アーカイブ

日別アーカイブ: 2013年7月4日

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130704/elc13070403110056-n1.htmより、
産経新聞【主張】参院選きょう公示 憲法改正を堂々と論じよ 国家再生の好機生かしたい
2013.7.4 03:10 (1/3ページ)

 与野党9党首による討論会で、安倍晋三首相は「憲法改正がリアリティーをもって議論されたのは初めてだ」と語った。
 4日に公示される参院選は、ねじれ解消による政権安定化が焦点と位置付けられている。同時に、主要な争点として憲法改正が浮上している。
 だが、討論会での論議が発議要件を定める96条改正の是非など入り口論にとどまり、低調に終わったのは残念だ。
 日本が危機を乗り切り、前進していくために憲法改正は不可欠なものだ。問題がどこにあり、どう改めるべきか。改正への具体的な道筋について国民の前で論じ合ってほしい。

国民の7割が「争点に」
 改正の必要性を唱える自民党や日本維新の会のほか、共産党など「護憲」政党も憲法を重要な論点と位置付けている。国民の関心もこれまでになく高い。
 各党に認識してほしいのは、産経新聞社とFNNの5月の合同世論調査で72%の人が「憲法改正は参院選の重要な争点になる」と回答するなど、国民の間に憲法改正の議論を求める機運が高まっているということだ。それに応えられる具体的な議論が必要だ。
 また、本社の国会議員に対するアンケートで、回答者の84%が憲法改正が必要だと答えたことも指摘しておきたい。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130704/elc13070403110056-n2.htmより、
2013.7.4 03:10 (2/3ページ)
 衆参各院の総議員の「3分の2以上の賛成」という厳しい発議要件がそのままでは「憲法を国民の手に取り戻す」ことは難しい。
 改正要件を変更する憲法改正は、2002年のインドネシア、1958年のフランスなど諸外国にも例はある。96条改正は国民と憲法の関係を身近なものにし、憲法改正を通じて日本を立て直していくのに欠かせない最重要の課題である。
 96条改正をめぐる安倍首相の姿勢に揺れもあった。昨年12月の衆院選で、憲法改正を志向する政党の議員が衆院で初めて「3分の2以上」を占めたことを受け、先行改正を唱えた。
 だが、連立を組む公明党から先行改正への慎重論が出され、国民の間にも96条改正への理解がまだ広がっていないとの判断から、主張を抑制した。自民党公約も先行改正の明記を見送った。
 一方、維新は公約に96条先行改正を躊躇(ちゅうちょ)せずに明記した。首相や自民党も、96条改正の必要性を正面から国民に説く必要がある。
 改正の核心となるのは、自衛権を強く制約し、抑止力が十分働かない状況をもたらしている9条である。日本を取り巻く安全保障環境は激変した。尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で、中国公船が日本の領海に侵入したのは昨年9月以来、50回を数えた。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130704/elc13070403110056-n3.htmより、
2013.7.4 03:10 (3/3ページ)
96条先行をためらうな
 経済成長を背景に軍事力を増強し、尖閣奪取を企図する中国、核実験と弾道ミサイル発射を繰り返す北朝鮮といった現在進行形の脅威が存在する。現実離れした9条の下で、日本の平和と安全を守れるだろうか。
 公明党の山口那津男代表は討論会で、集団的自衛権の行使を禁ずる政府解釈について「変えるなら国民の理解を得なければならない」と語った。
 安倍首相は集団的自衛権の行使容認は、日米同盟の維持に不可欠なものだと主張してきた。容認に前向きな提言が秋にも政府の有識者懇談会から出される予定だ。参院選で論じておくのは当然だ。
 民主党は96条改正について「改正の中身の議論が欠かせない」と自民党を批判してきた。だが、自民党は「国防軍の保持」「緊急事態条項の創設」など具体的な「憲法改正草案」を示しているのであり、中身を示すべきなのは民主党なのである。
 海江田万里代表は「9条はじめ(96条以外の)他の項目は、過去に何度も議論して、今集約する作業に入っている」と語ったが、これでは論争に耐えられず、無責任ではないか。
 各党とも震災復興を公約の主要な部分に挙げている。東日本大震災では、現憲法に緊急事態の政府の対応がきちんと定められていないという欠陥が明らかになった。緊急事態条項の創設が求められてきたのもそのためだ。
 有事や大規模災害から国民の生命と安全を守るために、各党は憲法問題に答えを出す重大な責務を負っている。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013070402000138.htmlより、
東京新聞【社説】参院選きょう公示 お任せ民主主義、脱して
2013年7月4日

 きょう公示される参院選は、日本の将来を決める重要な選挙だ。暮らしや憲法、原発をこの先どうするのか。岐路に立つとの自覚を持ち、論戦に耳を澄ませたい。
 今回は補欠選挙を除き、昨年十二月の第二次安倍内閣発足後初の国政選挙だ。われわれ有権者には安倍晋三首相がこの半年間に進めた政策や政権運営に対する「中間評価」を下す機会となる。
 今回からインターネットを利用した選挙運動も可能になる。各政党の公約、候補者の発言を吟味して、二十一日の投票日には貴重な一票を投じたい。

◆経済、消費税が争点に
 争点の一つは、安倍首相が主導する経済政策の是非だ。
 首相は、デフレ脱却による日本経済再生に向けた「三本の矢」として、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を呼び込む成長戦略」を進めている。
 新政権発足後、市場は円安、株高に動き、輸出企業を中心とする収益改善で、経済指標に徐々に明るさが見られ始めたのは確かだ。
 しかし、首相自身が認めるように、国民が景気回復を実感するまでには至っていない。民主党をはじめとする野党側は、賃金が上がらない中での物価上昇、住宅ローン金利の上昇など「強い副作用」が起きていると批判している。
 首相主導の経済政策をこのまま進めるのか否かは、投票の際の判断材料となるだろう。
 二〇一四年四月から二段階で5%引き上げが決まっている消費税増税の可否も問われるべきだ。増税が景気に悪影響を与え、税収が落ち込んだら本末転倒だからだ。
 みんなの党、生活の党、みどりの風は凍結、共産、社民両党は中止を公約している。増税を当然視するのではなく、その妥当性をあらためて議論すべきではないか。

◆憲法改正、脱原発を左右
 六年前の第一次安倍内閣当時、自民党は参院選で惨敗し、与党が参院で過半数に達しない「ねじれ」状態に陥った。その後、首相が一年で交代する混乱が続く。
 首相は参院選を「親の敵」と位置付け、「ねじれに終止符を打つ責任が私にある」と必勝を期す。
 昨年十二月の衆院選に続いて、参院選でも勝利し、ねじれ状態を解消して初めて、政権奪還が完成すると考えているのだろう。
 首相は第二次内閣発足後、持論としてきた憲法改正や集団的自衛権の行使容認など、いわゆる「タカ派的」政策を極力抑え、デフレ脱却による経済再生を最優先課題に掲げてきた。
 内閣支持率の高止まりは、有権者が経済優先の政治姿勢をとりあえず支持しているためだろう。
 首相は今後三年間、経済優先の政権運営を続ける意向を示している。しかし、選挙結果次第では豹変(ひょうへん)するかもしれない。
 例えば、憲法である。
 首相は憲法改正に向けて、これまで参院選後の連携を視野に入れていた日本維新の会やみんなの党に加え、民主党の改憲派をも巻き込む考えを表明した。
 憲法改正の発議要件を緩和する憲法九六条改正論は、世論の反発でトーンダウンしているが、いつ息を吹き返すか分からない。
 憲法を改正すべきか否か。改正を主張する各党は、何を変えようとしているのか、果たしてそれは妥当なのかなど、判断の材料は多岐にわたる。各党間の活発な論戦を期待したい。
 もう一点は、原発だ。自民党は衆院選で「原子力に依存しなくてもよい経済・社会構造の確立を目指す」ことを公約したが、参院選公約には盛り込んでいない。
 その一方、原発再稼働に向けて地元自治体を説得することを公約に書き込み、首相自身は原発をトップセールスで海外に売り込む。
 「脱原発」をほごにしたのならそれは民主党の消費税増税強行と同じく、重大な公約違反である。
 同じ与党の公明党は原発ゼロを目指す立場を鮮明にする。政権としての整合性をどうとるのか。
 原発ゼロを公約した各党も、掛け声だけでなく、実現可能な代替エネルギー案を示す責任がある。
 憲法や原発は、国民の運命を決する重要課題だ。候補者は所属する政党の大勢におもねらず、自らの考えを堂々と述べてほしい。

◆一票の積み重ねが力に
 今回はいつにも増して重要な参院選だ。衆院解散がなければ三年間は国政選挙がなく、この機を逃せば当面、有権者が選挙で意思表示する機会はない。自民党が勝てば、首相はフリーハンドを得る。
 棄権したり、何となく投票したりの「お任せ」民主主義を続けては、政治はよくはならない。
 暮らしを豊かにするのはどの政党、候補者か。公約や人物を吟味して投じる一票一票の積み重ねこそが、大きな力となるはずだ。

http://www.nikkei.com/article/DGXDZO56949790U3A700C1EA1000/より、
日経新聞 社説 与野党が政策を競う参院選を望む
2013/7/4付

 参院選が公示され、21日の投票日に向けて17日間の選挙戦が始まる。昨年の衆院選で政権復帰した自民党と公明党が連勝して衆参両院の多数派が異なるねじれが解消されるのか。野党が安倍政権への明確な対抗軸を示せるのか。ここ数年、機能不全が続いた日本政治を立て直す絶好の機会にしたい。

実感を伴う経済成長に
 衆院選と異なり、参院選は政権を争う選挙ではない。安倍内閣の政権運営に通信簿を付け、よい政策は伸ばし、問題点に注文を付ける場だ。
 各党はどんな政策を訴え、その実現にどんな道筋を考えているのか。ムードや風向きに左右されることなく、政策の是非をきちんと見極めることが大事だ。
 論戦の焦点はアベノミクスだ。第1の矢の金融緩和、第2の矢の財政出動によって景況感がよくなったことは日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)などで明らかだ。安倍晋三首相が誇るように「日本を覆っていた暗く重い空気が一変した」のは間違いない。
 次の課題はこうした変化を一時的な現象に終わらせず、国民ひとりひとりが実感する経済成長に育てられるかだ。公示に先立ち日本記者クラブが催した党首討論会で首相が「実感をその手に」とのスローガンを掲げたのは、それがよくわかっているからだろう。首相が今春、経済界に賃上げを要請したのもそうした問題意識による。
 アベノミクスが成長力の向上につながり、恩恵が広く行き渡るようにできるのか。決め手は第3の矢である成長戦略だ。自民党内には小泉内閣が進めた構造改革が所得格差を拡大し、支持基盤である地域社会を壊したとの見方があるが、改革を止めては逆効果だ。
 討論会で民主党の海江田万里代表はアベノミクスの負の側面を浮き彫りにしようと「物価が上がっている。我々は暮らしを守る」と再三力説した。
 ただ、アベノミクスでやめるべき施策は何かと問われると具体的な回答はなく、「財政健全化の方向性を出してほしい」と語るにとどまった。民主党が党勢を立て直すには政権を批判するだけでなく、独自の成長戦略を立てて有権者を引き付ける以外に道はない。
 日本維新の会の橋下徹共同代表は民主党と逆にアベノミクスは踏み込み不足との観点から批判した。自民党を「既得権益に左右される党」と呼び、維新こそが改革勢力とアピールした。
 首相も負けじと電力や農業の改革を例示して「岩盤にぶつかって果敢に挑戦していく」と強調した。こうした与野党の競い合いは歓迎だ。選挙戦を通じたよりよい政策論議に期待したい。
 なかでも消費税率を予定通りに来年4月に5%から8%に引き上げるかどうかの判断は重要だ。首相は税率引き上げについて「税収が伸びないでは元も子もない」と今年4~6月期の経済指標などをよく分析して総合的に判断する考えを示した。
 増税は国民生活に直結する。財政規律をどう保つかを含め、国民にわかりやすい論議を展開してもらいたい。
 憲法改正について首相は「(発議に必要な衆参両院の)3分の2の多数がないのに言ってもただの床屋談議」と慎重な物言いだった。国民の最大の関心事が経済であることを考えれば上手な対応だ。
 民主党の海江田代表は護憲か改憲かを「党憲法調査会で議論している」と述べるにとどまった。

向こう3年を決める場
 今回の参院選はネット選挙解禁などの話題があるものの、野党の軸が不明確なこともあり、有権者の関心はさほど高くない。投票率が前回選より約10ポイント下がった6月の東京都議会議員選挙の再現も懸念される。
 参院選が終わると向こう3年間は国政選挙がない可能性が高い。経済や憲法にとどまらず、年金など社会保障や外交・安保なども中長期的な視点が欠かせない。党首討論会で語り切れなかった課題への論戦を深めるにはどうすればよいのだろうか。
 選挙遊説は各党幹部が都合のよいことを絶叫するだけになりがちだ。ネット選挙の出番はそこにある。ホームページを眺めるだけでなく、有権者が双方向というネットの機能をいかして政党や候補者に積極的に質問を送信する。それも大事な政治参加だ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130704k0000m070130000c.htmlより、
社説:参院選きょう公示 投票こそが政治参加だ
毎日新聞 2013年07月04日 02時30分

 参院選がきょう公示される。第2次安倍内閣半年の評価が問われるとともに、今後数年の政治の方向や枠組みを決める可能性がある位置づけの重い選挙だ。
 安倍晋三首相の掲げる経済政策などが争点で、インターネットによる選挙運動の解禁が注目されている。だが、最近の低投票率傾向の下、国民をひきつける舌戦が展開されるか現状では心もとない。
 与野党は対立点をぼやかさず、内外の課題を直視した論戦を果敢に挑むべきだ。有権者も各党の訴えを吟味し、その選択を21日の投票日に示す責任がある。選挙のスタートにあたり、あえてこの点を強調したい。

 ◇「自民1強」構図を問う
 公示に先立ち行われた9党首討論会では安倍首相に質問が集中した。さきの国会は終盤になるほど論戦に乏しかったが、消費増税をめぐるスタンスや規制改革、憲法問題など幅広い論点が提示された。
 今参院選は与党の自民、公明両党が63議席以上を得て非改選と合わせ参院で過半数を確保できるかが焦点となる。
 衆参の「ねじれ」が解消されれば衆院が解散されない限り与党は約3年政治を主導する安定基盤を得る。自公政権の強化と野党による監視のどちらを優先するかが問われる。
 さきの衆院選以来加速する自民「1強」状況への審判でもある。同党は先月の東京都議選でも圧勝、各種世論調査の支持率も高水準にある。仮に参院で単独過半数に迫るような勢いを示せば内外の政策に加え、憲法問題など自民党色を意識した議論を進める足がかりとなろう。
 一方、衆院選で惨敗し野党に転落した民主党は2大政党の座にとどまれるかの瀬戸際での戦いとなる。
 衆院選で健闘した日本維新の会、みんなの党など第三極勢はその勢いが持続しているかが試される。共産党、生活の党、社民党、みどりの風など他の野党も存在感を発揮する足場を固められるかの正念場である。
 政権そのものを決める衆院選と異なるものの、影響は極めて大きい選挙だ。にもかかわらず、心配なのは国民の政治への関心にかげりがみられることだ。
 昨年12月の衆院選は戦後最低の投票率を更新、さきの都議選も過去2番目の低投票率だった。
 民主党政権の迷走など政権交代可能な2大政党型システムがうまく機能せず、さきの国会も成立寸前の重要法案が廃案になる醜態を演じた。7年続きの首相交代や対立軸のあいまいさなどが有権者の失望、政治離れを生んでいるのではないか。
 かつてわが国は昭和初期に政友会、民政党による2大政党制が混乱し政党政治への不信が強まり、やがて戦争への道を転げ落ちた。この教訓を胸に刻みたい。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130704k0000m070130000c2.htmlより、
 昭和初期の分析で知られる井上寿一学習院大教授は政党内閣崩壊後の衆院選が2度にわたり普通選挙施行後最低の投票率を更新したことを指摘、「今も類似した政治社会状況ではないか」と警告する。低投票率は政治、ひいては民主主義の衰亡につながる危機と心得るべきだ。
 だからこそ政党、とりわけ民主党など野党は対立軸を真剣に示す責任がある。日々の日経平均株価を横目に「アベノミクス」を印象論的に論じても物足りない。

 ◇野党は明確な対立軸を
 大規模な金融緩和により物価上昇率2%達成を目指すという方向はそもそも妥当なのか。消費増税など財政健全化と並行し経済を活性化させる方策を各党は徹底的に論ずべきだ。社会保障も痛みを伴う改革から逃げず、実現可能なビジョンを率直に論じ合う姿勢が必要だ。
 福島原発事故を踏まえたエネルギー政策も「脱原発依存」路線の事実上の修正が進む中、自民、民主両党にあえてこれを争点化しようとする姿勢が希薄なのは納得できない。首相が積極的な改憲論議はどの部分を優先しようとしているのかが見えにくくなっている。
 2大政党の対立軸がぼやけ国民の関心が低調なまま審判が下った場合、与党が施策を推し進め、あるいは野党が抵抗する十分な民意の裏打ちがあると胸を張れるだろうか。懸念を抱かざるを得ない。
 「ネット選挙」の効果も政党や候補が適切な選択の指標を示せるかどうかにかかる。政策論争が埋没すればワンフレーズ的な表現や中傷などネットが抱える負の部分が強調されかねない。若い世代にも身近なネットを通じ、有権者と双方向的な議論を深められるかが問われよう。
 有権者の責任にもふれたい。
 たとえ選択に迷っても政党、候補の主張を見極め、必ず1票を投じてほしい。いくらネットなどを通じて豊富な情報が得られても投票所に足を運ばないようでは政治に参加する最も大きな責任の放棄である。
 震災復興、緊張する中韓両国との関係、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)など有権者がそれぞれ自分が最優先とする個別の政策課題を決め、考え方の近い政党や候補に投票する選択もあっていい。国の針路を決定づけ、民主主義の基盤にもかかわる参院選という認識を公示にあたり幅広く共有したい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/kenpouto/list/CK2013062902000141.htmlより、
【憲法と、】第4部 9条の21世紀<1> 言葉のマジック「非戦闘地域」
東京新聞 2013年6月29日

 イラク戦争、支持-。二〇〇二年末、防衛省の理論的支柱であるシンクタンク「防衛研究所」内の結論は固まりつつあった。米大統領のブッシュはその年の初め、イラクや北朝鮮を大量破壊兵器を保有するテロ国家と非難。開戦は秒読み段階に入っていた。
 毎週のように開かれる研究会。所長の柳沢協二(66)をはじめ、戦争支持の「空気」が大勢を占め、米国の先制攻撃がどのような理論で正当化できるかに議論は集中した。
 主任研究官だった植木千可子=現早稲田大大学院教授=は、反対の論陣を張り続けた。「イラク戦争は、米国の目標とされた国が核武装に走る動機を強める。米国の正統性が失われ、影響力は低下する恐れがある」
 懸念は、後にすべて現実となる。
     ■
 〇三年三月、米国は国連決議のないまま、イラクを攻撃。仏独などが非難する中、首相の小泉純一郎は直ちに支持を表明した。
 植木の手元には、当時議論のたたき台として作ったメモが残る。「日米同盟は、あくまでも国益を守るための手段であって、国益(目的)ではない」。しかし「米国に異を唱えるのは現実的でない、という雰囲気だった」。七月、人道復興支援を名目に自衛隊を派遣するためのイラク特措法が成立する。
 一九九一年の湾岸戦争でのペルシャ湾に始まった自衛隊の海外派遣。米国に目に見える協力を求められる中、政府は憲法九条とぎりぎりの整合性がとれる枠組みをひねり出すことで、アフガニスタン戦争でのインド洋派遣など、活動範囲を広げた。イラクへの地上部隊派遣を可能にしたのは、「非戦闘地域」という言葉だった。
 「内閣の施策を実現するため、インド洋でも用いられた法的スキーム(枠組み)。だが実際に戦闘が続く国で適用するので、本当にうまくいくのか、厳しい試験を受けている思いだった」。政府の行為が憲法に沿っているかを判断する内閣法制局で当時次長を務め、後に長官となる阪田雅裕(69)は振り返る。
 防衛研所長から内閣官房副長官補となり、官邸で自衛隊派遣を統括した柳沢には「魔法の言葉」だった。心中には、湾岸戦争で日本が百三十億ドルを拠出しながら、他国に「小切手外交」とやゆされた苦い経験が刻まれていた。イラク派遣は名誉挽回の機会ととらえた。「外圧に従ったのではなく、自らの意思で突き進んだ。いかに米国しか見ていなかったか」
     ■
 国際貢献の名の下、戦争に協力する母国を「ペシャワール会」の医師中村哲(66)は苦々しく見つめてきた。パキスタン、アフガンで約三十年間、医療や用水路建設に携わる。砂漠化が進むアフガンで、戦争の疲弊は飢餓をより深刻にした。
 自衛隊のイラク派遣後、活動用車両から日の丸を取り外した。軍事に頼らない日本の戦後復興を、現地の誰もが知り、かつては好感を持たれていた。米国を支援する今、日の丸はテロの標的だ。
 それでも中村は、戦地アフガンにとどまる。「活動できるのは、日本の軍人が戦闘に参加しないから。九条はまだ辛うじて力を放ち、自分を守ってくれている」
   ■  ■
 米中枢同時テロで始まった二十一世紀。試練にさらされる九条と向き合う人々を追った。=敬称略
(この企画は、樋口薫、大平樹が担当します)

 <非戦闘地域> 国または国に準ずる組織の間の戦闘行為が行われておらず、一定期間中も行われないと認められる地域。99年に成立した周辺事態法で、自衛隊が活動できる「後方地域」として定められ、イラク特措法に引き継がれた。定義があいまいとして国会で議論になり、小泉純一郎首相は04年11月、「自衛隊のいるところが非戦闘地域」と答弁した。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/kenpouto/list/CK2013063002000171.htmlより、
第4部 9条の21世紀<2> 政界去った戦争体験世代
2013年6月30日

 一九九四年九月、社民党の前身である社会党は真っ二つに割れた。新政治方針を決める臨時党大会。「自衛隊合憲」「日米安保堅持」「原発容認」。従来路線の大幅転換が、党から約半世紀ぶりに誕生した首相村山富市の発言に沿う形で提示された。沖縄など反対する県本部は修正を求めていた。
 「修正したら村山政権は持たない」。幹部の発言に、反対派をたき付けた党政策審議会の河野道夫(71)は憤った。「自民と交渉もせず、何をおびえている」。結局、予想以上の大差で原案が可決。河野は「野党から責められる村山が気の毒、という同情論にやられた」とうめいた。
 改称した社民党からは、旧民主党に半数の議員が流出。九六年の総選挙で、議席数は十五にまで落ち込んだ。かつての野党第一党の凋落(ちょうらく)を、村山の首相秘書官も務めた河野は「党大会が分水嶺(れい)。護憲政党としてのアイデンティティーを失った」と悔やむ。
    ■
 二〇〇三年七月、戦地イラクに自衛隊を派遣するための特措法が、国会で議論されていた。自民党元幹事長の古賀誠(72)は、ハト派の重鎮、野中広務とともに衆院での法案の採決を棄権した。
 湾岸戦争以降、次々と自衛隊が海外へ派遣される現状に、危機感を抱いていた。「たとえ小さな穴でも、一つあけば広がっていく。先の戦争の時もそうだった。きちんとした歯止めが必要」。それが、太平洋戦争で父を亡くした古賀の政治哲学だった。
 護憲政党が力を失う中、自民の重しとなったのが、戦争を体験した世代の議員だった。だが、その思いとは裏腹に、自民、民主の二大政党は改憲に向け歩調を合わせていく。
 〇五年には、約四十年ぶりに設置された憲法調査会が五年間の活動を終え、報告書を提出。改憲手続きに必要な国民投票法案の成立に向け、両党と公明の三党担当者は毎週のように議論を重ねた。〇七年、「私の内閣で憲法改正を目指したい」という首相安倍晋三の発言が民主の反発を招くまで、蜜月関係は続いた。
 昨年末、安倍が首相に返り咲き、改憲論は再び勢いを増す。古賀や野中らハト派の多くは政界を去った。〇七年まで自民の憲法調査会長だった船田元(59)は、三年余の自らの落選期間の間に、憲法への自民の姿勢が「乱暴になった」と懸念している。「われわれの考えを憲法に書き込めばいい、という欲求が高まってきた」
    ■
 社民党職員を退職した河野はイラクに自衛隊が派遣された〇三年、国際法を学ぶため渡英した。九条が空洞化するのは、国連が機能せず、日米安保に頼らざるを得ないからだと、長年の経験で痛感した。「ならば国連憲章を抜本改革できないか」
 英語の習得から始め、足かけ六年で、資料の豊富なスコットランドの大学の修士課程を終えた。帰国後、勉強会を立ち上げ、なお国際法の研究を続ける。
 一年半前には、住まいを沖縄に移した。基地負担を強いられる人々の「怒り」を共有するためだ。「世界情勢に合わせ改憲するのでなく、国際社会の秩序を九条に近づけたい」。高すぎる理想のために、怒りのエネルギーが必要と信じている。(敬称略)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/kenpouto/list/CK2013070202000123.htmlより、
第4部 9条の21世紀<3> グローバル化 揺れる企業
2013年7月2日

 「ホルムズ海峡のタンカーはほとんど日本向けだ。日本は何もしないのか」。イラクがクウェートに侵攻した一九九〇年、ニューヨークでセミナーに参加していた高坂節三(77)は昼食中、米ボーイング社の部長に意見を求められ、返答に詰まった。当時、商社大手の伊藤忠アメリカの副社長。中東産の原油は日本経済の生命線だが、自衛隊の海外派遣の前例はなかった。
 「『日本は九条があるから何もやりません。でも、鉄鉱石や石炭はほしいです』って(言えば)、何を言ってるんだとなる」。米国のイラク攻撃直後の二〇〇三年四月、経済同友会は高坂が調査会委員長となり、集団的自衛権の行使容認などを求める意見書を発表した。
 経済のグローバル化が進み、日本企業は人件費の安い途上国に進出し、生産拠点を置くようになった。国内市場が縮む中で海外に活路を求める動きも加速する。九条を変えることを求める経済界の意見も強くなった。〇五年には経団連と日本商工会議所も、同様の意見書を出す。
    ◇
 一方で、グローバル化は国内を空洞化させ、雇用は厳しさを増す。
 二階建てアパートの郵便受けにささったチラシが風に揺れる。シャープ亀山工場(三重県亀山市)近くの山あいに並ぶ六棟計約百室のうち、入居しているのは数室だけ。「今じゃどこもこんなもの」。地元で派遣労働者の相談に応じるユニオンみえ書記長の広岡法浄(60)は、吐き捨てた。
 亀山工場は、県と市が補助金を出して誘致し、〇四年に稼働を始めた。生産された液晶テレビは「世界の亀山モデル」ともてはやされた。価格競争の激化、〇八年のリーマン・ショック…。十年とたたない間にグローバル経済の波にのまれ、生産量は落ち込んだ。広岡は「景気が良い時にかき集められた大量の労働者は、一斉に派遣切りに遭った」と話す。空き家のアパートは、その名残だ。
 相談に訪れた人々にはまず、労働者の団結権を保障する憲法二八条を説明するという。実際には企業側の圧力でつぶされた労働組合もあるが「憲法が権利を保障していることは最後の歯止めになっている」と感じる。
 九条にも同じことを思う。「戦争をしない権利を国民に保障している。歯止めがなくなってしまえば、派遣労働者が企業に使い捨てられたように、弱い人たちが戦争へかり出されるのではないか」
    ◇
 高坂と同じ元商社マンでも、憲法に違う思いを抱く人たちがいる。〇六年に設立された「商社九条の会」世話人の一人、橋本建八郎(74)は「戦後、商社活動ができたのは九条があったから」と話す。橋本の主な取引先だったアジア諸国は第二次世界大戦の戦地。不戦を掲げた九条がなければ、被害をもたらした日本の企業は相手にされず、経済復興はなかったと感じている。
 これまで二十回を超す講演会や学習会を開いて護憲の重要性を訴えてきた。「商社は平和産業だ、という気概で仕事をしてきた。ビジネスのために九条を変えるという論理は理解できない」(敬称略)

憲法にまつわる体験談や思い、この企画へのご意見をお寄せください。
Eメールはshakai@tokyo-np.co.jp
手紙は〒100-8505(住所不要)東京新聞社会部憲法取材班。
ファクスは03(3595)6917

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/kenpouto/list/CK2013070302000119.htmlより、
第4部 9条の21世紀<4> ネット世論 改憲後押し
2013年7月3日

 「なぜ、ここまで批判されるのか」。二〇〇四年四月、イラク人質事件で武装勢力から解放され、帰国した写真家の郡山総一郎(41)は、驚きを通り越してあきれた。危険な地に自ら向かった被害者が悪い、という「自己責任論」の嵐が吹き荒れていた。ネット掲示板「2ちゃんねる」は、中傷の書き込みで埋め尽くされた。
 イラク戦争の実態を撮影するための、二回目の入国だった。大量破壊兵器が発見されず、戦争の大義が問われる中、武装勢力は自衛隊の撤退を求めていた。「なぜ自分がイラクに行き、なぜ誘拐されたかを考えた人がどれほどいたのか。国の言う自己責任は責任転嫁でしかない」
    ◇
 「ネトウヨ(ネット右翼)」を自称するライター森鷹久(29)は今年三月、コリアンタウンのある大阪・鶴橋で開かれた「反韓デモ」の動画に、言葉を失った。「鶴橋大虐殺を起こせ」と叫ぶ女子中学生に、大人たちが拍手喝采をおくっていた。
 森が保守思想に共鳴したのは、韓国の「反日的な姿勢」に違和感を覚えたことがきっかけだった。「南京大虐殺は捏造(ねつぞう)」「従軍慰安婦の強制連行はなかった」。ネットを巡回し、「マスコミが報じない真実がある」と興奮した。
 だが、東京・新大久保などで起きているヘイトスピーチ(人種差別的表現)の過熱には危惧を覚える。「右派も左派も、ネットでは自分の望む情報にしかアクセスしない。考え方がより極端になり、先鋭化してしまう」
 匿名のネット社会では、過激な発言が「本音」として語られ、独自の「世論」を形成した。「ニコニコ動画」生放送のアンケートでは、延べ約一万五千人が視聴した五月の憲法討論番組で、改憲賛成が八割を超えた。
 そうした層を取り込んだのが自民党だった。六月上旬、東京・渋谷での首相安倍晋三街頭演説。「子どもが誇れる日本を取り戻そう」。呼びかけに、大きな拍手と歓声が上がった。日の丸を持った女性(38)は「中国や韓国は日本をおとしめている。首相の主張には共感できる」。マスコミに頼らず、フェイスブックで自ら情報発信しているように感じられ、好感を抱く。
 日本の岐路の一つであるTPPに反対する市民グループが傍ら行っていた抗議活動について、安倍は「左翼の妨害にかえってファイトがわいた」とフェイスブックに書き込んだ。この日の投稿二件に計二万人以上が賛意を示す「いいね!」を押した。
    ◇
 ネットは改憲反対の人々もつなぎ始めている。渋谷での安倍の演説の前日、「安倍のつくる未来はいらない」と叫ぶデモが、東京・新宿で行われた。告知はツイッター。経済産業省前などで原発再稼働に抗議する人たちが呼び掛けた。
 求職中の田中文(あや)(27)は、自民党の改憲草案を読み、安倍政権は「弱者を切り捨てる政治」と感じ、デモに加わった。
 イラク人質事件の起きた春、社会に出た田中は、自己責任が当たり前だと思ってきた。機会や能力を生かせば成功する、失敗すれば自分のせい。だが、抑うつ症状で仕事ができなくなり、セーフティーネットの重要さを痛感した。
 「政府は生活保護費の削減などで自己責任をうたいながら、戦争を経験して得た九条を変えようとしている。貧しい若者が戦争で命を落としたとき、それも自己責任と言われるのだろうか」(敬称略)

<イラク人質事件> 2004年4月、イラクの武装勢力が、日本から入国したカメラマンやボランティアの男女3人を拘束し、自衛隊の撤退を要求した事件。約1週間後、全員無事解放された。発生直後から、退避勧告を無視した3人の「自己責任」を問う声が政府やメディアの一部から上がり、自衛隊撤退を求めた家族とともに、バッシングにさらされた。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/kenpouto/list/CK2013070402000209.htmlより、
第4部 9条の21世紀<5> イラク派遣違憲判決
2013年7月4日

 二〇一一年末、米国がイラク戦争の終結を宣言した。戦争の「大義」とされた大量破壊兵器は存在しなかった。米兵の死者数は四千人を超えていた。一方、自衛隊は五年余りの活動で一人の犠牲も出さずにすんだ。
 この事実の受け止め方はさまざまだ。
 「九条の下でも仕事はできたが、制約はあった」。陸上自衛隊のイラク復興支援群長として〇五年一月、サマワに入った太田清彦(57)は振り返る。
 最初の任務は、盛大な送別会の開催だった。現地の治安維持を担当するオランダ軍が撤退し、英国、オーストラリアの両軍と入れ替わる。準備に一カ月半かけた。治安情勢を知るため、他国軍と良好な関係を築く必要があった。
 イラク特措法のもとでは、自衛隊が活動をするには、サマワは「非戦闘地域」でなければならない。だが、他国の軍隊による治安維持が必要なのが実態だった。三月の記者会見で、オーストラリア人記者にその矛盾を突かれる。「自衛隊は自分の身を守れないのか。なぜオーストラリア軍がガードするんだ」。答えに詰まった。
 元防衛官僚で内閣官房副長官補として自衛隊派遣を統括した柳沢協二(66)の受け止めは異なる。
 〇四年十一月、サマワの陸自宿営地に、ロケット砲が着弾した際の、政府関係者の言葉に体の力が抜けた。「一人でもけがをしたら、部隊は帰国させないと」
 怒りより割り切りが先に立った。以来、イラクに派遣される隊長らには「何もしなくていい、全員無事に帰国することが最大の任務」と言い含めた。
 退職後、自ら深くかかわったイラク戦争への対応を検証し、「憲法は制約ではなく、よすがだった」と思い至った。在職中、「(自衛隊が)何でもできる法律」を欲しがる防衛族の政治家と議論しても、その先に何がしたいかは見えてこなかった。「もし九条を取り払った時に、何をすべきか決めるだけの力を日本は持っているのだろうか」
    ◇
 国として是非をきちんと検証しないイラク派遣に、司法は一つの判断を下している。
 「航空自衛隊のイラクでの活動は違憲」-。〇八年四月、関西の法科大学院生だった橋本祐樹(32)は、憲法学の教授から自衛隊イラク派遣差し止め訴訟の名古屋高裁判決の内容を告げられ、耳を疑った。自らも原告に名を連ねていたが、「どうせダメ」とあきらめていた。
 十五歳で軍隊に取られ、中国で人を殺したという祖父の体験を、何度も聞かされて育った。「加害者の立場を強いられたくない」という弁護団の言葉に共感し、原告団に加わっていた。
 北海道の法科大学院生だった池田賢太(29)も「基本的人権は平和の基盤なしに存在し得ない」と断じる判決文に、興奮していた。原告団への参加をきっかけに法曹を志した。「戦後、日本が自由と平等を獲得したように、この憲法の下でなら平和も実現できる」
 橋本と池田は司法試験に同期で合格。偶然同じ北海道の弁護士事務所に勤務する。「違憲判決は裁判所から託されたバトン。日本がまた大義なき戦争に加わろうとした時、歯止めに使わなければいけない」。訴訟は五年前に終結したが、弁護団は連絡会として残り人数はなお増え続けている。=敬称略、おわり
(この企画は、樋口薫、大平樹が担当しました)

 <自衛隊イラク派遣差し止め訴訟> 2004年1月以降、名古屋、札幌など全国11カ所で集団提訴。市民の「平和的生存権」が侵害されたとして、自衛隊の派遣差し止めなどを求めた。3000人以上が原告となった名古屋訴訟は、名古屋高裁が08年4月、空自の行っていた多国籍軍の空輸を、「他国の武力行使と一体化した行動」で違憲と判断。差し止め請求自体は棄却され、判決は確定した。

http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2013070400099より、
自公63議席で過半数=自民単独は72【13参院選】

 参院選は3年ごとに実施され、定数242議席のうち半数の121議席が改選される。与党の自民、公明両党が非改選と合わせて過半数(122議席)を奪還するには計63議席が必要。自民党は72議席を獲得すると単独過半数となる。安倍晋三首相は衆参の「ねじれ」解消に向け、与党が参院で過半数を確保することを目標に掲げている。
 与党の非改選議席は自民党が50、公明党が9の計59。与党内では、安倍内閣や自民党の高い支持率を背景に、全ての常任委員会で委員長を独占し、委員の半数も占める「安定多数」の129に到達する70議席も視野に入れる強気の声もある。自民党がさらに議席を伸ばして単独過半数を確保すれば、1986年に中曽根康弘首相(当時)の下で行われた衆参同日選以来となる。
 憲法改正の発議に必要な「3分の2以上」に相当する議席数は162。ただ、自公両党の立場は一致しておらず、改憲に積極的な日本維新の会やみんなの党の消長も影響しそうだ。
 一方、2007年に大勝した民主党は44人が改選を迎える。昨年の衆院選で野党に転落した後、6月の東京都議選でも惨敗、党勢立て直しが遅れており、海江田万里代表は「与党過半数を阻止したい」と、具体的な目標議席は掲げていない。(2013/07/04-06:54)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013062801001441.htmlより、
参院選7月4日公示、21日投票 日程を閣議決定
2013年6月28日 11時07分

 政府は28日午前の閣議で、参院選日程について「7月4日公示―21日投開票」とすることを決定した。
 参院選は昨年12月の第2次安倍政権発足後初めての本格的な国政選挙で、安倍晋三首相の7カ月間の政権運営への審判となる。今回からインターネットを使った選挙運動が解禁され、選挙結果への影響も注目される。
 与野党は参院選に向けて既に本格始動。自民、公明両党は前哨戦と位置付けた東京都議選で圧勝したのを受けて参院選でも勝利し、参院で野党が多数を占める「ねじれ国会」解消に全力を挙げる。民主党など野党各党は首相が掲げる経済政策「アベノミクス」に「強い副作用がある」と批判を強めている。(共同)

http://mainichi.jp/opinion/news/20130529k0000m070111000c.htmlより、
社説:「7・21」参院選 野党は争点提示を急げ
毎日新聞 2013年05月29日 02時32分

 今夏の参院選が7月4日公示、21日投開票となる日程が固まった。与党が今通常国会の会期を延長しない方針を決めたためだ。
 安倍内閣の中間評価となる今年最大の政治決戦ではあるが、このままでは争点がはっきりせず、有権者の選挙離れを招く懸念すらある。とりわけ野党は安倍内閣との対立軸の提示を急がねばならない。
 衆参両院は与野党勢力が逆転している。自公両党が改選121議席のうち63議席以上を獲得し、ねじれ状態を解消できるかがポイントだ。
 与野党は公約取りまとめを急いでおり、自民党の憲法問題の扱いが注目されている。首相は改正手続きの要件を緩和する96条改正の先行処理に積極的だった。
 ところが各種世論調査で反対意見が賛成を上回っているためか、自民党公約では先行改正についてはふれず、他の項目と併せて記す方向という。国会での発議要件を大幅に緩和する自民党案は立憲主義の観点からも問題がある。何のための96条改正なのかも含め、再点検を迫られているのではないか。
 米軍普天間飛行場の移設問題をめぐっては自民党沖縄県連が地域版公約に県外移設方針の明記を検討している。辺野古沖への移設に固執している政府方針のほころびを露呈したと言えよう。
 自民党以上に戦略の組み立てを迫られるのは野党である。
 日本維新の会とみんなの党は選挙協力協議を進めてきたが、維新の会の橋下徹共同代表の従軍慰安婦問題をめぐる一連の発言などを理由にみんなの党側が解消を通告した。構造改革路線では一致する両党だが現憲法への評価など理念の差が目立ってきただけに、やむを得まい。
 一方で民主党とみんなの党はなお選挙協力を探るなど、野党の共闘はまだら模様である。確かに多くの選挙区で自民党が分厚い支持基盤を持つ1人区で対抗するには、選挙協力による共倒れ防止が現実的な戦術なのかもしれない。
 だが、肝心の何を争点に与党に向かうのかというイメージが今のところ浮かんでこない。安倍内閣が進める経済政策にしても、大規模な金融緩和政策をめぐる民主、みんな両党の姿勢は大きく異なる。「道州制」など制度改革へのスタンスも一致しているとは言えまい。
 政権の枠組みを決する衆院選に比べ、参院選はどの政策に照準を絞るか、野党の占める役割が実際は大きい。インターネットによる選挙運動が参院選から解禁され、社会保障の全体像、エネルギー政策など問うべきテーマは多いはずだ。決して「冷めた夏」になど、してはならない。