http://mainichi.jp/opinion/news/20120516ddm003040111000c.htmlより、
クローズアップ2012:沖縄復帰40年 動かぬ基地、溝深め 政府の「誠意」、振興策空転
毎日新聞 2012年05月16日 東京朝刊
沖縄が復帰40年を迎えた15日、野田佳彦首相は沖縄の長い苦難の道のりに思いをはせつつも、未来志向を強く意識したあいさつをした。仲井真弘多(ひろかず)沖縄県知事は、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の県外移設や、基地問題解決に向けた国民的議論を訴えた。復帰後も過重な基地負担を抱える沖縄と政府の溝は埋まらぬまま、新たな火種が互いの距離を広げている。【吉永康朗、朝日弘行、飼手勇介】
「沖縄は日本のフロンティアだ。21世紀の万国津梁(ばんこくしんりょう)の要となる」。沖縄県宜野湾市で開かれた記念式典。知事から贈られた藍色のかりゆしウエアに身を包んだ首相は、琉球王国の象徴・首里城の鐘に刻まれた「万国津梁」という言葉を2度引用した。海洋貿易で栄えた琉球が「世界の懸け橋」になるという希望を示し、00年の沖縄サミット会場の名称にも冠されている。
式辞原稿は、前夜まで推敲(すいこう)が重ねられた。首相は、周辺との打ち合わせで「沖縄の雄飛(飛躍)を手伝おう」と強調。経済格差にあえいだ過去の沖縄像を転換し、アジア太平洋地域の「玄関口」として発展させる意気込みを盛り込むよう指示し、内閣府などが作成した原案を書き直させた。
http://mainichi.jp/opinion/news/20120516ddm003040111000c2.htmlより、
従来より自由度が高い沖縄独自の一括交付金の創設や、改正沖縄振興特別措置法などの成果に加え、(1)来年度予算で那覇空港第2滑走路整備の財源を検討する(2)18年度にも国営首里城公園を県へ移管する−−など、「お土産」も示してみせた。
普天間飛行場の移設を巡っては、首相は沖縄を刺激しない姿勢に終始した。政府が進める同県名護市辺野古への移設には、あえて言及しなかった。負担軽減と沖縄振興策を積み重ねて政府の「誠意」を浸透させ、辺野古移設に理解を得る戦術だ。
しかし、沖縄が軟化する兆しは見えない。
知事は、政府の沖縄振興への努力には謝意を示したが、普天間の県外移設を改めて強く求めた。知事が県外移設に触れたことについて、県幹部は「基地問題と振興とは別問題。基地問題としてきちっとやってほしいという意味だ」と説明する。
知事は式典に先だって首相と会場内で非公式に会談。日米両政府が普天間移設とパッケージだった沖縄の米軍5施設・区域の返還などを先行実施することで合意したことについて「パッケージを外しても、あまり差がない」と首相に苦言を呈した。また「負担軽減に大きく貢献する」として、那覇市に近い米軍牧港補給地区(同県浦添市)の名を挙げて早期返還を求めたという。
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負担軽減の実績を作ろうとする政府の思惑に、基地跡地開発を経済活性化の起爆剤ともくろむ県側は「活用できる形で返還されなければ意味がない」(県幹部)と冷ややかだ。政府の振興策についても、別の県幹部は「来年の振興予算も今年通りとは限らない。首里城の返還も5年以上先の話。結局、アメとムチではないか」と政府への不信感を見せる。
◇普天間固定化、高まる懸念 オスプレイ配備、火種に
普天間飛行場を巡り目下、最大の問題になりつつあるのは7月下旬にも予定される垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備だ。日米両政府は安全性を強調してきたが、先月、アフリカ・モロッコで4人が死傷する墜落事故が発生。沖縄県は配備に強く反対しており新たな火種となっている。
「防衛以前の問題だ。東京でいえば、日比谷公園で毎日(墜落が多い)飛行機を訓練する話で、とんでもない」。知事は式典終了後、記者団に改めて「配備反対」を強調した。
日米両政府は分解したオスプレイ12機を海上輸送し、7月下旬にも普天間飛行場に搬入する方向。10月に本格運用する予定だ。これに対し、宜野湾市では6月17日、5000人規模の反対集会が予定される。
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普天間移設問題では、防衛省は秋ごろ、名護市辺野古への移設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きを終える見通しだ。だが、知事が県外移設を求めている現状で公有水面埋め立て許可を申請できるめどは立っていない。配備を強行すれば県側が態度をさらに硬化させる可能性があるが、防衛省は「モロッコの事故は最悪のタイミングだが、配備を遅らせても沖縄の姿勢は変わらない」(幹部)と配備を進める方針だ。
日米両政府は、先月の在日米軍再編協議の中間報告で、普天間飛行場について、移設までの継続使用に向けた補修費用を分担することに合意。「普天間固定化」の懸念は高まるばかりだ。
沖縄県内の政治状況に辺野古移設が進展する兆しは見られない。6月10日投開票の県議選では、県内の主要な政党・県連は「県外移設」を表明。かつて辺野古移設容認派で、県議選に出馬表明した元名護市幹部も態度を明確にしていない。
■ことば
◇MV22オスプレイ
米海兵隊の新型輸送機。主翼両脇のプロペラの向きを変え、離着陸時は上向きにしてヘリコプターのように垂直離着陸ができ、水平飛行時は前向きにして固定翼機のような高速飛行ができる。最高時速はヘリの約2倍の約510キロ、航続距離は約6倍の約2200キロ。米軍は普天間飛行場のCH46ヘリ24機との入れ替えを計画している。
◇記念式典の主な出席者
http://mainichi.jp/opinion/news/20120516ddm003040111000c5.htmlより、
野田佳彦首相▽川端達夫沖縄・北方対策担当相▽玄葉光一郎外相▽田中直紀防衛相▽前田武志国土交通相▽鳩山由紀夫元首相▽野中広務元官房長官▽小里貞利・元沖縄開発庁長官▽横路孝弘衆院議長▽平田健二参院議長▽輿石東・民主党幹事長▽谷垣禎一・自民党総裁▽山口那津男・公明党代表▽鈴木宗男・新党大地代表(元沖縄開発庁長官)▽竹崎博允最高裁長官▽ルース駐日米大使
http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/0515.htmlより、
沖縄復帰40年 本土と溝広がる
5月15日 22時25分
沖縄が日本に復帰してから40年を迎えました。しかし、『過重な基地負担』と『本土との経済格差』という大きな2つの課題を沖縄は抱えたままです。沖縄放送局の山口健記者が『沖縄の今』を解説します。
国民的な議論を
15日、政府と県が共催して沖縄県宜野湾市で記念式典が開かれ、野田総理大臣や仲井真知事、アメリカのルース駐日大使など、およそ1000人が出席しました。
式典で、仲井真知事は「政府が沖縄の基地負担の軽減に取り組んでいることに謝意を表したい」としたうえで、「日米地位協定の抜本的な見直しや普天間基地の県外への移設・早期返還を県民は強く希望している。沖縄の基地問題について、県民とともに受けとめて考えていただきたい」と述べ、基地問題の解決に向けた国民的な議論を訴えました。
変わらぬ基地負担
沖縄が基地問題の早期解決を求める背景には、40年たっても変わらない過重な基地負担の現実があります。
沖縄には日本にあるアメリカ軍専用施設の74%が集中しています。このうち、市街地の中心部にある普天間基地の返還は日米両政府の合意から16年たっても実現していません。
沖縄県の名護市辺野古への移設を目指す政府と県外への移設を求める沖縄県などとの間の溝は埋まらず、返還の見通しすら立っていません。
現在進められている在日アメリカ軍の再編計画の見直しでも、名護市辺野古に移設する計画に変わりはありません。
ことし7月には、事故を起こしている最新鋭の輸送機「MV22オスプレイ」が配備される予定で、県民からは「新たな負担につながる」として反発の声があがっています。
経済格差埋まらず
経済の分野でも大きな課題があります。
県民1人当たりの所得は204万5000円、280万円近い全国平均にほど遠い状態が続いています。
沖縄には復帰以来、社会基盤の整備など本土との格差是正などのため、国からおよそ10兆円の公共投資が行われてきました。
にもかかわらず、失業率は今もおよそ7%と全国平均を大幅に上回るなど、本土との経済力の格差は歴然としています。
“理解されていない”
意識の面でも溝は広がっています。
NHKは、ことし2月から3月にかけて、沖縄県に住む20歳以上の男女1800人を対象に調査員が面接する方法で世論調査を行い、62.4%に当たる1123人から回答を得ました。
その結果、「本土の人は沖縄の人の気持ちを理解していると思うか」という質問について、▽「理解している」と答えた人が26%だったのに対して、▽「理解していない」と答えた人は71%に上りました。
10年前の世論調査で同じ質問をした際に、▽「理解している」と答えた人が35%、▽「理解していない」と答えた人が57%だったのに比べると、「理解していない」と答えた人の割合が14ポイント増えています。
新しい沖縄振興計画
一方、沖縄の振興を巡って新たな動きも出ています。
復帰以降、国が作ってきた全国との格差是正や自立的な経済発展を目的にした「沖縄振興計画」は法律が改正され、今回、県が初めて策定することになり、15日に合わせて、仲井真知事など県の幹部が出席した会議で決定しました。
計画では、▽地理的特性を生かして沖縄に国際的な物流拠点の整備を図ることや、▽県内の離島が日本の領海や排他的経済水域を保全しているとして、離島の生活基盤の整備などに取り組むとしています。
さらに、アメリカ軍基地の県内への集中が経済振興の障害になっているとして、嘉手納基地より南の軍施設の返還が確実に実施される必要があると注文しました。
真に向き合うべき
復帰後も変わらぬ『過重な基地負担』を沖縄の人たちだけにこれから先も押しつけたままでいいのか。
復帰40年の今、国民一人一人が沖縄に真に向き合い、考える必要があると思います。