木語:限りなく透明な黒幕 金子秀敏氏

http://mainichi.jp/opinion/news/20130117ddm003070134000c.htmlより、
木語:限りなく透明な黒幕=金子秀敏
毎日新聞 2013年01月17日 東京朝刊

 <moku−go>

 中国に言論の自由がないことは世界の常識だ。中国共産党には世論操作やメディア監視をする宣伝部があり、政治局常務委員会にはイデオロギー担当の常務委員がいる。

 ところが、言論統制が実際どのように行われているのか、実は中国人もよく知らなかったという。香港大学のメディア研究者、銭鋼(せんこう)氏によると、「南方週末」紙で新年社説差し替え事件が起き、宣伝部のやり口が一般に知れ渡った。銭氏は「黒幕が暴かれた」と言う。(「『南方週末』と新聞検閲」)

 党宣伝部やイデオロギー担当常務委員の存在を知らない中国人はいない。では、なぜ「黒幕」といったのか。宣伝部の動きが外から見えないからだ。言論統制をした証拠を残さないように、黒幕は透明に近い黒なのである。

 改革開放政策が始まったトウ小平(とうしょうへい)時代の党宣伝部は新聞社の自主規制を尊重したが、1989年の天安門事件後、江沢民(こうたくみん)時代になってメディア統制が強まった。

 当時の党中央宣伝部は「閲評(えつひょう)」(検閲批評)という文書を新聞社に送りつけ、気に入らない記事を書いた記者にイエローカードを出した。閲評のポイントがたまると記者は処分された。事後検閲だった。

 江沢民時代の後半から、「審読(しんどく)」(検閲読み)制になった。主要メディアに宣伝部から検閲員を派遣して、試し刷りの記事にクレームをつける。事前検閲である。また宣伝部幹部を各紙の編集長に送りこんだ。

 この頃から宣伝部の記事修正要求は口頭や電話になった。音声だと宣伝部が介入した証拠が残らず、記者の反発をかわせるからだろう。

 それにしても、今回の社説書きかえは異常だった。新年号が降版し、社員が正月休みに入った未明の段階で、広東省党委員会のトップが編集長、副編集長の2人に電話して口頭で書き直しの要点を命じた。キーワードの「憲政」はすべて削除させられた。記者が帰って静まりかえった編集室で編集長と副編集長が社説を書きかえた。締め切り時間はとうに過ぎていた。

 いやがらせにしては度が過ぎる。宣伝部が黒幕のかげから出て改革派メディアにケンカを売ったとしか思えない。

 習近平指導部のイデオロギー担当常務委員は胡錦濤(こきんとう)指導部で党中央宣伝部長だった劉雲山(りゅううんざん)氏。保守派の実力者だ。「南方週末」事件が起きた後、党理論家の拠点、中央党校の校長を兼務した。「南方週末」の事件は、改革派の言論を規制するという黒幕の頂点から届いた新年メッセージだ。(専門編集委員)

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