集団訴訟法案 「消費者を待たせるな」

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013043002000189.htmlより、
東京新聞【社説】集団訴訟法案 消費者を守る審議貫け
2013年4月30日

 悪徳商法などの被害回復のために特定の消費者団体が被害者に代わって集団訴訟を起こせる特例法案が閣議決定された。待ち望まれた新たな制度だ。消費者を守る視点で国会審議を尽くしてほしい。
 違法な契約で消費者が失った金銭を取り戻し、泣き寝入りさせない。「集団訴訟制度」の狙いはここにある。ゴルフ会員権の預かり金や入学前に前払いした授業料の返還トラブル、モニター料をあげるからと布団を買わせて約束を破るモニター商法など、被害は毎年七十万件に上る。消費者庁によると、六割以上が事業者に交渉しても一円も返してもらえない。被害の半数は十万円未満、個人で訴えるには裁判費用や労力が見合わず、訴訟を起こす人は少数派だ。
 この壁を乗り越えるため、新たな制度は首相が認定する消費者団体が被害者に代わって損害賠償訴訟を起こす。類似の被害をまとめて救済できるよう、被害者は団体が勝訴した後に参加し、簡単な手続きで賠償金を受け取れる。
 だが、経団連などの経済団体は「訴訟が乱発されると、健全な企業活動までが萎縮し、経済再生に悪影響を及ぼしかねない」と反発している。おかしな意見だ。企業の収益のために消費者は被害を我慢すべきだというのだろうか。
 訴訟を起こせる消費者団体は不当な勧誘の差し止め請求などで実績のある非営利のNPO法人などだ。政府の審査や監督も受け、違反の場合は認定取り消しもある。敗訴すれば裁判費用も自腹になるのだから、訴える根拠のない裁判を乱発するなど考えにくい。
 集団訴訟制度は欧米で導入されているが、日本の場合はかなり限定的だ。企業は賠償金が増えるのを心配するのだろうが、訴訟にできるのは金銭被害だけで、敗訴して支払いを命じられるのは商品の値段までだ。慰謝料や逸失利益、製品事故や食中毒など人身に及ぶ被害の賠償は含まれない。これらは別に通常の民事訴訟で解決を図ることになる。
 法案は救済対象を法施行後の被害とした。そのような抑制的な制度でいいのか。悪質なケースには遡(さかのぼ)って適応できるようにならないのか議論してほしい。
 まともな企業活動なら訴えられる心配はいらない。経済界にとってはここまで被害を広げた違法な契約に対し、どんな手を打ってきたのかを見直す機会になる。それが消費者との信頼回復や経済活性化にもつながるはずだ。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO54184020Q3A420C1EA1000/より、
日経新聞 社説 企業の懸念にこたえた消費者救済制度に
2013/4/20付

 悪質商法などの被害にあっても、そのまま泣き寝入り。そんな消費者を減らそうと、新たな法案が閣議決定された。消費者に代わり、首相が認定する消費者団体が事業者に損害賠償などを求める訴訟を起こせるという法案だ。
 消費者は、事業者の責任が認められた段階で参加を申し出ればよく、簡単な手続きで被害が回復できる。だが、健全な企業活動にもダメージが及ぶのではないかとの懸念も強い。国会審議などを通じ、企業の不安を払拭し、消費者にも分かりやすく納得できる制度にすることが大切だ。
 新制度では、国が新たに認定する「特定適格消費者団体」が裁判を起こす。不当な契約条項や詐欺的な悪質商法など、消費者契約で多くの消費者に被害が生じている場合が対象だ。消費者が自ら裁判を起こすのは、ハードルが高い。まとめて被害回復を図る制度には一定の意義がある。
 ただ、今回の制度が企業活動を萎縮させることがあってはならない。経済界からは「乱訴につながりかねない」などと強い懸念が示されてきた。巨額の賠償などで知られる米国のクラスアクションなどでの苦い経験が背景にある。
 日本では請求できる範囲は限定されている。例えば、製品事故や食中毒で生命・身体などに生じた損害や、慰謝料などは対象外だ。施行前の契約には適用されない。だが、法律の解釈に委ねられている部分もある。企業の懸念は杞憂(きゆう)といえるのか。十分な審議が必要だ。
 裁判を起こす消費者団体を適切に認定、監督することが大きなカギを握る。現在、不当な勧誘などをやめるよう事業者に求める訴訟を起こせる団体が11ある。その中からより厳格な要件を満たした団体が担い手となる。
 与党審査の段階で、団体が受け取る報酬・費用に厳しい枠がはめられたのは妥当だろう。今後、具体的なガイドラインを作る際は、幅広く経済界、消費者の声を集約すべきだ。消費者団体も、自らの真価が問われる。
 一方で、裁判外の紛争解決の仕組みを強化していくことも重要だ。消費者教育も欠かせない。
 今回の法案は、影響の大きさに比べ、社会の関心が一部に限られた面もある。経済への悪影響を避けながら、消費者被害をいかに防いでいくか。国会内外で、議論を深めることが大切だ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130418k0000m070155000c.htmlより、
社説:集団訴訟制度 消費者のために必要だ
毎日新聞 2013年04月18日 02時30分

 消費者被害の裾野は広い。
 ゴルフ会員権の預かり金や入学前に支払った前払い授業料の返還を拒まれたり、語学学校の受講解約をしたら返還金を不当に少額に精算されたりといった契約をめぐるトラブルが少なくない。
 詐欺的な悪質商法も横行している。金やダイヤモンドを売りつけてそれを預かり、満期に利子をつけて返すとしながら約束をほごにする。現物は一度も見せず、本当にあったのかさえ疑わしい。現物まがい商法と呼ばれるものが典型だ。
 消費者庁の調査によると、こうした被害の約半数が「10万円未満」で、「50万円未満」も7割に上る。
 交渉しても納得のいく金額は返らず、手間や費用を考えると裁判は割に合わない。消費者被害に遭った人の6割以上が1円の被害回復もできずに泣き寝入りしている。
 そんな現状を是正しようと消費者庁が「消費者集団訴訟」法案を準備し、今国会の提出を予定している。
 同種被害が多発している事案で、個々の被害者に代わり首相が認定する適格消費者団体が事業者を相手に民事裁判を起こす。勝訴判決が確定すれば被害者が加わり、簡単な手続きで賠償金を受け取れる仕組みだ。
 だが、最近になって経済団体などから、日本経済の再生プロセスにマイナスの影響を及ぼす恐れがあるとして異議の声が出ている。
 多数の消費者が訴訟参加すれば企業経営に影響が出る恐れがある。乱訴の懸念もある、といった理由だ。
 だが、その主張には賛同しかねる。経済のためには消費者の多少の被害には目をつぶるべきだとも聞こえる。そもそも、まともな企業活動をしていれば訴訟の対象にはならないはずだ。非営利のNPO法人が主体の適格消費者団体は政府の厳格な審査や監督を受ける。乱訴も考えにくい。懸念は杞憂(きゆう)ではないか。
 集団訴訟制度は、既に欧米で導入されているが、日本の制度は対象が極めて限定的だ。例えば、製品事故や食中毒など生命や身体に被害が生じたものは対象外だ。逸失利益や慰謝料も求めることはできない。そうした請求は個人が別途裁判で決着をつけてくれ、という制度だ。
 違法な契約によって消費者が失った金銭を返してもらうことに狙いが特化されているのだ。
 適切に消費者を保護することで市場への信頼が高まり、長い目でみれば消費拡大など経済にも資する。そこが制度の出発点だ。
 経済界の代表者も入った専門調査会で長年検討された末に現在の法案になった。実現を求める消費者団体の期待も強い。早期に閣議決定し、国会審議を進めるべきだ。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年 4月 6 日(土)付
集団訴訟法案―消費者を待たせるな

 「消費者集団訴訟」の制度をつくる法案の提出に、経済界から慎重論が出ている。
 これは、悪徳商法などの被害者の泣き寝入りを防ぐ法案だ。
 経団連などの経済団体は、被害者を救うしくみは必要だと認めつつ、「訴訟が乱発されて健全な企業の活動まで萎縮し、経済再生の足を引っぱらないか」と心配している。
 そもそも景気を心配するあまり、正義を後回しにするような社会はおかしい。制度の中身をみれば警戒のしすぎに見える。国会で議論を進めるべきだ。
 法案は、多くの消費者がからむ取引の被害を想定している。
 たとえば毎月のクレジット支払額以上のモニター料をあげるから布団を買ってとさそい、約束をほごにするモニター商法。解約時の清算金が不当に高く設定された英会話教室などだ。
 消費者庁の調査では、こうした被害にあった人の6割以上が結局1円も返してもらえず、泣き寝入りしている。訴訟を起こす人は1%に満たない。
 被害額が数十万円程度だと、一人で訴えるのは裁判費用や労力を考えると割にあわぬ。一人あたりの費用負担を軽くし、訴えやすくする仕組みが要る。
 法案では、訴訟を起こせるのは首相が認定するいくつかの消費者団体だけだ。乱訴禁止の規定もあり、違反すれば認定取り消しもありうる。
 なにより、敗訴したら裁判費用は団体の自腹になる。
 勝てる見込みの薄い裁判を乱発するとは考えにくい。
 それでも、被害者と額がふくれあがらないか――。企業側はそんな恐れを抱いている。団体が勝訴した後で被害者に手を挙げてもらい、人数と返金額が決まる仕組みになるからだ。
 だが、敗訴した企業が支払う義務を負うのは、最大で元の商品の値段までだ。慰謝料や人身被害の賠償はふくまれない。
 慰謝料などを求めるときは通常の民事訴訟を使ってもらう。
 そんな考え方で制度は設計された。米国の集団訴訟のように巨額の懲罰的な賠償を科されるわけではない。
 つまり、本来ユーザーに返さねばならない金を返すだけだ。真っ当な商売をしている会社なら心配にはおよばない。
 被害者の範囲の定め方や、法施行前の契約を訴訟の対象にふくめるかどうかなどの論点は、国会で議論を尽くせばいい。
 集団訴訟の構想は、国民に使いやすい司法制度への改革を検討する中で芽生えた。それからすでに11年がたつ。これ以上、被害を放っておけない。

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