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社説

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131004/plc13100403380004-n1.htmより、
産経新聞【主張】日米2プラス2 同盟強化へ主体的役割を
2013.10.4 03:36

 日米外務・防衛閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)は、日米同盟の能力の向上、とりわけ日本の同盟上の役割拡大を打ち出した。
 軍事的に台頭する中国が、尖閣諸島奪取を狙って海洋進出攻勢をかける一方、北朝鮮も核・ミサイル開発を進めている。日本周辺の安全保障環境が一段と厳しさを増す中で、この合意の重要性は極めて大きい。
 日本は役割拡大を着実に実現していかねばならない。それを下支えする集団的自衛権の行使容認などの決断は待ったなしである。
 今回の合意で最も重要なのは、「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の再改定に着手すると決定したことだろう。
 ガイドラインは、日本や周辺での有事に備えて自衛隊と米軍の役割分担を定めたものだ。その1997年以来の再改定は、中国の海洋活動や北の核・ミサイル脅威に備えるためにも不可欠だ。
 再改定を実効性あるものにするために、集団的自衛権の行使を容認すれば、例えば、日本が攻撃されていない段階で米軍艦船が公海上で攻撃された場合でも、自衛隊が応戦できるようになる。
 日米同盟の信頼性は格段に強化され、それが尖閣危機など日本有事における米軍の出動を確かなものにするだろう。同盟の抑止力向上に直結するのである。
 日本は並行して、防衛予算の増額、防衛力の強化、国家安全保障会議(NSC)創設なども進めていくべきである。
 決断すべきことは他にもある。防衛出動に至らない状況下であっても、自衛隊が離島を防衛できるようにする領域警備の法整備や、敵基地攻撃能力の検討も必要だ。サイバー攻撃に対処するための専守防衛政策の見直しも当然、課題となる。
 アジア太平洋地域に安全保障の重点を移すという、オバマ米政権のリバランス(軍事力の再均衡)戦略には、米国防費の大幅削減などから懸念も示されている。
 そうした中で、同政権がケリー国務、ヘーゲル国防の両長官を初めて東京での2プラス2に派遣し、日本防衛やアジア太平洋地域の安定に積極的に関わる意思を示した意義は大きい。
 安倍晋三首相は両長官に、「日米同盟の将来の方向性を示すことができた」と述べた。後は両国による実行あるのみである。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013100402000130.htmlより、
東京新聞【社説】安倍内閣の外交・安保 軍事への危うい傾倒
2013年10月4日

 日米両政府が防衛協力のための指針見直しで合意した。安倍内閣が進める外交・安全保障政策の抜本的転換の一環だ。軍事に過度に傾倒してはいないか。
 きのう、岸田文雄外相、小野寺五典防衛相と米国のケリー国務長官、ヘーゲル国防長官が東京・外務省飯倉公館に一堂に会した。外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会、2プラス2だ。
 通常、米国内での開催が多く、日本では十七年ぶり。両政府は指針見直しや、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への県内移設推進などを盛り込んだ共同文書を発表した。

◆米軍への協力拡大
 防衛協力のための指針は「ガイドライン」と呼ばれ、日本自身が武力攻撃を受けたり、日本周辺で有事が起きた際の、自衛隊と米軍との役割分担を記したものだ。
 一九七八年に策定され、冷戦終結後の九七年、朝鮮半島有事など「周辺事態」を想定した現在の内容に改められ、自衛隊の役割が拡大された。
 今回の見直しの背景には、中国の台頭や北朝鮮の核・ミサイル開発などアジア・太平洋地域の不安定化を機に、自衛隊の能力と役割を拡大し、米軍により協力しようという安倍内閣の意向がある。
 ガイドライン見直しは、安倍晋三首相が目指す憲法改正、自衛隊の国防軍化の動きと一体なのだ。
 首相は先月、国連総会などニューヨークでの演説で、世界の平和と安定に積極的に貢献する「積極的平和主義」を表明した。
 貿易立国であるわが国は国際情勢の安定なくして存立しえない。平和創造に積極的に貢献するのは当然だろう。
 それは「いずれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」ことを宣言した日本国憲法の理念でもある。

◆「専守」逸脱の懸念
 同時に、積極的平和主義の名の下、首相の意向に沿って、政府の憲法解釈では禁じている「集団的自衛権の行使」の容認に道を開こうとしていることを、見過ごすわけにはいかない。
 首相の指示を受け、政府内に外交・安保に関する二つの懇談会が置かれ、同時並行で議論が進む。
 一つは、外交・安保の中長期的な基本方針となる「国家安全保障戦略」を策定するとともに、安全保障と防衛力の在り方を示した防衛大綱を、情勢の変化に応じて見直すための「安全保障と防衛力に関する懇談会」(安防懇)。
 もう一つは、集団的自衛権の行使を容認するための「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)だ。
 双方で委員を務める北岡伸一国際大学学長は、共同通信のインタビューに「集団的自衛権を部分的に容認するのは法律の理屈としてあり得ない」と答えている。
 首相が以前検討を指示した、公海での米艦艇防護や弾道ミサイル迎撃など「四類型」以外にも、集団的自衛権が行使できる範囲を広げようというものだ。
 防衛大綱見直しでは「殴り込み部隊」とされる海兵隊機能の導入や、敵基地を攻撃する能力の保有も検討される見通しだ。いずれも憲法の定める「専守防衛」を逸脱しかねない内容である。
 国民に堂々と訴え、衆参両院で三分の二以上の議席を確保して憲法を改正するのならまだしも、首相の私的な懇談会の提言を「錦の御旗」に、長年定着している政府の憲法解釈を一内閣が変え、憲法の趣旨を変質させてしまうのは、姑息(こそく)との批判は免れまい。
 安倍内閣は、外交・安保の司令塔として日本版国家安全保障会議(NSC)の設置法案や、防衛・外交など特段の秘匿が必要な「特定秘密」を漏らした公務員らを厳罰に処す特定秘密保護法案の成立も目指している。
 国民の生命と財産、暮らしを守るのが国家の役割だが、安倍内閣の外交・安保政策は、軍事面に軸足を置きすぎてはいまいか。
 専守防衛を逸脱するとの誤解を周辺国に与えると、軍拡競争を促す「安全保障のジレンマ」に陥りかねない。首相は「私を右翼の軍国主義者と呼びたいのなら、どうぞ呼んでほしい」と捨てぜりふを吐くのでなく、粘り強い外交努力こそが、地域に安定をもたらす。

◆平和主義こそ力に
 戦争放棄と「戦力」不保持を九条に定めた現憲法の平和主義は、かつての戦争の反省に立った、日本の新しい「国のかたち」だ。
 この姿勢こそが世界の人々から尊敬を集め、日本外交に大きな力を与えているのではないか。
 憲法の趣旨を逸脱するのではなく、それを生かすことこそ日本の国際貢献であり、国際的な責任を果たすことになる。ガイドライン見直しを機に、あらためて肝に銘じたい。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO60603620U3A001C1EA1000/より、
日経新聞 社説 日米同盟を広がる脅威に耐えうる姿に
2013/10/4付

 同盟は生き物と同じだ。環境の変化に適応できなければ、やせ細ってしまう。日米同盟も例外ではない。中国軍の台頭という現実を踏まえて、根本から設計図と機能を洗い直すときにきている。
 日米の外務、防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)が開かれた。東京での2プラス2に米国の国務、国防両長官が出席したのは初めてだ。同盟を再構築しなければならないという切迫感の表れだろう。
 日米の背中を押しているのは、中国による急速な軍備の増強である。中国軍は海洋でも活動を広げ、アジアの緊張が高まっている。さらに、北朝鮮による核とミサイルの開発も加速している。
 こうした状況に対応するため、日米は自衛隊と米軍の協力のあり方を定めた日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を、来年末までに見直すことを決めた。いまの指針が策定されてからすでに約16年がすぎた。情勢の変化を考えれば、改定は当然だ。
 では、何をどう見直すのか。現行の指針は対象となるシナリオを、(1)平時(2)日本への攻撃(日本有事)(3)日本周辺での危機(周辺事態)――の3つに分け、協力の内容を定めている。
 このうち平時の協力は、情報交換や共同演習、訓練が中心で、日本有事や周辺事態になると、自衛隊と米軍が本格的に協力するようになっている。だが、こうした分類だけでは十分とはいえない。
 いま尖閣諸島周辺などで深刻になっているのは、日本有事でも平時でもない、その中間に当たるグレーゾーンの危機だ。この危機についても日米の協力を定めておく必要がある。主体になるのは日本側だが、情報収集や監視活動など米側が果たせる役割もある。
 北朝鮮の核・ミサイルや中国軍の増強ぶりを踏まえ、日本有事、周辺事態における協力内容も拡充しなければならない。具体策としては、日本による後方支援の強化などが考えられるだろう。
 現行の指針では、サイバーやテロ攻撃などについては、ほとんど触れていない。こうした新たな脅威への対策も明記してほしい。
 最終的に日米協力をどこまで拡充できるかは、日本が集団的自衛権の行使を容認するかどうかにかかっている。日本は解禁に向けた国内の調整を急ぎ、それを前提に米側と協議できるようにするのが望ましい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20131004k0000m070134000c.htmlより、
社説:日米防衛協力 新思考の同盟像を探れ
毎日新聞 2013年10月04日 02時35分

 日米同盟は大きな試練を迎えている。米国は日本に対して日米同盟の枠組みでもっと大きな役割を果たすよう求め、安倍政権は防衛費の増額や、集団的自衛権の行使容認を目指すことで、応えようとしている。経済的にも軍事的にも、中国が台頭し米国の力が相対的に低下していることや、米国の財政難が背景にある。
 日米両政府が3日、東京都内で開いた外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)は、こうした環境下で行われた。有事の際などの自衛隊と米軍の役割を定めた日米防衛協力の指針(ガイドライン)を1997年以来、再改定し、2014年末までに策定することや、沖縄の負担軽減策に合意した。
 日本側から岸田文雄外相、小野寺五典防衛相、米側からケリー国務長官、ヘーゲル国防長官が出席し、東京に4閣僚がそろうのは初めてという歴史的な会合となった。
 北朝鮮の核・ミサイル開発の進展に加えて、中国は軍備拡張を続け、沖縄県・尖閣諸島など南西諸島周辺や南シナ海で海洋進出を活発化させている。サイバーや宇宙空間の協力など新たな分野への対処もある。
 厳しさを増す日本の安全保障環境を考えれば、自衛隊と米軍の役割分担を見直し、ガイドラインを再改定するのは妥当な政策判断だろう。
 ただ安倍政権は、集団的自衛権の行使を容認するため憲法解釈を変更し、ガイドラインに反映させようとしている。現状では集団的自衛権に関する政府の説明はあまりに不十分で、国民の理解も進んでいない。
 今回の合意文書には、日本側の働きかけにより、集団的自衛権行使の検討など安倍政権の取り組みを米国が「歓迎する」との文言が盛り込まれた。だが実際には米政府は、日本が韓国や中国との関係をさらに悪化させることへの懸念を持っている。
 日米は同盟強化では一致したが、具体像となると集団的自衛権の行使をどう考えるかなど、お互い必ずしも描き切れていないようにみえる。慎重で丁寧な協議が必要だ。
 同時に重要なのが、日韓両国の連携や、豪州や東南アジア地域などを含む多国間協力の強化だ。
 訪日前に韓国を訪れたヘーゲル長官は朴槿恵(パク・クネ)大統領に対し、日米韓3カ国の安保協力の重要性に触れて日韓関係改善を求めた。だが大統領は「歴史や領土問題について、時代に逆行する発言をする日本の指導部のせいで信頼が形成できない」と安倍政権を批判し、日米の政府関係者を失望させた。
 日本を取りまく安全保障環境を好転させるには、防衛力整備だけでなく外交力の活用が不可欠だ。防衛・外交を両輪に10年、20年先を見通した新思考の同盟像を探りたい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20131004ddm003030090000c.htmlより、
クローズアップ2013:2プラス2、防衛指針改定合意 「尖閣」で温度差
毎日新聞 2013年10月04日 東京朝刊

 ◇日本、有事未満を想定 米国、役割の縮小狙う
 日米4閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)は、自衛隊の役割を拡大する防衛協力の指針(ガイドライン)の改定で合意した。中国の台頭をにらみ同盟をアピールしたい日本と、さらなる役割分担を求める米国の思惑が一致した結果だ。ただ、「尖閣有事」を回避したい米側とは温度差もある。普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題では、負担軽減策を列挙したが、展望は開けていない。【青木純、ワシントン西田進一郎】

 「事態は迅速に変わっていく。シームレス(隙間(すきま)のないよう)に対処していくことが重要だ」。小野寺五典防衛相は2プラス2の席上、ガイドライン改定作業のポイントが、日本の緊急事態における対応の「隙間」を埋めることだと強調した。
 現行のガイドラインが定めているのは、▽平時▽日本への武力攻撃事態▽朝鮮半島や中台間で起きた危機−−における自衛隊と米軍の役割分担に限られる。中国との間では沖縄県・尖閣諸島を巡る緊張が高まっているが、「尖閣を外国人が占拠したり、領海内に外国の船が長期間とどまったりするなどの『武力攻撃未満』の事態における日米の役割分担は存在しない」(防衛省幹部)のが現状だ。
 中国は昨年、フィリピンと領有権を争う南シナ海のスカボロー礁へ「自国の漁船の保護」名目で監視船を派遣し、フィリピン海軍と長期間にわたり対峙(たいじ)した。自国の領有権を国内外にアピールするのが目的だったとされており、日本政府内では尖閣周辺で同様の事態が起きることへの警戒が強まっている。
 こうした危機感を背景に、日本は昨年夏以降、ガイドラインの改定作業を始めるよう米国に要請。新たなガイドラインに「武力攻撃未満」の事態における日米の役割分担を明記し、「中国への抑止力としたい」(日本政府関係者)考えだ。
 一方、今回の改定に当たり米国が重視しているのは、テロやサイバー、宇宙、弾道ミサイルなどへの対応の強化で、日本から技術・財政面も含めた積極的な関与を引き出すことだ。財政難の米国では国防費の強制削減が始まっており、オバマ大統領が目指すアジア太平洋地域への「リバランス」の先行きには不透明感がぬぐえない。このため、平時における日本周辺の警戒監視のように、日本が担う役割を改定によって拡大させ、自国の負担を軽減させたいという狙いがある。

http://mainichi.jp/opinion/news/20131004ddm003030090000c2.htmlより、
 米国は共同文書で、中国、韓国から反発が出ている日本の集団的自衛権行使容認に向けた議論に対しても理解を表明した。岸田文雄外相が「地域・国際社会の安定にこれまで以上に積極的に取り組む」と説明したのを踏まえ、共同文書に「米国は歓迎する」と明記した。
 ただ、シリアの化学兵器問題やイランの核問題など中東に力を注がざるを得ない米国にとって、アジア地域は「とにかく衝突だけは避けてほしい」というのが本音。米国は中国の軍事活動の拡大に懸念を抱きつつも、経済面で強く結び付いており、日本の防衛体制の変化が中韓に与える影響を懸念する声も米国内には根強い。日本の思惑通り、改定によって中国に対する抑止力を強化できるかどうかは、米国内の議論の推移にも左右されそうだ。

 ◇「負担減」沖縄冷ややか
 「普天間飛行場の固定化はあってはならず、何としても回避しなければならないとの決意を再確認した」。岸田外相は2プラス2の共同記者会見で、日米両政府が沖縄県名護市辺野古への移設に「強い意志」で取り組む姿勢を強調した。
 2プラス2の共同文書は辺野古移設案を「普天間飛行場の継続的な使用を回避する唯一の解決策」とした。2012年4月の前回文書にあった「これまでに特定された唯一の有効な解決策」との表現を改め、他に選択肢がないことをより強調した。沖縄県の仲井真弘多(なかいまひろかず)知事に、辺野古の公有水面埋め立てを承認しなければ普天間固定化になるとの「最後通牒(つうちょう)」(日米関係筋)を突きつけた形だ。
 日米両政府は来年1月の名護市長選前に仲井真氏から埋め立て承認を得ることを目指し、働きかけを強める考えだ。知事承認を引き出すには基地負担軽減をどれだけ進展させられるかがカギと見ている。ヘーゲル米国防長官は会見で垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて「半分以上の飛行は沖縄県外」と宣言。さらに共同文書は、米海兵隊のグアム移転開始時期の明示▽追加的な米軍施設・区域返還−−などを列挙した。
 ホテル・ホテル訓練区域の使用制限の一部解除や返還予定地への立ち入り調査に関する日米両政府の合意時期を11月末と設定したのも、年末直前とすることで、沖縄振興予算の決定などとともに知事に判断を強く促す戦略だ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20131004ddm003030090000c3.htmlより、
 だが、沖縄の受け止めは冷ややかだ。文書は、在沖米軍基地6施設の統合計画が予定より早く進んでいると強調したが、全返還予定面積約1050ヘクタールのうち、現時点で返還が実現したのは牧港補給地区(浦添市)の北側進入路の1ヘクタールのみ。進入路はもともと市民の利用が認められており、返還の利点はほとんどない。他に例示されたものも小規模で「負担軽減」にはほど遠い。仲井真知事は「政府の努力姿勢はうかがわれるが、まだ中身が実効性のあるものなのか分からない」と記者団に指摘。2プラス2で普天間飛行場の辺野古移設が再確認されたことについては「本当に困る」と語った。【朝日弘行、井本義親】

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http://www.nikkei.com/article/DGXDZO60603650U3A001C1EA1000/より、
日経新聞 社説 米イランは和解に踏み出せ
2013/10/4付

 対話の機運を逃さず、和解へ踏み出す時である。
 米国のオバマ大統領と、イランのロウハニ大統領が電話で会談し、イランの核開発問題について外交解決を目指すことで一致した。米イラン首脳が直接、言葉を交わすのは、1979年のイラン革命をきっかけに、両国が国交を断絶して以来初めてだ。
 米国はイランを「悪の枢軸」と非難し、イランは米国を「大悪魔」と呼んできた。30年を超えて憎み合う関係を終わらせることが、中東の安定に不可欠である。
 オバマ大統領は核問題について「包括的な解決は可能だ」と語り、ロウハニ大統領も「成果を早期に出したい」と述べた。対立の根にある核問題の克服に強い意欲を示したことを歓迎する。
 重要なのは具体的な行動だ。イランは国連安全保障理事会の決議を無視してウラン濃縮活動を続けている。国際原子力機関(IAEA)が求める軍事施設の査察にも十分協力していない。
 イランは核技術の軍事利用の意図がないことをはっきり見せなければならない。米欧など6カ国とイランは15日、ジュネーブで核問題の実務者協議を開く。イランはこの場で、保有する濃縮ウランの扱いについて国際社会の疑念を取り払う方策を示す必要がある。
 米国とイランの関係改善には、それぞれの国内に根強い抵抗がある。それでも、両国の歩み寄りが実現すれば中東の緊張緩和に大きな波及効果が期待できる。イランはシリアの同盟国で、イスラエルと対立するパレスチナのイスラム勢力への支援も続けている。
 シリアの内戦収拾や、中東和平の実現にイランの協力は欠かせない。世界有数の産油国であるイランの国際社会への復帰は、原油の供給安定にも好影響をもたらす。
 日本はイランと独自の関係を維持してきた。安倍晋三首相は国連総会出席のために訪れた米国で、ロウハニ大統領と会談した。イランに国際社会との対話を促すことが日本の役割である。

http://mainichi.jp/opinion/news/20131003k0000m070155000c.htmlより、
社説:米・イラン そろそろ融和を考えよ
毎日新聞 2013年10月03日 02時38分

 国交断絶が30年以上も続く米国とイランの関係改善への期待感が高まっている。イランのロウハニ新大統領が国連総会の演説で、核兵器開発疑惑の解消に積極的な姿勢を見せ、同大統領とオバマ米大統領の電話協議も実現したからだ。
 双方の融和が進めば、米国の同盟国イスラエルがイランの核関連施設を空爆する危険性も、当面は遠のくだろう。化学兵器をめぐる交渉を通じて米国のシリア攻撃が棚上げになったのに続き、中東が緊張緩和に向かうなら歓迎すべきことである。
 もともとイランは中東きっての親米国だったが、1979年の故ホメイニ師(最高指導者)によるイスラム革命後、米国を「大悪魔」と呼ぶ国に一変した。直後に起きた在イラン米大使館占拠人質事件は400日以上に及び、屈辱を味わった米国民にはイランとイスラムをめぐる深刻な「トラウマ」が残った。
 これが米政界、ひいては世界に大きな影響を与えるのだが、雪どけの機運がなかったわけではない。クリントン政権は90年代末、ハタミ・イラン大統領が説く「文明間の対話」に強い関心を示し、控えめながらイランと文化交流を進めた。
 石油産業と縁が深いブッシュ政権も、産油国イランとの関係改善をうかがった。2001年の米同時多発テロ後、イランを「悪の枢軸」と呼んだブッシュ大統領も、翌年の訪日では対イラン関係で日本の仲介を求めている。米国には「トラウマ」もあるが、少なからぬ企業がイランとの交易を望んでいるのも確かだ。
 対イラン関係が良好な日本も、米国の圧力により油田の利権を手放した。米・イランの関係改善は日本の利益にもつながるはずである。
 そろそろ両国は対立から融和に踏み出してもいい。イランは伝統的にシリアと親しく、フセイン政権後に発足したイラク政府との関係も緊密だ。イランと米国がいがみ合えば中東は一向に落ち着かないという判断もオバマ大統領にはあるだろう。
 イスラエルは「地図から消される」とか、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)は「作り話」などと公言したイランの強硬派、アフマディネジャド前大統領は去った。だが、米・イランの関係改善を阻むもう一つの障害、核疑惑の行方は不透明だ。国連安保理常任理事国(米英仏露中)とドイツは今月中旬、イランとの核協議を再開するが、濃縮ウランの国外搬出案も含めて、イランがどんな具体策を打ち出すかが焦点になる。
 本当に核兵器を製造する意図がないなら国際社会が納得できる対応をすべきである。国連制裁に疲れての苦しまぎれの演出なら、イランの信用はさらに下落するだけだ。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013093002000116.htmlより、
東京新聞【社説】イラン核開発 交渉進展の好機逃すな
2013年9月30日

 国連総会を舞台にして、イランの核開発をめぐる外交が活発化している。イランのロウハニ大統領は核兵器を保有する考えはないと明言し、経済制裁を科した欧米との関係修復にも動きだした。
 ロウハニ大統領は国連総会演説で「核開発は平和目的であり、国防のために核兵器が存在する余地はない」と述べ、欧米と対決したアハマディネジャド前大統領とは異なる融和姿勢を打ち出した。
 さらにオバマ米大統領とは電話で会談した。両国首脳の対話は一九八〇年の断交以来初めて。和解への一歩を踏みだしたといえる。ザリフ外相は安全保障理事会の常任理事国にドイツを加えた六カ国の外相との協議に臨み「一年以内の核問題交渉妥結を目指す」と述べた。
 イランは米国や英仏などによる制裁で経済事情が悪化。原油や天然ガスの輸出収入は半減し、通貨リアルの下落、40%を超すインフレにより市民生活の混乱と失業者増加が続く。
 外交を転換したのは、国民が穏健路線と制裁解除取り付けを求め、イスラム教高位指導者も支持しているためだ。
 欧米側はイランの核兵器製造を防ぐため、保有する20%の濃縮ウランを核燃料に転換し、さらに5%濃縮ウランは第三国に搬出することを求めている。併せて起爆実験をした疑いがあるパルチンの軍事施設について、国際原子力機関(IAEA)の査察受け入れも要求している。
 イランと六カ国は十月中旬に核問題協議を再開するが、ようやく訪れた交渉進展の好機を逃してはならない。イラン側は原子力発電など平和利用の権利を主張するが、それにはまず、疑惑を晴らす具体的な行動を取るべきだ。
 イスラエルはイランの核開発が「一線を越えた」場合は、核施設を空爆する可能性を繰り返し示している。またイランはシリアのアサド政権を支持しており、内戦の沈静化に大きな役割を担う。
 イランの核問題打開に道筋を付けないと、中東全体がいっそう不安定になろう。関係国による迅速で、粘り強い外交努力が必要だ。
 日本はイラン産原油の輸入を削減して制裁に加わっているが、以前は交流も活発だった。安倍晋三首相はニューヨークでロウハニ大統領と会談した。今後も、唯一の被爆国として核の平和利用を訴えるとともに、米とイランの関係修復に向けた橋渡しをしたい。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年 9月 29 日(日)付
米国とイラン―対話の機運を逃すな

 世界の和平と安定に影響力をもつ大国同士でありながら、35年近く絶縁状態を続けている。米国と中東のイランは、そんないびつな関係にある。
 欧米の自由主義と厳格なイスラム教シーア派。両国が背負う文明の衝突は冷戦期から世界に数々のひずみを生んできた。
 その首脳同士が、電話で直接会話を交わした。1979年のイラン革命での断交以来、初めてのトップ対話である。
 わずか15分とはいえ、かつて「大悪魔」「悪の枢軸」と憎しみ合った宿敵の間柄だ。友好の意思を確かめた意義は大きい。
 だが、むろん、この一歩は外交儀礼に過ぎない。実質的な関係の進展はまだ何もない。国際社会全体で、対話の芽を育てる辛抱強い構えが必要だ。
 両国の対立は、諸悪の根源といっていい。イランが反米に転じた革命後、抗争は激化し、80年代のイラン・イラク戦争で米国はイラクに肩入れした。
 それがのちにフセイン政権を強大化させ、米自身が打倒したのが03年のイラク戦争だった。世界に残した傷は深かった。
 反イラン政策が自らの首を絞める。その構図は原油市場にも通じている。大産油国イランへの禁輸制裁は、米欧の石油大手の市場開拓にも足かせとなり、日本も油田権益を手放した。
 一方のイランの疲弊も深い。テロの輸出ともいわれた極端なイスラム主義と反米政策のため孤立し、経済は細った。国民生活の困窮がこの夏、対話重視型の大統領を選んだ主因だ。
 不毛な争いをやめるのが理にかなうことは明らかだ。双方の国内では今後も保守派が歩み寄りに抵抗するだろう。それでも今の不安定な世界には、この対話の機運を逃す余裕はない。
 最大の争点は核問題である。イランの疑惑は、周りのサウジアラビアなどに連鎖する核開発のドミノ現象を起こしている。
 イスラエルが軍事行動を起こせば、地球規模のテロ戦争にもなりかねない。そんな悪夢を防ぐ責務が、両首脳にはある。
 イランがもし米国と歴史的な和解を果たすことがあれば、それは北朝鮮にも核放棄を迫る強力なメッセージとなろう。
 まずは、核をめぐる国際交渉の前進を図ることが大切だ。濃縮ウランの国外処理などでは、ロシアが果たす役割が大きい。
 折しも、シリア問題をめぐる国連安保理決議が米ロの粘り強い交渉と合意で実現した。
 イランは、シリアのアサド政権の最大の後ろ盾でもある。米ロは引き続き、暗雲を吹き払う外交力を発揮してもらいたい。

http://sankei.jp.msn.com/world/news/130929/amr13092903180001-n1.htmより、
産経新聞【主張】米イラン首脳対話 歴史的和解の一歩とせよ
2013.9.29 03:16

 国交断絶が30年以上も続いている米国とイランの大統領が断交以来初めて電話で協議した。
 オバマ米大統領は協議について「困難な歴史を乗り越える展望を示すものだ」と述べ、関係改善に意欲を見せた。歴史的和解の第一歩となることを期待したい。
 関係改善には、イランの核問題の平和的解決に向けた前進が欠かせない。イランは、核兵器を持たないという約束が口先だけではないことを示さなければならない。
 イランのロウハニ新大統領は国連総会演説のため訪米した。米側は当初、両大統領の直接接触を模索した。イラン側は国内事情を理由に断り、ロウハニ師の米国滞在中の電話協議となった。
 首脳間の直接対話は、穏健派のハタミ元大統領の時代にも実現しなかった。最高指導者のハメネイ師は今回、「英雄的な柔軟性」を口にし、ロウハニ師の対米姿勢の軟化に一定の支持を与えているとみていいだろう。
 核問題をめぐり、両大統領はすでに書簡のやりとりをしている。首脳同士の信頼醸成は、関係改善を目指す上で有用だ。
 米国は、イラン・イスラム革命の1979年に発生したテヘランの米大使館占拠事件をきっかけに翌年、イランと断交した。
 米側は、イランを北朝鮮などと並ぶ「悪の枢軸」と位置づけもし、イラン側では米国はなお「大悪魔」である。関係改善の道は容易ではあるまい。
 ロウハニ師は融和路線を強調し、総会演説でイランに核兵器保有の意思はないと表明した。米・イラン外相会談も実現させた。
 こうした言動が、国連や欧米による経済制裁の緩和を狙った演出であっては困る。
 核問題を話し合う米英仏独露中の6カ国とイランは国連本部で外相級協議を行った。10月中旬の実務者協議でイランは、核兵器疑惑を晴らすための具体案を示さなければならない。
 両国関係の改善は中東の情勢全体にも大きな影響を与える。
 国連安保理は、シリアの化学兵器全廃を義務づける決議案を全会一致で採択した。国際社会は内戦の終結も目指さねばならない。シリアのアサド政権に影響力を持つイランの果たすべき役割は小さくない。その意味からも、米・イランの歩み寄りは不可欠である。

http://mainichi.jp/opinion/news/20131004k0000m070132000c.htmlより、
社説:TPP交渉 政府の独断専行は困る
毎日新聞 2013年10月04日 02時30分

 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉は、8日の首脳会合で「大筋合意」する公算が大きい。ところが、参加国間の秘密保持義務もあって、交渉の実態はほとんど表に出てこない。
 国内にはTPPを巡ってなお、根強い不安がある。アジア・太平洋地域の貿易・投資ルールを決める交渉であり、国民の生活や経済活動に大きな影響を与えるからだ。大筋合意は、大きな節目といえる。政府の独断専行は認められない。
 交渉は2日までの首席交渉官レベルに続いて6日まで閣僚会合を行い、7、8両日の首脳会合で大筋合意を目指す。もっとも、焦点である関税分野や医薬品の特許期間等に関する知的財産分野など、各国の利害対立が深刻なために本格交渉が今後に持ち越されそうな分野も多い。その意味で今回は、あくまで各国首脳が最終合意への決意を確認し合う意味合いが強いようだ。
 それでも首脳同士が「合意」する意義は大きい。日本政府は交渉参加に際して、「国益を損なう場合は離脱できる」と説明してきた。しかし、参加12カ国中で米国に次ぐ経済大国である日本が離脱する影響は大きい。「合意」後に離脱する選択肢は事実上、取り得ないだろう。
 一方で、国民の間には農業はじめ医療保険制度や食の安全への悪影響、外国に進出している企業がその国の政府を訴えられる「ISDS条項」の乱用などを心配する声が根強く残っている。
 ところが、交渉に参加して以降、政府からそうした不安に応える情報はほとんど出ていない。閣僚会合に先立って甘利明TPP担当相は「攻め込まれたら『倍返しだ』という場面もあろうかと思う」と述べた。しかし、「倍返し」の決意で何を攻め何を守るのか、基本的な戦略は明らかにしていない。
 与党自民党などはコメ、麦、乳製品などの農産5項目を「聖域」として、その関税を守り抜くよう求めている。政府は「最大限の国益を追求する」という方針は示しているものの、何が「国益」なのか、国民には判然としないままだ。
 確かに、秘密保持義務の壁はある。各国の思惑が交錯する外交交渉で、手の内をさらすわけにはいかないことも理解できなくはない。
 しかし、今回の首脳会合で「大筋合意」を目指す背景には、来年秋に中間選挙を控える米オバマ政権が、経済政策での実績を強調したいという政治的な思惑がある。
 何の説明もなしに合意し、対米追従との批判を受けては、今後の交渉にも支障が出るはずだ。政府に国民の理解を得る努力を求めたい。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130903/fnc13090303270000-n1.htmより、
産経新聞【主張】TPP 交渉主導し国益の追求を
2013.9.3 03:26 (1/2ページ)

 経済連携をめぐる交渉は、複雑に入り組んだ利害がぶつかり合う中、自国の利益を最大化しなければならない困難な作業である。
 ブルネイで開催された環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の交渉会合では、米国と新興国との対立が浮き彫りになった。年内妥結を目指す方針を確認したが、その実現は容易ではない。
 参加が遅れた日本に求められるのは、議論が収斂(しゅうれん)していない現状をむしろ好機ととらえ、残りの交渉を主導するしたたかさだ。
 日本経済の再生には、環太平洋地域の成長を取り込まなければならない。新たな枠組み作りで各国が歩み寄れる打開策を示せば、日本の存在感は増し、交渉に有利に働く。国益追求へ攻めの姿勢を貫いてほしい。
 ブルネイ会合の共同声明は、関税にかかわる市場アクセスや知的財産などの分野で一定の進展があったと評価した。だが、打開の糸口すらみえない項目も多い。
 政府から優遇措置を受ける国有企業の扱いでは、民間企業との公平な競争条件を求める米国に対し、マレーシアやベトナムが反発している。米国が薬の特許期間の延長を求める知的財産権をめぐっても新興国側は慎重だ。
 発展段階が異なる先進国と新興国が共通ルールを作る際に、軋轢(あつれき)が生じることはよくある。世界全体の新たな貿易ルールを話し合う世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)が停滞したのもこのためだ。同じ轍(てつ)を踏まぬよう、各国は交渉をまとめる工夫をこらしてほしい。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130903/fnc13090303270000-n2.htmより、
2013.9.3 03:26 (2/2ページ)
 一方、コメなど重要5分野の関税死守を目指す日本に対する視線は厳しい。5分野以外の全品目の関税撤廃を約束しても、貿易自由化率は93・5%にしかならないためだ。5分野の農林水産品は586品目にのぼる。100%近い高水準の自由化を求める国からは、さらに譲歩を求められよう。
 政府が国民への丁寧な説明を行う姿勢も必要だ。交渉の具体的な中身は公表されない決まりだが、秘密にするだけでは国内で理解を得られない恐れがある。
 年内妥結へ時間的猶予は少ない。だが、TPPにはアジアで経済的にも軍事的にも影響力を強める中国を牽制(けんせい)する意味合いがある。決して交渉を不調に終わらせてはならない。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013090302000142.htmlより、
東京新聞【社説】日本とTPP 米-アジアの調整役を
2013年9月3日

  環太平洋連携協定(TPP)交渉に大きな進展が見られない。米国とアジアとの対立が主因だ。交渉を主導する米国とアジアとの隔たりを縮める。日本にはその橋渡しを担う役割がある。
 今や貿易交渉は輸入品などに課す関税の撤廃や引き下げを超えて、知的財産権の保護や国有企業の見直しなど、ルールを幅広くつくる舞台へと変わった。知財権といっても医薬品や著作権の保護など領域が広く、利害がぶつかるので容易に折り合えない。世界貿易機関のドーハ・ラウンド(多国間交渉)が頓挫した背景にも交渉の複雑さがある。
 日本を含むアジア・太平洋の十二カ国が参加するTPP交渉の目標は二十一世紀の貿易ルールづくりだ。交渉は二十一分野にまたがり、難易度はさらに増した。ブルネイでの交渉会合の足取りははかばかしくなく、今月半ばに開くワシントンでの首席交渉官会合にゆだねられた。年内妥結を宣言したものの、展望すら開けていない。
 最大の理由は年内妥結にこだわる米国にあると見るべきだろう。その一つがベトナムなどに国有企業の見直しを強硬に迫る競争政策分野だ。国有企業は政府資金に支えられて独占的地位を固めており、民間企業との公平さを欠く。
 米国の視野にあるのは世界二位の経済大国・中国の存在だ。中国は石油など国有企業の多くが世界ランキングの上位を占めており、米国にはその見直しや民間企業との競争条件の公平化など、ゆくゆくはTPP交渉で築く新秩序に中国を引き込む狙いがある。
 知財権も米国が提案した新薬特許の期間延長問題がこじれたままだ。延長されると米製薬会社などによる特許の寡占が続いて安価な後発薬の販売が先送りされるため、マレーシアなど六カ国が強く反対しているのが現状とされる。
 オバマ政権は欧州連合とも自由貿易交渉を進め、米国の貿易の約六割を占める太平洋と大西洋地域との新たな協定を足掛かりに一刻も早く経済成長に結びつける戦略を描いている。
 米国がTPPで露骨なまでに自国利益を追い求めれば、新興国との溝はさらに深まりかねない。
 日本はコメなど五品目の関税撤廃で苦境にある一方、アジアの一員として国有企業見直しの猶予期間提案などを通じて米とアジアの橋渡しを担える好位置にもいる。
 同盟国を理由にして米国に過度に寄り添えば、新興国がついてこられなくなることを知るべきだ。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131004/k10015023931000.htmlより、
米政府一部閉鎖 債務不履行の事態も
10月4日 5時7分

アメリカでは、与野党の対立から予算が成立せず、政府機関の一部閉鎖が続くなか、今月中旬までに、政府の借金の上限を引き上げなければ、債務不履行に陥りかねない事態も迫っていて、財務省は議会に対し、直ちに対応するよう求めました。
アメリカ議会では、野党・共和党が当面の予算案にオバマ政権が推進する医療保険制度改革の延期を盛り込むよう主張して、与党・民主党と対立し、予算が成立しておらず、今月1日から始まった政府機関の一部閉鎖が長期化するおそれも出ています。
3日、ワシントン郊外で演説したオバマ大統領は、「長引けば長引くほど、事態は悪化する。国民は、政府機関閉鎖の責任が誰にあるか、よく分かっている」と述べて、共和党を強く批判し、条件を付けずに直ちに予算案を可決させるよう改めて求めました。
こうしたなか、アメリカでは今月中旬までに政府が追加の借金をできるよう、上限を引き上げる対応を議会が取らなければ資金をやりくりできなくなって債務不履行に陥りかねない深刻な事態も迫っています。
これについて、アメリカ財務省は3日公表した報告書で、おととし夏に議会が借金の上限引き上げを瀬戸際まで認めなかったことで世界の金融市場が混乱し、アメリカ国債の格付けが引き下げられたと指摘しました。
そのうえで、財務省は「仮に債務不履行に陥れば金融市場や雇用、消費に破滅的な影響を及ぼし、5年前の金融危機か、それ以上の打撃となる」と警告し、議会に対し、直ちに対応するよう求めました。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年 10月 4 日(金)付
米政治の混迷―妥協する分別を持て

 妥協点を探る良識を失った政治が国を無用な混乱に陥れる。そんな事態が民主主義大国を自任する米国で起きている。
 米国の会計年度は10月から始まる。だが、連邦議会は与野党の対立により予算が組めずにいる。そのため連邦政府の一部が1日から閉鎖された。
 クリントン政権時代以来、約17年ぶりの異常事態だ。長びけば米国の経済だけでなく、世界の安定も脅かしかねない。
 米議会は大局観に立った分別を取りもどし、政府機能を早く正常化させる責任がある。
 この閉鎖で自宅待機となった職員は80万人に及ぶ。国防や治安などの活動は維持されるが、国立の公園や博物館などが閉まった。中小企業への公的融資の事務なども滞りかねない。
 商務省や労働省は経済統計の発表を中止した。連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策にも影を落とす恐れがある。
 オバマ大統領は、来週のアジア太平洋経済協力会議(APEC)に併せてマレーシアとフィリピンを訪れるはずだったが、中止せざるを得なくなった。
 議会には別の難題も近づいている。政府債務の上限である。今月17日までにその引き上げに合意できなければ、国の資金繰りが限界を迎える。
 最悪の場合、米国債の利払いなどが滞る債務不履行(デフォルト)が起き、世界の金融動乱にも発展しかねない。これは何としても避けねばならない。
 近年の米国が陥った「分裂政治」の根底には、政府の役割をめぐる理念の対立がある。
 福祉を重んじ、財政再建に増税も組み入れる民主党は「大きな政府」派。国の支出減で赤字を減らし、減税もめざす野党共和党は「小さな政府」派。
 問題は、その違いを認めつつ折衷策を築く政治の知恵が働かないことだ。下院の共和党は、オバマ政権による医療保険制度の改革を標的とし、その予算を削ることを求めて譲らない。
 さらに混迷が深まったのは、シリアへの軍事介入を見送ったオバマ政権の求心力が落ちると読んだ共和党の保守派が、来年の中間選挙をにらんで強気の駆け引きに出たからでもある。
 だが、一つの政治課題にこだわって、国家予算全体を滞らせる頑迷さを国民が納得するはずはない。共和党の穏健派はただちに事態を収拾させる党内調整を急がねばならない。
 愚かな政治が国を人質にしている。米国ではそんな批判が高まっている。だが、最も迷惑を被る人質は、世界経済であることを忘れないでもらいたい。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO60543660T01C13A0EA1000/より、
日経新聞 社説 米国経済の足を引っ張る不毛な政治対立
2013/10/3付

 米国が17年9カ月ぶりに一部政府機関の閉鎖に追い込まれた。民主、共和両党が1日から始まった新しい会計年度の暫定予算案で合意できなかったためだ。
 不毛な政治対立は、復活し始めた米国経済の足を引っ張り、世界景気にも悪影響を及ぼしかねない。大統領や与野党の政治家が合議で物事を前に動かす米民主主義の伝統を取り戻すべきときだ。
 予算協議が物別れに終わったのは、野党の共和党が予算案に同意する条件として医療保険改革法(オバマケア)の修正を求めて譲らなかったためだ。オバマケアはオバマ大統領の選挙公約ということもあって、与党・民主党も妥協を拒否した。
 すでに法律が成立したオバマケアの骨抜きを狙って強硬な姿勢を続ける共和党の戦術には疑問が残る。一方、大統領が十分に指導力を発揮していないという指摘もある。いずれにせよ、予算案が宙に浮いて政府機関がマヒする異常事態は早急に解消すべきだ。
 与野党は連邦政府の債務の上限引き上げを巡っても対立している。もし共和党が今月中旬までに引き上げを認めなければ、国債の元利支払いができなくなる恐れもある。米国内外の金融市場に与える衝撃は極めて大きく、政府機関の一時的な閉鎖よりもはるかに深刻な事態になる。
 米国経済は住宅市場の回復を背景に明るさを増しており、成長減速が目立つ新興国に代わって世界経済のけん引役になるとの期待もある。政治の不手際によって、米国や世界の景気拡大の芽をつぶすようなことがあってはならない。
 政治の混迷は由々しきことだが、対立をもたらした根本原因に米国の政府債務の膨張があることも見逃すべきではない。政府の借金拡大は中長期的には経済や生活を脅かすとの認識が、激しい論争につながっている面もある。
 経済への影響を見極めつつ財政再建を着実に進めることは、高齢化で社会保障費が膨らむ先進国の共通テーマだ。とくに国内総生産(GDP)に対する公的債務の比率が先進国で最悪の日本にとっては待ったなしの課題である。
 日本政府は消費税率の引き上げを決めて財政再建に真剣に取り組む姿勢を示したが、これだけで問題が解決するわけではない。経済成長を促す政策と歳出抑制や増税を組み合わせて財政悪化を食い止める努力を怠ってはならない。

http://mainichi.jp/opinion/news/20131003ddm003030093000c.htmlより、
クローズアップ2013:米政府機関閉鎖 強硬保守派、妥協せず
毎日新聞 2013年10月03日 東京朝刊

 米国の政府機関は1日、連邦議会での暫定予算不成立で、約80万人の一般職員の自宅待機や一部閉鎖に追い込まれた。背景には、野党・共和党内の強硬保守派「ティーパーティー(茶会運動)」の存在がある。指導部や穏健派も同調し、再開に向けた与党・民主党との歩み寄りは困難だ。両者の溝が深まる中、より大きな危機が迫る。17日が期限の政府債務上限の引き上げ問題だ。妥協が成立しなければ、新たな米国発の金融危機が発生しかねない。

 ◇オバマケア潰し狙い
 「共和党が政府を閉鎖した」(リード上院民主党院内総務)「上院民主党は我々と話すべきだ」(カンター下院共和党院内総務)。米政府機関の一部閉鎖が始まった1日も、民主党と共和党の責任のなすり合いは続いた。オバマ大統領も「閉鎖をもたらした一派閥」と間接的表現ながら、下院の「茶会運動」系議員約50人を非難した。
 民主党が支配する上院と、共和党が多数派の下院という「ねじれ」状態の連邦議会が暫定予算案を通せず、政府機関閉鎖に至ったのは、茶会系議員の存在が大きい。彼らが予算案を拒否したのは、オバマ政権の内政の目玉で米国で初めてほぼ全国民を対象とする「医療保険改革(オバマケア)」の導入延期を、民主党が受け入れなかったためだ。
 共和党では歳出削減や富裕層減税など「小さい政府」志向が有力。中でも茶会系は財政規律に極めて厳格で、社会保障費の増額につながりかねないオバマケアを「地獄から来た忌むべき化け物」(茶会運動サイト)と口を極めてののしる。
 オバマケアに関し、茶会系の主張を世論も支持する。CNNの世論調査では57%が反対で、賛成の38%を大きく上回った。
 茶会運動の源流は、2008年の世界的金融危機リーマン・ショックを受けブッシュ前政権(共和党)が導入した公的資金による金融機関救済策への草の根の反発だ。この怒りが、財政規律や個人の責任を重視する保守派に火をつけた。茶会運動はオバマ政権の歳出拡大路線も批判して10年中間選挙で系列候補を議会に送り込み、共和党の下院奪還に貢献した。
 14年の中間選挙を前に、共和党内には、民主党に妥協すれば茶会運動周辺の強硬保守派が背を向けるとの懸念がある。ベイナー下院議長やマコネル上院院内総務ら指導部や穏健派も茶会系に引きずられて強硬姿勢を維持し、政府機関閉鎖という非常事態を招いた。
 ただ、共和党への世論の批判は強い。CNN調査では、政府機関閉鎖の責任者は「共和党」との回答が46%で、「大統領」の36%を上回った。

http://mainichi.jp/opinion/news/20131003ddm003030093000c2.htmlより、
 1995年から96年のクリントン政権(民主党)時代、共和党のギングリッチ下院議長(当時)が強硬姿勢で政府機関を閉鎖に追い込んだ際も、共和党が批判され、クリントン氏は再選された。
 しかし、今回の事態を受け、シリア攻撃を巡る迷走で内外の批判を浴びたオバマ大統領の指導力にさらに疑問符が付く可能性は残る。事態打開の見通しは、立たないままだ。【ワシントン西田進一郎】

 ◇デフォルトも現実味 17日が期限、土壇場まで攻防
 米国の財政を巡っては、「政府機関閉鎖よりも大きな危機」(オバマ大統領)である米政府のデフォルト(債務不履行)が近づきつつある。米国の債務はすでに法定の16・7兆ドルに達しており、10月17日までに議会が債務上限を引き上げなければ、米政府はデフォルトに陥る恐れがある。
 史上初となる米国債のデフォルトが起きれば、ドルの暴落、金利の高騰など米経済にとって「取り返しのつかない痛手」(ルー財務長官)となる。米国債を大量に保有する日本や中国などにも大きな影響が及ぶのは避けられず「米財政の不確実性は世界全体に波及する」(世界銀行のキム総裁)との懸念が大きい。
 共和党の一部には政府機関の閉鎖と同様に、債務上限引き上げを「人質」にとり、オバマケアの骨抜きをもくろむ動きがある。一方オバマ大統領は「(債務上限の)引き上げは議会の責務で、交渉するつもりはない」との姿勢を貫いている。
 与野党は現在、閉鎖された政府機関を再開させるための暫定予算成立に向けたつばぜり合いを続けている。共和党は「両院協議会を設置し、話し合うべきだ」(ベイナー下院議長)と持ちかけているが、民主党は「まずは無条件で暫定予算を成立させ、政府を再開させることが先決」(リード上院院内総務)と歩み寄りはみられない。
 マコネル上院院内総務(共和党)は「債務上限の問題に移る前に予算の問題を解決したいが、いつになるか分からない」と述べるなど、政府機関閉鎖は長期化の恐れが出ている。このため、17日の期限が近づくにつれて議会の対応は、より影響の大きい債務上限引き上げのための議論を優先せざるを得なくなりそうだ。
 2011年に同じく債務上限問題で米国がデフォルト寸前に陥った際は、株価が急落するなど市場に大きな混乱を招き、結果的に初の国債格下げにつながった。米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、これらの危機感を背景に民主党内には「予算案と債務上限の二つの問題が同時に処理される」との期待も出ているが、土壇場まで与野党のせめぎ合いが続きそうだ。【ワシントン平地修】

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013100101002298.htmlより、
米、迫る債務引き上げ期限 世界経済に打撃も
2013年10月1日 17時53分

 【ワシントン共同】米政府は1日、2014会計年度の暫定予算の不成立に伴い、一部機関の閉鎖に着手した。民主、共和両党が対立する議会は事態の早期収拾を目指すが、10月半ばに連邦債務上限の引き上げ期限も迫っており、再衝突は必至だ。引き上げに失敗すれば米国債が債務不履行(デフォルト)に陥り、世界経済に強烈な打撃を与える恐れがある。
 多くの政府機関では、国民生活や国家の安全に直接関係するものを除いて業務を大幅に縮小する。休職に追い込まれる連邦政府職員は80万人以上に及ぶとされ、回復軌道に戻りつつある米景気の足を引っ張りかねない。与野党は早期の対応を迫られる。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131001/k10014941201000.htmlより、
米予算成立せず 政府機関一部閉鎖
10月1日 13時12分

アメリカで、与野党の対立から10月以降の予算が成立していない問題で、議会では30日、与野党が大幅な歩み寄りを拒否して、暫定予算案を成立させることができませんでした。
その結果、1日から、およそ18年ぶりに政府機関の一部が閉鎖され、数十万人規模の職員の自宅待機や博物館の閉鎖などが行われることになりました。
アメリカの予算は、議会の上院と下院の双方で可決されることが成立の条件ですが、10月から始まる新たな年度の予算を巡って上院で多数を占める与党・民主党と、下院で多数を占める野党・共和党は激しく対立しました。
野党が多数の下院は、オバマ政権が推進する医療保険制度改革の延期を条件にした暫定予算案を繰り返し可決して、与党が多数の上院に送り、上院は、そのたびに、政権に打撃を与えるとして否決してきました。
与野党は、30日も深夜まで、攻防を続けましたが、結局、暫定予算案を成立させることができませんでした。
その結果、アメリカ政府は、10月1日になっても行政運営に必要な予算が整わず、およそ18年ぶりに政府機関の一部を閉鎖することになり、ホワイトハウスの行政管理予算局が各省庁に対応を指示しました。
政府機関の一部が実際に閉鎖されても、国防や治安、医療など国の安全や国民の健康に直結する業務は継続されます。
しかし、数十万人規模の職員が自宅待機になるほか、全米各地の博物館や国立公園が閉鎖されることになり、金融市場などへの影響も懸念されます。

「ビザ発給は通常どおり」
アメリカの政府機関の一部が閉鎖された問題について、東京のアメリカ大使館は、「大使館業務への影響はほとんどなく、ビザの発給は、今後も、通常どおり行われる」と説明しています。
18年前にクリントン政権下で政府機関が閉鎖した際には、東京のアメリカ大使館では、ビザの発給が緊急の場合にのみ認められるなど大きな影響が出ました。
しかし、大使館によりますと、「アメリカ国務省は、今回、十分な予算を確保しており、ビザの発給を含め大使館業務が大きく滞る心配は現時点でない」としています。
その一方で、大使館職員の残業や新たな出張計画、それにスタッフの新規採用などは制限されるということです。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013092501002268.htmlより、
米債務、10月17日に上限超え 財務長官、議会に伝達
2013年9月25日 23時41分

 【ワシントン共同】ルー米財務長官は25日、連邦政府が抱える債務について、一部債券の発行停止など特別措置を続けても10月17日までに法定上限を超える見通しを明らかにした。上限引き上げの権限を持つ議会指導部への書簡で伝えた。
 上限を超えると米国債がデフォルト(債務不履行)となり、世界の金融市場が大混乱に陥る懸念がある。
 書簡によると、10月17日時点で手元資金は300億ドル(約3兆円)未満となる見通し。政府が国債償還などの支払いができなくなり「大惨事を招く」と指摘している。

http://mainichi.jp/select/news/20130924k0000e030096000c.htmlより、
米国:「来年度予算案」「債務上限問題」 与野党続く対立
毎日新聞 2013年(最終更新 09月24日 08時21分)

 【ワシントン平地修】ねじれ状態にある米議会での財政問題を巡る与野党対立の長期化が米経済を再び危機にさらしている。米国では10月から新年度が始まるが、その裏付けとなる国の予算案がいまだに可決されず、今月中に与野党が妥協できなければ“金欠”で政府機関が閉鎖に追い込まれかねない。また、これとは別に、政府の資金繰りに不可欠な連邦債務上限の引き上げ問題でも対立が続き、10月半ばまでに上限が引き上げられなければ、米国債が債務不履行(デフォルト)となる恐れがある。
 「議会は中間層を助けるためではなく、私にけんかを売ることに集中している」。オバマ大統領は20日、ミズーリ州カンザスシティーでの演説で野党共和党を非難。9月末までに新年度予算案を成立させることと、10月中旬までに債務上限を引き上げるという「二つの期限」を守るよう訴えた。
 10月1日からの新会計年度を迎えるまでに議会で予算案が成立しなければ、政府機関は閉鎖に追い込まれ、行政サービスが滞る。一方、連邦政府の債務はすでに約16・7兆ドルの上限に到達。今は財務省が政府内での一部の資金配分先送りなどでデフォルトを回避しているが、10月半ばにはこれも限界に達し、米国債の元利払いができなくなる恐れがある。
 共和党が多数の議会下院は20日、政府機関閉鎖を避けるために10月1日から2カ月半の暫定予算案を可決した。しかし、同案はオバマ大統領の最重要政策の一つである医療保険制度改革法(オバマケア)に関連する予算の撤回が盛り込まれており、与党民主党が多数の上院では成立の見込みがない内容。オバマ大統領も下院案のままなら拒否すると表明しており、新年度予算を人質にした与野党攻防が続いている。
 一方、連邦政府の債務上限の引き上げを巡っても、共和党は医療保険改革見直しを狙いに揺さぶりを続ける。具体的には、債務上限を1年間凍結する代わりに、改革法の実施を1年延期する法案を提出することを検討。共和党出身のベイナー下院議長はオバマ政権や民主党がこの分野で何らかの譲歩をしない限り、予算案成立や債務上限引き上げに応じない姿勢を示している。

http://mainichi.jp/select/news/20130924k0000e030096000c2.htmlより、
 米財政は2008年のリーマン・ショック後の税収落ち込みや経済対策への支出を主因に急激に悪化。12会計年度まで4年連続で財政赤字が1兆ドルを突破し、赤字削減が喫緊の課題となったが、増税の必要性も主張する民主党のオバマ政権と、歳出大幅カットを唱える共和党の対立が続いたまま、抜本策が講じられていない。
 11年には政府の資金繰りに不可欠な連邦債務上限(米国債の発行枠)引き上げ問題を巡り、与野党が対立。米政府がデフォルトに陥るリスクが高まったとして、米国債の格付けが最上級から引き下げられ、国内外の金融市場を動揺させた。
 12年末から13年はじめにかけては、ブッシュ政権時代に導入した大型減税の期限切れと、財政赤字抑制のための強制的な歳出削減措置が重なり、米景気が崖から落ちるように悪化するとされた「財政の崖」問題に直面。オバマ政権と議会は富裕層を除く減税延長や、歳出強制削減の2カ月先送りで、米経済の崖からの転落をぎりぎりで回避した。
 しかし、上院では民主党が、下院では共和党が多数を握るねじれ議会の下、抜本的な対応は講じられず、歳出の強制削減措置は今年3月に発動。米連邦準備制度理事会(FRB)は今月18日、市場の予想に反し量的緩和第3弾(QE3)の縮小開始を見送ったが、バーナンキFRB議長は記者会見で「米政府機関閉鎖や債務上限問題は懸念材料」と、金融政策にも影響が及んでいることを認めた。
 ルー財務長官は「上限が引き上げられないと10月半ばにも資金は底をつく」と警告する。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO60543690T01C13A0EA1000/より、
日経新聞 社説 銀行の社会的責任は重い
2013/10/3付

 みずほ銀行が暴力団構成員など反社会的勢力との取引を把握しながら、2年以上も対応しなかったとの理由で、金融庁から業務改善命令を受けた。
 国や自治体、民間企業が一体となって暴力団の排除を進めるなか、銀行の社会的責任への自覚が不十分だったと言わざるを得ない。みずほ銀は取引の中身や問題が放置された理由を公に説明し、経営責任を明確にすべきだ。
 合計230件、2億円の不正取引は提携ローンと呼ばれる仕組みを使っていた。まず信販会社が顧客を審査して自動車の購入資金を貸し、その後に銀行が提携先の信販会社に融資する。
 提携ローンは他の銀行も使っており、自動車購入のほか教育資金などに広がっている。様々な顧客の資金需要に迅速に応えるための仕組みであり、銀行が活用することそのものに問題はない。
 ただ、今回のみずほ銀のように審査を外部に委託すると、顧客への目配りが行き届かない恐れがある。事後的に問題が分かった時点で、信販会社との融資関係を解消するといった対応が要る。
 みずほ銀は、2010年12月に問題を把握した後も、そうした抜本的な対応をとらなかった。さらに問題取引の事実を経営トップらは知らなかった。法令順守への姿勢が疑われても仕方ない。
 分からないのは、2年以上も問題を放置したのはなぜかという点だ。改善命令を受けたみずほ銀は、まだ記者会見を開いていない。預金者や株主の不安を鎮めるためにも説明責任を果たすべきだ。
 07年には三菱東京UFJ銀行が反社会的勢力との取引に関連して、行政処分を受けたことがある。規模が大きく歴史の古い組織は、不正が介在する余地も広がる。いま一度、みずほ銀以外の金融機関も、審査や法令順守の体制を点検する必要がある。
 預金の受け入れや資金の供給といった重要な役割を果たすためにも、銀行が社会の信頼を損なうわけにはいかない。

http://mainichi.jp/opinion/news/20131003k0000m070153000c.htmlより、
社説:みずほ改善命令 今度こそ変わらねば
毎日新聞 2013年10月03日 02時36分

 まだあったのか。そう思わずにいられない、みずほ銀行による反社会的勢力との取引発覚である。信販会社を通じて行った融資の中に、暴力団員向けの契約が230件もあったことが金融庁の検査でわかり、業務改善命令を受けたのだ。総額約2億円と他行にみない規模だった。
 信用第一の銀行で、預金者の資金が一部とはいえ暴力団員に渡ったのだ。いまだに経営責任者が説明の記者会見も開かないのは理解し難い。
 融資は、自動車ローンなどを扱うグループ内信販会社と提携したタイプだった。資金を貸すのは銀行だが、借り手の返済能力などを直接審査するのは信販会社だ。信販会社の保証付きなので、万一焦げ付いても銀行に損が及ばない仕組みである。
 それ自体に問題はないが、みずほ銀の場合、借り手が反社会的勢力であるか否かをチェックする体制が整っていなかった。チェックに必要な情報を銀行側が持ち合わせていながら、それを活用することなく、融資を実行していたという。融資後に、行内チェックで暴力団員との取引を発見したが、契約を解消する措置までは取らなかった。
 金融庁が重くみたのは、こうした反社会的勢力との取引が多数存在したにもかかわらず、金融庁に指摘されるまで、2年以上も組織として対策を講じなかった点だ。情報が担当役員レベルで止まり、経営の問題に上ることなく放置されていた。
 反社会的勢力との関係では、みずほの前身の一つ、旧第一勧業銀行の役員経験者らが総会屋への利益供与事件で有罪判決を受けている。総会屋と金融機関との関係は社会問題にもなり、金融機関は反社会的勢力との関係根絶を決意したはずだった。
 さらに暴力団については、社会のあらゆる場面で取引を徹底排除しようという動きが広がっているところである。反社会的勢力と絶対にかかわらないという意識が、みずほの組織内に浸透していたとは言い難い。
 問題の中身は異なるとはいえ、2度の大規模なシステム障害、顧客情報の暴力団への流出など、みずほフィナンシャルグループ(FG)関係のトラブルや不祥事がなくならない。第一勧業、富士、日本興業の3行が経営統合して誕生した組織だが、出身母体ごとの心理的垣根が情報の共有を阻んだり、問題解決を遅らせたりすることはなかったのか。
 前身の持ち株会社発足から13年になる今年、みずほFGは、傘下の2銀行をようやく一つに統合した。遅れた一体化を進めるためにも、まず今回の問題を徹底的に洗い出し、公表することだ。形だけの処分でやりすごそうとすれば、再び問題を起こし、信用を一層失うだけである。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年 10月 3 日(木)付
温暖化防止―後悔しない政策を早く

 確信度は、95%。20世紀半ば以降に進んだ地球温暖化は、人間活動が主な要因であった可能性が「きわめて高い」。
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第1作業部会が先週、6年ぶり5回目の報告書をまとめた。
 前回の報告書では、人間活動に伴う二酸化炭素など温室効果ガスの排出が温暖化を進めているとする主張に、批判が相次いだ。一部論文で間違いが見つかったことも疑念をよんだ。
 だが今回、懐疑論を乗り越えて、人類が温暖化を引き起こしていることを、より高い確信度によって指摘した。
 9千本以上の論文に基づく報告書案を、科学者1千人以上が点検した。現時点での公約数とも言うべき予測を示した意味は大きい。
 報告書によると今世紀末に最大で平均気温が4・8度、平均海面が82センチも上昇しかねない。高温や大雨、干ばつなど極端な気象現象も増えそうだという。
 3千メートルより深い深海でも水温が上昇している可能性が高い、などの新しい見解も盛り込まれた。海流の変化で大規模な異常気象を招くかも知れない。
 とり返しのつかない事態を避けるため、国際社会は気温上昇を産業革命前に比べ2度未満に抑えることを長期目標にした。だが、温暖化対策は停滞し、目標達成が難しくなりつつある。
 今回の報告書を踏まえて、11月にワルシャワで開かれる国連気候変動枠組み条約締約国会議では、世界全体の温室効果ガス排出を一段と減らす方向で議論が進むだろう。
 各国政府は「将来、後悔しないための政策」を講じるという原点に戻り、個別利害を超えた地球益・人類益の実現に向けた交渉に力を入れるべきだ。
 その点で、日本政府が20年の排出削減目標を05年比6~7%減程度で調整しようとしていることは不十分極まりない。これでは条約が基準とする90年水準より排出が増えかねない。
 鳩山政権は「90年比25%減」を国際公約した。事故で原発に期待できなくなったとはいえ、90年と同水準では無気力とのそしりをまぬがれないだろう。
 朝日新聞社主催の地球環境フォーラムで豪州の専門家は「子や孫が生きられる世界を残さないといけない。エネルギーや運輸のシステムを変えるには時間がかかる。いますぐ行動に移さないといけない」と語った。
 政府だけではない。世界の英知を集めた報告書を、企業や市民、自治体などさまざまなレベルで生かしていきたい。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO60430180R01C13A0EA1000/より、
日経新聞 社説 懐疑論を超え温暖化抑止に行動を
2013/10/1付

 地球温暖化の進行は「疑う余地がない」とする報告書を国連の作業部会が公表した。
 猛暑や豪雨など異常気象が頻発し温暖化はもはや現実の脅威といえる。世界各国が足並みをそろえて温暖化ガスの削減に取り組むことが急務だ。日本政府は新たな削減目標を早く決め、必要な政策を講じる責任がある。
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第1作業部会が報告書を公表したのは6年ぶり。21世紀末の地球の平均気温は2000年ごろに比べて、最も高いケースで4.8度上昇するなどとした内容は、前回報告とおおむね同じだ。同じであることに、今回は重要な意味がある。
 前回の報告書が出た後、記述内容に誤りが見つかり、IPCCは報告の作成手順を改め、点検を厳正化した。また気候学者らが私的にやりとりした電子メールが暴露され、温暖化の科学への信頼を揺るがせかねない誤解を生んだ。
 さらにここ10年ほど世界の気温上昇のテンポが鈍っているため、温暖化の進行そのものに疑問を投げかける声もあった。
 今回の報告は、様々な批判や懐疑論を踏まえたうえ、世界の気候学者らが改めて温暖化の進行と脅威を確認した点で意義が大きい。
 気温上昇の鈍化の原因も近年は海が熱を吸収し温まっているためだとわかった。海の生態系への悪影響が心配なうえ、いずれ大気の温度上昇も避けがたい。
 一方、この6年間、世界の温暖化対策は停滞した。国連の会議は各国の利害調整ができず、今世紀末までの気温上昇を「2度未満」に抑えると決めたものの、その達成は年々難しくなるばかりだ。
 日本政府はいったん国際社会に約束した「20年までに温暖化ガスを1990年比で25%削減する」目標を白紙に戻す方針だが、代わりの目標を打ち出せないでいる。
 原子力発電所の稼働数が見通せず、原子力や火力などの電源構成が決まらないからだという。しかしこれは考え方の順序が違う。
 温暖化ガスの削減目標は将来の電源構成が定まった後に決めるものではない。削減目標が先にあり、火力や原子力、再生可能エネルギーをどう組み合わせるかの判断基準とするのが本来だ。
 政府は新削減目標と対策を早期に示し、温暖化抑止に向けた国際協力体制の強化を後押しする役割を果たすべきだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20131001k0000m070105000c.htmlより、
社説:温暖化報告書 人類の危機への警告だ
毎日新聞 2013年10月01日 02時30分

 二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出増が続くと、今世紀末に地球の平均気温は最大4.8度、海面水位は同82センチ上昇する。豪雨や干ばつが頻発し、島々は存在が脅かされる。国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第1作業部会がまとめた第5次評価報告書が描く未来の地球の姿は、温暖化対策は待ったなしだと、人類に改めて警告を発したものといえる。
 日本にとっても大きな問題だ。今夏は各地で記録的な猛暑となり、豪雨や竜巻の被害も相次いだ。温暖化が進むと、こうした極端な気象現象の頻度が増し、国民の健康や農作物の生育などにも影響は及ぶ。
 報告書の作成には各国政府の代表も参加しており、温暖化を巡る国際交渉の科学的な根拠となる。注目されるのは、人間の活動が地球温暖化の主因である確度が「95%以上」に引き上げられたことだ。前回報告書は「90%以上」だった。人為的温暖化への懐疑論は否定された。
 生態系などへの深刻な打撃を避けるため、産業革命(18世紀後半)前に比べ気温上昇を2度未満に抑えることが国際交渉の目標だが、各国が掲げる現状の対策では不十分だ。世界全体のCO2排出量は途上国が先進国を上回る。中国やインドなど新興国の排出増が著しい。南北間の対立を超え、途上国も含めた大胆な削減対策が不可欠だ。各国政府は報告書の内容を真摯(しんし)に受け止め、交渉の促進と対策の加速に努めてほしい。
 そのための大きなステップが、11月にポーランドで開かれる気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)だ。京都議定書に代わる2020年以降の排出削減の新体制作りと、20年までの各国の削減目標の引き上げが焦点となっている。
 交渉をリードするのは米国だ。15年の合意を目指す新体制作りでは、各国が自主目標を掲げ、互いに審査し合う案を示し、中国など新興国からも一定の理解を得ている。
 「20年に1990年比25%削減」とした国際公約を東京電力福島第1原発事故で見直し中の日本は、交渉で存在感を示せていない。安倍晋三首相はCOP19で新目標を示す方針だったが、経済産業省が目標設定に慎重になっている。原発の再稼働が見通せないことが理由だという。
 だが、日本は世界第3位の経済大国だ。原発事故を言い訳に排出削減に後ろ向きな姿勢を続ければ、各国から批判を浴びかねない。
 意欲的な削減目標を立て、原発頼みの温暖化対策を見直すことこそ、事故を経験した日本が世界に果たすべき役割なのではないか。省エネ技術など日本の得意分野をさらに伸ばす機会にもなるはずだ。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年 5月 6 日(月)付
石炭火力―脱原発と歩み合わせよ

 東京電力による石炭火力発電所の建設をめぐって、待ったをかけた環境省と推進側の経済産業省の協議が決着した。
 政府は今後、脱原発にともなう代替電源として、東電に限らず、コストの安い石炭火発の新増設をやりやすくする。環境影響評価(アセスメント)の期間も最短で1年強にする。ほぼ経産省の主張に沿う。
 二酸化炭素の排出が増えてしまうことへの環境省の懸念はわかる。しかし、電力需給や燃料費の増大を考えれば、脱原発を進めるうえでやむをえない選択だろう。
 今回の環境省の対応ぶりは説得力に欠けた。
 脱原発依存に向けた石炭火発の活用は早くから国の政策として位置づけられていたのに、東電の入札が具体化してから表立って異議を唱えるのでは混乱するのも当然だ。実用化していない技術まで基準に盛り込もうとする姿勢にも無理があった。
 環境省ときちんと意思疎通をはからなかった経産省にも問題がある。
 今回のようなことが頻繁に起きるようでは、せっかく生まれつつある電力ビジネスへの新規参入機運を、政府みずから妨げることになりかねない。
 原発事故を経て私たちをとりまく状況や意識は大きく変わった。環境省に早急に取り組んでもらいたいのは、3・11後の現実を踏まえ、原発に頼らない社会における温暖化対策を打ち出すことだ。
 もちろん、電力業界としても自主的な取り組みはする。加えて、ほかのエネルギー利用や環境保全も含めた全体的な視野から対策を講じていくのが政府の仕事である。
 自然エネルギーの着実な普及も重要だ。
 今後、電力の自由化が進んでいくと、消費者が自ら使う電力会社や電源を選択することも可能になる。自然エネルギーへの消費者の需要が強まれば、電力関連ビジネスも自然とそちらに向かうはずだ。
 政府には、従来のように細かく電源の種類や比率を決めることではなく、社会が環境負荷の小さいエネルギーの利用へと向かうよう、うまく誘導する制度設計を求めたい。
 日本は京都議定書からの離脱で4月以降、法的根拠や具体的な計画がないまま温暖化対策が宙に浮いている。
 今秋の国連気候変動枠組み条約の締約国会議(COP19)を念頭に、脱原発を明確にした日本の方向性を国際社会に示すよう作業を急いでほしい。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO54486700Y3A420C1PE8000/より、
日経新聞 社説 真剣さ見えない温暖化対策
2013/4/28付

 地球温暖化対策の国際協力体制について話し合う国連の会合が29日からドイツのボンで開かれる。
 会合の主な論点は2つだ。2020年までの温暖化ガス削減目標の積み増しと、20年以降の「ポスト京都議定書」における国際協力のあり方だ。今年11月の気候変動枠組み条約締約国会議(COP19)に向け議論を詰める。
 だれが温暖化ガス削減の義務を負うのかで先進国と途上国が対立する構図に変化はなく交渉の進展は容易ではない。しかし米国のオバマ大統領が改めて温暖化抑止に意欲を示すなど、各国は何とか打開の道を探ろうとしている。
 一方、日本はこの問題に背を向けたかのようだ。安倍政権は「20年に1990年比で25%削減」とした現行の削減目標を見直す方針だが、新目標をどうするかの議論は進んでいない。
 原子力発電所がほとんど稼働せず火力発電への依存が高まるため、二酸化炭素(CO2)排出が増えるのは仕方がない。そんなあきらめがあるとしたら問題だ。目標がどうあれ、やるべきことはたくさんある。
 まず省エネの徹底だ。家庭やオフィスの照明や冷暖房、工場の排熱利用などまだ余地がある。一部の大企業は自主的な温暖化ガス削減計画を示したが、それだけでは足りない。すべての産業や家庭、交通でもう一段の省エネに取り組む必要がある。円安などでエネルギーコストが増している。省エネは燃料費節約の効果も大きい。
 再生可能エネルギーは潜在力の大きな風力や地熱発電などをもっと伸ばしたい。政府は必要な規制緩和を速やかに実行すべきだ。安全を確認したうえで原発を稼働させればCO2削減につながる。
 ポスト京都の国際枠組みは米国や中国など主要排出国の全員参加が不可欠だ。最大限の排出削減を実現する新しい協力のあり方について日本も知恵を出すべき時だ。
 政府の取り組みは真剣さを欠く。こんなありさまでは環境対策で先進国だと自負はできまい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013041202000139.htmlより、
東京新聞【社説】温暖化対策 「空白」は不信を招く
2013年4月12日

 京都議定書からの離脱を受けて、地球温暖化対策推進法の改正案が衆院で可決された。新たな削減計画の策定は秋になり、日本の温暖化対策は事実上「空白状態」だ。長引くほど世界の不信は募る。
 四月。新学期が始まりました。でも先生は秋までお休みします。皆さん、自習に励んで、これまで以上の成績を修めてください-。
 要は、そういうことらしい。
 地球温暖化対策推進法(温対法)は、先進国に温室効果ガスの削減義務を課す京都議定書の約束を実現するための法律だった。温対法という土台の上に京都議定書目標達成計画が策定され、それに基づいて、一九九〇年比で二〇一二年までに6%減という第一約束期間の削減義務に臨んできた。
 6%の目標は、東欧などから排出枠を買い取るなどして、何とか達成できそうだ。だが、一三年以降の第二約束期間(二〇年まで)に日本は参加していない。大量排出国の米中などに削減義務がなく、効果が見込めないからという。当面は企業や国民の自主的な削減努力に任せることになる。
 議定書からの離脱によって、改正案には、目標達成計画に代わる地球温暖化対策計画を策定することなどを盛り込んだ。新たな計画は、新エネルギー基本計画ができたあと、十一月にポーランドで開かれる気候変動枠組み条約第十九回締約国会議(COP19)までにつくるという。
 原発を勘定に入れて、削減計画を立てようというのなら、間違いだ。原発事故の放射能汚染は身に染みているはずだ。再生可能エネルギーへの移行こそ、温暖化対策の未来を開く王道である。
 日本はいわば京都議定書の生みの親。それだけに国際社会はこの対策の空白に、不信を募らせている。
 第二約束期間に不参加ならなおのこと、中長期の具体的な削減目標を法律に書き込んで、先進技術国として、何を、いつまでに、どうするのかを世界に示すべきではないか。目標と道筋の存在は、省エネビジネスの成長にも強い追い風になるはずだ。
 安倍政権は、3・11以前に国連で提示した二〇二〇年に一九九〇年比25%削減目標をゼロベースで見直すという。
 だが「二〇五〇年80%削減」、「気温上昇は産業革命前と比べて二度未満」の国際合意は生きている。それに見合う目標を立てないと、世界は納得しないだろう。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013040802000131.htmlより、
東京新聞【社説】石炭火力 CO2抑え安定電源に
2013年4月8日

 政府が石炭火力発電の推進を打ち出した。原発停止で急増する火力向けの燃料を割安な石炭に置き換え、電気料金値上げを抑える狙いだ。それには二酸化炭素(CO2)削減の技術革新が欠かせない。
 菅義偉官房長官、茂木敏充経済産業相、石原伸晃環境相、岸田文雄外相が集まり、石炭火力発電の活用を申し合わせた。石炭のCO2排出量は天然ガスの約二倍に上る。なぜ、地球温暖化の原因物質を大量にまき散らす石炭に頼ろうというのか。
 その理由として挙げられるのは、原発再稼働への悲観論、そして価格が安い石炭の経済性だ。
 原発推進の司令塔ともいうべき原子力委員会からも「再稼働できる原発は多くて十基」とのため息が漏れてくる。全国に立地する五十基の二割にすぎない。原発周辺の活断層、地元自治体などの強い反対、四十年を超える老朽原発の廃炉問題などを見据えれば当然というべきであり、違和感はない。
 だが、液化天然ガス(LNG)をはじめ、原発を肩代わりする火力発電向けの燃料輸入が年間約三兆円も増えてしまった。その直撃で福島原発事故の当事者、東京電力に続いて関西、九州電力が料金を値上げし、東北、四国電力も経産省に値上げを申請している。
 米国で割安のシェールガスを調達して燃料費を圧縮しようにも、米国は欧州や韓国などにも輸出するので日本の輸入量は多くて年一千万トン。二〇一二年の輸入量八千七百万トンの一割強にとどまる。
 原発は先細りし、現段階ではシェールガスにも過大な期待を寄せられない。だからといって、石炭活用にすんなり理解が得られるだろうか。自民党政権には、〇九年に福島県に計画されていた石炭火力を、CO2対策が不十分だとして断念させた経緯がある。説明責任を果たすよう求めたい。
 石炭には百年以上採掘可能との試算がある。一キロワット時の燃料単価も石油の四分の一、LNGの半分以下の四円。安くて豊富な石炭を使う発電技術をいかに高度化していくのか。その工程表などを示して国民の理解を得るべきだ。
 横浜市の磯子火力は世界最高の熱効率45%を実現した。現在は広島県で石炭ガス化やCO2回収などの技術を組み合わせ、65%に引き上げてCO2排出をLNG並みに抑え込む実証試験の準備中だ。世界の発電量の四割は石炭が担い、中国では七割にも上る。
 日本には世界でも役立つ優れた環境技術が積み上がっている。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO53306420Y3A320C1EA1000/より、
日経新聞 社説 温暖化対策の空白を埋めよ
2013/3/28付

 日本の地球温暖化対策は4月1日から事実上の「空白期間」に入る。地球温暖化対策推進法(温対法)に基づき進めてきた二酸化炭素(CO2)などの削減計画が年度末で期限切れとなるからだ。
 政府は15日、温対法の改正案を閣議決定するとともに地球温暖化対策推進本部(本部長・安倍晋三首相)の会合を開き、改正法に基づく新対策ができるまで現行計画と「同等以上」の取り組みを企業や国民に求めると決めた。
 法律や具体的な政策の裏付けのない言葉だけの要請だ。日本の温暖化対策はここへきて後退したとの印象を免れない。対策の空白を早期に埋める必要がある。改正法を速やかに成立させ、グリーンイノベーション(環境技術による産業や社会の革新)を掲げる国にふさわしい明確な削減目標の下で、家庭も産業界も一体になった対策を展開するようにすべきだ。
 ほとんどの原発が停止し火力発電の拡大で電力を賄っている。その結果、電力1キロワット時当たりのCO2排出量は増大、従来と「同等以上」の節電努力でないとCO2排出は増える。
 一層の節電とともに、再生可能エネルギーの拡大と原発の再稼働が必要だ。工場や自動車など電力以外の省エネももう一段強めなければいけないだろう。
 安倍政権は、民主党政権が決めた「温暖化ガス排出を2020年までに25%減らす」目標を「ゼロベースで見直す」方針だ。まとめるのは秋になるという。原子力政策を含む中長期のエネルギー基本計画がまとまらないとCO2削減目標も決まらないとの理屈からだが、本当にそうか。
 地球温暖化防止のため日本が責任をもって実行する削減量を掲げそこから電源のベストミックスを探る議論があっていいはずだ。
 首相は第1次安倍政権の07年に「50年に世界の温暖化ガス排出量を半減しよう」と提言し世界から支持を得た。国内の削減目標は世界半減の目標と整合するものになるのが自然だろう。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130319k0000m070121000c.htmlより、
社説:地球温暖化対策 政府の覚悟が見えない
毎日新聞 2013年03月19日 01時31分

 地球温暖化対策は、世界共通の課題である。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を体験した日本は、先進国の一員として、脱原発依存と温暖化対策の両立を目指すべきだ。そのためには、長期的ビジョンの下、再生可能エネルギーの導入促進や省エネの拡大など低炭素・低エネルギー社会の実現に向けた施策を着実に実行していく必要がある。
 ところが、政府が閣議決定した地球温暖化対策推進法(温対法)改正案を見ると、温室効果ガスの削減目標が盛り込まれないなど、政権の覚悟がまったく感じ取れない内容となっている。これでは、日本は温暖化対策に後ろ向きな国だというメッセージを世界に送ることになろう。
 日本の温暖化対策は、温対法で定めた「京都議定書目標達成計画」に基づき進められてきた。12年度末までの5年間平均で温室効果ガスを90年度比6%削減することが目標で、達成できる見通しだ。しかし、13年度以降は議定書への参加を見送ったため、温対法は今後の対策の裏付けとはならなくなった。改正案は、基本的に、現行法の「京都議定書目標達成計画」という文言を「地球温暖化対策計画」に書き換えただけの形式的なものにとどまっている。
 民主党政権は20年に25%削減する中期目標を盛り込んだ地球温暖化対策基本法案を閣議決定したが、総選挙で廃案となった。安倍新政権が打ち出したのが、25%削減目標の抜本的見直しだ。原発再稼働が見通せないことが背景にある。11月にポーランドで開かれる国連気候変動枠組み条約第19回締約国会議までに新たな対策をまとめるという。
 大震災と原発事故を踏まえ、エネルギー政策を見直すのは当然で、中期目標の見直しはやむを得ない。だが、今国会で改正法が成立したとしても、新計画の策定まで半年以上もの空白期間が生じる。政府は、その間も現行計画と同水準の対策に取り組むと言うが具体性に欠ける。対策を立ち止まらせないためにも、「50年までに80%削減」という長期目標を改正案に盛り込むべきだ。
 中長期のビジョンがあればこそ技術革新が起きる。省エネ、再生エネの拡大は世界的な流れだ。そもそも、11月までに原発の再稼働が見通せる状況になるのか疑問で、原発に依存しない温暖化対策こそ重要となる。
 コストの安い石炭火力発電の拡大を目指す動きもあるが、二酸化炭素(CO2)の排出増につながる。温暖化対策の観点からは、石炭火力の排出抑制の工夫も欠かせない。
 いずれにせよ、政府が削減対策に積極的に取り組む姿勢を示せなければ、国際交渉での日本の発言力は一層低下するだろう。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickupより、
朝日新聞 社説 2013年 10月 2 日(水)付
17年ぶり消費増税―目的を見失ってはならぬ

 安倍首相が、消費税の増税を決めた。5%の税率は来年4月から8%に上がる。
 97年4月に3%から5%になって以来、17年ぶりの消費増税だ。これまでは所得税などの減税とセットだったが、今回はない。金額にして8兆円余り。わが国の税制改革史上、例のない大型増税である。家計への負担は大きい。

■一体改革の原点
 それでも、消費増税はやむをえないと考える。
 借金漬けの財政を少しでも改善し、社会保障を持続可能なものにすることは、待ったなしの課題だからだ。
 「社会保障と税の一体改革」という原点に立ち返ろう。
 国債を中心とする国の借金の総額は国内総生産(GDP)の約2倍、1千兆円を突破した。今年度の一般会計では、新たな国債発行が40兆円を超え、予算の半分近くに及ぶ。
 最大の原因は、高齢化に伴う社会保障費の伸びだ。医療や年金、介護の財源は、保険料や窓口負担だけでは足りない。国や自治体が多額の予算を投じており、国の社会保障費は年に1兆円ほど膨らみ続ける。
 将来の世代に借金のツケを回しながら、今の世代の社会保障をやりくりする――。こんなことをいつまでも続けられるはずがない。社会保障を安定させ、財政の危機を未然に防ぐには、今を生きる私たちがもっと負担するしかない。
 では数多い税金のうち、なぜ消費税なのか。
 社会保障による給付は高齢者向けが中心だ。お年寄りの割合は上がり続けており、所得税など働く世代の負担だけに頼るわけにはいかない。
 しかも、現役組は賃金が増えないなか、子育てや教育、住宅など多くの負担を抱える。支援を強化しないと、人口減少に拍車がかかりかねない。
 こうした点を考えれば、国民が幅広く負担し、税収も安定している消費税が、社会保障の財源に最もふさわしい。
 あわせて豊かな人たちを対象に、所得税や相続税を強化する必要がある。格差を縮めるためにも不可欠だ。ただ、これだけで消費増税に匹敵する財源を確保するのは難しい。

■法人税減税への疑問
 政府の責任は、規制改革などで経済を成長させつつ、税金をしっかり集め、むだ遣いせず効果的に配分することだ。この三つの課題に向き合わなければ、増税への理解は得られない。
 ところが、安倍政権は増税で予想される景気悪化への対策を理由に、これに反するような政策を打ち出した。
 5兆円の経済対策である。
 所得の少ない人の負担が重い消費増税では、低所得者への支援策が必要だ。補正予算にその費用を盛り込むのはわかる。
 しかし、対策の柱がなぜ、法人税の減税なのか。
 政権は、与党内の根強い反対を押し切り、法人税の減税方針を打ち出した。東日本大震災の復興費にあてる上乗せ増税を予定より1年早く今年度で打ち切ることや、その先の税率引き下げの検討を急ぐという。
 企業は経済成長の担い手であり、雇用の場でもある。国際的に法人減税の競争が続いているのも事実だ。
 ただ、日銀の統計では、企業(金融を除く)は現金・預金だけで220兆円も抱え込んでいる。多くの企業は、収益が上向いても使おうとしない。
 まず、こうした現状を改める必要がある。安倍首相は税率引き下げをテコに賃上げを迫る構えだが、財政への影響が大きい一律減税の前に、賃金や雇用、投資を増やした企業の税負担を軽くする手立てに集中すべきではないか。

■政権に自覚はあるか
 経済対策は支出面でも疑問がある。代表例が公共事業だ。
 老朽化した社会インフラの更新は急ぐべきだが、公共事業が足もとの景気を支える効果に飛びつき、「金額ありき」で上積みする姿勢がありありだ。バブル崩壊後、毎年のように補正予算を組んで財政を悪化させてきた愚を繰り返すのか。
 消費税の制度そのものにも課題が残る。
 国民が払った税金がきちんと税務署に納められることは税制の大原則である。業者の手元に一部が残る「益税」対策を徹底することが欠かせない。
 業者間の取引に、税額を明示したインボイス(明細書)を導入すべきだ。商品やサービス自体の価格と消費税分の区分けがはっきりすれば、取引時の転嫁がしやすくなり、立場の弱い中小事業者が泣き寝入りすることも減らせる。
 税金は安いにこしたことはない。それでも納税するのは、政府が暮らしに必要な政策に取り組むと信じるからだ。
 消費増税の目的をはき違えていないか。安倍政権は、国民の厳しい視線が注がれていることを自覚すべきだ。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/131002/fnc13100203100003-n1.htmより、
産経新聞【主張】消費税8%決定 日本再生へ確実につなげ 成長戦略の具体化が急務だ
2013.10.2 03:09 (1/3ページ)

 安倍晋三首相が消費税率を来年4月から3%引き上げ、8%とすることを正式表明した。安定的な社会保障財源の確保と財政健全化に向け、確かな一歩を踏み出した意義は大きい。
 安倍首相は1日の記者会見で増税の理由について「国の信認を維持し、持続可能な社会保障制度を次の世代に引き渡すため」として国民に理解を求めた。
 景気への影響を懸念し、増税先送りを求める声は政府内にもあった。その中で、ぶれずに法律通りに増税の実施を決断した安倍首相の姿勢を支持したい。
 消費税増税は17年ぶりとなる。日本は今、デフレから脱却し「失われた15年」を埋める過程にある。安倍首相は増税による景気の落ち込みを防ぎ、日本経済を上向かせる成長戦略の具体化を急ぐことが必要だ。増税による財政再建と成長は「日本再生」のために、どちらも欠かせない。

 ≪政治も身を切る覚悟を≫
 一方で、国民に増税という負担を求める以上、政治も自ら身を切る覚悟を示すべきだ。予算削減などを通じた政府のスリム化を図ることも必要だ。安倍首相は選挙制度改革を通じた定数削減などを主導し、増税への国民の理解を求めてほしい。
 日銀がまとめた9月の短観で、企業心理の大幅改善が確認された。今年4~6月期の実質国内総生産(GDP)も年率3・8%増に上方修正され、堅調な個人消費に加えて設備投資もプラスに転じた。来年4月の増税実施に向け、景気は着実に回復傾向にあるとの判断は妥当だ。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/131002/fnc13100203100003-n2.htmより、
2013.10.2 03:09 (2/3ページ)
 増税の目的は言うまでもない。高齢化に伴って増加が続く社会保障財源について、税収が景気に左右されにくい消費税の税率引き上げで確保することだ。
 税収と同じ規模の国債発行に頼る、借金頼みの財政運営には決別しなくてはならない。
 財務危機に見舞われた欧州をみても、財政に対する市場の信認を失えば国債価格は暴落し、金利は急騰する。そうなれば景気を直撃し、国の予算編成にも支障が生じる。持続可能な財政は国の成長を支える基盤と認識すべきだ。
 その意味でも国際公約となった消費税増税の実施は、安定的な経済成長を果たす日本再生に舵(かじ)を切る意思表示と受け止めたい。
 ただ、すでに政府の債務残高が1千兆円を超え、財政再建は増税のみでは達成できない。消費税を法律通りに平成27年10月に10%に再び引き上げても、国と地方の基礎的財政収支を32年度に黒字化させるとの政府目標はクリアできない。厳しい歳出削減にも同時に取り組む必要がある。
 とくに、高齢化で膨張が続く社会保障費への切り込みは待ったなしだ。現行制度をこのまま続ければ、高齢化などの影響で年1兆円規模で必要な予算は増える。これを放置していては、財政健全化の道筋は描けない。社会保障制度改革国民会議が示した改革案の具体化を急いでほしい。
 増税対策で検討するとした復興特別法人税の前倒し廃止は、日本経済に活力を与えることを目指すものだ。

http://sankei.jp.msn.com/economy/news/131002/fnc13100203100003-n3.htmより、
2013.10.2 03:09 (3/3ページ)
 被災地の復興財源の確保は当然だが、これによって税負担が軽減される企業は、積極的な設備投資や賃金引き上げなど、日本経済の成長に資する責務があることを忘れてはならない。

 ≪バラマキは許されない≫
 消費税増税に伴う低所得者対策では、住民税の非課税世帯を対象に1人あたり年間1万~1万5千円を支給するという。増税の影響を強く受ける低所得者層への配慮は必要だが、単なるバラマキは許されない。
 低所得者対策は、やはり軽減税率の導入を軸とすべきだ。
 コメ、みそなど基礎的な食料品や新聞・雑誌などに消費税負担を抑える軽減税率は透明性が高く、低所得者に恩恵が広く行き渡る。欧州では付加価値税(消費税に相当)の税率が20%前後だが、生活用品を広く軽減対象と認めることで高い税率に国民の理解を得ている。日本も導入すべきだ。
 産経新聞とFNNが9月実施した世論調査によると、来年4月から予定通りの消費税増税の実施を「支持する」と答えた人は、3分の1にとどまった。
 生活に直結する消費税増税に反対する声は根強い。これからも丁寧な説明が欠かせない。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013100202000148.htmlより、
東京新聞【社説】増税の大義が見えない 消費税引き上げを決定
2013年10月2日

 安倍晋三首相が来年四月から消費税の8%への引き上げを決めた。終始、国民不在のまま進んだ大増税は、本来の目的も変質し、暮らしにのしかかる。
 一体、何のための大増税か-。疑問がわく決着である。重い負担を強いるのに、血税は社会保障や財政再建といった本来の目的に充てられる保証はない。公共事業などのばらまきを可能とする付則が消費増税法に加えられたためだ。肝心の社会保障改革は不安が先に立つ内容となり、増税のための巨額の経済対策に至っては財政再建に矛盾する。増税の意義がまったく見えないのである。

◆正統性ない決定過程
 わたしたちは、現時点での消費税増税には反対を唱えてきた。何よりも、この増税の決定プロセスには正統性がないと考えたからである。始まりは、民主党の「マニフェスト(政権公約)違反」であった。
 消費税増税をしないといって政権に就いたにもかかわらず、突如として増税に舵(かじ)を切った。一千兆円もの財政赤字の現状から、国民にいずれ消費税引き上げはやむを得ないとの覚悟があったとしても、手続き違反だし、国民への背信行為である。
 民主党は「天下りや渡りを繰り返すシロアリ官僚の退治なしの増税はおかしい」とも訴えながら、結局、行革も自ら身を切る改革も反故(ほご)にしてきた。政治には信頼が必要なのである。
 その民主と組んで昨年八月に消費増税法を成立させた自民、公明も年末の総選挙や七月の参院選で増税を堂々と争点に掲げることはなかった。消費税増税が政治的に国民の理解を得たとはいえない。
 それもそのはずである。自公は消費増税法案の付則に「成長戦略や事前防災、減災などの分野に資金を重点的に配分する」と追加し、消費税の使い道を公共事業など何でもありに変更した。

◆変質した増税の理念
 国土強靱(きょうじん)化や減災構想のためとみられている。社会保障目的ならまだしも、「何でもあり」を表だって問えるはずがない。
 消費増税法の原点は「社会保障と税の一体改革」であり、毎年一兆円ずつ増え続ける社会保障費の財源確保が目的だったはずだ。国民の多くは今でもそう望んでいるだろう。しかし一体改革であるはずなのに、増税だけが先行して決まった。そのうえ年金制度など社会保障の抜本改革は見送られた。
 本来なら「社会保障改革のために財源がこれだけ必要となり、そのために消費税を何%引き上げる必要がある」と国民に理解を求めるのが筋である。財政再建を理由に、先に増税ありきの財務省が描くシナリオに乗るから齟齬(そご)を来すのである。消費税増税の理念は変質し、国民に負担を求める大義も失ってしまったといっていい。
 消費税は1%で二・七兆円の税収があり、3%引き上げると国民負担は八兆円を超える。財務省にとっては景気に左右されず安定的に税収が確保できるので好都合だ。だが、すべての人に同等にのしかかるため、所得の低い人ほど負担が重くなる逆進性がある。
 さらに法人税は赤字企業には課せられないが、消費税はすべての商取引にかかり、もうかっていなくても必ず発生する。立場の弱い中小零細事業者は消費税を転嫁できずに自ら背負わざるを得ない場合がある。このままでは格差を広げ、弱者を追い込む「悪魔の税制」になってしまう。
 消費税を増税する一方、法人税は減税を進めようというのは大企業を優先する安倍政権の姿勢を物語っている。消費税増税で景気腰折れとならないよう打ち出す経済対策も同じである。五兆円規模のうち、企業向けの設備投資や賃上げを促す減税、さらに年末までに決める復興特別法人税の前倒し廃止を合わせると一・九兆円に上る。公共事業などの景気浮揚策も二兆円である。
 国民から吸い上げた消費税を原資に、財界や建設業界といった自民党支持基盤に還流されたり、減税に充てられる構図である。過去に経済対策と銘打って公共事業をばらまき、借金を積み上げた「古い自民」の歴史を忘れてもらっては困る。このままでは社会保障の充実も財政再建もかなわないまま、消費税率だけが上がっていくことになりかねない。

◆安心できる社会保障を
 安倍首相は「持続可能な社会保障制度を次の世代にしっかりと引き渡すため、熟慮の末に消費税引き上げを決断した。財源確保は待ったなしだ」と理由を述べた。
 そうであるならば、やるべきことは、安心できる社会保障制度の将来像を具体的に描き、その実現のために無駄な財政支出を徹底的に削減し、公平な負担を確立する。それなしに国民の理解は得られるとはとても思えない。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO60492280S3A001C1EA1000/より、
日経新聞 社説 消費増税を財政改革の出発点に
2013/10/2付

 安倍晋三首相が予定通り消費税増税を決断した。5兆円規模の経済対策で景気を下支えしながら、5%の消費税率を2014年4月に8%まで引き上げる。
 17年ぶりの消費税増税を実行し、財政再建の一歩を踏み出すことを評価したい。日本経済の成長基盤を強化しつつ、さらなる歳出・歳入改革も進めるべきだ。
 4~6月期の実質成長率は前期比年率3.8%で、1~3月期の4.1%に続く高成長となった。9月の日銀調査では、大企業製造業の業況判断指数がリーマン・ショック後の最高を記録した。

法人減税で成長強化も
 アベノミクスの効果もあって、日本経済は着実に回復している。米国の財政運営を巡る混乱や新興国の景気減速といった不安は残るとしても、増税に踏み切る環境が整ったとみていいだろう。
 本格的な財政再建が避けられないにもかかわらず、日本はその努力を怠ってきた。国と地方の長期債務はいまや1000兆円に上る。次の世代に過大な借金を負わせ続けるわけにはいかない。
 首相は記者会見で「経済再生と財政健全化を同時に達成するほかに道はない」と語った。景気の腰折れを避ける対策を講じ、15年10月に予定している次の増税につなごうというのは妥当である。
 対策の柱に据えたのは企業の活力を引き出す法人税減税だ。設備投資や給与を増やす企業向けの政策減税を実施する。復興特別法人税を1年早く打ち切り、法人実効税率を14年度に38%強から35%台に下げることも検討する。
 政策減税も景気のてこ入れには一定の効果があるだろう。しかし国内企業の競争力を高め、日本の立地・投資環境を改善するには、主要国よりも高い実効税率の引き下げに踏み込む必要がある。
 復興特別法人税の廃止はその一歩だが、これだけで終わらせてはならない。15年度以降の課題となる実効税率の一層の引き下げを実現するため、財源の確保を含めた検討作業を急ぐべきだ。
 「企業に法人税減税を与え、個人に消費税増税を迫るのは不公平だ」との不満は強い。「東日本大震災の被災地復興を軽視している」という批判も出ている。
 だが景気の本格回復に欠かせない設備投資や雇用、賃金を生み出すのは企業だ。その負担を恒久的に軽減し、日本経済を底上げすれば、個人にも恩恵が及ぶ。
 復興予算については、被災地以外の事業への流用も表面化している。25兆円と見積もった復興経費の妥当性をこの機会に検証し、復興特別所得税にも軽減の余地がないかどうかを探ってほしい。
 法人税減税にこだわった安倍首相の期待にこたえ、投資の拡大や賃上げに踏み切る企業自身の努力も望まれる。政府が過剰な圧力をかけて減税の見返りを迫るのは問題だが、企業がいたずらに手元資金を積み上げるのでも困る。
 心配なのは財政規律の緩みである。安倍政権は防災・減災や東京五輪開催のための公共事業も対策に盛り込んだ。国民の負担増を緩和するという名目で、不要不急の支出を膨らませてはならない。
 低所得者や住宅取得者に現金を給付し、負担感を和らげるのは理解できる。所得や資産などの状況を適正に把握し、ばらまきを排除するよう注意してほしい。
 もちろん今回の消費税増税だけで財政を再建できるわけではない。税率を10%まで上げても、国と地方の基礎的財政収支を20年度までに黒字化するという目標は達成できない。歳出抑制と歳入確保の努力を継続する必要がある。

歳出抑制の努力足りず
 今の安倍政権に足りないのは歳出抑制の覚悟だ。その本丸は社会保障費の効率化にある。高齢化の進展などに伴って自動的に膨らむ年1兆円規模の「自然増」を放置したままでは、消費税率を2ケタに上げても追いつかない。
 余裕のある高齢者には給付の抑制と応分の負担を求め、現役世代の重荷を減らす抜本的な年金・医療・介護の制度改革が欠かせない。その具体策を示し、歳出抑制の手段を定めないと、財政運営への信頼感は高まらないだろう。
 財政再建と成長を両立できてこそ、日本経済の真の再生につながる。金融緩和と財政出動の成果だけに寄りかかるのではなく、成長戦略の具体化も進めるべきだ。
 医療や介護、農業などの規制緩和は道半ばである。容積率の緩和や混合診療の拡充などを特例的に認める「国家戦略特区」の詰めも急ぎたい。できるだけ自由度の高い環太平洋経済連携協定(TPP)の締結にも努力してほしい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20131002k0000m070126000c.htmlより、
社説:消費税8%へ 増税の原点を忘れるな
毎日新聞 2013年10月02日 02時30分

 安倍晋三首相が消費税率を来年4月から8%に引き上げることを表明した。
 私たちは、増大する社会保障費と危機的な財政をふまえ、消費増税は避けて通れない道だと主張してきた。現在の経済状況を考慮しても、先送りする事情は見当たらない。昨年の自民、公明、民主各党による「税と社会保障の一体改革に関する合意」と、その後の関連法成立に沿った首相の判断は妥当と言える。
 増税によって、社会保障の持続可能性は高まり、財政を健全化していく第一歩となる。その結果、国民、とりわけ若い世代が抱く将来への不安がやわらぎ、不透明感が解消されていくことも期待される。

 ◇軽減税率の導入急げ
 しかし、これだけでは不十分である。政治が、民間が取り組まなくてはいけない課題は多い。すぐにでも、取りかかる必要がある。
 安倍政権はこの2、3カ月、経済状況をみて引き上げを実施するかどうかを判断するという「景気条項」に基づいて、対応が揺れた。結局、景気への悪影響を抑えるとして、公共事業をふんだんに盛り込んだ5兆円規模の「経済対策」と、復興特別法人税の「前倒し廃止の検討」を決めた。
 景気を考えた何らかの対策は必要かもしれない。だが、それを口実に政権や党の支持基盤強化につなげようと公共事業のばらまきなどに走るのは、国民の痛みにつけこむもので、何のための増税かわからない。
 そんなことに精力を傾け、理屈付けに躍起になる前にやるべきことがある。
 まず、増税と表裏の関係にある安心できる年金、医療、介護などの具体化だ。社会保障制度改革国民会議がまとめた改革策は、年齢を軸にした現行制度を見直し、所得に応じた負担と給付への転換を打ち出した。「抜本的な制度見直しは棚上げ」との批判もあるが、子育て支援策の充実などは評価でき、政治的困難さを克服して着実に実行に移してほしい。不備や課題は、そうした中で柔軟に対処していけばいい。
 増税による財政のゆとりは、こうした社会保障策の充実にのみ使うのは言うまでもない。それが税率引き上げの原点である。
 しかし、8%では借金の穴埋めにも不十分であり、2015年10月に予定通り消費税率を10%に引き上げる判断を迫られるだろう。持続的な社会保障制度の構築に責任を持ち、原点を守るうえで、それは当然の政治的決断と言える。
 第二に、弱者への配慮は、さらに手厚くすべきだ。逆進性の強い消費税の増税は、経済的に苦しい人に強いしわ寄せが及ぶ。所得が低い層への効果的な対策に知恵を絞らなくてはならない。
 そのためにも食品など生活必需品の税率を低く抑える軽減税率の導入を急がなくてはいけない。すぐに制度設計に取り組むべきだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20131002k0000m070126000c2.htmlより、
 欧州各国のほとんどが、食品のほか新聞、書籍類の税率をゼロや数%に抑えている。「知識には課税しない」という考えは、だれもが情報を入手しやすい環境を整え、民主主義を支えるうえで不可欠だ。

 ◇政治への監視強めよう
 忘れてならないのは、歳出の徹底した見直しを進めることだ。アベノミクスや東京五輪開催にうかれているのか、国の財布のひもを締め、財政規律を守るという当たり前の考えが最近、すっかりかすんでいる。増税は、歳出削減とセットになって大きな効果と納得感を生む。定数削減など国会議員自らが身を削る約束も果たしてほしい。
 個人を含めた民間も、やるべきことがある。
 民間企業は新しい分野への投資や技術革新、経営改革などに挑み、雇用の拡大と賃金の底上げを図ってもらいたい。「日本経済の活性化につながる」として消費増税を支持した経営者は少なくない。法人税の実質減税という思わぬ果実も得た。さまざまな要求をして、あれこれ国にお膳立てしてもらう段階は過ぎた。そろそろ経営者が動く番だ。力量をしっかり見せてほしい。
 消費増税が公平感を伴って浸透していくには、価格への円滑な転嫁が欠かせない。下請け仕事をもらったり、原材料を納入したりする弱い立場の中小・零細企業は、増税分を一方的に負担させられるのではないかという不安がある。公正取引委員会は監視を強める方針だが、大企業や流通段階を担う業界は、中小・零細企業を泣かさない円滑な転嫁を進めてもらいたい。
 国民にとって増税の痛みは大きい。電力料金引き上げや円安などによる食品の値上げ、介護や医療分野での負担増などが相次ぐ一方、毎月勤労統計によると基本給は8月まで15カ月連続で減少している。
 それでも最新の毎日新聞の世論調査では「消費税を予定通り引き上げるべきだ」が、先送りや増税反対を抑えて最も多かった。将来の国づくりへの前向きな一歩として、やむを得ないとの考えだろう。政治への関心を高め、税金の使われ方をしっかり監視しなくてはいけない。金も出すが、口も出す国民でありたい。