尖閣問題 軍事衝突回避「中国は前向きに応じよ」
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130602/plc13060203100001-n1.htmより、
産経新聞【主張】中国首相発言 「日本が盗んだ」は詭弁だ
2013.6.2 03:10 (1/2ページ)
中国首脳の口からまた、いわれなき対日非難が飛び出した。李克強首相が、ドイツ・ポツダムでの演説で、「日本は中国から盗み取った領土を返還しなければならない」と主張した。
尖閣諸島(沖縄県石垣市)を念頭に置いたとみられるが、歴史的経緯を無視して自国領と言いふくめる暴論は看過できない。菅義偉官房長官が「歴史を無視した発言」と批判したのは当然だ。
李首相は、ポツダム宣言(1945年)について、「日本が盗み取った中国東北地方や台湾などの島嶼(とうしょ)を中国に返還すると規定したカイロ宣言の条件を実施すると指摘している」と述べた。
ポツダム宣言が発せられた「歴史の舞台」で演説することによって、中国の主張を際立たせたかったようだ。
日本降伏後の領土処理などを内容としたカイロ宣言(43年)は、台湾などに言及し、「日本国が清国人より盗取したすべての地域を中華民国に返還する」と規定している。降伏にあたって日本が受諾したポツダム宣言は、その履行を求めた。
中国の言い分は、尖閣は台湾の付属諸島なのだから、2つの宣言によって、返還されたはずだというものだ。
昨年9月、楊潔●外相(当時、現国務委員)が、国連総会で尖閣諸島について「日本が盗んだ」と演説したのと同じ論法だ。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130602/plc13060203100001-n2.htmより、
2013.6.2 03:10 (2/2ページ)
だが、戦後の日本の領土を法的に確定したのは52年発効のサンフランシスコ講和条約である。同条約で日本は、日清戦争で割譲を受けた台湾を放棄したが、尖閣は台湾割譲以前に、日本が閣議決定で沖縄県に編入している。当時、どこの国にも属しておらず、国際法上適正な手続きだった。
中国は、日本は2つの宣言に定められた義務を果たさず、「戦後の国際秩序に挑戦」していると主張する。だが、歴史の経緯を振り返ってみれば、中国の言い分に根拠がないことは明らかだ。
中国が尖閣の領有権を言い出したのは68年、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)が周辺海域での石油資源の埋蔵の可能性を指摘してからだ。
日本は中国に抗議し、あらゆる機会を利用して、国際社会に主張を発信していくべきだ。さもなければ中国の詭弁(きべん)がまかり通ってしまう。
●=簾の广を厂に、兼を虎に
http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit1より、
朝日新聞 社説 2013年 5月 5 日(日)付
日本と中国―わなを抜け出すために
尖閣諸島問題で、また歴史認識をめぐり、日本と中国が対立している。
こんなふうに、私たち新聞は「中国が」と書くが、中国の指導部にせよ、一般市民にせよ、意見が決して一つにまとまっているわけではない。
日本に対する強硬派がいると同時に、対日関係を重くみる協調派もいる。いまのような局面では、つい見落としがちだ。
そんな当たり前のことに気づかせてくれたのは、中国のジャーナリスト、喩塵(ユイチェン)さんの言葉だった。河南省でのエイズ集団感染事件など社会問題を積極的に報じてきたことで知られる。国際交流基金の招きで来日し、明治大学でこう語った。
「昨年9月、尖閣国有化に抗議する反日行動が拡大したのは、中国のメディアに自由がないから。理性的な声が伝えられず、反日一色にされてしまった。あれは中国社会の真の姿ではないのです」
日本と対立が強まれば、中国で対日強硬派の発言力が増し、協調派の発言力が低下する。そうでなくても日中には歴史問題があるから、注意しないと強硬派が優勢になる。ここに日中の陥りがちなわながある。
安倍首相がかつての侵略の歴史を否定しかねない発言をし、168人の国会議員が靖国神社に参拝した。ここ最近の日本側の振る舞いは、中国の強硬派を元気づけ、協調派を落胆させたに違いない。
関係修復をめざして今月訪中するはずだった自民党の高村正彦副総裁は、李源潮(リーユワンチャオ)・国家副主席との会見を実現する見通しが立たず、訪問を断念した。李氏は対日関係を重視すると期待されていた人物だ。しかし、この情勢下では会えない。
協調派の声は中国で消えかかっているようにみえる。だが例えば、中国主要紙の一つ「中国青年報」は最近おきた四川省の地震をめぐって「耐震建築は日本に学べ」という大きな記事を出した。隣国がいがみあっても得はない。そう考える人が中国にもいることを示している。
厄介なのは尖閣海域での対応だ。無用な刺激を与えるのは避けなければならない。だが、中国が繰り出す監視船に対し日本側が後退すれば、それこそ「力で押せば日本は引っ込む」と強硬派を勢いづける。だから、退くわけにもいかない。ここが当面、最も難しい。
いずれにしても、対日関係改善を望む人が中国には少なからずいる。彼らを困らせる言動を慎むことが、わなを抜け出す第一歩になる。
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013050300301より、
中国にも「冷静思考」求める=尖閣問題で異例の評論-中国紙
【北京時事】中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報は3日付で、沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題をめぐり「中日双方の指導者や政策決定者は共に冷静な思考を持ち、両国の長期的発展に有益な戦略的選択を行い、中日間の正常な政府協議を回復しなければならない」と呼び掛ける論評を掲載した。尖閣や靖国神社参拝などの問題で日中間の対立が深刻化する中、反日論調で知られる同紙が中国にも冷静な思考を求めるのは珍しい。
筆者は政府系シンクタンク・国務院発展研究センター研究員の董永裁氏。評論はさらに両国の政治家に対して(1)両国は永遠の隣人だ(2)重要な経済協力パートナー関係にある(3)尖閣問題は日中関係の全てではない(4)長期的な全面対立はそれぞれの根本的利益に合致しない(5)矛盾激化は戦争に向かい、その結果は想像に堪えない-と訴えた。
論評は事態打開を図る方法として「中日双方は現実を直視し、現状を維持し、争いを棚上げし、(問題を)コントロールする」必要性を強調。特に「海上緊急協議メカニズムの早期構築」を掲げ、「今後、釣魚島や周辺海域で不測の事件が発生したら協議を行い、適切に解決し、事態が(日中関係の)大局に悪影響を与えることを回避する」よう促した。(2013/05/03-16:57)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130502/plc13050203130002-n1.htmより、
産経新聞【主張】日米と尖閣 悠長に構える余裕はない
2013.5.2 03:12 (1/2ページ)
ヘーゲル米国防長官は小野寺五典防衛相との会談で、日米安全保障条約に基づき、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の防衛義務を果たすと明言した。
米高官の相次ぐ同様の発言で、オバマ政権の義務履行への姿勢が、鮮明かつ強固になったことを大いに歓迎したい。
ただし、日本政府はこれに安閑としていてはならない。自ら防衛努力を継続することが必要だ。さもなければ、米国の失望を招いて日米同盟を弱め、中国を勢いづけることにもなる。
長官は「緊張を高め誤算につながる行動や一方的、強制的で日本の施政権を損なう行動に反対だ」と述べた。「現状変更を試みるいかなる力の行為にも反対する」との認識で防衛相と一致した。
ケリー国務長官の先の来日時と同様の発言は、クリントン前長官が退任直前の1月に、「日本の施政権を害する一方的な行為に反対する」と述べたのと比べて、さらに踏み込んだものといえる。
米国が示した揺るぎない姿勢に対し、わが国として行動で応えるべきことは、数多くある。
今回、双方は「日米防衛協力の指針」の見直しの進展で合意したが、この中には「米軍に対する日本の支援」が含まれている。
日本としては、集団的自衛権行使を容認し、共同行動中の米艦船が攻撃されたら自衛隊の反撃を可能にすることなどが先決だ。大量の中国ミサイルに対抗するには、トマホークなど巡航ミサイルの保有も急がなければならない。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130502/plc13050203130002-n2.htmより、
2013.5.2 03:12 (2/2ページ)
垂直離着陸輸送機オスプレイを自衛隊に導入することも、今年度予算への調査費計上も踏まえ、早急な実現を検討すべきだ。尖閣周辺の離島に自衛隊を配備する「南西諸島防衛」も急務である。
安倍晋三首相は先ごろ、「この2年で日中の軍事バランスが壊れる」との認識を示している。
その中国の外務省は、後に和らげたとはいえ、尖閣が、安全保障上譲れない国益を意味する「核心的利益」であると宣言した。そうした厳しい状況下で、中国の軍事力が日本を凌(しの)げばどうなるか。
小野寺氏によれば、指針の見直しには「数年かかる」という。尖閣付近では中国公船の領海侵犯が恒常化し、日米防衛相会談でも協議されたように北朝鮮の核・ミサイルの脅威も増している。数年といわず、一刻も早く実のある協力体制を整えなければならない。
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO54562930R00C13A5EA1000/より、
日経新聞 社説 中国軍にらみ米と協力強めよ
2013/5/1付
中国による尖閣諸島への攻勢が止まらない。領土を守る自助努力はもちろんのこと、同盟国の米国との連携が欠かせない。そこで肝心なのは結束をうたった言葉だけでなく、目に見える行動だ。
小野寺五典防衛相が訪米し、ヘーゲル米国防長官と初めて会談した。この中で、尖閣の現状を力ずくで変えようとする行動に、反対していく立場を確認した。
中国は監視船を尖閣に送り続けてきている。こうした行動を容認しない姿勢を改めて示したもので、ひとつの成果といえよう。
「日本の施政権を弱めようとする一方的で抑圧的な行動に反対する」。ヘーゲル長官は会談後の記者会見でも、こう言明した。この発言の意義は大きい。
米国はかねて、対日防衛義務を定めた日米安全保障条約は、日本の施政下にある尖閣にも適用されると強調してきた。条約はその対象を、「日本国の施政の下にある領域」と明記しているからだ。
ヘーゲル氏の発言はここからさらに踏み込み、尖閣への日本の施政権を脅かすことも認めないという原則を、鮮明にした。
この原則はクリントン前国務長官が在任中に初めて掲げ、後任のケリー国務長官も先の来日で表明した。ヘーゲル国防長官も言明したことで、米政府の揺るぎない原則になったといえる。大切なのはこれからだ。中国軍の台頭に対応するため、尖閣も含めた日米協力の具体策を急ぐ必要がある。
両国は協力のあり方を定めた日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を再改定し、中国をにらんだ対策を打ち出そうとしている。両政府は作業に数年かかるとしているが、できるものから早く実行に移すべきだ。中国軍の海洋進出をにらんだ警戒や偵察活動の協力は、そのひとつだろう。
今回の会談では、暴走を続ける北朝鮮への対応でも、緊密な連携を確認した。いざというときに日米が円滑に協力できるよう、緊急時の行動計画などを入念に擦り合わせてもらいたい。
http://mainichi.jp/opinion/news/20130501k0000m070141000c.htmlより、
社説:軍事衝突回避策 中国は前向きに応じよ
毎日新聞 2013年05月01日 02時30分
沖縄県・尖閣諸島をめぐる中国政府側の「攻勢」は激しさを増し、おさまる気配はない。
4月23日には、中国の海洋監視船8隻が尖閣周辺の日本の領海に侵入した。日本による尖閣国有化後、最多の同時侵入である。
その3日後、中国外務省の副報道局長が尖閣について、絶対に譲ることのできない国益を意味する「核心的利益」に含まれると述べた。公の場での発言は初めてである。
尖閣をめぐる対立が軍事衝突に発展する事態は、何としても避けねばならない。まず必要なのは、艦艇や航空機の偶発的な軍事衝突を回避する仕組みをつくることである。
日中防衛当局の局長級協議が26日、北京で行われ、偶発的衝突を防ぐための「海上連絡メカニズム」について話し合った。国有化後、初の防衛当局間のハイレベル会合である。早期に合意が得られるよう、両政府の一層の努力を求める。
30日(日本時間)の小野寺五典防衛相とヘーゲル米国防長官の初会談では、主要な議題の一つが尖閣諸島をめぐる日中間の対立だった。尖閣が日米安全保障条約の適用範囲内であることを確認し、「力による一方的な行為に反対する」との考えで一致した。合意を歓迎したい。
米政府の最大の懸念は、尖閣をめぐって日中が軍事衝突し、東アジアの安全と安定が損なわれることだ。これを回避する具体的措置が「海上連絡メカニズム」の構築である。
同メカニズムは、2008年に協議が始まり、昨年6月に基本合意している。防衛当局者の定期会合、当局間のホットライン、艦艇・航空機間の通信が3本柱である。ところが、尖閣国有化後、中国側は、日本の協議呼びかけに応じてこなかった。
国有化後、尖閣周辺では衝突に発展しかねない事態が起きている。
昨年12月13日、中国国家海洋局のプロペラ機が尖閣周辺の領空を侵犯する事案があった。領空侵犯には、日本は自衛隊が対処する。「軍には軍を」と中国軍が出動することになれば、緊張は一気に高まる。
また、1月30日には、尖閣から北北西の公海で、中国海軍のフリゲート艦が約3キロ離れた海上自衛隊の護衛艦に射撃用の火器管制レーダーを数分間にわたって照射する事案も起きている。極めて危険な行為だ。
中国政府には、こうした挑発を繰り返さないよう改めて求める。
軍事衝突が発生すれば、経済へのダメージをはじめ、中国側にも大きな損失をもたらす。そのことは中国政府も熟知しているはずだ。
軍事衝突回避措置は、米ソ間にもあったし、米中間にもある。中国側に真剣な取り組みを求める。