復興法人税廃止 「出発点が間違っている」

http://mainichi.jp/opinion/news/20131001k0000m070106000c.htmlより、
社説:経済対策 財政規律どこへ行った
毎日新聞 2013年10月01日 02時33分

 来年4月の消費増税の影響を緩和するため、安倍晋三政権が検討してきた経済対策がまとまった。企業向け政策減税や復興特別法人税の廃止前倒し、公共事業、低所得者対策が柱だ。増税後の来年4〜6月に、消費が大きく冷え込む「反動減」が見込まれる。その影響を穴埋めし、さらに経済の底上げを狙って経済対策は5兆円を超す規模となる。
 増税前の1〜3月には駆け込み需要があり、景気は一時的に急伸する見込みだ。反動減はそれとならして考えるべきだ。反動減だけに着目して財政出動を膨らますのは、財政規律が緩んでいるとしか思えない。
 安倍政権は発足直後に編成した2012年度補正予算と13年度当初予算で、公共事業を大幅に増やした。アベノミクスの第一の矢の「大胆な金融緩和」が効果を出すのに時間がかかるため、第二の矢の「機動的な財政出動」で、即効性のある公共事業にお金をつぎ込み、景気を上向かせる狙いだった。
 今回の経済対策で、年末に編成する13年度補正予算案と14年度当初予算案でも公共事業に傾注する安倍政権の姿勢が鮮明になった。防災や減災に加え、東京五輪を見据えた物流ネットワークの整備も公共事業を拡大する旗印になる。だが、公共事業を全国にばらまく施策は景気への波及効果に乏しいことは明白だ。
 1990年代、バブル崩壊後の経済対策で公共事業を拡大し、財政が危機的状況となる原因となった。いま日本経済は回復に向け動いている。財政出動のアクセルを緩め、第三の矢の「成長戦略」に今まで以上に重点を移すべきだ。
 経済対策には、成長戦略の具体策も盛り込まれたが、企業への減税策が中心となった。生産性の高い設備への投資を優遇する税制や事業再編を促進する税制を設ける。賃金を増やすよう仕向ける税制優遇策も拡大する。ただ、これで投資や賃上げをどれだけ引き出せるかは不透明だ。幅広い企業に減税の恩恵を及ぼそうとして税制も複雑になってしまう。
 東日本大震災の復興財源に充てる復興特別法人税の1年前倒しの廃止も固まったが、税収9000億円分の穴が開く。成長戦略の目玉が少なく、財政を後回しにして減税に走りすぎている感は否めない。
 企業は経費削減や経済環境の好転で全体として業績回復が進む。それでも経営者が賃上げや投資に慎重なのは、売上高がなかなか伸びないからだ。企業が新たな分野に投資できるよう政府が成長戦略を加速し、農業、保育・介護などで規制緩和の成果を見せることがどうしても必要だ。雇用拡大につながる柔軟な制度への取り組みも大事になる。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013092602000141.htmlより、
東京新聞【社説】復興法人税問題 出発点が間違っている
2013年9月26日

 安倍晋三首相が復興法人税を一年前倒しで廃止する検討を指示した。消費増税した場合に景気腰折れを防ぐ経済対策の一つという。弥縫(びほう)策を重ねるよりも消費増税を先送りすれば済む話ではないか。
 法人税に上乗せした復興特別税は昨年度から三年間の時限措置だが、首相は本年度末で廃止する意向を示し「(法人税減税で)企業収益拡大を図り、賃金増や雇用増につながる景気の好循環を生み出す」と説明した。廃止による減税規模は九千億円程度。公共事業の積み増しや企業向けの投資減税と合わせ、総額五兆円に上る経済対策の柱という位置付けだそうだ。
 おかしな話である。消費税を3%引き上げると国民負担は八兆円も増える。国内総生産(GDP)の六割を占める個人消費が大きく落ち込む見通しなのだから、法人税を数%引き下げたところで企業は雇用を増やしたり賃金を上げるだろうか。積極的に設備投資をするだろうか。
 そもそも五兆円もの経済対策が必要になるなら、それは消費増税法の景気条項で定めた、引き上げの条件である「経済の好転」とまではいえないはずだ。腰折れの懸念がある状況では増税をすべきではないのである。安倍首相はデフレ脱却を最優先に掲げるならば、消費増税を先送りすべきだろう。
 この「出発点」で誤った方向に向かっているから、泥縄式に数字合わせのような対策づくりに追われている。3%の引き上げは経済へのショックが大きすぎて一九九七年の消費増税ショックの再現になりかねない。ならば2%に相当する五兆円規模の対策が必要だろうと、数字が先にありきなのだ。
 中身も、右手で消費増税しながら、左手では公共事業でバラまくといった最悪の財政政策である。増税の趣旨と異なり、財政再建にも逆行する。増税が自己目的化した財務省にとっては、権力の源泉となる「配分の原資」が増えれば万々歳なのだろう。
 仮に消費増税が避けられないというならば、真っ先に行うべきは消費の落ち込みを抑える所得税減税のはずだ。復興法人税の前倒し廃止は、国民の連帯よりも企業収益の方が大事という発想である。
 たとえ代替財源があっても国民の理解は到底得られまい。経団連会長は「非常に喜ばしい」と歓迎の意を示したが、志の低さを恥ずべきである。こんな経済対策をしてまで消費増税はすべきなのか。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130926k0000m070128000c.htmlより、
社説:復興法人税廃止 不公平感埋める説明を
毎日新聞 2013年09月26日 02時32分

 安倍晋三首相は東日本大震災の復興財源である復興特別法人税を1年前倒しで廃止すると明言した。来年4月に消費増税することを前提とした経済対策の柱にする意向だ。
 復興増税は個人の所得税にも上乗せされている。「法人税だけ廃止するのは不公平だ」との声が与党からも上がっている。安倍首相は企業を支援し賃金を上昇させると強調しているが、保証はあるのだろうか。この疑問を解消する説明が足りない。
 復興に必要なお金は25兆円と見込まれている。このうち10.5兆円を企業と個人が負担し、歳出削減や政府の保有株売却といった税外収入などで14.5兆円を捻出する計画だ。法人税は2014年度まで3年間、所得税は37年まで25年間増税することになっている。法人税の増税を1年前倒しで打ち切れば、企業にとって9000億円の負担減になる。国税と地方税を合わせた法人に対する実効税率は東京都の場合、38.01%から35.64%に下がる。
 復興増税は国民全体で被災地の復興を進めるものだ。課税対象を広くし、より公平感のあるものにしようとまとめられた。法人税だけ廃止されることに「企業優遇だ」との批判が出るのはもっともだ。個人に影響の大きい消費増税の対策としてであればなおさらだ。
 安倍首相は法人減税を賃上げや雇用拡大の即効薬と位置づけ、「企業が活力を維持することによって、必ず賃金に反映させるようにしていく」と強調する。減税が所得増に結びつけば消費が増え、企業の売上高も上がり、景気の本格的回復に向かうとの主張だ。
 アベノミクスで大胆な金融緩和を行い、円安が進み輸入品を中心に物価が上がっている。消費増税も予定されているなかで、賃金が今のままなら家計は苦しくなり、アベノミクスは行き詰まる。所得税減税すべきだとの主張もある。だが、安倍首相は企業支援を優先させる考えだ。
 規制緩和などを通じて投資や雇用拡大をしやすい環境にするのが本来の政策だ。企業が減税分をため込んだり、海外投資を増やしたりすれば日本経済への恩恵は限られる。減税されるお金を何に使うかは企業に委ねられるはずだ。どうやって賃金や設備投資に回させる仕組みにするのか、納得のいく説明が必要だ。
 復興財源は9000億円足りなくなるが、25兆円に影響させない考えだ。被災地を考えれば当然と言える。今年度税収が増える分などを回すようだが、本来は財政再建のためのお金だ。それを使うなら、持続的な景気回復につなげる筋道を具体的に描くべきだ。減税を一時だけの景気テコ入れ策にしてはならない。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130925/fnc13092503180000-n1.htmより、
産経新聞【主張】復興法人税廃止 被災地への影響を避けよ
2013.9.25 03:17

 政府・与党が復興特別法人税を1年前倒しで廃止する方向で検討に入った。来年4月の消費税増税を控え、安倍晋三政権が景気の腰折れを防ぐ経済対策の一環と位置付けているものだ。
 与党内には復興財源への影響を懸念して反対する声もあるが、日本企業の競争力向上にもつながる。前倒し廃止は必要だろう。
 経済対策には、企業に対して賃金の引き上げや設備投資を促す減税も盛り込む方針だ。法人税減税で恩恵を受ける産業界は、日本経済の成長に向けて賃上げや投資拡大に取り組む責務がある。
 所得税と法人税は現在、東日本大震災の復興に充てるため期限付きで増税されている。復興法人税は来年度末に廃止予定だったが、これを今年度末に1年前倒しすることで調整中だ。法人税は約9千億円の減税が見込めるという。
 安倍首相は一方で、復興財源規模を19兆円から25兆円に拡大し、被災地の復興を加速させる考えを示してきた。首相が「前倒し廃止は、復興財源の確保が前提だ」と強調しているのは当然だ。
 与党内には復興財源の減少などを心配し、前倒し廃止に反対の意見もある。廃止にあたっては、景気回復に伴う税収の上振れ分を復興財源に必ず充当することを明記するなどの工夫が欠かせない。
 被災地の復興に影響させないとの基本方針を、安倍首相がしっかりと示し、国民の理解を求めなければならない。
 安倍政権が進める成長戦略でも、企業による投資を喚起して日本経済を活性化させることを目指している。復興法人税の前倒し廃止は、日本をデフレ経済から抜け出させることにもつながる。
 企業も余剰資金をため込んでばかりいては成長は見込めない。政府は経済界や労働界と雇用問題などを話し合う政労使協議を始めたが、賃上げする余裕のある企業は従業員に対する配分原資を増やすなど、企業自らが積極的な行動に移すことが求められる。
 一方、国税と地方税を合わせた日本の法人実効税率は、主要国と比べても高い水準にある。復興法人税を廃止しても実効税率は30%台半ばと高止まりしたままだ。
 経済界には引き下げを求める声が根強い。日本企業の国際競争力を強化し、雇用拡大などを進めるためにも法人税率を中期的に引き下げることも課題だ。

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