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http://mainichi.jp/opinion/news/20120518k0000m070125000c.htmlより、
記者の目:原発避難者に「支援の格差」=前田洋平
毎日新聞 2012年05月18日 00時21分

 1万2607人。東京電力福島第1原発事故などで福島県から山形県内に避難した人数(10日現在)だ。福島県によると、その8割が自らの意思で避難した「自主避難者」という。山形県で取材していて、警戒区域など国が設定した避難区域からの避難者に対する支援と、放射能のリスクを回避するため自主避難した人に対する支援との間に、行政が差を設け、それが広がりつつあることを痛感する。国も、地元自治体も、避難先の自治体も、自主避難者の苦境も直視してほしい。

 ◇高速道無料化も4月から対象外
 避難区域からの避難者には、東電から、精神的苦痛に対する損害賠償として月額10万〜12万円が支払われ、避難にかかる実費も請求できる。一方、自主避難者の場合、一時金で大人8万円、子供(18歳以下)と妊婦は60万円にとどまる。また、避難区域からの避難者は医療費の窓口負担が全額免除され、国民健康保険加入者は保険料も免除される。しかし、自主避難者はいずれも対象外だ。
 さらに「支援の格差」を改めて考えさせられたのが、4月1日に実施された高速道路無料の対象者を限定する見直し措置だ。3月末までは自主避難者も避難区域からの避難者と同じように無料の対象だったが、4月からは対象外となった。
 この見直しについて、国土交通省高速道路課の担当者は「避難を強制されている人の無料化は延長した。自宅と避難先の行き来を支援するのが狙い」と説明した。

http://mainichi.jp/opinion/news/20120518k0000m070125000c2.htmlより、
 だが、取材をしていると、無料化の必要度が高いのはむしろ自主避難者の方だと思える。自主避難者は福島県内に仕事を持つ夫を残して母子で避難しているケースが多い。そうした家庭では、週末に家族が会うために高速道路を利用する。避難に伴い共働き世帯では妻が仕事をやめたため収入は減少、光熱費も二重にかかる。原発事故に対する東電からの賠償金は、避難区域の被災者に比べて圧倒的に少ない。時間の経過とともに預金も減り、経済的に苦しくなっている世帯が少なくない。その中で、高速道路無料措置は、自主避難者の家族の絆を守るために欠くことのできないものになっていた。
 実は4月28日に国交省は、無料措置の再見直しを実施し、無料措置対象のインターチェンジ(IC)を6カ所増やした。福島県大熊町など避難区域からの避難者が多く暮らす同県会津若松市などのICが無料措置対象になっていないことに対処したもので、高速道路課は大熊町など被災自治体からの強い要望を受けた再見直しだとしている。

 ◇福島からの母子、先行きに不安
http://mainichi.jp/opinion/news/20120518k0000m070125000c3.htmlより、
 再見直しで、自主避難者を無料化対象に加えることは検討されなかったのか。高速道路課の担当者は「自主避難者が二重生活で、高速道路利用率が高いことは認識している」と話す一方、「自主避難の線引きは難しく対象に組み入れることは困難」と説明した。福島市や郡山市など県外へ自主避難した市民が多数いる被災自治体からの、積極的働きかけはなかったという。
 なぜ国に働きかけないのか。郡山市政策調整課は「無料化継続を国に訴える必要性は認識しているが、市としては、県外避難者には地元で暮らしてほしいとの思いもある。積極的に無料化を働きかけるのは難しい」と語る。福島市危機管理課も「要望を出す選択肢もあるが、他の警戒区域外の市町村とも意見調整する必要がある」と説明した。
 自主避難者を送り出した被災自治体も、山形市など多数の避難者を受け入れている自治体も、その実情をある程度把握しているはずだ。窮状から目をそらさず、もっと手を差し伸べるべきだ。
 郡山市に夫(24)を残し、山形市で2歳の長男と自主避難する遊佐葵さん(24)は「国や自治体が、自主避難者の存在を認めていないように感じています。一時は賠償金の支払いなどで理解を示してくれたと思ったけれど、高速道路だけでなく、自主避難者への支援がこのまま細っていくのではと不安です」とため息交じりに話した。

http://mainichi.jp/opinion/news/20120518k0000m070125000c4.htmlより、
 言葉の上では「自主」避難だが、原発事故でばらまかれた放射能の影響を回避するため、特に子どもの健康を守るため、やむにやまれず避難しているのだ。政府は原発事故被災者と認め、賠償金の対象とした経緯もある。その被災者を高速道路無料措置の対象からなぜ外したのか。
 原子力発電を国策として進め、安全を主張してきた国が、原発事故の被災者を区別することが、許されていいはずがない。(山形支局)

http://mainichi.jp/opinion/news/20120517k0000m070112000c.htmlより、
記者の目:揺れる今夏の電力需給=横山三加子
毎日新聞 2012年05月17日 00時13分

 ◇関電は情報開示で信頼回復を
 関西電力にとって勝負の夏が迫っている。原発の再稼働の有無が勝負なのではない。関電にとって今夏は、企業として信頼回復を図る最後の機会だ。原発の全停止が続く中、電力需給が厳しいとして今夏も節電要請をする方針だが、昨夏も昨冬も節電要請の根拠とした電力需給見通しが大幅に外れたという事実を軽視してはいけない。ずれた情報提供をし続け、関電は社会の信頼を失った。信頼回復に必要なのは企業や家庭などが求めている情報を先取りして開示する姿勢だ。
 政府は関電管内の今夏の需要を10年夏並みの猛暑想定で2987万キロワット、8月の不足は14.9%と見込む。政府は電力不足が深刻な関電への融通のため中部、北陸、中国の3電力会社にも節電要請する方向だ。原発が稼働していた昨夏よりも供給力が減り、一定の節電が必要なことは理解できる。だからこそ「本当にどれだけ足りないのか、何が可能なのかを考える材料を示してほしい」(関西経済同友会の大竹伸一前代表幹事)と企業は早期の正確な情報提供を求めてきた。一方で需要想定に対する疑問や供給力の上積みの少なさに対する厳しい見方も根強い。

 ◇甘い見通しに募る不信感
http://mainichi.jp/opinion/news/20120517k0000m070112000c2.htmlより、
 背景にあるのは、関電による昨夏(15%)と昨冬(10%以上)の節電要請で、企業や自治体が節電対策に奔走した経験だ。結果は電力不足にはならず供給余力が10%以上の日がほとんどだった。節電効果が昨夏は6.5%、昨冬が5%と低かったのは、企業や家庭が非協力的だったからではなく実態を見て賢く節電したからだ。「過大な需要想定と低めの供給力」(滋賀県の嘉田由紀子知事)とも言われた関電の需給見通しは甘かった。これを解消しない限り、関電が発信する情報に対する信頼回復はないし、節電に本気で取り組んでもらうことは難しい。
 八木誠社長ら経営陣は「理解いただけるよう丁寧に説明を続けたい」と繰り返す。確かに関電も改善を模索してきた。昨夏は見込んだ供給力不足6.4%に加え、約8%の供給余力を見積もった節電要請で反発を招いた。関電も「自分たちに甘すぎた」(幹部)と振り返るほどだ。昨冬は関西広域連合と協議して節電目標を設定し、確保する余力も最低限必要とされる3%だけにした。今夏の需給見通しも関西広域連合や大阪府市エネルギー戦略会議で説明した。大阪府市の古賀茂明特別顧問も「エネルギー問題で電力会社を交えて議論する場ができたことは大きな一歩」と述べた。

http://mainichi.jp/opinion/news/20120517k0000m070112000c3.htmlより、
 それでも、企業や家庭の納得感は薄い。大阪市の橋下徹市長は「電力問題は府県民の信頼を得ることが基礎だ」と主張する。リスク心理学に詳しい同志社大の中谷内一也教授は、「信頼の回復はどんな分野でも難しいが、中立性を持ち、相手と同じ目線に立った価値観の共有が必要。大事なのは何を重視するか、相手と一致していること」と指摘する。原発の安全性や必要性について議論が続く今、拙速な再稼働を心配する人は多い。東京電力福島第1原発事故が実際に起きたのだから当たり前だ。多くの人が重視しているのは「どの程度の節電の工夫や負担で電力不足は回避できるのか」であり、知りたいのは電力需給の実態だ。

 ◇節電側の疑問 解消の努力必要
 実際の電力需給は天気に左右されるし節電の取り組み度合いなどによって変化する。だからこそ、ひとつの想定に固執することなくあらゆる可能性をわかりやすく提示することが必要だ。政府と関電は10日、大飯原発が再稼働すれば供給力は足りるとの試算を示した。直前まで再稼働しても電力不足は避けられないとしていた関電の信頼回復はまたも遠のいたと言えそうだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20120517k0000m070112000c4.htmlより、
 政府の見通しでは供給力不足は445万キロワット。他社からの電力融通や揚水発電は、昨夏や昨冬、計画よりも上積みできた。政府は中部、中国など3電力会社に5%の節電を要請する方針だが、関電はどの程度の電力融通を追加で受けられるのか。15日の府市エネルギー戦略会議で関電は委員の求めに応じる形で、東電を含めた4社から最大162万キロワットの追加融通の可能性に触れた。さらに、家庭向けに昼間のピーク時間帯の料金を2倍にして、需要抑制を狙うなど、さまざまな可能性を追求する姿勢を示しつつある。猛暑でない場合や節電の浸透で需要が下がれば、余剰電力を生かせる揚水発電の供給力はどの程度高まるのか。節電要請期間中は実態に即して需要想定と水力の供給力を再考することや、節電効果をすぐに分析することも大切だ。
 節電する側が抱く一つ一つの疑問をくみ取って解消することが関電の信頼回復につながり、企業や家庭の節電の取り組みに結びつく。まだ間に合う。関電には節電する側の求めに応えてもらいたい。(大阪経済部)

http://mainichi.jp/opinion/news/20120516ddm003040111000c.htmlより、
クローズアップ2012:沖縄復帰40年 動かぬ基地、溝深め 政府の「誠意」、振興策空転
毎日新聞 2012年05月16日 東京朝刊

 沖縄が復帰40年を迎えた15日、野田佳彦首相は沖縄の長い苦難の道のりに思いをはせつつも、未来志向を強く意識したあいさつをした。仲井真弘多(ひろかず)沖縄県知事は、米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の県外移設や、基地問題解決に向けた国民的議論を訴えた。復帰後も過重な基地負担を抱える沖縄と政府の溝は埋まらぬまま、新たな火種が互いの距離を広げている。【吉永康朗、朝日弘行、飼手勇介】
 「沖縄は日本のフロンティアだ。21世紀の万国津梁(ばんこくしんりょう)の要となる」。沖縄県宜野湾市で開かれた記念式典。知事から贈られた藍色のかりゆしウエアに身を包んだ首相は、琉球王国の象徴・首里城の鐘に刻まれた「万国津梁」という言葉を2度引用した。海洋貿易で栄えた琉球が「世界の懸け橋」になるという希望を示し、00年の沖縄サミット会場の名称にも冠されている。
 式辞原稿は、前夜まで推敲(すいこう)が重ねられた。首相は、周辺との打ち合わせで「沖縄の雄飛(飛躍)を手伝おう」と強調。経済格差にあえいだ過去の沖縄像を転換し、アジア太平洋地域の「玄関口」として発展させる意気込みを盛り込むよう指示し、内閣府などが作成した原案を書き直させた。

http://mainichi.jp/opinion/news/20120516ddm003040111000c2.htmlより、
 従来より自由度が高い沖縄独自の一括交付金の創設や、改正沖縄振興特別措置法などの成果に加え、(1)来年度予算で那覇空港第2滑走路整備の財源を検討する(2)18年度にも国営首里城公園を県へ移管する−−など、「お土産」も示してみせた。
 普天間飛行場の移設を巡っては、首相は沖縄を刺激しない姿勢に終始した。政府が進める同県名護市辺野古への移設には、あえて言及しなかった。負担軽減と沖縄振興策を積み重ねて政府の「誠意」を浸透させ、辺野古移設に理解を得る戦術だ。
 しかし、沖縄が軟化する兆しは見えない。
 知事は、政府の沖縄振興への努力には謝意を示したが、普天間の県外移設を改めて強く求めた。知事が県外移設に触れたことについて、県幹部は「基地問題と振興とは別問題。基地問題としてきちっとやってほしいという意味だ」と説明する。
 知事は式典に先だって首相と会場内で非公式に会談。日米両政府が普天間移設とパッケージだった沖縄の米軍5施設・区域の返還などを先行実施することで合意したことについて「パッケージを外しても、あまり差がない」と首相に苦言を呈した。また「負担軽減に大きく貢献する」として、那覇市に近い米軍牧港補給地区(同県浦添市)の名を挙げて早期返還を求めたという。

http://mainichi.jp/opinion/news/20120516ddm003040111000c3.htmlより、
 負担軽減の実績を作ろうとする政府の思惑に、基地跡地開発を経済活性化の起爆剤ともくろむ県側は「活用できる形で返還されなければ意味がない」(県幹部)と冷ややかだ。政府の振興策についても、別の県幹部は「来年の振興予算も今年通りとは限らない。首里城の返還も5年以上先の話。結局、アメとムチではないか」と政府への不信感を見せる。

 ◇普天間固定化、高まる懸念 オスプレイ配備、火種に
 普天間飛行場を巡り目下、最大の問題になりつつあるのは7月下旬にも予定される垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備だ。日米両政府は安全性を強調してきたが、先月、アフリカ・モロッコで4人が死傷する墜落事故が発生。沖縄県は配備に強く反対しており新たな火種となっている。
 「防衛以前の問題だ。東京でいえば、日比谷公園で毎日(墜落が多い)飛行機を訓練する話で、とんでもない」。知事は式典終了後、記者団に改めて「配備反対」を強調した。
 日米両政府は分解したオスプレイ12機を海上輸送し、7月下旬にも普天間飛行場に搬入する方向。10月に本格運用する予定だ。これに対し、宜野湾市では6月17日、5000人規模の反対集会が予定される。

http://mainichi.jp/opinion/news/20120516ddm003040111000c4.htmlより、
 普天間移設問題では、防衛省は秋ごろ、名護市辺野古への移設に向けた環境影響評価(アセスメント)手続きを終える見通しだ。だが、知事が県外移設を求めている現状で公有水面埋め立て許可を申請できるめどは立っていない。配備を強行すれば県側が態度をさらに硬化させる可能性があるが、防衛省は「モロッコの事故は最悪のタイミングだが、配備を遅らせても沖縄の姿勢は変わらない」(幹部)と配備を進める方針だ。
 日米両政府は、先月の在日米軍再編協議の中間報告で、普天間飛行場について、移設までの継続使用に向けた補修費用を分担することに合意。「普天間固定化」の懸念は高まるばかりだ。
 沖縄県内の政治状況に辺野古移設が進展する兆しは見られない。6月10日投開票の県議選では、県内の主要な政党・県連は「県外移設」を表明。かつて辺野古移設容認派で、県議選に出馬表明した元名護市幹部も態度を明確にしていない。

 ■ことば
 ◇MV22オスプレイ
 米海兵隊の新型輸送機。主翼両脇のプロペラの向きを変え、離着陸時は上向きにしてヘリコプターのように垂直離着陸ができ、水平飛行時は前向きにして固定翼機のような高速飛行ができる。最高時速はヘリの約2倍の約510キロ、航続距離は約6倍の約2200キロ。米軍は普天間飛行場のCH46ヘリ24機との入れ替えを計画している。

 ◇記念式典の主な出席者
http://mainichi.jp/opinion/news/20120516ddm003040111000c5.htmlより、
野田佳彦首相▽川端達夫沖縄・北方対策担当相▽玄葉光一郎外相▽田中直紀防衛相▽前田武志国土交通相▽鳩山由紀夫元首相▽野中広務元官房長官▽小里貞利・元沖縄開発庁長官▽横路孝弘衆院議長▽平田健二参院議長▽輿石東・民主党幹事長▽谷垣禎一・自民党総裁▽山口那津男・公明党代表▽鈴木宗男・新党大地代表(元沖縄開発庁長官)▽竹崎博允最高裁長官▽ルース駐日米大使

http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/0515.htmlより、
沖縄復帰40年 本土と溝広がる
5月15日 22時25分
 
沖縄が日本に復帰してから40年を迎えました。しかし、『過重な基地負担』と『本土との経済格差』という大きな2つの課題を沖縄は抱えたままです。沖縄放送局の山口健記者が『沖縄の今』を解説します。

国民的な議論を
15日、政府と県が共催して沖縄県宜野湾市で記念式典が開かれ、野田総理大臣や仲井真知事、アメリカのルース駐日大使など、およそ1000人が出席しました。
式典で、仲井真知事は「政府が沖縄の基地負担の軽減に取り組んでいることに謝意を表したい」としたうえで、「日米地位協定の抜本的な見直しや普天間基地の県外への移設・早期返還を県民は強く希望している。沖縄の基地問題について、県民とともに受けとめて考えていただきたい」と述べ、基地問題の解決に向けた国民的な議論を訴えました。

変わらぬ基地負担
沖縄が基地問題の早期解決を求める背景には、40年たっても変わらない過重な基地負担の現実があります。
沖縄には日本にあるアメリカ軍専用施設の74%が集中しています。このうち、市街地の中心部にある普天間基地の返還は日米両政府の合意から16年たっても実現していません。
沖縄県の名護市辺野古への移設を目指す政府と県外への移設を求める沖縄県などとの間の溝は埋まらず、返還の見通しすら立っていません。
現在進められている在日アメリカ軍の再編計画の見直しでも、名護市辺野古に移設する計画に変わりはありません。
ことし7月には、事故を起こしている最新鋭の輸送機「MV22オスプレイ」が配備される予定で、県民からは「新たな負担につながる」として反発の声があがっています。

経済格差埋まらず
経済の分野でも大きな課題があります。
県民1人当たりの所得は204万5000円、280万円近い全国平均にほど遠い状態が続いています。
沖縄には復帰以来、社会基盤の整備など本土との格差是正などのため、国からおよそ10兆円の公共投資が行われてきました。
にもかかわらず、失業率は今もおよそ7%と全国平均を大幅に上回るなど、本土との経済力の格差は歴然としています。

“理解されていない”
意識の面でも溝は広がっています。
NHKは、ことし2月から3月にかけて、沖縄県に住む20歳以上の男女1800人を対象に調査員が面接する方法で世論調査を行い、62.4%に当たる1123人から回答を得ました。
その結果、「本土の人は沖縄の人の気持ちを理解していると思うか」という質問について、▽「理解している」と答えた人が26%だったのに対して、▽「理解していない」と答えた人は71%に上りました。
10年前の世論調査で同じ質問をした際に、▽「理解している」と答えた人が35%、▽「理解していない」と答えた人が57%だったのに比べると、「理解していない」と答えた人の割合が14ポイント増えています。

新しい沖縄振興計画
一方、沖縄の振興を巡って新たな動きも出ています。
復帰以降、国が作ってきた全国との格差是正や自立的な経済発展を目的にした「沖縄振興計画」は法律が改正され、今回、県が初めて策定することになり、15日に合わせて、仲井真知事など県の幹部が出席した会議で決定しました。
計画では、▽地理的特性を生かして沖縄に国際的な物流拠点の整備を図ることや、▽県内の離島が日本の領海や排他的経済水域を保全しているとして、離島の生活基盤の整備などに取り組むとしています。
さらに、アメリカ軍基地の県内への集中が経済振興の障害になっているとして、嘉手納基地より南の軍施設の返還が確実に実施される必要があると注文しました。

真に向き合うべき
復帰後も変わらぬ『過重な基地負担』を沖縄の人たちだけにこれから先も押しつけたままでいいのか。
復帰40年の今、国民一人一人が沖縄に真に向き合い、考える必要があると思います。

http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/society/34698.htmlより、
日本原電、原発直下の断層調査へ 原子力安全・保安院も了承
福井新聞(2012年5月14日午後6時54分)

 敦賀原発(福井県敦賀市)の直下を走る断層(破砕帯)が近くの活断層に伴って動く可能性を指摘された問題で、日本原電は14日開かれた経済産業省原子力安全・保安院の地震・津波に関する意見聴取会で、ボーリングなどで活動性を確認する調査計画を示した。調査終了は11月末の予定。委員は「時間がかかってもやむを得ない。信頼できる調査を行うべき」として計画を了承した。
 敦賀原発の敷地内には活断層「浦底―柳ケ瀬山断層帯(浦底断層)」が通り、破砕帯も約160本確認されている。同委員会の専門家らは4月に行った敦賀原発敷地内の現地調査で「破砕帯は活断層に伴って動いた可能性を否定できない」と指摘し、保安院が連動性の再調査を指示していた。
 原電が示した計画では、浦底断層と破砕帯が枝分かれする周辺で大深度調査坑といわれる約30~50メートルの立て坑を掘り、地層と岩盤の境界付近で、今度は横坑を掘って地層と破砕帯の関係を調べる。破砕帯の活動の有無や年代なども確認するとしている。CTスキャンなどで破砕帯の地層を詳細に分析などする。
 委員の杉山雄一産業技術総合研究所活断層・地震研究センター主幹研究員は「得られた情報は信頼に足るものかチェックもしてほしい」と述べ、時間をかけ十分に確認するよう求めた。他の委員からも異論はなく、「力学的観点からも調査を」「構造物への影響の観点から岩盤の専門家も交えた議論が必要」などと要望があった。
 保安院の小林勝耐震安全審査室長は、原電からの報告を随時求めて内容を確認し、国として現地調査も行う考えを示した。
 保安院の森山善範原子力災害対策監はこの日の記者会見で、今回の調査の結果、破砕帯が今後動く可能性が確認された場合について「(運転は)難しい」との見解を示した。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120514/k10015111611000.htmlより、
敦賀原発 地下の亀裂を調査へ
5月14日 18時49分

福井県にある敦賀原子力発電所の敷地の地下を走る亀裂について、専門家から活断層の可能性があることが指摘されたことを受けて、日本原子力発電は敷地の地下にある複数の亀裂と周辺の地層を詳しく調べ、調査結果を随時、国に報告することになりました。
福井県敦賀市の敦賀原発について、先月24日、専門家らが現地調査した結果、2号機から西に150メートル離れた地中にある破砕帯と呼ばれる亀裂が活断層の可能性があり、敷地内を走る浦底断層という活断層と連動する可能性が指摘されたほか、2号機の真下を走る亀裂も活断層の可能性があるか調べる必要があるとして、原子力安全・保安院が日本原子力発電に再調査するよう指示しました。
これを受けて、日本原電は14日の専門家会議で、これらの亀裂が活断層かどうかを調べる計画を示しました。
計画では、2号機の真下や周辺にある6本の亀裂について、ボーリング調査などを行って地層を詳しく調べ、過去に亀裂が動いた年代やずれた方向を測定し、亀裂が活断層かどうかや浦底断層と連動する可能性があるかについて調べるということです。
調査はことし11月まで行い、日本原電は調査結果が分かったものから随時、国に報告することにしています。
国の耐震設計の指針では活断層の真上に原発の重要な設備を設置することを認めておらず、調査の結果、2号機の真下の亀裂が活断層だった場合、定期検査で止まっている2号機が運転できなくなる可能性もあります。
専門家会議の主査を務める耐震工学が専門の東京大学の高田毅士教授は「亀裂が活断層かどうかを判断するためには、これまで以上に詳しい調査が不可欠なので、時間がかかっても綿密な調査をしてもらいたい」と話しています。

日本原電“しっかり調査したい”
専門家会議で敦賀原発の亀裂調査の説明にあたった日本原子力発電の開発計画室の入谷剛副長は「きょうの会議で時間がかかっても信頼できる調査結果を出してほしいという意見が出たので、計画に沿ってしっかりと調査したい」と話しました。
そのうえで、専門家からの指摘で、こうした亀裂を活断層でないとしてきた日本原電の調査に疑問が出ていることについて「これまでもきっちり調査してきたつもりで、今もこうした亀裂は活断層ではないと考えている。ただ指摘があるのは事実なので、より詳しく調査をして、活断層かどうかの評価をしたい」と述べました。

敦賀原発の活断層問題とは
福井県の日本原子力発電の敦賀原発の敷地内を走る活断層や亀裂を巡っては、耐震性に問題がないとする日本原電に対し、専門家が繰り返し疑問を投げかけてきました。
昭和45年に運転を始めた敦賀原発1号機は、建設が許可された段階では、日本原電は敷地内に活断層はないと評価し、国の審査でも認められました。
しかし、阪神淡路大震災をきっかけに原発の耐震性の指針が見直され、それまでより8万年さかのぼり、13万年前よりあとに動いた可能性のある断層を「活断層」と定義したことや専門家の指摘を受けて敦賀原発周辺を再調査した結果、平成20年に1号機から東側に250メートル離れた敷地内を走る浦底断層が活断層であることが新たに確認されました。
また、この作業の中で専門家から敷地内におよそ160本ある「破砕帯」と呼ばれる亀裂の一部が、周辺の活断層の動きに連動することで地面に傾斜などができて、原発の施設に影響する可能性が指摘されました。
これに対して、日本原電は平成22年に「これらの亀裂は少なくとも13万年前よりあとに動いた形跡はなく、浦底断層とも連動する可能性がないことから活断層ではない」という評価結果をまとめ、現在、経済産業省の審議会で妥当かどうかを審議しています。
こうしたなかで、去年3月に起きた震災で断層の活動が震災前より活発になったため原子力安全・保安院が原発周辺の活断層の評価の見直しを進める中で、専門家から「浦底断層」が近くにある活断層と連動した場合、これまでより10キロ長い35キロとなり、より大きな揺れを引き起こすおそれがあると指摘され、保安院は、日本原電に再評価するよう指示しました。
さらに、先月24日に専門家の現地調査で、敦賀原発の地下を走る亀裂が活断層の可能性があると指摘されたことを受けて、保安院はこうした亀裂が活断層かどうかや「浦底断層」と連動して動く可能性があるか改めて評価するよう指示し、敦賀原発の敷地内を走る活断層や地下の亀裂が原発の耐震性にどのように影響するかが問われる事態になっています。

http://mainichi.jp/select/news/20120514k0000e040184000c.htmlより、
敦賀原発:原子炉直下の「破砕帯」、11月までに調査完了
毎日新聞 2012年(最終更新 05月14日 12時52分)

 日本原子力発電敦賀原発(福井県敦賀市)の原子炉建屋直下にある断層の一種「破砕帯」が近くの活断層と連動して動く可能性が指摘された問題で、原電は14日、調査計画を公表した。破砕帯の上にある火山灰の分析などから活動時期を調べ、11月までに調査を終える。約12万〜13万年前以降に動いた活断層と認められれば、「立地不適格」となり、廃炉に追い込まれる可能性がある。
 破砕帯は過去の地震などで地中に帯状に生じた岩盤の亀裂で、敷地内に150〜160本確認されている。経済産業省原子力安全・保安院は4月24日、専門家とともに、2号機の原子炉建屋の下を通る二つの破砕帯と、西約100メートルの破砕帯の計三つを調査。2号機の北東約150メートルを走る活断層「浦底断層」と連動して動く可能性が浮上した。

http://mainichi.jp/select/news/20120514k0000e040184000c2.htmlより、
 計画によると、指摘された三つの破砕帯を含む6本について掘削調査を実施。(1)破砕帯の活動時期(2)近くを通る浦底断層との連動の可能性−−の2点について調べる。破砕帯の形成時期については、上の地層に含まれる火山灰の種類などから年代を分析して推定。さらにその破砕帯と浦底断層が交わっている近辺を掘削調査し、連動して動くかを調べる。破砕帯ごとに、調査が終了した時点で保安院の意見聴取会に結果を報告する。
 国の基準では後期更新世(約12万〜13万年前)より新しい時代に動いた断層は活断層とみなし、真上に原発を建設することはできない。この時代に動いたことを否定できなければ立地不適格となる。
 2号機は87年に運転を開始。同原発には、ほかに70年に運転を開始した1号機があり、今はいずれも定期検査後、運転を停止している。原電は08年、浦底断層は活断層と認め、耐震性を再評価。安全性への影響はないとしている。一方、破砕帯については、動かない古い断層として扱っている。【岡田英】

http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/dbps_data/_material_/localhost/kansaiinjimukyoku/jumin/H221119.pdfより、
宇都宮市監査委員告示第8号

地方自治法第242条第1項の規定により、平成22年9月24日に提出された宇都宮市職員措置請求について監査した結果を、同条第4項の規定により、次のとおり公表する。
平成22年11月19日
宇都宮市監査委員 五井渕 治夫
同 佐藤 千鶴子
同 中山 勝二
同 熊本 和夫

宇都宮市職員措置請求監査結果

第1 請求の受付
1 請求人
住所 (略)
氏名 (略)

2 請求書の提出日
平成22年9月24日

3 請求の内容
請求人から提出された宇都宮市職員措置請求書による主張要旨及び措置請求は、次のとおりである。
(1) 主張要旨
・ 平成21年9月30日、栃木県に対して市有地の売買を行った際、市が所有権を持つべき忠魂碑や銀杏、桜などの樹木を遺族会の所有物としたため、損失補償を受けられなかった。
・ 忠魂碑等は、旧国本村が村会一致をもって建設したものであり、銀杏や桜などの樹木は、在郷軍人会国本村分会の労力奉仕により植樹したものである。
忠魂碑が建立された大正15年5月には遺族会は存在していなかったにもかかわらず、建立当初から遺族会に所有権があると誤認し、県の担当者にその旨を伝えたため、不当にも遺族会に対して損失補償がなされた。
・ その結果、忠魂碑等が移設され、宇都宮市の木とされる銀杏を含む樹木が切り倒され処分されたが、これらは本来旧国本村の公有財産であり、宇都宮市との合併後は、宇都宮市が保存維持管理すべき市有財産と考えるべきである。
歴史的遺産として後世に残していくべきものが、原状回復できない状態となってしまったことは、本市にとって経済的文化的価値を著しく毀損するものである。地元住民にとってもまちづくりのシンボルを失った精神的ショックは甚大である。
(2) 措置請求
・ 大正15年建立の忠魂碑等が、当時存在していなかった遺族会の所有物となった経緯について説明責任を果たすよう措置請求する。
・ 市民及び地元住民が納得できる説明がない場合には、原状回復のための費用を市長及び管財課職員が負担するよう措置請求する。ただし、原状回復が不可能と思われるので、損害賠償請求の措置を請求する。

4 請求書の要件審査
本件請求については、地方自治法第242条に規定する要件を具備しているものと認められたので、平成22年10月5日に受理を決定した。

第2 監査の実施
1 監査対象事項
請求人が宇都宮市に所有権があると主張する忠魂碑及び戦役記念碑(以下「忠魂碑等」という。)並びに銀杏及び桜等(以下「樹木」という。)の管理を、宇都宮市が違法又は不当に怠ったか否かを、監査対象事項とした。ただし、国本地区遺族会の所有物となった経緯について説明責任を果たすよう求める措置請求については、地方自治法第242条に規定する住民監査請求の要件を欠くため、監査対象事項としなかった。

2 監査対象部局
監査対象部局を理財部管財課とした。

3 請求人の証拠の提出及び陳述
請求人に対し、地方自治法第242条第6項の規定により、平成22年10月18日に証拠の提出及び陳述の機会を与えた。
この際、新たな証拠として、1 平成22年10月14日付け宮広第516号(市長から請求人あての回答)の写し、2 移設前の忠魂碑等及び伐採前の樹木の写真2枚が提出された。

4 監査対象部局職員の陳述
監査対象部局から、監査対象事項に関する資料の提出を求め、書類審査を行うとともに、平成22年10月18日に理財部長、同部次長、管財課長、同課長補佐、同課財産グループ係長等から陳述の聴取を行った。
監査対象部局の説明は、以下のとおりである。
忠魂碑等は、昭和3年11月発行の図書『國本村誌』(以下「村誌」という。)第10章在郷軍人組織の記述から、大正15年に村も巻き込んで地元の軍人組織が先頭に立って建立したものと推定できる。
当時その敷地は、個人が所有する土地であった。忠魂碑等及び樹木が旧国本村の所有物であったのか否かは確認できない。
当該土地所有者は、忠魂碑等の建立に係る費用を負担したとの話も確認された。
忠魂碑等の所有については、請求人は請求の要旨1の記載の中で「本来市が所有権を持つべき忠魂碑や銀杏、桜などの樹木を「遺族会」の所有物としたため、損失補償を受けられなかった。」ことを主張しているが、市には所有権がないと考える。
その理由は以下のとおりである。
・ 一般的に、忠魂碑や忠霊塔と言われる施設は、戦前は軍人組織が、戦後は遺族など地域の住民が中心となり、戦没者ないし戦争犠牲者を世に顕彰し、記念するために建立されたものと言われている。請求の忠魂碑等も、大正15年に、軍人組織を先頭に地域住民の手で建立されたものと推定できる。
こうしたことから、これらの施設は、地域住民のものである性格が強く、市が所有の意思をもつものではない。
・ 忠魂碑等の敷地は、昭和57年4月に前所有者から寄附を受けている。その寄附申込書等から、忠魂碑等や樹木を除いた土地のみの寄附であることは明らかである。
・ 寄附を受けた土地については、忠魂碑等の建立以前から昭和57年に寄附されるまでの間、土地所有者に課税されていた。
・ 忠魂碑等及び樹木の管理については、国本地区遺族会や地元の人々の手により落ち葉拾いや樹木の剪定などが行なわれている。
・ 今回の忠魂碑等移設に類似した事例として、次のような事例がある。
市では、平成12年に、国本地区市民センターを建設するに当たり、市有地である同センター建設用地にあった忠霊塔(第2次世界大戦による戦没者を慰霊する施設)を移設する必要が生じ、その際に、国本地区遺族会と移転補償契約を行った。
忠霊塔の補償に当たっては、政教分離や所有権などの課題に対し、当時の市顧問弁護士に相談した経過があり、「忠霊塔は遺族会が所有を目的に管理しているものであり、所有権は遺族会に帰属する」との見解を得ている。
・ 仮に、忠魂碑等の敷地の所有権移転に伴って、忠魂碑等及び樹木の所有権が宇都宮市に移転したとしても、国本地区遺族会が昭和25年の設立以来忠魂碑等及び樹木の維持管理を行っており、60年以上もの間所有の意思を持って平穏に、かつ公然と他人の物を占有していたということができるので、所有権の取得時効を援用できる。
以上の理由から、忠魂碑等及び樹木については、国本地区遺族会に所有権が帰属し、市には所有権がないものと考える。従って、忠魂碑等及び樹木の所有権のない市が、移設により損害を受けた事実はなく、請求人が主張する原状回復の損害賠償請求には理由がない。

第3 監査の結果
1 事実関係の確認
監査対象部局等に対する監査の結果、次の事項を確認した。
(1) 事実の経過
大正15年 忠魂碑及び戦役記念碑(大)が建立された。
樹木が植栽された。
敷地は民有地であった。
昭和 3年 国本村青年団が村誌を編集、発行した。
昭和 4年 同土地内に戦役記念碑(小)が建立された。
昭和20年 第2次世界大戦が終結した。
昭和21年 帝国在郷軍人会が解散した。
昭和25年 国本地区遺族会が設立された。
昭和29年 宇都宮市が旧国本村を編入合併した。
昭和57年 宇都宮市に対し、同土地の寄附申込みがあり、宇都宮市は寄附を受け入れた。
平成16年 同土地周辺における道路改良事業について、栃木県が住民説明会を行った。
平成21年 栃木県による道路改良工事に伴い、宇都宮市は、同土地(144.23平方メートル)の一部を分筆(78.20平方メートル)の上、栃木県に売却した。国本地区遺族会により忠魂碑等が残地(66.03平方メートル)に移設され、樹木が伐採された。
(2) 関連する事項の詳細
ア 忠魂碑等及び樹木について
・ 村誌の記述によると、忠魂碑等は村会一致をもって大正15年に建立され、樹木は帝国在郷軍人会国本分会員の労力奉仕により植え付けられた。工事総経費は、1,052円84銭であった。
・ 現地調査により、忠魂碑等については、 1基の忠魂碑及び大小2基の戦役記念碑を確認した。忠魂碑には、西南の役から日露戦争までの戦病傷死者名が刻まれている。戦役記念碑(大)には、西南の役からシベリア出兵までの従軍者名、戦役当時吏員名、建設委員名等が刻まれている。また、村誌に記述のない戦役記念碑(小)には、戦役記念碑(大)に追加する形で、日清戦争、日露戦争及びシベリア出兵の従軍者名が刻まれている。
樹木については、伐採の痕跡であると思われる切り株3株を確認した。
・ 忠魂碑等及び樹木の管理については、第2次世界大戦以前の状況は確認できないが、地元からの聞き取りにより、戦後は国本地区遺族会や地元の住民が落ち葉拾いや樹木の剪定などを実施してきたことが窺える。
イ 帝国在郷軍人会国本分会について
村誌の記述によると、日露戦争(明治37年から38年まで)の後に、全国各地に軍人団が組織された。明治43年、軍人団は在郷軍人会と改称し、伏見宮貞愛親王を総裁として帝国在郷軍人会が組織され、各連隊区に支部が、町村に分会が設置された。
旧国本村においては、明治40年に軍人団が組織され、その後、名称を帝国在郷軍人会国本分会(以下「在郷軍人会国本分会」という。)とした。
帝国在郷軍人会は、第2次世界大戦の終結により昭和21年に解散したことが史実として確認できる。在郷軍人会国本分会についても、帝国在郷軍人会の解散に伴い、ほぼ同時期に解散したものと推定される。
ウ 国本地区遺族会について
国本地区遺族会は、昭和25年に設立され、会長及び会員約50名で構成されている。
なお、財団法人日本遺族会、宇都宮市遺族会連合会、地区遺族会等は、戦没者遺族の相互扶助、福祉の向上と英霊の顕彰を主たる目的として設立された団体である。
エ 土地について
・ 忠魂碑等が所在する宝木本町2549番8の土地は、忠魂碑等の建立前から民有地であり、建立後も、引き続き土地台帳及び土地課税台帳に登録され、宇都宮市に寄附されるまでの間、長年に渡り課税されていた。
・ 昭和57年、宇都宮市は、民有地であった当該土地の寄附を受け入れた。寄附受入れ時の起案文書に添付された寄附申込書及び寄附受領書には、寄附財産としての記載は、土地の項目についてのみであり、建物及びその他の財産の項目には斜線が引いてあることが確認できる。
オ 道路改良工事について
平成21年、宇都宮市は、栃木県による県道大沢宇都宮線の道路改良工事のため、当該土地の一部を分筆し栃木県に売却した。
同年、国本地区遺族会は、当該道路改良工事のため、栃木県と忠魂碑等に係る移転補償契約を締結した。その後、忠魂碑等は、残地に移設され、樹木は伐採された。

2 監査委員の判断
宇都宮市が忠魂碑等及び樹木の管理を違法又は不当に怠ったか否か、所有と管理の実態について検討する。
・ 村誌の記述及び国本地区住民からの聞き取りからは、忠魂碑等及び樹木の所有者についての確証は得られなかった。
・ 忠魂碑等及び樹木の管理については、戦前の状況は確認できないが、地元からの聞き取りにより、戦後は国本地区遺族会や地元の住民が落ち葉拾いや樹木の剪定などを実施してきたことが窺える。一方、昭和29年の市村合併以後、宇都宮市が管理を行ってきた事実は見当たらない。
・ 当該土地の寄附受入れについては、昭和57年の寄附申込書及び寄附受領書の記録から、当該土地のみが寄附されたことは明白であり、忠魂碑等及び樹木が寄附されたと判断すべき事実は認められない。
・ また、当該土地については、土地台帳及び土地課税台帳によれば、宇都宮市が寄附を受け入れる昭和57年まで、土地に係る税が課されていた。仮に、請求人が主張するように、忠魂碑等及び樹木の所有権が市村合併によって旧国本村から引き継がれ、宇都宮市がこれらを所有したとするならば、宇都宮市は、当該土地に係る借地料の支払い、あるいは市税の減免を行ったと思われるが、それらの事実は認められない。
以上のことから、宇都宮市が忠魂碑等及び樹木の所有権を有しているとはいえず、管理する義務もない。
よって、宇都宮市が忠魂碑等及び樹木の管理を違法又は不当に怠った事実はない。

3 結論
以上、市長及び管財課職員に対し、忠魂碑等及び樹木の原状回復のための費用負担又は原状回復が不可能と思われるので損害賠償を請求する旨、勧告するよう求めるとの請求は理由がないものと判断し、棄却する。

宇都宮市職員措置請求書
宇都宮市長及び管財課職員に関する措置請求の要旨

1 請求の要旨
1 宇都宮市長及び管財課職員、平成21年9月30日、栃木県に対して市有地売買を行った際、本来市が所有権を持つべき忠魂碑や銀杏、桜などの樹木を「遺族会」の所有物としたため、損失補償を受けられなかった。
2 この忠魂碑等は旧國本村が村会一致をもって建設したものであり、銀杏や桜などの樹木は当時の在郷軍人会國本村分会の労力奉仕により植樹したものである。忠魂碑は大正15年5月に建立されたものであり、当時「遺族会」なる団体は存在していないにもかかわらず、具体的な事実や根拠を示すことなく、建立当初から「遺族会」に所有権があると誤認し、県の担当者にその旨を伝えたため、不当にも「遺族会」に対して損失補償がなされたものである。
3 その結果、忠魂碑等が移設され、宇都宮市の木とされる銀杏を含む樹木が切り倒され処分されたが、これらは本来旧國本村の公有財産であり、宇都宮市と合併後は、当然宇都宮市が保存維持管理すべき市有財産と考えるべきで、歴史的遺産として後世に残していくべきものであったが、もはや原状回復できない状態となってしまったことは本市にとっても、経済的文化的価値を著しく毀損するものである。地元住民にとっても「まちづくり」のシンボルを失った精神的ショックは甚大である。
4 大正15年5月建立の忠魂碑等が、当時存在していなかった「遺族会」の所有物となっ た経緯についての説明責任を果たすよう措置請求します。市民及び地元住民が納得できる説明がない場合は、原状回復のための費用を市長及び管財課職員が負担するよう措置請求します。ただし、原状回復が不可能と思われますので損害賠償請求の措置を請求します。

2 請求者
住所(略)
職業(略)
氏名(略)
地方自治法第242条第1項の規定により、別紙事実証明を添え、必要な措置を請求します。
平成22年9月24日
宇都宮市監査委員 殿
添付資料(略)