「限定正社員」 悪いところ取りは困る

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO60196670W3A920C1EA1000/より、
日経新聞 社説 「限定正社員」を意義ある制度にするには
2013/9/26付

 勤務地や職務が限られたり、労働時間が短かったりする「限定正社員」を普及させようという動きがある。規制改革会議の答申を受けて今月、厚生労働省が有識者懇談会を設けて議論が始まった。
 限定正社員という雇用形態は、これまでも勤務地を特定の事業所に限った社員などの例がある。
 一般の正社員は会社に命じられた勤務地や職務で働き、残業もある。これに対して限定正社員は勤務地、職務などのどれかが「限定」されるため、正社員と同じ賃金は見込みにくい。しかし、契約期間が制限される非正規社員と比べ、処遇や雇用は安定的になる。
 正社員ほどの待遇ではなくても限定正社員という器は非正規社員の処遇改善に役立つ。単身赴任や長時間労働を強いられる正社員のあり方を見直す契機にもなる。働き方が多様化するなか、限定正社員は選択肢を広げる意義がある。
 ただし、普及のために留意しなければならないことがある。雇用保障をめぐる点だ。
 一般の正社員は解雇に厳しい制限があるが、限定正社員は雇用保障が緩いとされている。事業所の閉鎖などで勤務地が消滅したり、その職種がなくなったりした場合、解雇がやむを得ない場合もあるとされる。経団連はその点を法律に明記するよう求めている。
 これに対し連合は、限定正社員が、解雇されやすい仕組みを広げるとして強く反発している。
 解雇に道を開く規定を法で定めれば、働く人の不安が増すのは当然だ。労働組合側は一般の正社員が限定正社員に切り替えられ、雇用が不安定になると警戒する。
 このため限定正社員を普及させるには、解雇ルールを法律で定めるのではなく、各企業がそれぞれこの雇用形態の制度をつくっていくことが現実的だ。賃金をはじめとする労働条件や職務の決め方などを、労使でよく話し合ってもらいたい。労組側も限定正社員を、非正規社員の処遇改善の手段として前向きにとらえるべきだ。
 限定正社員になる人は契約を結ぶ前に、賃金や雇用保障などの説明を十分に受けられるようにしなければならない。有識者懇談会はその手立てを検討してほしい。
 限定正社員が雇用契約を打ち切られる場合に備え、再就職支援も重要だ。職業訓練や職業紹介を民間開放で充実させるなど、ほかの仕事に移りやすい労働市場づくりに並行して取り組む必要がある。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130606k0000m070116000c.htmlより、
社説:正社員改革 多様な働き方への課題
毎日新聞 2013年(最終更新 06月06日 02時55分)

 雇用には問題が多い。給料が低く生活が不安定な非正規雇用が増え、若い世代が結婚や子育てできない原因になっている。その一方で長時間労働を強いられ疲弊している正社員は多い。経営側にとっては解雇規制が厳しいため非正規雇用を増やさざるを得ず、その分正社員がしわ寄せを受けているという構図だ。
 正社員か非正規かという硬直した現状を変えるため、政府の規制改革会議が打ち出したのが「限定正社員(ジョブ型正社員)」だ。何を「限定」するのかと言うと、勤務地や労働時間や職務の内容だ。日本の雇用制度は一般的に人事権の裁量が広く認められ、いったん正社員として採用すると勤務地も仕事の内容も量も会社側が決められる。合理的な理由があれば賃金や退職金の変更もできる。その代わり労働者は安易に解雇されないよう守られている。
 「限定正社員」は会社側の人事権の裁量を小さくする一方で解雇規制を一部緩めるもので、諸外国の雇用制度はむしろこちらに近い。国内でも流通業などでは既に導入しているが明確なルールはない。職務を限定し、その職務がなくなれば解雇できることにして非正規雇用から正社員への転換を企業に促すねらいがある。正社員の中にも自分に合った仕事を決められた勤務時間だけ行うことを望む人は多いかもしれない。子育てが必要な期間は勤務時間を限定したり、親の介護が必要な場合には勤務先を選べたりすることで離職せずにすむ人も大勢出てくるだろう。
 限られた職務に専念できることで自らの専門性を高め、それを客観的に評価する仕組みを労働市場に作ることができれば、雇用の流動性を高めることにもつながる。より付加価値の高い商品やサービスを開発するためには、なんでも広く薄くできる社員がたくさんいるよりも、職務や分野ごとに専門性の高い社員がいることを求める企業は増えていくのではないか。
 もちろん、懸念がないわけではない。安易な解雇や賃金カットに利用され、職場での差別がはびこることを心配する声は多い。職務に着目した雇用制度を整備することが目的であり、現に職務があるのに解雇するようなことは許してはならない。
 生活を大事にしながら多様で柔軟な働き方を実現するためには、労働者側の意向を尊重した仕組みが必要だ。子育てや介護をしている期間は限定正社員となり、それが一段落したら正社員に戻れるような柔軟な運用も可能にすべきだ。職務の内容や能力に応じた人事・処遇制度は経営者にも労働者にも恩恵をもたらすものでなくてはならない。緻密な制度設計と労使の信頼が必要だ。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013052202000142.htmlより、
東京新聞【社説】限定正社員 悪いところ取りは困る
2013年5月22日

 政府が成長戦略に盛り込む雇用改革で、正社員に準じた「限定正社員」を導入する議論が進んでいる。勤務地や職種を限定した正社員のイメージだが「解雇しやすい正社員」が広まらないか心配だ。
 正社員は給料が高いうえ仕事の生産性が低くても解雇できない。だから非正規雇用が増える。正社員を解雇しやすくしたり、転職を後押しすれば、経済成長に結びつく-。
 政府の産業競争力会議や規制改革会議の議論を要約すれば、こういうことだろう。
 経済最優先、働く人より企業経営者重視の姿勢が鮮明なのである。当初は、解雇規制を緩めて企業が金銭解決で労働者を解雇できる方策を検討していた。しかし、国民や野党の反発が強く、政府・与党は参院選で不利になるのを恐れ、先送りを決めた。
 残った具体策が、正社員と非正規の中間ともいえる「限定正社員」の普及である。
 勤務地や職種を限定する代わりに、正社員より賃金は安い。こういった制度自体は、すでに多くの企業が取り入れているものだ。正社員は不本意な転勤や長時間の残業を拒めず、子育てや介護との両立はむずかしいので、働く側からすれば、限定正社員に一定の利点は見いだせるかもしれない。
 だが、経営側は正社員と同様の雇用保障では導入するメリットは少ないため、経団連は従来の正社員よりも解雇しやすい規定を要望している。例えば、製造業が工場を閉じるような場合には、工場従業員を自動的に解雇できる、といったイメージである。要するに、正社員でありながら賃金は安く、解雇はされやすいという「悪いところ取り」になりかねない。
 こうした働き方がいったん始まると、徐々に拡大していく可能性は否定できない。それは非正規労働が、今では労働者の35%にまで広まった事実から明らかである。政府は、限定正社員の就業規則のモデルを来年度以降に決める方向だが、企業にだけ都合よいルールにならないよう歯止めが必要だ。
 確かに、企業に雇用調整助成金を支払って余剰人員まで抱え込ませている現状は、競争力をそいでいる面がある。必要なのは、労働力が不足している分野を成長産業に育て、転職のための教育訓練に力を入れ、労働力の移動を促していくことだ。
 働く人を単にコストとしかみない経営の片棒を担ぐような成長戦略なら作らない方がましである。

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