厚生年金基金 「制度存続は筋が通らぬ」

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013050402000127.htmlより、
東京新聞【社説】厚生年金基金 制度存続は筋が通らぬ
2013年5月4日

 厚生年金基金の制度見直し法案が国会に提出された。財政悪化の基金をどうするのかが法改正の狙いだが存続を決めた。公的な厚生年金の財政に影響が出かねない。基金廃止見送りは問題を残す。
 厚生年金基金は民間の企業年金である。公的年金である厚生年金に上乗せして元従業員の受給者に払われる。老後の生活資金を少しでも増やそうと一九六六年につくられた。
 経済成長期には高い運用益を得たが、最近は運用がうまくいかない基金が増え財政悪化が問題となっている。
 基金の今後を考える上で問題となっているのが、国に代わって厚生年金の一部の保険料を運用して給付に充てる「代行部分」だ。受給者への必要な給付額が、保険料を積み立てた資産額を下回る「代行割れ」が生じている。
 これ以上穴をあけない対策が必要で、法案に盛り込んでいる。
 約五百六十基金のうち「代行割れ」は約四割ある。五年以内に解散させる。解散するには代行部分の資産を国に返す必要があるが、足りない資産の納付期間延長などの特例を設けて後押しする。
 そこまで財政は悪化していないが、代行割れの不安のある基金は約五割あり、五年以内に解散か他の企業年金への移行を促す。
 厚生年金の積立金に穴をあけていたり、あけかねない事態になっているのだ。当然だろう。
 問題なのは制度を廃止せず、残りの約一割の基金に存続を許すことだ。民主党政権は十年で廃止することを打ち出していた。自公政権は一転、健全な基金の存続を求める声に配慮して方針を変えた。
 法施行五年後に、代行部分の一・五倍以上の資産を持っているか、代行部分と上乗せ分の合計が必要額あれば代行を続けられる。
 資産に余裕のあることが条件だが、過去の運用実績が将来も通用するとは限らない。運用の専門家を基金に置いても、かつてのように運用益を出せない時代だろう。代行割れのリスクはつきまとう。
 基金を解散させる場合は、基金の母体企業が代行部分を国に返せなくなるリスクもある。最後は、そのツケは基金とは関係ない会社員たち厚生年金の加入者に回る。
 代行部分の資産は本来、厚生年金の積立金だ。公的財産を一部の企業年金に運用させていることは筋が通らない。年金給付が先細る中、将来に不安を残す制度の見直しは納得できるものではない。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年 4月 8 日(月)付
厚生年金基金―禍根を残す制度の存続

 構造的な財政悪化が問題となった厚生年金基金の制度を見直す法案が、近く国会に提出される見通しだ。
 狙いは、基金が国に代わって公的年金の保険料を運用し、給付する「代行部分」にこれ以上の穴を開けないことにある。
 代行部分に損を抱える「代行割れ」の基金には、5年以内の解散を促す。約560ある基金のうち4割が該当する。
 代行部分を国に戻すには穴を埋める必要があるため、30年の分割納付を認めるなど特別措置も用意する。
 ここまではいい。問題は、代行制度=基金そのものの廃止を見送ったことだ。
 民主党政権下では10年で廃止する方針だった。制度を残している限り、代行割れのリスクはなくならないからだ。
 だが、自公政権になって、「健全な基金も廃止させるのはおかしい」との声を受け、一部存続へ転換した。各基金からなるべく大きな資産を預かって運用手数料を稼ぎたい金融業界の働きかけも効いたようだ。
 具体的には、法施行から5年後に、(1)代行部分の1・5倍以上の資産がある(2)代行部分と上乗せ(企業年金)部分を合わせて給付に必要な資産がある――のいずれかを満たせば代行を続けられる。1割の基金が該当するという。
 特に疑問なのは(2)だ。上乗せ給付に必要な資産が確保されていれば、代行部分は守られるはずと厚生労働省は説明するが、希望的観測でしかない。
 仮に基金が上乗せ部分をぎりぎりまで削れば、代行部分と同じ程度の資産で存続できる。これでは市場の低迷で、すぐに代行割れになりかねない。
 厚労省の審議会は今年2月、「(1)は最低限の条件、(2)は当然の前提」という意見を出している。「どちらか一つでいい」という今回の方針は、これとも矛盾する。
 存続する基金が基準をクリアできない場合は、厚労相が第三者委員会の意見を聴いたうえで「解散命令」を出すという。
 ただ、基準を満たしているかどうかをきちんと監視する体制が必要になる。その行政コストはいかほどか。
 なにより、本当に解散を強制できるのか危惧を感じざるを得ない。これまでも基金業界は、財政健全化に必要な措置を先送りしてきた経緯がある。
 基金が代行割れを回復できなければ、ツケは基金と関係ない公的年金の加入者に回る。そのリスクを遮断できない制度存続は将来に禍根を残す。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121108/k10013343951000.htmlより、
厚生年金基金の改革試案に慎重意見
11月8日 13時25分

国に代わって公的年金の保険料の一部を運用する企業年金=厚生年金基金の制度を、10年かけて廃止するなどとした厚生労働省の改革試案について、8日の民主党の会合で、基金を廃止する際の費用の一部を公的年金の保険料で賄うのは理解が得られないなどとして、慎重な対応を求める意見が出されました。
主に中小企業の企業年金を扱う厚生年金基金は、経済情勢の悪化により半数の基金で必要な積立金が不足する厳しい運営に陥っており、厚生労働省は運営状況が厳しい基金を5年以内に解散させたうえで、制度自体を10年かけて廃止するとした改革試案をまとめました。これについて、8日開かれた民主党の厚生労働部門会議の会合では、制度を廃止することについては異論は出ませんでしたが、基金が解散する際、国に返済しきれない積立不足の穴埋めを公的年金の保険料で賄うとしている点について、「基金と無関係の人までが負担を負うことになり理解が得られない」などと慎重な対応を求める意見が出されました。
また、8日の会合では、過去の特例措置で本来より高くなっている年金の支給額を引き下げるための法案などについて、今の国会での成立を目指し、修正も視野に野党側と協議を進めることを確認しました。

http://mainichi.jp/opinion/news/20121107k0000m070132000c.htmlより、
社説:厚生年金基金 制度廃止に残る課題
毎日新聞 2012年11月07日 02時30分

 AIJ投資顧問による年金消失事件を受けて厚生年金基金問題について検討してきた厚生労働省は、10年で同基金を廃止するなどの改革案をまとめた。国に代わって公的年金である厚生年金を支払う資金のない「代行割れ」の基金は5年以内に解散させるという。「制度そのものの廃止も含めて抜本的な改革に着手すべきだ」と私たちは主張してきた。これ以上の損失を抑えるためには速やかな改革が必要だ。
 代行割れしている基金は11年度末時点で577基金のうち287基金に上る。現在基金に加入しているのは中小規模の運輸、建設業など構造不況に陥っている企業が多く、年金を受給するOBの割合が増えるに従ってさらに年金財政は苦しくなる。厚労省の試算では2年以内に代行割れに陥る可能性がない基金はわずか6%(35基金)しかない。
 改革案では、財政状況が著しく悪い基金を厚労相が指定し、加入者らの同意なしに強制的に退場させる「清算型解散」も導入する。解散の要件も母体企業の経営悪化の条件は撤廃し、加入者の同意も現在の「4分の3以上」から「3分の2以上」に引き下げる。
 代行割れしていない基金からの反発は強いだろうが、このままでは代行部分を返せずに公的年金の穴が広がっていく可能性が強い以上、制度自体の廃止はやむを得まい。3階部分の上乗せ年金はなくなるが、公的年金についてはこれまで通り受給できる。健全な運用をしている基金は代行部分を返上した上で、確定給付型など別の企業年金へと移行することもできる。
 問題は、代行部分の資金を国に返せずに解散できない基金をどうするかだ。厚労省は、(1)返済額を減額し、差額を厚生年金保険料で補填(ほてん)する(2)返済期限(現行15年)を延長して企業側に自己責任で返済させる−−の2案を示した。ただ、(2)の場合も母体企業が倒産したら厚生年金から補填するという。基金は公的年金に上乗せした3階建て部分を企業が自己責任で運営してきたものだ。うまく運用できていた時は多額の年金を支給し、失敗した時だけ公的年金から補填というのでは理屈に合わない。公的年金にしか加入していない多数の企業や被用者は納得できないだろう。
 ただ、基金が自力で代行部分を返済できなければ結局は厚生年金財政に穴が開く。厚生年金から補填しないのであれば税金で穴埋めするしかないが、この場合も基金とは無関係の多くの国民が負担を分かち合うことになる。ここで議論に時間を費やすとさらに負担は重くなっていく。公平性や納得感を考慮しつつ改革を速やかに断行するほかない。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html#Edit1より、
朝日新聞 社説 2012年11月4日(日)付
厚生年金基金―制度の廃止は当然だ

 AIJ投資顧問による年金消失で苦境が表面化した厚生年金基金制度について、厚生労働省は10年かけて廃止する方針を試案として公表した。
 当然の流れだ。評価したい。
 焦点は、基金が厚生年金の保険料の一部を国に代わって運用する「代行部分」である。
 580弱ある基金のうち約半数は、手持ちの資産が国に戻すべき金額を下回る「代行割れ」に陥り、総額1兆1千億円の穴が開いている。
 基金を解散する場合、本来なら、その母体企業と従業員が穴を埋めて国に返上すべきだ。
 ところが、基金の多くは同業の中小企業が集まってつくっており、お金を出す余裕がない。その結果、傷口が広がる。
 このため試案では、代行割れ基金の解散に向けて、5年間の時限措置を用意した。
 まず連帯債務の廃止だ。今は基金の加入企業が倒産すると、その企業が国に負っている債務を、同じ基金の残りの企業が引き継ぐが、それをやめる。
 連帯債務を負うと、いくら返しても借金が減らず、連鎖倒産を招きかねないためだ。
 倒産で開いた穴は厚生年金本体で埋める。基金と関係ない厚生年金の加入者が肩代わりする形になるが、やむをえまい。
 試案はさらに「債務を国に返済する期間を現在の最長15年から延長する」「債務に上限を設ける」との選択肢を示した。
 返済期間の延長は必要だろうが、最初から債務に上限を設けるのには反対だ。
 すでに基金を解散し、債務を全額返した企業との不公平感、「借りたカネは返す」という原則を揺るがすことなど、問題が多い。
 どのようなケースに、この「徳政令」を使おうと想定しているのか、厚労省は明確に説明すべきだ。
 基金制度そのものの廃止に対しては、代行割れしていない基金から「代行部分がなくなると運用資金が減り、スケールメリットが働かない」などと反対する意見が根強い。背景には、受託金融機関や各基金事務局の利害が透けて見える。
 しかし、厚労省の試算では、資産が潤沢で「1年後の代行割れの確率がほぼゼロ」の基金は74、「2年後もゼロ」だと40しかない。
 いくら健全に見えても、運用の失敗や母体企業の経営悪化などで、将来、代行割れに陥る可能性は残る。そうなれば、今と同じ状況に陥ってしまう。
 厚生年金基金は、ここできっちり廃止を決めるべきだ。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2012110302000109.htmlより、
厚生年金本体で穴埋め 基金制度10年かけ廃止
東京新聞 2012年11月3日 朝刊

 厚生労働省は二日、AIJ投資顧問の年金資産消失事件を受け、厚生年金基金の解散を債務軽減などで促す特例措置を設け、十年間で制度を段階的に廃止する改革試案を社会保障審議会(厚労相の諮問機関)年金部会専門委員会に提示した。基金の母体企業が賄いきれない積み立て不足が生じた場合、サラリーマンが加入する厚生年金の積立金で穴埋めする。税は投入しない。基金と関係ない会社員が支払った保険料につけを回すことになるため、批判が出るのは必至だ。来年の通常国会に厚生年金保険法改正案を提出する方針。
 厚年基金は民間企業退職者の公的年金に上乗せ給付する企業年金。厚生年金の一部を「代行部分」として国から預かり、運用している。資金運用に失敗し、厚生年金の給付に必要な資金を賄えない「代行割れ」の基金が増えたため、廃止方針を打ち出した。
 試案は、解散時に代行部分の返還を義務付けていることに関し、(1)最長十五年の納付期間を延長(2)負担額に上限を設定-の二案を示した。複数の企業でつくる基金は連帯して債務を負う規定を外す。
 代行割れの基金は改正法の施行後五年以内に解散申請させる。財政が悪化しているのに解散しない基金に対し、第三者委員会で審査して厚労相が解散を勧告する仕組みも設ける。
 特例措置で解散した場合、解散申請の時点から上乗せ部分の支給は停止。特例措置を利用しないで解散した場合は残りの資金が一時金として分配される。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121103/k10013220471000.htmlより、
厚生年金基金 積立不足の穴埋めが焦点
11月3日 4時19分

厚生労働省は、国に代わって公的年金の保険料の一部を運用する企業年金、厚生年金基金の制度について、積立不足に陥っている基金が増加していることから、制度自体を10年かけて廃止するとした改革試案をまとめました。
総額で1兆円を超える積立不足の穴埋めを雇用への影響にも配慮しながら企業側にどう求めていくかが今後の焦点となりそうです。
主に中小企業の企業年金を扱う厚生年金基金は、経済情勢の悪化により期待した運用益が得られず、半数の基金が、必要な積立金が不足する厳しい運営に陥っています。厚生労働省は、基金の運営状況が大幅に改善する見通しはないとして積立不足の基金を5年以内に解散させ、制度自体を10年かけて廃止するとした改革試案をまとめました。
改革試案では、積立不足は、基金に加入する企業側に自己責任で返済させるとしていますが、総額で1兆円を超える積立不足のうちどの程度、穴埋めできるのか見通しは立っていません。
また、企業側で穴埋めしきれない分は、厚生年金本体の保険料で賄うとしていますが、「基金と無関係の人までが負担を担うことになり、不公平だ」という指摘が出ています。
その一方で、企業側に無理な負担を求めれば雇用に影響が出るという懸念もあります。
厚生労働省は、年内をめどに成案をまとめたうえで必要な法案を来年の通常国会に提出したいとしていますが、これらの課題にどう対処するかが今後の焦点となりそうです。

http://mainichi.jp/select/news/20121103k0000m010060000c.htmlより、
厚生年金基金:「赤字」5年以内解散 制度10年で全廃へ
毎日新聞 2012年(最終更新 11月02日 23時41分)

 厚生労働省は2日、厚生年金基金制度の廃止案を社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の専門委員会に示した。国に代わって公的年金の厚生年金分を支払う資金のない「代行割れ」の赤字基金は法施行から5年以内にすべて解散させたうえで、制度を10年で全廃する方針を明記した。従わない基金には国による「強制解散」も適用する。母体企業が倒産し国に厚生年金資金を返済できない基金には、厚生年金本体の積立金(保険料)を投入する。
 制度廃止案の提示はAIJ投資顧問による年金消失事件を受けた措置。2日の専門委では今後健全な基金の意向聴取をすることを決めたが、廃止案は大筋支持された。同省は来年の通常国会に厚生年金法改正案を提出する意向。ただ、廃止に反発する基金もある。自民党は制度存続を求めており、廃止が実現するか否かは不透明だ。
 厚生年金基金制度を廃止する理由について、厚労省は同日の専門委で資金運用環境の悪化などを挙げ「将来にわたって安定的に制度を維持するのは難しい」と説明した。廃止に向けては、改正法施行時点で新規の基金設立を禁じる。5年以内に代行割れ基金をすべて解散させ、制度自体を10年後になくす。財政状況が著しく悪い基金を厚労相が指定し、加入者らの同意なしに強制退場させる「清算型解散」も導入する。
 各基金に自主的な解散を促す方策も並べた。複数の中小企業でつくる「総合型」基金の場合、加入企業に倒産が出ると残った企業は倒産企業分の年金負債を連帯して返す必要がある。厚労省案はこの連帯責任義務を廃止し、母体企業の負担軽減を図るとした。倒産企業分の債務は厚生年金保険料で穴埋めすることを認める。
 代行部分の資金を国に返せず解散できない基金向けには特例救済策2案を併記し、どちらかを成案にするとした。(1)案は返済額を減額し、差額を厚生年金保険料で補填(ほてん)する案。(2)案は返済期限(現行15年)を延長することで同保険料を使わずに済ませる案だ。保険料を救済に充てることへの批判に配慮した。
 このほか、解散の要件も緩和する。「母体企業の経営悪化」の条件は撤廃したうえで、現在の「加入者の4分の3以上の同意」を「3分の2以上の同意」に引き下げる。【鈴木直】

◇厚生年金基金制度の廃止案(骨子)◇
・厚生年金基金制度を10年で廃止。代行割れ基金は5年以内にすべて解散
・厚労相が解散を促す「清算型解散」(仮称)を導入
http://mainichi.jp/select/news/20121103k0000m010060000c2.htmlより、
・解散時の国への資金返済を優遇する特例措置。「返済額の減額」か「返済期間の延長」のいずれかを導入
・複数企業でつくる基金が解散する際の返済額の連帯責任を廃止
・特例解散の申請時点で企業年金は支給停止
・解散要件のうち「母体企業の経営悪化」は撤廃。事業主・加入者の同意(4分の3以上)を「3分の2以上」に緩和

 【ことば】厚生年金基金
 企業年金の一種。企業年金分の掛け金に加え、本来は国に納める厚生年金の保険料の一部を国に代わって徴収し、運用や給付も「代行」している。厚生年金の資金も含めて運用するので株価上昇時には年金額を増やせる利点があったが、株価の下落に伴って多くの基金では財政状況が悪化、全577基金の半数、287基金は厚生年金分の財源も足りない「代行割れ」に陥っている。基金を解散するには厚生年金の支給に必要な資金全額を国に返す必要があり、解散を望みながらできない基金も多い。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121102/k10013211261000.htmlより、
厚生年金基金10年で廃止の改革試案
11月2日 18時40分

厚生労働省は、国に代わって公的年金の保険料の一部を運用する企業年金・厚生年金基金の制度について、経済情勢が悪化して、必要な積立金が不足する基金が増加していることから、積立不足の基金を5年以内に解散させたうえで、基金の制度自体を10年かけて廃止するとした改革試案をまとめました。
厚生年金基金は主に中小企業の従業員が加入する企業年金の一つで、運用益を増やすため、公的年金である厚生年金の保険料の一部も国に代わって運用しています。しかし、経済情勢が悪化し、期待した運用益が得られず、公的年金の支給に必要な積立金まで不足する基金が大幅に増えたことから、厚生労働省は基金の改革試案をまとめ、2日、専門家による審議会に示しました。
それによりますと、まず、公的年金の支給に必要な積立金が不足している基金については、5年以内に自主的に解散するよう求め、これに応じない場合には、新たに作る第三者委員会の議決を経て、厚生労働大臣が解散を促すとしています。それでも従わない基金については解散命令を出し、強制的に解散させるとしています。
なお、基金側が解散を申請した時点で、公的年金に上乗せされる企業年金部分は支給が停止され、公的年金だけが支給されることになります。
また、基金が解散する際、積立金が不足する分は、企業側の自助努力により解消させるとしています。それでも不足額が生じた場合には、厚生年金本体の保険料を充て、税金の投入はしないことにしています。
なお、過去に無理な運用を行っていないなど、一定の基準を満たしている基金に対しては、積立金の不足分を減額したり、不足分の返済期間を現在の15年からさらに延長するなどの特例措置を設けるとしています。
一方、積立不足のない健全な基金については、将来決まった額の年金を受け取れる「確定給付企業年金」など、ほかの企業年金制度に移行するか、解散するか選択するよう求め、10年かけて厚生年金基金の制度自体を廃止するとしています。
厚生労働省は、2日、提示した改革試案をたたき台に議論を進め、必要な法案を来年の通常国会に提出したいとしています。

基金解散の場合はどうなる
改革試案では、公的年金の支給に必要な積立金が不足している基金に対し、5年以内に自主的に解散するよう求めるとしています。
基金が解散を申請した時点で、公的年金に上乗せして支給されている企業年金部分は受け取れなくなります。また、積立不足の総額は1兆1100億円に達しており、企業が新たに資金を拠出するなど、企業側の自助努力によって解消しなければなりません。
しかし、それでも不足額が生じた場合には、厚生年金本体の保険料で賄うことになります。厚生年金本体の積立金は、去年3月時点でおよそ113兆円あり、厚生労働省は、公的年金の支給にはほとんど影響が及ばないとしています。

健全な基金は
改革試案では、積立金を十分に確保していた健全な厚生年金基金に対し、加入者みずからが運用する「確定拠出年金」か、将来決まった額の年金を受け取れる「確定給付企業年金」といった別の仕組みの企業年金に移行するよう促すとしています。
ただ、財政が健全な基金であっても解散を選択することもできます。その場合、基金に加入していた企業は別の企業年金への移行を検討することになりますが、多くの企業は、単独で新たな企業年金を作るだけの資産を持っていません。
このため、改革試案では、こうした場合には、別の企業がすでに設立している企業年金に簡易な手続きで加入できるよう新たな仕組みを導入するとしています。

廃止に向けて課題は山積
厚生年金基金の廃止に向けては課題が山積しています。まず、1兆円を超える積立不足をどう穴埋めするかです。
改革試案では、まず基金を設立した企業側が資金を新たに拠出するなどして自己責任で不足分を解消するとしています。ただ、経営が厳しい企業が多く、どの程度穴埋めできるのかは見通しは立っていません。また、企業の経営が傾き雇用に影響が出るのではないかという懸念もあります。
そして、企業側が積立不足を解消できない場合は、厚生年金の全体の保険料で不足分を賄うことになります。しかし、一部の基金の損失処理のために、基金とは無関係の人までが負担を負うことになり、不公平だという指摘が出ています。
一方、基金の半数は積立金を確保している健全な基金です。
厚生労働省は、今後、基金の関係者にも試案を説明し廃止に理解を求めていく方針ですが、一律に制度を廃止することに反発も出ており、調整が難航することも予想されます。

専門家の見方は
みずほ年金研究所の小野正昭研究理事は「積立不足の額の定義を見直すことで、今後も継続できる基金が存在するのではないかと思う。その意味で、一律10年で厚生年金基金の制度自体を廃止するというのはいかがなものかと思う」と指摘しています。そのうえで、小野氏は、改革試案で健全な基金に対し別の企業年金制度への移行を促していることについて、「確定給付や確定拠出年金の基準緩和などの施策が打ち出されている。ただ、基金の制度を廃止したあとに、こうした新たな仕組みが企業年金として普及していくかといえば、難しいように思う」と述べました。

http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2012110200806より、
厚年基金、10年かけ廃止=「代行割れ」5年内に解散-厚労省案

 厚生労働省は2日、企業年金の一つで厚生年金の一部を国に代わって運用する厚生年金基金制度の改革原案をまとめた。年金財政のさらなる悪化を食い止めるため、厚生年金保険法を改正し、施行から10年後に制度を廃止する。国の代行部分が積み立て不足に陥っている「代行割れ」基金は原則5年以内に解散させる。年内に最終案をまとめ、来年の通常国会に関連法案の提出を目指す。
 改革原案は、同日開かれた年金問題の専門委員会で厚労省が提示。AIJ投資顧問による年金資産消失事件を受け、同省は9月、10年程度で厚年基金制度を廃止する方針を決め、具体的な対策の詰めを急いでいた。(2012/11/02-18:10)

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