打たなければならない。
 JR北海道では列車の出火や脱線事故が絶えなかった。19日に函館線で起きた貨物列車脱線事故の調査を機に、レールの幅などの異常を放置してきた箇所がこれまでに267にのぼることがわかった。特急列車が最高時速130キロで走る区間も含まれていた。
 レールの異常の多くは30年近く、そのままにしてきた可能性があることも判明している。旧国鉄時代に設置した古いレールの点検に、誤って新しい整備基準を使っていたという。乗客の命を預かる鉄道会社として、あまりにもお粗末な管理体制ではないか。
 JR北海道は営業範囲の広さや積雪対策で列車運行のコストが重く、営業損益は赤字が続いている。このため安全対策の設備投資が不十分になったとの指摘がある。人員の確保も手薄になり、保守点検の技術が若手に受け継がれていないともいわれる。
 だが問題は、そうした資金難などの点だけではあるまい。同社ではレールの問題に先立ち、運転士が操作ミスを隠すため自動列車停止装置(ATS)をハンマーで壊していたことも明らかになっている。問われるのは一人ひとりが安全への意識をしっかり持つ組織をつくれていたかどうかだ。
 幹部の発言から本社が保守点検の進め方や検査結果を掌握できていない実態が浮かび上がっている。情報共有のあり方など組織を一から見直す必要がある。
 JR北海道は鉄道建設・運輸施設整備支援機構が株主で政府は監督責任がある。再発防止へ外部の人材を積極的に活用すべきだ。2015年度末には同社が運行する北海道新幹線の新青森―新函館(仮称)間が開業する。安全管理の立て直しに時間の余裕はない。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013092502000133.htmlより、
東京新聞【社説】JR北海道 許されぬ無責任体質だ
2013年9月25日

  JR北海道の無責任体質には言葉を失う。道内九十七カ所でレールの異常を把握しながら放置していた実態が露呈した。人命軽視も甚だしい。公共交通機関としての当事者能力を疑わざるを得ない。
 函館線大沼駅で十九日に発生した貨物列車脱線事故に絡み、国土交通省の指示を受けて調べた結果だ。すべて補修を終えたとはいえ、安全運行の大前提となる保線の不備が全社的に見過ごされていた形といえる。
 脱線現場ではレール幅が社内規定の許容値より広がっていた。昨年十月の検査で異常に気づきながら一年近く補修していなかった。
 JR北海道は二十一日にこの現場をはじめ、追い越される列車が待機する副線で九カ所の不備があったとのみ発表していた。しかし、翌二十二日になって一気に八十八カ所の不備を追加した。
 副線では四十八カ所に増え、さらに、最高速度百三十キロの特急列車が走る区間をふくめ本線で四十九カ所が発覚した。レール幅の広がりに加え、左右のレールの高さが違ったり、波打ったようにゆがんだりしていた事例があった。
 異常が確認されたら十五日以内に補修する決まりなのに、いずれも長期間ほったらかしだったというから言語道断だ。人命にかかわる重大事故を招きかねないという危機意識がなぜ希薄なのか。
 二〇一一年五月には石勝線で特急が脱線炎上し、七十九人が負傷する事故が起きた。当時の社長は「お客さまの安全を最優先に」と訴える遺書を残して自殺した。JR北海道はその遺志を継ぎ、信頼回復を誓ったはずではないか。
 それなのに列車から出火したり、運転士がミスを隠すため自動列車停止装置を壊したりと由々しき事態が止まらない。レールの不備の蔓延(まんえん)と無縁ではないだろう。
 石勝線の事故以来となる事業改善命令を視野に、国交省は特別保安監査を進めている。保線の在り方にとどまらず、経営状態や組織体制、技術レベル、社内モラルまで洗いざらい検証すべきだ。
 国鉄末期に新規採用を控えたため、世代間で技術や意識が断絶している。赤字経営で人手や予算が不足している。そんな構造的な問題が背景事情として指摘されている。
 安全第一の鉄則に照らせば、すべて言い訳にすぎない。一五年度に開業予定の新幹線はもとより、在来線の運行にさえ大きな不安と深い不信がつきまとう。もはや根底から会社を立て直すべきだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130925k0000m070132000c.htmlより、
社説:JR北海道 鉄道事業者の資格なし
毎日新聞 2013年09月25日 02時30分

 JR北海道が、補修が必要なレール97カ所を放置していたことが発覚した。うち49カ所は乗客を乗せた客車が走行する本線だった。
 乗客の命や安全を何と心得ているのか。特定の担当者や部署の怠慢に責任を押しつけるわけにはいかない。JR北海道の組織的な欠陥と見るべきだ。現状では公共交通を担う鉄道事業者としての資格に欠ける。そう指摘せざるを得ない。
 発端は、19日に起きた貨物列車の脱線事故だった。レール幅の補修が放置されていたことを機に、レール異常の点検を20日から始めた。そして保線管理の責任者は21日に記者会見し、脱線現場を含め9カ所のレール補修の放置があったと公表した。ただし、いずれも通過列車の少ない駅構内の副本線だった。
 その際、「本線は本社と保線現場でダブルチェックしている。新たな点検は必要ない」との見解を示したが、国土交通省の指示で緊急点検して今回の事態が判明した。
 22日になって野島誠社長が会見し、「手が回らず補修を後回しにして失念したようだ」と放置の理由を語ったが、あいまいな説明に終始した。2日連続で釈明に追われた経緯も含め、組織としてあまりにお粗末だ。多くの乗客を日々乗せている責任感や真剣さも伝わってこない。体制の抜本的な改革と、安全意識の徹底が必要だ。
 異なる目でチェックを繰り返すのが、安全を第一とする公共交通機関の鉄則だ。だが、本社と現場との連携が不十分で、鉄則が守られていなかった可能性が高い。また、補修の放置が特定の部署に集中しているとの指摘も出ている。
 ならば、何がその原因なのか。マニュアルなどの不備で全社的な統一基準の下で管理がされていなかったのか。チームワークや意思の疎通を含めた組織の風通しに理由があるのか。徹底的な検証が求められる。
 24日も根室線の普通列車で白煙騒ぎがあった。現在、国交省が特別保安監査に入っている。運輸安全委員会も貨物列車の脱線事故を調査中だ。国交省はこうした作業を通じてJR北海道に徹底的にメスを入れ、解体的な出直しを促すべきだ。
 菅義偉官房長官は24日、「極めて悪質性がある。組織の体質的な問題だ」と述べた。JR会社法で国交相はJR北海道の事業認可権を持ち、社長人事は閣議了解事項になっている。政府も、国交省を通じ安全の徹底に目を光らせるべきだ。
 安全の根幹に関わる今回のケースはJR各社にとってもイメージダウンだ。既にJR東日本が技術支援をしているが、グループとして安全を支える方策を検討したらどうか。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130925ddm003040114000c.htmlより、
クローズアップ2013:JR北、異常放置 特異な企業体質、背景 補助金漬け、責任あいまい 採用抑制、中核世代少なく
毎日新聞 2013年09月25日 東京朝刊

 JR北海道がレール幅の拡大など多数の異常を放置した問題では、その後も次々と検査体制や記録の不備が発覚している。79人が負傷した石勝(せきしょう)線の特急脱線炎上事故(2011年5月)以降トラブルが絶えず、「安全軽視」と言える企業体質がなぜ生じたのか。その背景を探る。【遠藤修平、久野華代、伊藤直孝、松谷譲二】

 「道外から訪れる多くの方々の信頼も大きく損なう危機的な事態だ」。北海道の高橋はるみ知事は24日、開会中の道議会本会議で、JR北海道がレール異常を放置していた問題に言及し、再発防止策は「外部の視点」を踏まえるべきだとの認識を示した。菅義偉官房長官は同日午前の記者会見で「事故が頻繁で、(異常が)分かって対処しないのは悪質性がある。組織、体質的な問題もあるのではないか」と批判した。
 旧国鉄が旅客6社・貨物1社に分割・民営化されたのは1987年。このうちJR北海道は他社に比べ過疎地域を走る路線が多く、除雪などに膨大な経費がかかり、経営基盤は弱い。このため、国は経営安定基金という「持参金」をもたせ、その運用益で赤字を穴埋めしてきた。
 ただ、その基金も近年の金利低下の影響を受け運用益が減少。一時は上場も目指したが果たせず、厳しい経営が続いていた。鉄道事業収入は96年度の800億円をピークに減少している。基金投入という第三セクター的な経営に慣れきって、責任の所在があいまいになっていると指摘する関係者もいる。ほぼ同じ営業キロ数のJR九州は営業黒字(2012年度末現在)を確保しており対照的だ。
 赤字経営は人材確保にも影響し、1980年代に採用を大幅に抑制。5月現在で社員約7000人のうち最も多い50代は37・7%。次いで民営化後に入社した20代が27・4%。現場の責任者になるべき40代は9・5%と極端に少ない状況が続いている。国土交通省関係者は「ベテランの職員がどんどん定年退職している。その一方で、採用すべき若手の人員は経営難で抑えているので、技術が伝承されにくい」とJR北海道の人材育成が行き届いていない現状を指摘する。
 だが、「いびつな年齢構成は北海道に限った話ではない。事故多発は別に固有の問題があるのではないか」(JR他社の幹部)との声もあり、「なぜ異常が放置されたのか」の答えはまだ見えてこない。JR北海道の豊田誠・鉄道事業本部長は24日の記者会見で、この問いに「いまだにお話しできるところまで状況がつかめていない」と述べることしかできなかった。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130925ddm003040114000c2.htmlより、
 2016年春には北海道新幹線・新青森−新函館(仮称)間が開業予定だが、安全管理体制への信頼は完全に失われた。JR北海道はこれまで、高速道路や航空会社との旅客争奪戦に勝ち抜くため高速化も進め、札幌と道内主要都市を結ぶ路線に新型車両を導入。最高時速は国鉄時代の100キロ程度から110〜130キロに伸ばした。
 しかし、国交省関係者は「このままではとてもまかせられない。これだけメンテナンスがいいかげんなのだから、開業なんてムリな話だ」と頭を抱える。

 ◇車両重く、保守にコスト
 鉄道のレールは列車の重量や振動、遠心力により横に広がったりするため、各鉄道事業者は整備基準値を定めている。JR北海道の場合、レール幅が規格(1067ミリ)に比べて直線で14ミリ、曲線で19ミリを超えて広がった場合、15日以内に補修するよう内規で定めている。旧国鉄時代の基準を踏襲したもので、JR各社にほぼ共通する内容だ。
 大都市圏の在来線の場合、コンクリート製の枕木にレールが固定されている。一方で、特急の走行路線を除くJR北海道の一部の路線には、盛り土に木製の枕木を並べ、クギでレールを固定しているだけの区間もある。JR北は脱線の危険が生まれる基準超過は理論上「43ミリ」としているが、「木製はコンクリート製に比べてゆがみが生じやすく、20ミリ超で脱線のおそれがある」との指摘もある。
 また、JR北が使っているディーゼル車の中には、電化された路線を走るJR各社の最新車両に比べ重量が3倍以上のものもあり、レールや枕木が傷みやすいため、大都市部に比べてメンテナンス費用がかかるという。
 だが、ある関係者は「JR北海道は民営化後も安全軽視の企業風土の下、レールや枕木の老朽化を長年放置し、メンテナンスに十分な費用を充ててこなかった」といい、「北海道内唯一の鉄道会社であるため、過信、慢心があったことは否定できない」と批判する。そのうえで「問題があるのに見て見ぬふりをし、JR側に全て任せきりにしてきた国の責任も重い」と指摘した。

 ◇鉄道事業者に対する過去の事業改善命令
01年 7月 福井県内で2回にわたって起きた列車正面衝突事故で、施設保守などの安全管理が適切になされていないとして、京福電鉄(京都市)に自動列車停止装置(ATS)の緊急整備などを命令
03年12月 JR中央線や京浜東北線でトラブルが相次ぎ、「工事や安全上の管理体制がずさん。重大な事故につながる恐れもある」として、JR東日本に改善措置を命令

http://mainichi.jp/opinion/news/20130925ddm003040114000c3.htmlより、
04年 8月 山陽新幹線などのトンネルや橋の検査記録を改ざんする虚偽記載などが発覚。JR西日本に定期検査の管理体制改善や法令順守の徹底を命令
06年11月 銚子電鉄(千葉県)で、列車が通過中に踏切の遮断機が上がり始めたり、線路の枕木の腐食などが相次いで見つかり、修繕の早期実施などを命令
08年 2月 長崎県南島原市の踏切事故で、故障した踏切の制御装置を約1年間修理していなかった上、装置を遮断する改造などをしていたため、島原鉄道に改善を命令
11年 6月 79人が負傷したJR石勝線の特急脱線炎上事故で、異常時の避難誘導マニュアルが複数あったため、整合性が取れるように見直すことなどをJR北海道に命令

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