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日別アーカイブ: 2013年7月15日

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013071501001650.htmlより、
TPP、首相「農林水産業守る」 海江田氏は慎重
2013年7月15日 20時22分

 安倍晋三首相(自民党総裁)は15日、参院選の街頭演説で、環太平洋連携協定(TPP)拡大交渉会合に日本政府が23日に初参加する見通しを踏まえ「農林水産業を守る」と懸念払拭に努めた。一方、民主党の海江田万里代表は国益確保を強調してTPPに慎重姿勢をにじませた。生活の党、共産党、社民党、みどりの風は反対の立場だが、みんなの党と日本維新の会は前向きで、野党の対応は分かれている。
 首相は三重県桑名市で「農林水産業は国の基だ。しっかり守っていく」と述べた上で「この分野はもっと可能性がある」として、日本の農産物などの輸出促進を図る考えを示した。(共同)

http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2013071500059より、
TPP会合が開幕=日本初参加へ-マレーシア

 【コタキナバル(マレーシア)時事】環太平洋連携協定(TPP)交渉の全体会合が15日、マレーシア・ボルネオ島のコタキナバルで始まった。交渉に初めて参加する日本は、会合終盤の23日午後に合流する見通し。鶴岡公二首席交渉官を筆頭に100人規模の代表団を送り、「国益を懸けた交渉」(安倍晋三首相)に臨む。
 TPP交渉は2010年3月に始まり、全体会合は今回で18回目。交渉筋によると、米豪など先行参加11カ国は、貿易自由化のルールや原則を定めた協定の条文と市場アクセスなどに関する交渉を並行して進めている。関税撤廃をめぐる利害対立の激しい物品の分野については、「共通の交渉の大枠がないため、個別に2国間で交渉が進められている」といい、今回の会合でどの程度進展が見られるかが焦点となる。
 日本は参加後に初めて、これまでの交渉の詳細な情報を入手できる。25日までの会期中に情報収集や協定条文案の分析を進め、コメなど重要農産品の関税撤廃の例外措置や、厳しい知的財産保護などの実現に向けた対応を急ぐ。(2013/07/15-20:08)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130715/k10013052381000.htmlより、
TPP交渉 日本に期待と警戒の声
7月15日 20時0分

TPP=環太平洋パートナーシップ協定の18回目の交渉会合がマレーシアで始まり、各国の交渉官からは、今回、日本が初めて交渉に参加することについて、貿易の拡大につながるなどといった期待が示される一方、交渉に遅れが生じないかと警戒する声も聞かれました。
TPPの18回目の交渉会合は、マレーシアのコタキナバルで、アメリカやオーストラリア、それにシンガポールなど11か国の交渉官らが参加して、15日から今月25日までの日程で始まりました。
日本は、アメリカの国内手続きが終了する23日午後から初めて交渉に参加できる見通しで、各国は高い関心を示しています。
このうち、カナダの交渉官は、NHKの取材に対し「日本の参加はすべての交渉参加国に大きな利益をもたらすだろう。アジア太平洋地域において非常に重要な国であり、参加を歓迎する」と述べました。
また、マレーシアの交渉官も「交渉参加国の間で貿易が拡大するだろう。前向きな期待を抱いている」と述べるなど、日本の参加への期待が示されました。
一方で、シンガポールの交渉官が「日本は交渉の進展を遅らせてはならない。交渉参加国すべてが同じ懸念を抱いていると思う」と述べるなど、日本が、「関税の撤廃」など協議が難航している分野で、農産品の例外化などの主張を強めて交渉に遅れが生じないかと警戒する声も聞かれました。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013071501001176.htmlより、
日本、コメ関税撤廃の例外主張へ 初参加TPP会合が開幕
2013年7月15日 17時37分

 【コタキナバル共同】環太平洋連携協定(TPP)拡大交渉会合が15日、マレーシア東部コタキナバルで25日までの日程で始まった。初参加する日本は米議会の承認手続きが必要なため、23日午後から合流の見通しだ。日本は、コメや麦、牛肉などの農業の重要5品目を関税撤廃の例外とする考えを主張、出遅れの挽回を狙う。
 今回は18回目の会合。米国など先行参加11カ国は、10月にインドネシアで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせた会合での「基本合意」と、年内の「交渉妥結」を目標に掲げる。決められた日程は残り少なく、日本には厳しい交渉も予想される。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130715/k10013046121000.htmlより、
TPP交渉開始 日本も参加へ
7月15日 11時30分

TPP=環太平洋パートナーシップ協定の18回目の交渉会合がマレーシアで始まり、参加国が年内の合意を目指すとするなか、日本は終盤の23日午後から初めて交渉に参加できる見通しで、みずからの主張を展開する高い交渉力が求められます。
TPPの18回目の交渉会合は、マレーシアのボルネオ島にあるリゾート地・コタキナバルで、アメリカやオーストラリア、それにシンガポールなど11か国の交渉官らが参加して、15日から今月25日までの日程で始まりました。
交渉では、全体を話し合う首席交渉官会合に加えて「関税の撤廃」や「知的財産」など分野ごとの作業部会が開かれる予定で、日本はアメリカの国内手続きが終了する23日午後から初めて参加できる見通しです。
参加国の発表などによりますと、交渉は、前回までに「電気通信」など一部の分野の協議がおおむね終了し、食品の安全基準などを定める「衛生植物検疫」なども話し合いはすでに大幅に進展しているということです。
一方で、「関税の撤廃」や「知的財産」、それに「環境」といった分野は、各国の利害が対立し協議が難航しているということです。
参加国は年内の合意を目指すとしており、今回の会合の終盤から初めて交渉に参加する日本は、みずからの主張を展開する高い交渉力が求められます。
マレーシアの交渉官の1人は「日本の参加によって建設的な協力関係が新たに築かれることを期待しています。日本の主張を聞くのを楽しみにしています」と話していました。
カナダのヒルマン首席交渉官は、NHKの取材に対して、「日本の参加はすべての交渉参加国に大きな利益をもたらすでしょう。日本はアジア太平洋地域において非常に重要な国で、参加を歓迎します」と話し、日本の参加に期待を示しました。

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013071401001349.htmlより、
日本初参加のTPP会合開始へ 23日合流、短期で最大成果狙う
2013年7月14日 16時52分

 日本が初めて参加する環太平洋連携協定(TPP)交渉会合が15日、マレーシア東部のコタキナバルで始まる。25日まで開かれ、日本は米国議会の承認手続きを経て、23日午後に合流する見通しだ。3日間の短い期間をフル活用して交渉の現状の情報を集める。重要農産品を関税撤廃の例外とする日本の考えを主張し、限られた参加の中で最大限の成果を目指す。
 安倍晋三首相が3月に交渉参加を表明した後、米国との事前協議を中心とした調整作業に約4カ月間を費やした日本が、ようやく協議のテーブルに着く。(共同)

http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2013071400098より、
TPP交渉会合、15日開幕=マレーシア

 【コタキナバル(マレーシア)時事】環太平洋連携協定(TPP)交渉の第18回全体会合が15日、マレーシア・ボルネオ島のコタキナバルで開幕する。今回から参加する日本は、23日午後に米豪など先行11カ国に合流する予定。
 会合最終日の25日は、先行参加国と日本の集中協議日となる。関係者によると、同日の会合では、日本の交渉参加以前に既に合意された領域などについて日本の交渉団と話し合う見通し。(2013/07/14-16:24)

http://www.jiji.com/jc/c?g=eco_30&k=2013071300180より、
日本、23日に交渉合流=TPP会合、15日開幕-マレーシア

 【クアラルンプール時事】環太平洋連携協定(TPP)交渉の18回目の全体会合が15日、マレーシア・ボルネオ島のコタキナバルで25日までの日程で開幕する。日本は12カ国目の参加国として、今回初めて交渉に加わる。ただ、日本が合流できるのは、米国の参加承認手続きの関係から23日午後となる見通し。
 交渉に参加している米国やオーストラリア、シンガポールなど11カ国は、年内の妥結を目指している。日本は11カ国が既に合意した内容については受け入れる必要がある。
 交渉筋によると「電気通信や能力開発などのテクニカルな分野について、協議はほぼ終了した」という。今後は各国の利害対立が激しい関税問題を扱う「物品市場アクセス」分野で、日本がコメなど重要農産品の関税撤廃の除外を確保できるかなどが焦点となる。(2013/07/13-16:33)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130713/k10013020981000.htmlより、
TPP交渉会合で日本の主張説明へ
7月13日 11時41分

TPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉会合が今月15日から開かれ、初めて交渉に参加する日本は、特許や著作権のルールづくりを話し合う部会などに出席し、日本の主張を説明するとともに交渉全体の把握を急ぐことにしています。
18回目のTPPの交渉会合は、今月15日から25日までマレーシアで開かれ、日本はアメリカの国内手続きが終わる終盤の23日午後から参加できるようになる見通しです。
交渉は21分野について24の作業部会に分かれて行われていて、日本は交渉全体について議論する「首席交渉官会合」に加えて、「知的財産」や「投資」など23日以降にも開かれる7つ程度の作業部会に出席できる見通しです。
焦点になっている関税撤廃を目指す「物品市場アクセス」の部会は日本が参加する23日以前にマレーシアでの議論は終わっている見通しですが、24日から予定されている日本のための協議の場などで主張を展開することにしています。
TPP交渉は年内の合意を目指すとされており、遅れて参加する日本としては今後、主張をどのように反映させるのか検討を急ぐことにしています。
また、日本はアメリカから交渉参加の同意を得るにあたって日米両国での協議をTPPと同時並行で進めることで合意していて、来月にも1回目の協議を開き、自動車の安全基準などについて議論を始めることにしています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130713/k10013018021000.htmlより、
TPP交渉の是非などで論戦
7月13日 4時13分

TPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉会合に日本が今月参加するのを前に、参議院選挙では交渉参加の是非などを巡って論戦が活発になっています。
TPPを巡っては、今月マレーシアで開かれる交渉会合から日本が初めて参加することになっています。
これを前に参議院選挙では、TPPを巡る各党の論戦が活発になっています。
与党側は、TPPの交渉で、コメや麦、乳製品などの農林水産品を関税撤廃の対象から外すよう求めていて、自民党は「交渉力を駆使し、国益にかなう最善の道を追求する」として、マレーシアに議員団を派遣するなど政府と一体で取り組む方針です。
公明党は、積極的に情報を開示し国民的な議論を経て国益の最大化に努めるべきだと訴えています。野党側では、民主党は「高いレベルの経済連携を推進し世界のルール作りを主導する」とする一方、農林水産物や国民皆保険を守れなければ交渉の脱退も辞さないとしています。
また、日本維新の会は、交渉で国益にかなう条件を獲得し、農業への民間企業の参入を促進するなどして成長産業化を図るとし、みんなの党は、日本が貿易のルール作りを主導し、FTA=自由貿易協定なども推進し国益を最大化するとしています。
さらにTPPを巡っては、生活の党が日本の仕組みを大きく変えると批判し、国益にかなう経済連携は積極的に推進すると訴え、共産党は、農業や雇用それに地域経済も破壊するとして交渉参加を直ちに撤回するよう求めています。
また、社民党は、産業や生活に与える悪影響が計り知れないと、交渉参加に断固反対するとし、みどりの風は、グローバル企業の利益を国民生活より優先させるとして交渉からの撤退を求めています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130712/k10015989981000.htmlより、
政府 TPP主張反映のため情報分析へ
7月12日 4時25分

今月、マレーシアで行われるTPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉会合では、初めて参加する日本のための協議の場が設けられる見通しで、日本政府は、主張が反映されるよう各国の立場や今の状況を正確に把握したいとしています。
TPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉会合は、今月15日から25日までの日程でマレーシアで開かれる予定です。
日本は、アメリカの国内手続きが終わる終盤の23日午後から参加が認められ、遅くとも最終日の25日には、各国の首席交渉官が出席する日本のための協議の場が設けられる見通しです。
日本政府は、今回の会合から、過去17回の会合の交渉経過などをまとめた膨大な文書を見ることができるようになるため、鶴岡首席交渉官をはじめ、各分野ごとに任命した交渉官など100人規模の代表団を送り、事前に各国から集めた情報を踏まえて文書を分析することにしています。
そして日本の主張が反映されるよう、協議の場を通じて各国の立場や今の状況を正確に把握したいとしています。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130421ddm003020052000c.htmlより、
クローズアップ2013:TPP交渉参加決定 多国間の壁に直面
毎日新聞 2013年04月21日 東京朝刊

 ◇対米決着で油断
 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の全交渉参加11カ国が20日、日本の交渉参加を承認し、日本はいよいよ7月から交渉に加われる見通しとなった。対米事前協議では大幅な譲歩を強いられるなど、米国の対応を最重視してきた日本。だが、ぎりぎりのタイミングでカナダの思いがけない抵抗に苦しんだ。本格交渉を前に、米国への対応だけでは何も進まないという多国間交渉の現実を突きつけられた。
 「カナダは大筋では(日本のTPP交渉参加を)了解している。うまくいっていないわけではない」−−。19日深夜から20日未明にかけ、カナダとの調整難航で日本のTPP参加が暗礁に乗り上げたとの見方が広がり、政府関係者は慌てて火消しに走り回った。
 19日に急きょインドネシアを訪問した甘利明TPP担当相は同日夕、スラバヤで「オタワ(カナダ政府)と調整中だ」と述べ、全11カ国の承認が得られなかったことを明らかにした。同日中に承認されるとの見通しが支配的だっただけに日本関係者には落胆が広がった。
 カナダが日本に求めたのは、自動車関税の当面の維持だった。トヨタ自動車や米ゼネラル・モーターズ(GM)など世界の主要自動車メーカーが工場を置くカナダにとって、自動車関税撤廃は国内雇用の悪化に直結するためだ。
 ただ、カナダが土壇場で粘り腰を見せたのには別の理由もあるようだ。日米事前協議で、日本が米国に自動車関税の当面維持を認めるなど大幅に譲歩したことが、カナダを刺激したとみられる。多国間交渉では、各国とも互いの交渉の行方を注視する。日本はカナダとのやり取りで、多国間交渉の難しさを実感する形になった。
 乗用車の関税はカナダが6・1%、米国は2・5%。日本は「米国同様に関税の当面維持を求めるのであれば、まず税率を米国と同レベルまで下げるべきだ」と要求したが、結局、カナダは応じず、「継続協議」にすることで決着した。
 農産品や乳製品の対日輸出拡大を狙うニュージーランドが最後まで承認を保留するとの観測もあった。だが、対米協議を決着させた自信もあり、日本側には「1カ国だけがダメといっても(参加承認の)流れは変わらないだろう」(政府関係者)と読みの甘さがあった。甘利担当相は20日、記者団に「交渉してみると、いろいろと国ごとに思いがあることがよく分かった。何の抵抗もなくということではないと実感した」と述べた。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130421ddm003020052000c2.htmlより、
 7月から交渉入りすると、日本にとってさらに厳しい展開になるのは必至だ。日本はコメなどの重要農産品について関税維持を譲らない方針だが、「関税ゼロ」を原則とするTPPでは、豪州やニュージーランドなど農業国の反発は避けられない。【丸山進、田口雅士、スラバヤ宇田川恵】

 ◇利害抱え、駆け引きへ
 日本と米国を除くTPP交渉参加国の主な輸出入品目を見ると、TPP参加によるメリット、デメリットの両面が浮かび上がる。
 東南アジア諸国では、輸出立国のマレーシアがTPPに高い期待を寄せる。ゴムや電子部品などの輸出拡大を見込むが、日本のコメに匹敵するセンシティビティー(敏感な問題)である「自動車」の扱いが重い問題だ。マハティール元首相の育成策で育った「プロトン」と「プロドゥア」という2社の「国民車」を守るため、これまでも高関税などで保護してきた。また、マレーシアは公共事業の入札で外国企業に参入を認めておらず、日本は門戸開放を迫れる。
 ベトナムは、交渉参加国の中で唯一の社会主義国で、外資の参入を阻んでいる。日本とは経済連携協定(EPA)が発効しているが、乗用車で約80%もの高関税が維持されており、自由化が進めば日本にとってのメリットは大きく、ベトナムも電気製品などの輸出拡大を図れる。
 一方、カナダとメキシコはTPP参加で貿易の多様性を高めたい狙いがある。カナダは、日本が136%の高関税を課している豚肉などの輸出拡大に積極的だ。ただ、カナダも乳製品や鶏肉に200%超の輸入関税を課して保護しており、TPP交渉でどこまで譲歩できるかがカギ。日本にとっては、カナダの自動車関税撤廃に期待が持てる。
 豪州とニュージーランドはTPPを輸出拡大の好機ととらえる。小麦や牛肉、牛乳・乳製品に高関税を課す日本が影響を受けるのは避けられない情勢。また、EPA交渉中の豪州は日本からの輸入自動車に課している5%の関税を当面維持することを主張しており、TPP交渉にどう波及するか注目される。【大久保陽一】

 ◇TPP実現で世界GDP4割
http://mainichi.jp/opinion/news/20130421ddm003020052000c3.htmlより、
 TPPが実現すれば、世界の国内総生産(GDP)の4割弱を占める経済圏になる。また、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国など計16カ国が締結を目指す東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は関税の撤廃やサービス、投資などの分野を含む包括的な自由貿易協定(FTA)。日中韓FTAは工業品の関税引き下げが最大の焦点だが、TPPを主導する米国に対抗したい中国の思惑も見える。いずれも実現すれば、世界のGDPの2〜3割を占める経済圏になる。アジア太平洋経済協力会議(APEC)を発展させ、20年に「アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)」をつくる構想も進んでいる。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013071502000123.htmlより、
東京新聞【社説】<2013岐路>被後見人と選挙 思いが確実に届くよう
2013年7月15日

 成年後見人がついた認知症や知的障害の人でも、今参院選から投票できるようになった。救いの手を必要としている人の思いこそしっかりと政治に届けたい。
 精神や知能に障害があって物事の判断が苦手な人に代わり、家族らが後見人として財産を管理したり、契約を結んだりする。不利益を遠ざけ、その人らしい暮らしを支える。それが成年後見制度だ。
 後見人がついた人は選挙権を失うという法定ルールは、その目的を違えるものだったと言える。五月に公職選挙法が見直されて権利を回復したが、遅きに失した感が強い。
 十三年前の制度導入時から問題は指摘されてきた。三月に東京地裁が違憲判決を出すまで、改正に動かなかった国会の罪は重い。
 財産の管理能力が乏しいからといって、選挙での投票能力まで否定できない。認知症患者や障害者の尊厳を守る制度を、政治参加の道を閉ざす指標として流用してきたのはあまりに乱暴すぎた。
 選挙権を取り戻した被後見人は全国でおよそ十三万六千人。東京都内で一万五千六百人、愛知県内で五千六百人に上る。総務省と選挙管理委員会は支障なく投票できる環境づくりに努めてほしい。
 気がかりなのは、改正公選法が不正の防止にばかり注力しているように見えることだ。
 確かに、病院や老人ホーム、障害者施設での不在者投票に絡んで、職員が入所者に特定候補者への投票を働きかけたり、誘導したりする事件は後を絶たない。
 これらの施設には、外部立会人を置く努力義務が課された。候補者や政党の名前を書けない人に代わり代理投票をする代筆役も、投票所の職員らに限られた。
 被後見人の参加も踏まえ、公正を期して監視を強めるのも仕方あるまい。しかし、抑圧的な空気が投票をためらわせたり、あきらめさせたりしては元も子もない。
 主権者として自信と誇りを持ち、堂々と選挙権を行使できるよう周りは最大限の配慮を払うべきだ。
 候補者は触れ合う機会を増やし、情報をかみ砕いて発信できないか。選管は意思をくみ取る手だてを家族らと事前に相談できないか。創意工夫を凝らし、教訓を次に生かしたい。
 六月に成立した障害者差別解消法は、障害のある人を分け隔てる社会の仕切りを取り除くよう求めている。日本の被後見人の参政権の行方は世界も見守っている。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013071502000122.htmlより、
東京新聞【社説】アユの感染症 外来種のリスクに注意
2013年7月15日

 夏本番となり、清流ではアユの「友釣り」が最盛期を迎えた。だが、水温の上昇とともに気になるのが、海外由来の新しい病気である。外来生物がはらんでいるリスクをあらためて考えたい。
 病気は「エドワジエラ・イクタルリ感染症」。国内河川では、二〇〇七年に初めてアユの大量死が確認された。腹部がふくれ、出血斑が出るのが特徴。昨夏には、アユの本場として知られる岐阜県・長良川でも死亡魚が見つかり、被害の範囲は拡大している。食べても人体に影響はないとされるが、漁業被害や風評被害が心配だ。
 友釣りは、アユが縄張りを持つ習性を利用した日本独特の釣り。掛け針を仕込んだ別のアユを「おとり(友)」として送り込み、追い払うために体当たりしてきたアユを引っ掛ける。水温が上がって魚の動きが活発になる夏が盛期の風物詩だ。
 ところが、感染症も水温が高くなると発生しやすい。発症したアユは体力が落ちて闘争心が低下してしまうため、友釣りには掛かりにくくなる。
 もともとは東南アジアや北米のナマズ類の病気。感染経路ははっきりしないが、国内では、養殖された稚アユの河川への放流に伴い広がっているようだ。
 感染をこれ以上拡大させないための対策が重要だ。稚アユの保菌検査や、防疫体制に引き続き力を入れてもらいたい。養殖関係者や漁協に加え、釣り人の理解と協力も不可欠だ。他の河川のアユや養殖のおとりアユを、安易に放してしまわないよう心掛けたい。
 海外から日本に持ち込まれた外来種が、直接、間接的に生態系を壊したり、在来種を絶滅の瀬戸際に追いやる例は後を絶たない。
 例えば、食用魚として輸入された北米原産のブラックバスは、魚食性が強く、全国の湖沼で在来魚が激減した。
 ペットのミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)が逃げ、在来種のイシガメなどの生息場所を奪ったり、日本のクワガタムシと外国産の大型種が交雑する懸念はよく伝えられる。外国産カエルにつく致死性の高いツボカビも国内のカエルから見つかった。
 いずれも、人の手をへて自然界に広がる可能性の高い点に注意したい。自然をあるがままに残すのは難しいが、それができるのもまた人でしかない。多くの人が意識を高めることで、状況はかなり改善するはずだ。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130715ddm003070048000c.htmlより、
風知草:あまちゃん国家=山田孝男
毎日新聞 2013年07月15日 東京朝刊

 人気絶頂のNHKの朝ドラは毎回、「まだまだあまちゃんですが」という字幕と写真で終わる。
 官庁の機密などが、グーグルのメール共有サービスを通じて丸見えになっていたというニュースは、国際情報戦争の実態を知らない日本人の、「まだまだあまちゃん」の頼りなさをよく映し出している。
 失態は読売新聞(10日朝刊)の特報で露見した。医療機関や官庁などが「グーグルグループ」というサービスを使い、仕事の仲間内で患者の個人情報や内部資料を共有していた。
 ところが、設定ミスで閲覧制限のタガが外れ、世界中の誰もが読める状態になってしまった。分けても環境省の場合、資料に外国政府との非公開の交渉記録が含まれていたため、菅義偉(すがよしひで)官房長官(64)は記者会見で「論外」と憤激、省庁横断の対策会議でユルフンを締め直すと誓った。
 それで締まるか。インターネットに対する甘い認識が改まるか。情報セキュリティー(安全管理)の専門家に聞くと、「期待できない」とニベもない。
 専門家は、この騒ぎのどこに注目するのか。
 「愚かだと思うのは外交に関わる情報をインターネットに書き込んだことですね。ヤバイという自覚もない。公務員がGメール(グーグル社が提供するフリーメールサービス)などを使うのは論外ですよ」
 コンピューターの検索エンジン「グーグル」を運営するグーグル社はアメリカの企業である。アメリカには愛国者法がある。愛国者法は捜査機関に通信傍受を広く認めており、政府当局はグーグルに書き込まれた情報を引き出せる。
 いま、モスクワの空港にいるエドワード・スノーデン(30)の暴露を見よ。アメリカ政府はIT企業各社の協力を得て通信傍受している。各社とも積極的な情報提供はしていないと言っているが、「泣く子と愛国者法には勝てぬ」以上、強制傍受も見て見ぬふりというのが実態だろう。
 ご教示いただいた専門家は、政治とも社会運動とも無縁の技術者だが、問題の背景を語るうちに憂国の情がほとばしり出た。
 「アメリカのコンピューターシステムの中に入って書き込んだり、情報を取ったりするということの意味合いを、ほとんどの日本人が理解していない」
 「ヨーロッパの人々はアメリカに情報を置こうとはしません。プライバシーや情報の価値に対する自覚がない日本は国家のタガが外れている。国の体をなしていないと思います」
 そういえば、ツイッターもフェイスブックも、アメリカの企業が提供するサービスである。携帯端末を活用した安倍晋三首相(58)のこまめな書き込みがしばしば話題になるが、セキュリティーは大丈夫か。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130715ddm003070048000c2.htmlより、
 報道によれば、オバマ米大統領の携帯端末には、発信地を隠し、外部からのアクセスを制限するなど特別仕様の暗号化が施されているという。安倍首相の携帯はどうなのだろう。
 タダで便利で働き者のインターネットには別の顔がある。利用のしかたを記録し、その情報を広告主に伝える通報者の顔だ。情報は次のマーケティングの原動力であり、時として捜査機関の資料にもなる。
 こちらが世界を自在に眺めているつもりで、じつは監視されている。じぇじぇじぇ! 現代サイバー(=コンピューター)戦争の過酷な現実に目を開き、甘過ぎるネット依存を改めねばならない。(敬称略)=原則、毎週月曜日に掲載。参院選報道のため、次回は29日に掲載します。

http://mainichi.jp/select/news/20130709ddm001010058000c.htmlより、
問う:2013参院選/1 外交 アジア政策、全体示せ−−白石隆・政策研究大学院大学長
毎日新聞 2013年07月09日 東京朝刊

 中国、インド、東南アジア諸国連合(ASEAN)の国内総生産(GDP)を合わせると既に日本の2倍になっており、国際通貨基金(IMF)によれば、2018年には3・5倍以上になる。日本では、東アジアの国際関係というとすぐ中国がテーマになるが、対東南アジア、対インド政策も包括的に考える時期に来ている。
 ASEAN統合は、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の基礎になる。日本がそれをどう支援するのか。インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイ、ミャンマーなどがさらに経済成長するために、インフラ整備や人材育成などの分野でどう協力するのか。戦略的に考えるときだ。
 安倍晋三首相は昨年末の就任後、東南アジア外交を活発化させている。ASEAN加盟の10カ国は政治的リスクが小さく、経済が伸びている。日本が連携しようとするのは当然で、「中国けん制」などという単純な政策ではない。
 中国はこれからの10年で日本よりはるかに大きな経済力を持つ国になる。「富国強軍」で米国に拮抗(きっこう)しようともしている。そういう国と緊張関係が長く続くのは、日本の安全保障と経済にとって望ましくない。
 中国も、沖縄県・尖閣諸島の問題を理由に、日本との関係や、この地域の安全保障を長期にわたって緊張させようとは考えていないはずだ。いずれは棚上げの方式を模索せざるを得ない。しかし、そこに至るには時間がかかる。中国が力に任せて領有権を主張しているときに日本が譲歩することはあり得ない。
 この地域の富と力の分布は、これからの10年でまた大きく変わる。それに対応したルール作りがカギになる。領土紛争は南シナ海にもある。国際紛争は国際法と国際的な規範に従って平和的に解決するのが基本。中国が勝手にルールを作り、それを押し付けるのは駄目だ。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)がいい例で、多国間の交渉によるルール作りに中国も参加するのが望ましい。
 韓国の最近の世論を見ると、韓国の人たちは、中国との関係を日本との関係以上に戦略的に重要と考えている。それが歴史問題についての朴槿恵(パククネ)政権の立場にも表れている。韓国の人たちが「日本は重要ではない」と考えるなら、日本としてはクールに、コレクト(政治的に正しく)に、韓国との外交関係を維持するしかない。

http://mainichi.jp/select/news/20130709ddm001010058000c2.htmlより、
 歴史認識をめぐる首相の発言で米国からも懸念の声が出たが、菅義偉官房長官がうまくさばいた。政治家は歴史認識の問題であまり発言しない方がいい。発言するほど政治的な争点になり、国際的な評価を落とす。【聞き手・中田卓二】
     ◇
 この参院選の大きな論点について、研究者、経済人らに話を聞く。=つづく

http://mainichi.jp/select/news/20130710ddm001010069000c.htmlより、
問う:2013参院選/2 経済 質的な成長目指せ−−三菱ケミカルHD・小林喜光社長
毎日新聞 2013年07月10日 東京朝刊

 安倍政権の経済政策「アベノミクス」は一種の社会実験だ。政策を中途半端に小出しにしても効き目はなかった。だから「ドーンと行け」ということで、それによって超円高が修正された。それまでの下向き気分が変わって、明るくなった。政も官も課題に持続的に取り組もうという機運がでてきた。ここが重要だ。
 そういう感覚が出てくると、企業も給料を少し上げよう、設備投資を考えようと、いろいろな経済の因子が元気になる。付加価値の高い製品を中心に内需が改善し、国内の企業の収益環境は上向いてきた。企業の多くが海外で稼いでいた以前とは逆の状態だ。米国経済の回復の支えもあって、秋から冬にかけ実体経済も改善していく。燃料や食料の価格が上がっているが、今のところ、我慢できる程度の副作用ではないか。日本が本当に元気になるのか、元に戻るのか、今は正念場。この参院選はその方向性を国民全体が判断する極めて重要な機会だ。
 エネルギー問題は、中長期と短期とに分けた視点が求められる。原発は人類の英知を集めた技術だが、完全には制御できないことが分かった。40〜50年の時間軸で、依存しない方向に向かうべきだ。CO2(二酸化炭素)を閉じ込めたり、さまざまな素材として有用なカーボン源に活用する研究開発も進んでいる。自然エネルギーを本格活用する技術開発を加速させることは、原発事故を経験した日本の存在意義を高めることになる。
 しかし、原発を完全に代替できる技術を10年、20年で開発するのは難しい。原発を停止したことで貿易赤字は膨らんだ。エネルギーコストの増加により重厚長大産業は海外に出て行かざるを得ない瀬戸際にある。2030年代くらいまで20〜30基程度の原発を動かさざるを得ないだろう。経済が壊れてしまえば、脱原発を実現するための技術基盤もなくなる。
 核燃サイクル事業は中長期の方向から見て正しいのかどうか。使用済み燃料は埋め立て処分するのか、どこかに永久保管するのか。この問題は結論を出さないといけない。
 今後、日本経済が目指すべき方向は、これまでのような量的な成長ではなく、質的な成長だ。資源を大量に使って鉄を作るとか、石油から繊維原料を作るような事業は、海外にシフトせざるを得ない。例えば当社も、病気を治す薬ではなく、病気にならない健康管理とは何かを重視していく。そうなれば社会保障にもカネはかからなくなる。

http://mainichi.jp/select/news/20130710ddm001010069000c2.htmlより、
 質的成長・発展を目指すのは量的成長を目指すよりも困難だが、それを実現するパッション(情熱)こそ国民の活力になる。政治には、それを喚起する役割がある。【聞き手・大塚卓也】=つづく

http://mainichi.jp/select/news/20130712ddm001010064000c.htmlより、
問う:2013参院選/3 復興 政治家は生の声聞け−−岩手県陸前高田市のまちづくり会社専務・河野通洋さん
毎日新聞 2013年07月12日 東京朝刊

 ◇河野通洋(こうの・みちひろ)さん
 東日本大震災の津波で、経営するしょうゆ醸造会社「八木澤商店」の本店と製造工場が全滅した。「何が何でも再建する。そのために社員の雇用を守る」と、まず全国から集まった救援物資を配るボランティアを業務として認め、ハローワークに掛け合って給料相当分を休業補償で支給してもらい、営業拠点を市外の内陸部に移して同業者に製造委託した製品を販売。昨秋には本社機能を市内に戻し、今年2月から新築の工場で自社製造を再開した。
 震災直後、中小企業庁の課長さんらが「プレハブの仮設店舗や工場を国が無償で貸与する」と説明に来た。「完全なフライングだが、首をかけてでも法案を通して予算化させる」と。私たちが説明して回るのに必要だと言うと、名刺もくれた。「この国の役人は捨てたもんじゃない」と思った。警察官、自衛官、消防署員たちの犠牲をいとわない行動もそう。震災は、そういう公の人を「日本の誇り」と見直す機会になった。世界からも称賛された。
 それを台無しにしたのが政治家だ。被災地の視察に来る国会議員は多いが、自分のPRのためだ。民主党政権時代に閣議決定された中小企業憲章について考える超党派の会合が6月、国会内であり、被災地代表として呼ばれて話したが、国会議員は自分が話す時だけ来て、終わったら帰った。「現地の生の声を聞く気はないのだ」と思った。ある議員は「民主党政権が閣議決定したものを現政権で国会決議するのは無理」と言った。民主党、自民党という問題ではない。この国は機能不全を起こしている。
 そもそも、なぜ真っ先に福島に出先機関を作らなかったのか。臨時の国会議事堂を作ってもいい。国は福島を見捨てないというメッセージになる。宮城や岩手は5年、10年かかるとしても再建後の未来が見える。でも福島は見えない。いまだに15万人が避難している。日本国の経営を惰性でやっていたら、財政破綻は確実に起こる。そういう危機的な状況の下で国民の誰もが不安に思っている最大の問題が福島だ。
 地元の復興に向けては、土地取得のための地権者交渉に時間がかかりすぎる今の制度を抜本的に変えてほしい。内閣府の予算で起業した会社が約40社あるが、借りられる工場もなければ事務所もない。成長の源泉なのに、もったいない。

http://mainichi.jp/select/news/20130712ddm001010064000c2.htmlより、
 中小企業経営者は震災後、役員報酬をゼロにした。財政破綻の危機を本当に感じるなら、国会議員も報酬をゼロにしたらどうか。議会はボランティアで夜やればいい。昼は本業の仕事をして。政治家が範を示せば官僚も地方議員も変わる。【聞き手・上野央絵】=つづく

http://senkyo.mainichi.jp/news/20130713ddm001010038000c.htmlより、
問う:2013参院選/4 憲法 変える理由、考えよ−−東大法学部・長谷部恭男教授
毎日新聞 2013年07月13日 東京朝刊

 ◇長谷部恭男(やすお)教授
 憲法を変えるということの意味を知るには、憲法典(条文)の文言を変えることと、それが映し出す「国の組織・構造と国のあり方」を変えることを区別する必要がある。敗戦直後の憲法の変更のような、憲法の基本原理の変更が憲法を変える最も重要な場面だ。
 社会全体として統一的な決定が必要な場合に、どのような手続きを経て決めるべきかのルールは憲法に定められている。同時に、多数決で統一的に決めてはいけないこともあるということも憲法には書いてある。それぞれの人の生き方や根本的な信念がいかにあるべきかということについては、社会全体として多数決で決めないということだ。
 なぜかというと、そんなことを多数決で決めると社会に深い亀裂を生むからだ。自分の生き方や世界観を人に押しつけたいというのは、人間の自然な情だ。しかし、それをそのまま押し通そうとすると戦争になる。誰もが自分が正しいと思うことを真剣に遂行しようとすれば、人間らしい、安全で安定した公平な社会生活は成り立たない。
 社会全体で統一的に決定できることには限界がある。残りは各人が自分の考えに従って自由に生きる。それが公私を区分する現憲法の基本原理だ。
 この憲法の基本原理は単に国内だけの問題にはとどまらない。日本がどういう国と友好的であり得るのか、逆にどういう国とは友好的ではあり得ないのかを決める原理でもある。現憲法には前文にもあるとおり、人類普遍の原理が組み込まれている。その価値観を共有している国と日本は仲良くしている。だから、本当に動かそうとするなら覚悟が必要だ。
 変えるのなら理由と必要性があるかないかをよく考えるべきだ。その議論がまだ足りない。普通は法律を変える時は、なぜ変えるのか、どうして変える必要があるのかという議論を最初にするはずだが、それが十分ではない。
 変えること自体に意味があるかのように話が進んでいる。憲法は国の看板であることが分かっていないのではないか。憲法典が変えにくくなっているのは、政治家が危険なことや無用なことにエネルギーを注がないようにするためだ。

http://senkyo.mainichi.jp/news/20130713ddm001010038000c2.htmlより、
 市民は憲法のことを毎日考えて暮らす必要はない。しかし、政府が個人の世界観にまで踏み込んですべてを決めるような国は少なくなってきたとはいえ、まだたくさんある。戦争もなくならない。おかしな議論が出てきた時には、しっかり考えてもらわないといけない。憲法の基本原理を攻撃する人が現れたら、正々堂々と反論しなければならない。【聞き手・須藤孝】=つづく

http://mainichi.jp/select/news/20130715ddm001010049000c.htmlより、
問う:2013参院選/5止 民主主義 「思い託す」見極めを−−北大法学部・中島岳志准教授
毎日新聞 2013年07月15日 東京朝刊

 ◇中島岳志(たけし)准教授
 この参院選の最大の争点は「安倍内閣の是非」だという。メディアは、その核心は安倍内閣の金融・経済政策「アベノミクス」の評価だという。だが、争点はぼやけている。野党が「アベノミクス的ではない、もう一つの社会像」を具体的に示せていないからだ。
 日本社会が「スピード感」という言葉に惑わされ、短期的に考えるようになってきたとはいえ、数カ月先の景気の行方を争う参院選にするのはおかしい。これから10年、20年先までサスティナブル(持続可能)な経済・社会のあり方こそ問われるべきだ。
 私は、望ましいと考える社会と、どの政党が近いかを考慮すれば、投票の指標になると考えている。その座標軸は二つ。一つは、人間が抱えるリスクをどうとらえるか、にある。人は病気やけが、失業、災害など、さまざまな問題に見舞われるリスクを等しく負う。各党がそのリスクをどう扱おうとしているかを「リスクの個人化」「リスクの社会化」という二つに分けて考える。
 「リスクの個人化」とは自己責任で個人のリスクは個人で負うという発想で、「小さな政府」を志向する。「リスクの社会化」とは、個人のリスクを国や社会全体で薄く広く担おうという考え方で、「大きな政府」に向かう。この二分法では、アベノミクスの方向性は「リスクの個人化」にあてはまる。
 もう一つの軸は価値観。私は「リベラルか、パターナルか」と表現している。リベラルは、個人の生き方に権力は介入すべきではないという考え方。パターナルは逆に、権力が国民に一定の社会規範を示すべきだという発想だ。憲法改正や夫婦別姓、靖国神社参拝などの問題を考えると、自民党は「パターナル」の方向にある。日本維新の会もこれに近いだろう。
 ところが、これに対抗して「リスクの社会化」「リベラル」の旗を掲げる勢力が見えない。この参院選が「しらけている」といわれるのは、その選択肢がないからだ。とりわけ、昨年末まで政権の座にあった民主党の責任は大きい。

http://mainichi.jp/select/news/20130715ddm001010049000c2.htmlより、
 民主主義の原点は、有権者がどの候補なら思いを託せるか、見極めるところにある。選挙のたびに政党を移る候補者がいるからこそ人を凝視してほしい。選挙が終わると、憲法改正、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)、原発再稼働など、大きな政治判断が目白押しになる。どの政党がどの政党と組むと、自分が重視する政策はどう動くのか。投票にあたって見通してみてほしい。賢い有権者になろう。【聞き手・川上克己】=おわり

http://mainichi.jp/opinion/news/20130715k0000m070122000c.htmlより、
社説:韓国の賠償判決 国家間の合意に反する
毎日新聞 2013年07月15日 02時32分

 安倍晋三首相と朴槿恵(パク・クネ)大統領の日韓首脳会談はいつ実現するのか? その展望も開けずにいる間に、また日韓間の難題が浮上した。
 植民地時代に日本の製鉄所で働かされた韓国人の元徴用工4人が、未払い賃金の支払いと損害賠償を求めた裁判である。
 ソウル高裁は新日鉄住金(旧日本製鉄)に対し原告1人当たり約880万円相当の支払いを命じた。戦後補償問題で韓国司法が日本企業に賠償を命じたのは初めてだ。この判決の問題点を指摘せざるを得ない。
 1965年の日韓国交正常化の際に、両国は日韓請求権協定に署名した。総額8億ドル以上の請求権資金を日本が供与し、韓国側は個人の未払い賃金なども含む対日請求権を放棄することで合意したのである。
 もちろん、韓国民の間には大きな不満が残った。他国に支配され、流血の弾圧も受けた屈辱と被害感情が尋常なものであるはずがない。
 だが、国家間の合意は一方的に破られてよいものではない。今回判決の原告のうち2人は日本でも訴訟を起こしたが敗訴、韓国での裁判でも1、2審で敗訴した。韓国政府も口出ししなかった。日韓合意を尊重してきたものと見てよかろう。
 それなのに今回、原告勝訴となったのは、昨年5月、韓国の最高裁にあたる大法院が新たな見解を示し、ソウル高裁に差し戻したからだ。
 その見解は「日本による韓国支配は違法な占領であり、強制動員自体を違法と見なす韓国憲法の価値観に反している」などと、現在の視点で過去を判断するかのような内容を含んでいる。その上で、日韓の協定があっても徴用工個人の請求権は消滅していないと断じたのである。
 その結果として今回判決はある。それは今回同様の判決が続く可能性が高いことを意味する。韓国で係争中の元徴用工の訴訟は今回を含め6件というが、新たな集団訴訟の動きもあるようだ。
 しかし徴用工への補償は本来、日本が供与した請求権資金で賄われるべき性質のものだったろう。高度経済成長を優先したために補償が遅れたのは国家的な選択だった。その後、一定の救済措置がとられている。
 そして日韓国交正常化後の日本の歩みは総体として、決して不誠実なものではなかった。国家、企業、団体などのレベルで協力と貢献が続いたことは、まぎれもない事実である。その実態が韓国民に十分知られていないのは残念なことだ。
 こうした現実を勘案する時、韓国大法院の見解を日本社会が納得して受け入れることはないだろう。少なくとも韓国政府は日韓請求権協定を尊重し続けるべきである。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130712/trl13071203180000-n1.htmより、
産経新聞【主張】戦時徴用賠償 根拠なき要求に拒否貫け
2013.7.12 03:17 (1/2ページ)

 戦時中に日本で徴用された韓国人4人が新日鉄住金(旧新日本製鉄)に未払い賃金などを求めた訴訟で、ソウル高裁が同社に対し1億ウォン(約880万円)ずつの賠償を命じた。
 請求権問題は解決済みとする日韓両国の協定に明確に違反しており、日韓関係をさらに悪化させかねない不当判決である。
 今回の判決は昨年5月、韓国最高裁が「日本の植民地支配は不法な強制的占拠」と元徴用工の個人請求権を認め、審理を高裁に差し戻したことを受けたものだ。高裁も徴用を「朝鮮半島の不法な植民地支配と侵略戦争遂行に直結した反人道的な不法行為」と決めつけ個人の賠償請求権を認めた。
 だが、昭和40年の日韓基本条約の付属文書である日韓請求権・経済協力協定では、日本が無償供与3億ドルと政府借款2億ドルなどの経済協力を約束し、両国とその国民(法人を含む)の請求権に関する問題は「完全かつ最終的に解決された」と明記された。菅義偉官房長官が「日韓間の財産請求権は完全、最終的に解決済み」と判決を批判したのは当然である。
 韓国では三菱重工業など日本企業に対する同様の訴訟が5件起こされており、同様の判決が出される可能性が高い。新日鉄住金は韓国最高裁に上告する方針だが、棄却の公算が大きい。原告側が一部被告企業に和解をもちかけ、分断を図ることも考えられ、日本側は足並みをそろえる必要がある。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130712/trl13071203180000-n2.htmより、
2013.7.12 03:17 (2/2ページ)
 賠償命令が確定すれば、日本企業の韓国での保有資産が差し押さえられる恐れもある。日本政府は韓国が公権力を行使しないよう強く働きかけねばならない。
 韓国の裁判所が解決済みの賠償問題を蒸し返すようになったのは一昨年夏からだ。憲法裁判所が元慰安婦の賠償請求に関し、韓国政府が具体的措置を講じてこなかったのは違憲だと判断したことが契機となっている。
 今年1月、ソウル高裁は靖国神社の門に放火した中国籍の男を一方的に「政治犯」と認定し、日韓犯罪人引き渡し条約に基づく日本側への身柄引き渡しを拒否した。2月には、韓国の地裁が長崎県対馬市の寺から盗まれ韓国に持ち込まれた仏像の日本への返還を差し止めた。文化財に関する条約に違反している疑いが強い。
 韓国の司法には、理性的な判断をしてほしい。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2013071202000164.htmlより、
東京新聞【社説】戦後補償判決 日韓両政府とも重荷に
2013年7月12日

 戦時中に韓国人労働者を徴用した日本企業に対し、韓国の裁判所が初めて賠償を命じた。外交上「解決済み」とされる戦後補償問題がまた浮上し、日韓関係の新たな火種となる恐れがある。
 ソウル高裁は旧日本製鉄(現・新日鉄住金)の元徴用工四人が同社に損害賠償を求めた訴訟の差し戻し控訴審で、請求通り日本円換算で一人約八百八十万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
 植民地時代の個人の財産や労務の請求権について、日本政府は一九六五年の日韓請求権協定により消滅したとみなし、韓国政府も長年異議を唱えなかった。在韓被爆者、サハリン残留韓国人、元従軍慰安婦という三つの問題は日韓双方の合意により、救済するか、償いを図る対応が取られた。
 工場や鉱山などの徴用、労働に対しては韓国側が独自に生活支援の名目で慰労金を払った。日韓双方の裁判所に提訴してもこれまでは原告が敗訴した。
 しかし、ソウル高裁判決は六五年協定での請求権消滅について「両国が一致したとみる十分な根拠がない」と判断し、「日本製鉄の強制労働は当時の日本政府の不法な植民地支配に直結した反人道的行為だ」と指摘した。
 判決は戦後日韓関係の出発点になった協定を否定するものだ。徴用による原告らの苦難には胸が痛むが、「不法な植民地支配」との表現は、現在の価値観によって約百年前の条約が不当だったとみなしており、国際的な基準からみても無理があるのではないか。
 日本政府は請求権は解決済みとの見解をあらためて表明した。新日鉄住金は不当判決として上告する。だが、韓国最高裁は昨年、個人請求権は現在も有効だとの判断を示して差し戻しており、上告しても判決が覆る可能性は低い。
 今回の判決は韓国政府にとっても重荷になる。もし協定の不備を主張するなら、日韓関係の原則そのものが揺らいでしまう。一方で司法判断や世論を意識すれば、いっそう歴史認識での不満を表明せざるを得ないだろう。これでは安倍晋三首相と朴槿恵大統領の首脳会談は見通しが立たない。
 日韓協定により日本は有償二億ドル、無償三億ドルの経済協力(請求権資金)を供与し、当時の朴正熙政権がインフラ整備に充てて経済躍進の基礎を築いた。今の朴大統領の父である。戦後の協力が言及されず、歴史の対立ばかりが強調されるのは残念でならない。

http://mainichi.jp/opinion/news/20130715k0000m070121000c.htmlより、
社説:視点・参院選 教育政策=論説委員・玉木研二
毎日新聞 2013年07月15日 02時30分

 力強い希望と勇気の言葉に感じ入った人は多いだろう。
 女子が教育を受ける権利と必要を訴え、イスラム武装勢力に銃撃されたパキスタンの少女、マララ・ユスフザイさん(16)。彼女が先週、国連本部で行った演説である。
 対立や貧困など、あらゆる問題を教育が解決するという主張は、近代教育制度を急ぎ導入した明治の日本に一脈通じるものがある。また、敗戦後間もない国会で、困窮と不足だらけの教育環境の実情を報告しながら、文部省(現文部科学省)幹部が声を上げて泣いたという逸話も思い起こさせる。熱いのだ。
 今、選挙運動で教育は特に大きな争点とはならず、経済、憲法、外交、社会保障などのテーマに隠れた感もある。だが課題はいじめや学力、大学改革など数限りない。教育立国の原点に立つような熱い論議が欲しい。
 公約で自民党は「世界で勝てる人材の育成」を掲げ、今後10年間で世界大学ランキング100位以内に日本の大学を10校以上入れる目標を示す。
 大学のガバナンス改革、教育・研究の高度化などでという。どういう道筋だろう。そして「勝てる人材」とは。判然としにくい。また民主党も含め、与野党の公約の多くに奨学金の改革拡充など教育費軽減や無償案が目立つが、実現は財源にかかる。
 言いっぱなしではない議論の深化が要る。だが教育政策論議はしばしば、先送りされてはまた蒸し返されるという堂々めぐり的なものが少なくない。
 例えば、学校体系を基本的に見直そうとした1971年の中央教育審議会答申。80年代の4次にわたる臨時教育審議会答申。画一的で多様化できない学校教育を改めようとしたが、理念通りにはいかず、類似した議論が繰り返される。事実上先送りになった東京大学の秋入学案もその典型例の一つだろう。
 仕組みを国際標準化し、優秀な学生を海外から集め、知的刺激を活発にし、日本人学生も海外に出る。これがグローバル化対応の秋入学の構想だ。
 この秋入学制は80年代に臨教審で学校制度全体のテーマとして論議された。だが、まとまらず、結局「将来諸条件の整備を」で棚上げになった。
 いじめ問題も対策法を成立させるほど世論を喚起しながら、学校現場の実情や意識とはまだ必ずしも十分結びついていないという指摘もある。
 教育の持つ力や可能性はマララさんが熱く語る通りだ。現実に即しながら議論を熟させ、先送りせず、実現させていく姿勢と覚悟。そこがまず土台だ。

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130714/elc13071403050017-n1.htmより、
産経新聞【主張】参院選と教育 偏向教科書なくす道筋を
2013.7.14 03:04

 教育基本法の改正後、停滞した教育改革の流れを前進させられるかどうか。参院選ではこの大命題も問われている。
 教育内容を適切に見直していくことは国の責任であり、その基本となるのが史実の歪曲(わいきょく)など教科書の偏向の是正だ。
 教育を重点政策に掲げる安倍晋三政権と与党自民党は、首相官邸と党に「教育再生」を目指す組織を設置して、道徳教育の充実や教科書行政、教育委員会制度の抜本改革などを次々に提言してきた。教育現場で改善が図られずにきている国の根幹にかかわる懸案ぞろいだ。
 参院選公約にもうたわれたそれらの中でも特筆されるのが、「近隣諸国条項」の見直しである。教科書記述をゆがめる温床とされてきた条項の改善は、喫緊の課題である。安倍政権には、公約通り進めてほしい。
 日本維新の会は「参院選公約」で「教育基本法の趣旨に基づき、教科書検定・採択制度を全面的に見直す」と踏み込んだ点で、野党の中で際立っている。これを前面に押し出し、有権者に力強く訴えていってもらいたい。
 公明党の「重点政策」は教育については、教育委員会の機能強化策として政治的中立性の確保などに取り組むなどとし、教科書問題には直接触れていない。連立を組む党としては残念だ。
 民主党の「重点政策」も、いじめ対策や教育委員会制度の抜本的見直しを掲げるなど、全体として政権時の政策をほぼ踏襲し、教科書制度は素通りである。
 みんなの党は「アジェンダ2013」で、教育は市町村と現場に任せて、国の役割を教育水準の維持にとどめるとしている。具体的には、教育委員会の設置も自治体が決定できると提案している。
 だが、教科書の記述をはじめとする偏向教育を、国が正すことが先決であり、地方への権限移譲はそれからでも遅くはない。
 共産党は、安倍教育改革を「上からの統制」と決めつけるばかりで、自らの政策に新味はない。
 教育の中で教科書の果たす役割は大きい。明日を担う子供たちに公正で健全な問題意識を身につけさせなければならないからだ。
 にもかかわらず、偏向記述や史実の歪曲などの是正は、一向に進んでいない。残すところ1週間の選挙戦では、そうした現実を踏まえての論争を期待したい。

http://www.asahi.com/paper/editorial.html?ref=com_top_pickup#Edit2より、
朝日新聞 社説 2013年 7月 12 日(金)付
国際化と教育―多様さに背を向けるな

 教育をめぐる自民党の選挙公約を読むと首をかしげることがある。「世界で勝てる人材」、つまりグローバル人材の育成についての項目の中で、なぜか教科書問題に触れているのだ。
 歴史教科書の「自虐史観」を正すため、どの教科書にも共通して書くべきことがらを文部科学相が定める、という。
 グローバル化と教科書問題はどう関係するのか。党が4月に出した提言は、グローバル人材をこんなふうに描く。
 英語が話せる。世界のトップ大学に進める学力がある。日本の伝統や文化を発信できる。その前提となるのは日本人としてのアイデンティティーだ――。
 だから教科書制度を見直し、歴史と文化を尊ぶ心を育む。両者はそうつながるらしい。
 しかし、思い出してほしい。安倍首相や日本維新の会の橋下徹共同代表の歴史認識をめぐる発言は、近隣の国々ばかりか、米国でも批判を招いた。
 日本の立場を発信することは大切だが、異なる視点への配慮を忘れ、自己弁護ばかりしていると受け取られれば、国際社会で理解をえられない。
 世界を舞台に働くには、多様な文化や意見をもつ人と対話をし、自他ともに生かす道を見いだす能力が問われる。そういう視点が欠けていないか。
 国内に目を向けても、いじめや外国人排斥デモの背景には、自分と違う存在への不寛容さが横たわる。これからの社会には自らの価値観を相対化し、異質な他者を受け入れる力がますます必要になるはずだ。
 民主党は与党の時、大学改革の提言で「多様な他者とコミュニケーションできる」人材の育成を掲げた。が、今回の公約にそんな視点は乏しい。今こそ有権者に問うべきではないか。
 いろいろな人がいて、一色に染まらぬ方が社会は強くなる。戦後の日本はそう考え、教育現場に政治が口を出しにくい仕組みをあえて築いた。教科書や教育委員会の制度がそうだ。
 今の教科書制度は基本的に、どう書くか、どの本を選ぶかを出版社や教委の自主性に委ねている。多様な教科書があってよいという考え方が土台にある。
 参院選では自民だけでなく、維新も教科書検定と採択の全面見直しを掲げている。選挙の結果によっては、その理念は塗り替えられるかもしれない。
 多様性を大切にしてこそ、異なる人びとと自分との接点を探る知恵をまとった人材が育つ。国内外ともに人が交じりあい、多極化する時代にふさわしい教育のあり方を論じてほしい。